企業における労働安全衛生管理体制
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職場の安全衛生は労使共通の責任です。使用者は、業務に伴うリスクや個人用保護具(PPE)の使用などといった安全対策の妥当性を労働者が把握できるように、安全に関する情報の提供や研修を行う必要があります。また、労働者もそうした安全対策を実践するべきです。経営者と労働者は共に予防の原則を最優先事項としなければなりません。
ILOが提唱する効果的な労働安全衛生管理体制[1]
1. 使用者は、労働者やその代表と協議の上、次の要件を満たす労働安全衛生施策を書面化する必要があります。
- 企業の状況に特化し、その規模や活動内容に適したものである
- 文章が簡潔明瞭で、日付が明示され、使用者または企業の最高責任者の署名または承認により有効である
- 全ての労働者に伝達され、職場で容易に閲覧可能な状態になっている
- 内容を適宜更新する
- 必要に応じて外部の利害関係者にも利用できるようにする
2. 労働安全衛生施策には、企業として厳守する次の主な原則や目標を最低限含めるべきです。
- 労働災害、健康障害、疾病やインシデントを予防することで、企業の全構成員の安全衛生を守る
- 労働安全衛生に関する国内の法令、自主的な取り組み、労働協約、その他当該企業が受諾した要件を順守する
- 労働者やその代表と協議し、労働安全衛生管理体制への全面的かつ積極的な参加を奨励する
- 労働安全衛生管理体制の機能を継続的に改善する
3. 労働安全衛生管理体制が実際に効力を発揮するためには、労働者の参加が不可欠です。使用者は、労働者やその安全衛生代表者と協議し、緊急対応をはじめとする、業務に関わる労働安全衛生の全側面に関する情報を提供し研修を行うようにするべきです。
また、労働者やその安全衛生代表者が労働安全衛生管理体制の整備、計画、実施、評価や改善に積極的に参加するための時間やリソースを持つことができるように配慮するべきです。さらに、必要に応じて安全衛生委員会を設置して効率的に機能するようにし、国内法や慣行に従って労働者の安全衛生代表者が承認されるようにしなくてはなりません。
企業の安全衛生施策は、実務上効力を発揮させるためには一貫して実施しなくてはなりません。
[1] 詳しくは、“Guidelines on occupational safety and health management systems, ILO-OSH 2001” (ILO, Geneva, 2001; 2009)の 3.1と3.2をご覧ください
個人用保護具(PPE)
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宗教による差別には、宗教的信条の表明や宗教団体への所属を理由とする場合などがあります。宗教的信条を理由とした差別は認めるべきではないものの、職場では、労働者が特定の信仰を実践する自由を制限するような雇用条件であっても正当な根拠が存在する場合もあります。
宗教によっては、個人用保護具を着用できない特殊な衣服を着用しなければならないこともあります。このような場合には、安全上の必須条件を鑑みて、労働者が自分の信仰や信条を職場で十全に守る権利を検討する必要があります。
企業には、労働者が信仰する宗教の独自の慣習を実践できるようにするために、合理的な努力を行うことが奨励されます。信仰の実践を可能にする措置について、特に労働者の代表を通じて労働者と協議をするべきです。
個人用保護具と地域の宗教上の慣習について、詳しい提案や助言については国内の労使団体にお問い合わせください。
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労働者がある不適切な行為を行った際に、国内法や慣行上その行為が繰り返し行われた場合にのみ解雇が認められる場合、使用者がその労働者に対して適切な警告を書面で通知していないのであれば、その行為を理由として解雇するべきではありません[1]。安全衛生に関連した業務規則の違反などでは解雇が正当である場合もありますが、従業員が義務を認識し、解雇が業務規則違反の結果であることを理解するように手順を踏む必要があります。
個人用保護具を着用しなかったために即時解雇するというのは、その企業が社内の労働安全衛生の効果的な管理方法を明確に理解していないことの表れです。労働安全衛生に対して前向きに取り組むことは労働者にも、また労働者やその家族のウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)にも、さらには企業の生産性と持続可能性にも大きな利益をもたらします。優れた安全衛生は優れたビジネスを意味し、全ての関係者が取り組むべき問題です。
職場の安全衛生は労使共通の責任です。使用者は、業務に伴うリスクや個人用保護具の使用などといった安全対策の妥当性を労働者が把握できるように、安全に関する情報の提供や研修を行う必要があります。また、労働者もそうした安全対策を実践するべきです。経営者と労働者は共に予防の原則を最優先事項としなければなりません[2] 。
