1964年の衛生(商業及び事務所)勧告(第120号)
1964年07月08日
商業及び事務所における衛生に関する勧告(第120号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十四年六月十七日にその第四十八回会期として会合し、
この会期の議事日程の第四議題である商業及び事務所における衛生に関する提案の採択を決定し、
この提案が勧告の形式をとるべきであることを決定して、
次の勧告(引用に際しては、千九百六十四年の衛生(商業及び事務所)勧告と称することができる。)を千九百六十四年七月八日に採択する。
Ⅰ 適用範囲
1 この勧告は、公私を問わず、次のすべてのものに適用する。
(a) 商業事業所
(b) 労働者が主として事務労働に従事する事務所、団体又は行政機関(自由職業に従事する者の事務所を含む。)
(c) 労働者が主として商業又は事務労働に従事するその他の事業所、団体又は行政機関の部門。ただし、当該部門が2に掲げる事業所に含まれず、かつ、工業、鉱業、運送業又は農業における衛生に関する国内の法令又は規則の適用を受けない場合に限る。
2 この勧告は、また、次のものに適用する。
(a) 個人的役務を提供する事業所、団体又は行政機関
(b) 郵便施設又は電気通信施設
(c) 新聞企業又は出版企業
(d) ホテル及び下宿
(e) レストラン、クラブ、カフェー及び他の飲食店
(f) 劇場、公衆娯楽場及び他のレクリエーション施設
3(1) 必要な場合には、この勧告が適用される事業所、団体又は行政機関と他の事業所とを区別するため、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、適当な措置が執られるべきである。
(2) いずれかの事業所、団体又は行政機関についてこの勧告が適用されるものであるかどうか疑わしい場合には、その問題は、権限のある機関が関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で解決するか、又は国内の法令及び慣行に合致する他のなんらかの方法により解決すべきである。
Ⅱ 適用方法
4 この勧告の規定は、国内の事情及び慣行が異なつていることを考慮して、次のいずれかにより実施することができる。
(a) 国内法令
(b) 労働協約、又は関係のある使用者と労働者とが合意する他の方法
(c) 仲裁裁定
(d) 権限のある機関が関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で承認する他の方法
Ⅲ 維持及び清潔
5 作業が行なわれ、労働者が通行し、又は労働者のための衛生施設その他の共同施設が存在するすべての場所及びそれらの場所にある設備は、適正に維持されるべきである。
6(1) 前記のすべての場所及び設備は、清潔に保たれるべきである。
(2) 特に、次のものは定期的に清掃すべきである。
(a) 床、階段及び通路
(b) 採光用の窓及び人工照明源
(c) 壁、天井及び設備
7 清掃は、
(a) できる限り粉じんをたてない方法により、かつ、
(b) 作業時間外に行われるべきである。ただし、特別の事情がある場合又は作業時間中の清掃が労働者の不便とならないように行なうことができる場合は、この限りでない。
8 更衣室、便所、洗面台及び、必要なときは、労働者のための他の共同施設は、定期的に清掃し、かつ、消毒すべきである。
9 不快、有毒若しくは有害な物質を発し又は伝染源となるおそれのあるすべての廃物及びくずは、権限のある機関が承認する基準に従つて、できる限り早期に、無害にし、除去し、又は隔離すべきである。
10 他の廃物及びくずについても、除去及び処分のための措置を執るべきであり、また、その廃物及びくずのための十分な数の容器を適当な場所に備えるべきである。
Ⅳ 換気装置
11 作業が行なわれ、又は労働者のための衛生施設その他の共同施設が存在するすべての場所には、新鮮な又は浄化された空気を供給する十分なかつ適当な自然的若しくは人工的又はその双方の換気装置を備えるべきである。
12 特に、
(a) 自然的又は人工的な換気を確保する装置は、作業の性質及び条件を考慮して、一人当たり毎時十分な量の新鮮な又は浄化された空気を作業場所に取り入れるように設計すべきである。