労働安全衛生管理体制には労働者の参加も欠かせません。使用者は、労働者やその安全衛生代表者と協議し、緊急対応をはじめとする、業務に関わる労働安全衛生の全側面に関する情報を提供し研修を行うようにするべきです。また、労働者やその安全衛生代表者が労働安全衛生管理体制の整備、計画、実施、評価や改善に積極的に参加するための時間やリソースを持つことができるように配慮するべきです。さらに、必要に応じて安全衛生委員会を設置して効率的に機能するようにし、国内法や慣行に従って労働者の安全衛生代表者が承認されるようにしなくてはなりません。
効果的で適切な労働安全衛生管理体制の整備に役立つ詳しい提案や助言については、国内の労使団体にお問い合わせください。
[1] 1982年の雇用終了勧告(第166号)、第7項。
[2] 2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)および2006年の職業上の安全及び健康促進枠組勧告(第197号)の採択に関する議論では、“Employers and workers should all actively participate in securing a safe and healthy working environment through a system of defined rights, responsibilities and duties, and the principle of prevention should be accorded the highest priority”(「使用者と労働者は全て、明確に定義された権利や責任、義務に関する制度を通じて、安全で健康的な労働環境の確保に積極的に貢献し、予防の原則を最優先しなければならない」)という点を強調しています。Q:個人用保護具を労働者に自費で購入させることは認められますか。
A:企業には、国の定める要件に沿って最高水準の安全衛生を維持することが求められます[1]。
その大事な第一歩が、安全で健康的な労働環境への権利が尊重され、労使双方がその環境の確保に積極的に貢献するような「予防の文化」を企業内で醸成することです[2]。施策を進めるに当たっての最優先事項は事故や健康障害を防止することであり、そのためには労働環境に内在する危険有害要因を合理的に実行可能な範囲内で最小化することが重要です[3]。
予防のためには、適切な保護服と保護具も重要です。そのような身体保護用品が必要な場合[4]には、労働者に無料で支給するべきです[5]。
労働者とその代表には、安全対策について十分な情報と適切な研修を提供しなければなりません[6]。
[1] 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)、第44項。
[2] 2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)、第1条(d)。
[3] 1981年の職業上の安全及び健康に関する条約(第155号)、第4条第2項。
[4] 同上、第16条第3項。
[5] 同上、第21条。
[6] 同上、第19条(c)、 (d)、および1990年の化学物質条約(第170号)、第15条。
労働者の監禁
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労働者を事業所内に閉じ込めるべきではありません。ILOは職場での監禁を一切容認しない「ゼロ・トレランス」のアプローチを提唱しています[1]。
さらに、工場などに労働者を閉じ込めるのは明らかに労働安全衛生の原則に反しています。事故が発生すれば人身損害の民事責任が生じる恐れもあります。また、工場に労働者を監禁することは、国内法上の犯罪行為、または不当監禁として民事上の不法行為に当たる場合もあります。
企業が自らの財産を守るための措置を講じること自体は適法ですが、労働者の監禁ではなく、別の手段を検討しましょう。
効果的な手段に関する実践的なアドバイスについては、国内の使用者団体や労働組合にお問い合わせください。
[1] 詳しくは、“Combating forced labour: A handbook for employers and business” (ILO, Geneva, 2015)の第6章8ページをご覧ください。
労働安全衛生における予防の文化
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企業には、国の定める要件に沿って最高水準の安全衛生を維持することが求められます[1]。
その重要な1要素が、安全で健康的な労働環境への権利が尊重され、労使双方がその環境の確保に積極的に貢献するような「予防の文化」を企業内で醸成することです[2]。施策を進めるに当たっての最優先事項は事故や健康障害を防止することであり、そのためには労働環境に内在する危険有害要因を合理的に実行可能な範囲内で最小化することが重要です[3]。
企業の管理下にある化学的、物理的および生物学的物質・因子は、適切な防護措置が取られていれば、労働者の健康に対するリスクにはならないはずです。機械や装置、工程は、安全で、かつ健康に対するリスクを伴わないものであるべきです[4]。
予防のためには、適切な保護服と保護具も重要です。そのような身体保護用品が必要な場合[5]には、労働者に無料で支給するべきです[6]。
機械や装置、労働時間、作業体制、工程を、労働者の身体的・精神的な能力に合わせて運用する必要もあります[7]。その際には性差も考慮するべきです。妊産婦には、母子のいずれかの健康に害を与える可能性のある作業をさせてはなりません[8]。
適切な応急対応の体制づくりなど、緊急事態や事故に対処するための対策も実施するべきです[9]。
企業は危険事象や労働災害、職業性疾病の記録・通知を行う手順を策定し、実施しなければなりません。また、産業安全衛生における危険有害要因を分析し、その結果得られた改善策を社内で実施する際に主導的役割を果たすべきです[10]。
労働者やその代表は危害の予防において重要な役割を担っており[11]、労使の協力が不可欠です[12]。企業は、事業を展開している地域に関連した安全衛生基準の情報を社内の労働者の代表に提供しなければなりません。新しい製品や製造工程に関係するあらゆる特別な危険有害要因や関連した保護対策についても周知する必要があります[13]。労働者とその代表には、安全対策について十分な情報と適切な研修を提供しなければなりません[14]。
そうした情報に関しては、企業秘密を漏らさないことを条件として、労働者やその代表が労働組合と協議することが認められなければなりません。また、経営者の同意があれば技術アドバイザーを外部から招くことがあってもよいでしょう[15]。
労働者は、急迫した重大な危険があると合理的な理由により確信している場合、必ず直属の上司に報告するべきです。また、生命や健康に対するそうした危険を排除するために使用者が必要な是正措置を取るまでは、労働者には仕事の再開を拒否する権利があります[16]。
企業は労働者代表との協約を結ぶ際に、必要であれば安全衛生に関する項目を設けることが奨励されます[17]。
複数の企業が同一の作業場において同時に業務に従事する場合には、常に、危険有害要因を最小化するために協力する必要があります[18]。
国レベルでは、安全衛生の管轄当局や労使団体の代表者、安全衛生管理を目的として設立された組織と全面的に協力しなければなりません[19]。
国際レベルでは、安全衛生に関する国際基準の策定や採択に関して企業は協力する必要があります[20]。
[1] 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)、第44項。
[2] 2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)、第1条(d)。
[3] 1981年の職業上の安全及び健康に関する条約(第155号)、第4条第2項。
[4] 同上、第16条第1項。
[5] 同上、第16条第3項。
[6] 同上、第21条。
[7] 同上、第5条(b)。
[8] 2000年の母性保護条約(第183号)、第3条。
[9] 第155号条約、第18条。
[10] 多国籍企業宣言、第44項。
[11] 第155号条約、第19条(a)、 (b)。
[12] 同上、第20条、および1990年の化学物質条約(第170号)、第16条。
[13] 多国籍企業宣言、第44項。
[14] 第155号条約、第19条(c)、 (d)、および第170号条約、第15条。
[15] 第155号条約、第19条(c)、(e)。
[16] 同上、第19条(f)。
[17] 多国籍企業宣言、第46項。
[18] 第155号条約、第17条。
[19] 多国籍企業宣言、第46項。
[20] 同上、第45項。
危険有害物質への暴露
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化学物質に関する特別措置として、業務で使用される全ての化学物質には識別のためにラベル付けや表示を行うこととされています[1]。有害な化学物質には、その分類や危険性、守るべき安全上の予防措置の内容を労働者が容易に把握できるように、ラベルを付けなくてはなりません[2]。また、化学物質の安全データシートを労働者とその代表に提供する必要があります[3]。
経営者は、労働者の化学物質への暴露が管轄当局またはその承認や認可を受けた団体が国内外の基準に従って定めた暴露限界値、または労働環境の評価・管理のために定めたその他暴露基準を超えないようにしなければなりません。
また、労働者が有害な化学物質にさらされている度合いを判定し、暴露の状況を監視・記録しなければなりません。こうした記録は労働者やその代表が閲覧できるようにする必要があります[4]。さらに、この記録を適切な期間にわたって保存・維持する体制を確立するべきです[5]。
企業は、がん原性物質やがん原性因子に関して特別な措置を取り、そうした物質・因子をがん原性がないもの、または有害性が低いものに切り替えることに全力で取り組むべきです[6]。また、石綿(アスベスト)使用の防止および管理のために特別な措置を取る必要があります[7]。
暴露する労働者の人数やその期間・程度は、安全と両立し得る最低限の数値に抑えるべきです[8]。また、がん原性物質・因子に暴露した労働者、または暴露する恐れのある労働者には、暴露がもたらす危険と取るべき措置についてあらゆる情報を提供しなければなりません[9]。
雇用期間中、また必要であればそれ以降も、労働者には健康診断や生物学的検査、その他の検査・調査を実施し、暴露の程度を判定し、労働災害に関して健康状態を監視する必要があります[10]。有資格の医療従事者の推奨がある場合は、その労働者、またはその労働者のグループは暴露を伴う作業から外し[11]、代わりの仕事、またはその他の所得を維持する手段を提供するべきです[12]。
健康を害する可能性のある物質や因子、工程への暴露を伴う危険有害労働に従事できる最低年齢は18歳です[13]。
[1] 1990年の化学物質条約(第170号)、第7条第1項。
[2] 同上、第7条第2項。
[3] 同上、第10条第1項。
[4] 同上、第12条。
[5] 1974年の職業がん条約(第139号)、第3条。
[6] 同上、第2条第1項。
[7] 1986年の石綿条約(第162号)、第3条。
[8] 第139号条約、第2条第2項。
[9] 同上、第4条。
[10] 同上、第5条。
[11] 1960年の放射線からの保護に関する条約(第115号)、第14条。
[12] 同上、脚注20、“CEACR General Observation 2015” 第28項および第162号条約、第21条第4項。
[13] 1999年の最悪の形態の児童労働勧告(第190号)、第3項(d)。
ウランの放射線からの防護
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グッドプラクティス(推奨される慣行)の詳細な手引きとしては、電離放射線に対する防護と放射線源の安全のための国際基本安全基準(Radiation Protection and Safety of Radiation Sources: International Basic Safety Standards、通称BSS)をご参照ください。BSSはILO、国連食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発/機構原子力機関(OECD/NEA)、汎米保健機構(PAHO)および世界保健機関(WHO)が取りまとめ、1996年に刊行された基準です。ウラン鉱山と核燃料サプライヤーに関する特別な要件が定められています。
BSSは1960年の放射線からの保護に関する条約(第115号)と1960年の放射線防護勧告(第114号)を補完し、この2文書が整備する、整合性のある放射線防護基準のための世界的な基盤となっています。またBSSはIAEA安全基準の一部を構成しています。IAEAは放射線防護インフラの向上に関するモデルプロジェクトによる技術協力を通じ、100カ国以上で安全基準の普及を進めています。
加盟国がBSSの要件を守れるように、ILOはIAEAと合同でウラン鉱山に適用できる以下の安全指針とその他の手引きを作成しました。さらに詳細な安全基準が示されているのでご参照ください。
- 鉱山における職業被ばく保護と原材料の加工(安全指針)(“Occupational Radiation Protection in the Mining and Processing of Raw Materials: Safety Guide”, Safety Standards Series No. RS-G-1.6, IAEA・ILO, Vienna, 2004)
- 職業被ばく保護(安全指針)(“Occupational Radiation Protection: Safety Guide”, Safety Standards Series No. RS-G-1.1, IAEA・ILO, Vienna, 1999)
- 放射性核種摂取による職業被ばくの評価(安全指針)(“Assessment of Occupational Exposure Due to Intakes of Radionuclides: Safety Guide”, Safety Standards Series No. RS-G-1.2, IAEA・ILO, Vienna, 1999)
外部放射線源による職業被ばくの評価(安全指針)(“Assessment of Occupational Exposure Due to External Sources of Radiation: Safety Guide”, Safety Standards Series No. RS-G-1.3, IAEA・ILO, Vienna, 1999)
建設現場の安全監督者
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使用者には、“provide such supervision as will ensure that workers perform their work with due regard to their safety and health”(「安全衛生が十分に考慮された状況で労働者が労働できるように監督を行う」)ことが奨励されています[1]。これは安全監督者が何人いればいいという問題ではないため、人数は規定されていません。監督者の能力や、明確な責務と権限が与えられているかどうかといった点も含めて判断する必要があります。
規模の大小にかかわらず全ての建設会社は、適切な資格を有し、特に安全衛生の推進を主な責務とする安全管理者を最低でも1人は任命しなければなりません[2]。
さらに、建設現場での安全を確保するためには、明確な責務を負う第一線監督者(「現場監督」とも)が不可欠です。そうした監督者には自分が監督する班の安全を担う役割もあり、建設現場に従業員を派遣している各企業は現場に少なくともそのような監督者を置く必要があります。
監督者が担う責任[3]
- 労働条件と設備が安全であること
- 職場の安全が定期的に点検されていること
- 労働者が行う予定の作業について十分に訓練を受けていること
- 職場の安全対策が実施されていること
- 利用可能なリソースと技能を用いて最善の解決策が導入されていること
- 必要な個人用保護具(PPE)が確保され、実際に使用されていること
監督者は現場の管理担当者による直接のサポートを必要としています[4]。また、監督者は適格な有資格者である必要があります。特定の作業を安全に遂行するために適切な訓練を受けており、十分な知識、経験、技能を有していることを証明する資格などです。[5]。
2社以上の使用者が同一の建設現場で同時に作業を行う場合、現場における作業の全体を実質的に管理するか主な責任を負うのは主要な請負業者であり、所定の安全衛生対策について調整を行い、その順守を徹底する責任を負うことになります。主要な請負業者が現場にいない場合には、権限を有する担当者(全体の安全監督者またはコーディネーター)もしくは団体を指名する必要があります。ただし、各使用者には自らの管轄下にある労働者について所定の安全対策を実施する責任があることは変わりません。現場で同時に活動する全ての使用者や自営業者が協力する義務を負っています[6]。
労働者や労働組合から代表として任命される安全衛生代表者も、おおまかに言えば「監督者」と見なすことができます。安全衛生代表者がいる現場は業務の安全性が高まることは、これまで繰り返し証明されてきました。その役割の大きさはどれほど強調してもしすぎることはありません[7]。建設現場の安全を確保するためには、定期検査と是正措置が必要です。訓練を実施することで、作業にどのようなリスクがあるか、またどうすればそれを克服できるかを労働者が把握できるようになります。安全な作業方法を労働者に対して示さなくてはなりません[8]。また、労使の代表による委員会を設置するか、国内法令に従って他の適切な仕組みを作ることにより、労働者が安全な労働条件の確保に参加できるようにする必要があります[9]。
まとめると、高層ビル建設現場のように複数の請負業者が同時に作業する現場では、全体を見る安全コーディネーターや監督者を必ず設置するべきです。コーディネーターの監督の下で、個々の請負業者が自社に関係する労働者と下請業者の安全と健康について責任を負います。その責任には、情報提供や訓練、現場安全講習(主要な請負業者が行っていない場合)の実施などが含まれます。全体のコーディネーター、主要な請負業者、現場にいるその他請負業者の間では双方向の調整を行わなくてはなりません。現場で他の安全監督者が必要かどうかは、次のような多くの点を考慮して決めます。
- 作業現場の規模と複雑さ
- 現場で作業している会社の数(その全部または一部に自社の安全監督者がいる可能性があり、これには他の現場も担当していて常駐ではない場合が含まれる)
- リスク評価が行われた場合に想定される要求事項(例えば、特定の場所や時間に安全監督者の設置が必要とされるなど)
- 各企業の監督者(現場監督)の有無とその能力
- 安全文化の有無とその発展度
- 労働組合の安全代表者の関与の度合い
建設現場での安全要件に関連した国内法令や労働協約については、国内の労使団体にお問い合わせください。
[1] “Safety and health in construction: An ILO code of practice”, ILO, Geneva, 1992, Section 2.2.7.
[2] “Safety, health and welfare on construction sites: A training manual”, ILO, Geneva, 1995, Section 2.2.1.
[3] Ibid.
[4] Ibid, Section 2.2.2.
[5] 1988年の建設業における安全健康条約(第167号)、第2条(f)。
[6] 同上、第8条。
[7] こうした点に関する経験的証拠については、“The role of Worker Representation and Consultation in Managing Health and Safety in the Construction Industry” (ILO, Geneva, 2010)の19~23ページをご覧ください。
[8] “Safety, health and welfare on construction sites: A training manual”, Section 2.2.2.
[9] “Code of Practice”, Section 2.2.3. -
“Code of practice on safety and health in agriculture”には、農業労働者の個人用保護具(PPE)に関する指針が定められています。ヘビにかまれる事故については特に触れていませんが、作業中はすね当てや膝当ての付いた滑らない長靴や安全靴の着用を推奨しています。また、プランテーションで医療を提供する際には、その地域に多く生息するヘビやクモなどの毒に備えて解毒剤を用意する必要があります。
より一般的な指針としては、2001年の農業における安全健康条約(第184号)や2001年の農業における安全健康勧告(第192号)が野生動物や有毒生物との接触を避ける対策をはじめとして農業における総合的な予防策を提示しています。 -
1964年の衛生(商業及び事務所)条約(第120号)は、「労働者に対しては、十分かつ適切な腰掛けを提供するものとし、労働者は、これを使用する適当な機会を与えられる」と定めています。
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1960年の放射線からの保護に関する条約(第115号)と1960年の放射線防護勧告(第114号)は、労働者の健康と安全の観点から、全ての労働者を電離放射線から効果的に防護するための適切な対策について定めています。
1964年の業務災害給付条約(第121号、付表Iは1980年に改正)や、職業性疾病についてまとめた“ILO List of Occupational Diseases (revised 2010)”も、客室乗務員とパイロットの保護に適用されます。
1987年に刊行された“Radiation protection of workers (ionising radiations)”では、客室乗務員やパイロットなどの労働者の電離放射線への暴露を伴うあらゆる業務に関する指針を定めています。
さらに詳細な情報は、ILO、国連食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)、汎米保健機構(PAHO)および世界保健機関(WHO)の下で取りまとめられた “Radiation Protection and Safety of Radiation Sources: International Basic Safety Standards – Interim Edition”をご参照ください。 -
1964年の衛生(商業及び事務所)勧告(第120号)は、労働スペースについて第VII章で次のように定めています。
26
(1) すべての作業場の設置及び作業部署の配置は、労働者の健康に有害な影響を及ぼさないようにすべきである。
(2) 各労働者は、健康に対する危険なしに作業を行なうことができるように、妨害物のない十分な広さの作業区域を有すべきである。
27 権限のある機関は、次のものを定めるものとする。(a) 周囲を囲まれた建物の中で常時労働する各労働者に対してその建物内で割り当てられる床面積
(b) 周囲を囲まれた建物の中で常時労働する各労働者に対してその建物内で割り当てられる最低限度の気積
(c) 作業が常時行なわれることとなる周囲を囲まれた新築の建物の最低限度の高さ -
国際労働基準では、安全衛生に関して「1. 作業環境に固有の危険有害要因は合理的に実行可能な範囲で最小化すること、2. 労働者の身体的・精神的能力に合わせた作業内容にすること」の2点が一般原則として定められています。また、必要であれば高齢労働者について特別な配慮をしなければなりません。
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農業における安全と健康に関する主な国際労働基準としては、2001年の農業における安全健康条約(第184号)と2001年の農業における安全健康勧告(第192号)があります。また、農業における安全衛生に関する実務規程である“Safety and health in agriculture: ILO code of practice”もご参照ください。
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人力による運搬作業では、健康や安全を損なう危険性のある作業を労働者に要求したり容認したりしてはなりません。成人男性の容認される最大重量は55kgであり、若年者と女性の場合はこれより大幅に低くなります[1]。企業は、適切な工業装置をできる限り用いることが奨励されます[2]。
具体的な指針については、農業における安全衛生に関する実務規程である“Safety and health in agriculture: ILO code of practice”をご参照ください。2時間を超える作業時間で、重量23kgを超える重い物体を1分間に4回以上持ち上げたり運んだり据え付けたりする作業を行う労働者には、物体の重量、作業の方法、頻度、所要時間、その他の環境的影響(直射日光の下や、発電機やエアコンプレッサ、内燃機関などの熱源の付近)との組み合わせにより、腰部損傷、全身疲労、場合によっては熱ストレスなどのリスクがあります。荷物運搬作業が個々の労働者の健康面に及ぼす影響の査定では、荷物の重量だけでなく、初期動力と持続力、持ち上げる物体と体との距離(矢状面)、持ち上げる位置の違い(床から指の関節の高さまで、指の関節から肩の高さまでなど)、作業の頻度、労働者の性別などの要因も考慮されています[3]。
また、農業における人間工学上のチェックポイント(Ergonomic checkpoints in agriculture)をILOは国際人間工学連合(International Ergonomics Association)と合同で作成しており、こちらで重い物体の運搬に関する指針が確認できます(チェックポイント7を参照のこと)。また、荷物の持ち上げと運搬における最大重量に関する指針の“Maximum weights in load lifting and carrying” (ILO OSH Series No 59; ILO, Geneva, 1988)もご覧ください。[1] 1967年の最大重量条約(第127号)、および1967年の最大重量勧告(第128号)第14項をご覧ください。
[2] 第127号条約、第7条第2項。
[3] “Safety and health in agriculture”のparagraph 9.2.1.5とparagraph 9.2.2.1をご覧ください。
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安全衛生に関する国際労働基準が定める原則の中で、こうした点を直接取り上げているものはありません。しかし、有用と思われる指針は何点か策定されています。
原則によると、「国内法及び国内慣行に従って、職場の段階において、安全及び健康に関する政策の策定、安全及び健康に関する共同委員会の設置並びに職業上の安全及び健康に関する労働者代表の指定」が奨励されています[1]。
実務上は、この安全衛生委員会の設置が求められる基準として、従業員の具体的な数(通常は20名)が多くの国で一般的に定められています。小規模の職場(従業員5~19名)の場合には、予防を中心とした労働安全衛生の基本的知識を有する安全管理担当者の任命を義務付けている国もあります。
重要なのは、危険有害要因の識別やリスク評価、安全プログラムの作成・実施のために効果的な体制を確立することができる、適切な訓練を受けた人物を置くことです。特に、労働安全衛生リスクの予防に関係するあらゆる要素について十分な訓練を受けた人物でなくてはなりません。また、従業員の人数にかかわらず、全社的な対話と協力の重要性も原則では重要視しています[2]。[1] 詳しくは、2006年の職業上の安全及び健康促進枠組勧告(第197号)、第5項(f)をご覧ください。
[2] 詳しくは、“Guidelines on occupational safety and health management systems, ILO-OSH 2001” (ILO, Geneva, 2001; 2009)をご覧ください。
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胸部X線検査や医療向けに使用できるX線装置の種類は、各国の管轄当局によって定められています。一部の国では、デジタルX線撮影装置(DR)とコンピューターX線撮影装置(CR)の両方がこうした検査で用いられています。医療機関での固定式X線撮影装置による胸部X線検査(DRやCR)に加えて、携帯型であっても、胸部X線検査での使用を国の管轄当局から認可されたDR装置が付いている場合には携帯型の撮影装置も使用することができます。
医学用語の定義やデジタルX線撮影については、“Guidelines for the use of the ILO International Classification of Radiographs of Pneumoconioses” (Revised edition, 2011)の第6章をご覧ください。
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