(b) 作業中に発生するフューム、粉じんその他の不快な又は有害な不純物をできる限り除去し又は無害にするための措置を執るべきである。
(c) 固定作業部署における空気の流通の通常の速度は、そこで作業する者が健康をそこない又は不快を感ずるものであつてはならない。
(d) 密閉されている建物における空気の適当な湿度水準を維持するため、可能でありかつ必要な事情がある限り、適当な措置を執るべきである。
13 一の作業場の全体又は大部分に空気調節装置が施されている場合には、非常用の自然的又は人工的の換気装置を備えるべきである。
Ⅴ 照明
14 作業が行なわれ、労働者が通行し、又は労働者のための衛生施設その他の共同施設が存在するすべての場所の照度は、その場所が使用される可能性のある間、自然の光若しくは人工的照明又はその双方により十分かつ適当なものとすべきである。
15 特に、次のことのため実行可能なすべての措置を執るべきである。
(a) 次のものにより視覚上の快適さを確保すること。
(i) 自然の採光のための適当に配置された十分な大きさの窓
(ii) 人工的照明の慎重な選択及び適当な配置
(iii) 建物及びその設備の色彩の慎重な選択
(b) まぶしさ、光と影との過度の対照、光の反射及び過度の直射光による不快感及び不調を防止すること。
(c) 人工的照明が用いられるときは有害な明滅を除去すること。
16 十分な自然の採光が合理的に可能であるときは、自然の採光を優先して用いるべきである。
17 異なる種類の作業及び建物並びに各種の職業に対する自然の採光又は人工的照明の適当な基準は、権限のある機関が定めるものとする。
18 多数の労働者又は来訪者が集まる建物には、非常用の照明を備えるべきである。
Ⅵ 温度
19 作業が行なわれ、労働者が通行し又は労働者のための衛生施設その他の共同施設が存在するすべての場所には、作業の性質及び気候を考慮して、できる限り最良の状態の温度、湿度及び空気の流通を維持すべきである。
20 いかなる労働者も、極端な温度の中で常時労働することを要求されるべきでない。権限のある機関は、気候並びに事業所、団体又は行政機関の種類及び作業の性質を考慮して、温度の最高基準若しくは最低基準又はその双方を定めるものとする。
21 いかなる労働者も、健康に害があると権限のある機関が認める急激な温度の変化を伴う条件の下で、常時労働することを要求されるべきでない。
22(1) いかなる労働者も、健康に害があると権限のある機関が認める大量の熱の放出又は周囲の空気の極度の冷却を伴う設備のすぐ近くで常時労働することを要求されるべきでない。ただし、適当な調節措置が執られ、労働者がこれらの熱の放出又は冷却にさらされる時間が減少され、又は労働者が適当な保護設備若しくは保護衣を供給される場合は、この限りでない。
(2) 大規模に取り入れられる冷気又は熱(太陽熱を含む。)から労働者を保護するため、固定式又は移動式の幕、転向装置その他適当な装置を備え、かつ、使用すべきである。
23(1) いかなる労働者も、適当な保温方法を利用することができない限り、健康に有害と思われるような低温の戸外の売店で労働することを要求されるべきでない。
(2) いかなる労働者も、高温に対する適当な保護方法を利用することができない限り、健康に有害と思われるような高温の戸外の売店で労働することを要求されるべきでない。
24 建物の空気中に有害な又は不快なフュームを発するおそれのある暖房方法又は冷房方法を使用することは、禁止すべきである。
25 作業が極度の低温又は高温の中で行なわれるときは、労働者のために、労働時間を短縮し、労働時間に含められる休憩を与え、又はその他適当な措置を執るべきである。
Ⅶ 作業区域
26(1) すべての作業場の設置及び作業部署の配置は、労働者の健康に有害な影響を及ぼさないようにすべきである。
(2) 各労働者は、健康に対する危険なしに作業を行なうことができるように、妨害物のない十分な広さの作業区域を有すべきである。
27 権限のある機関は、次のものを定めるものとする。
(a) 周囲を囲まれた建物の中で常時労働する各労働者に対してその建物内で割り当てられる床面積
(b) 周囲を囲まれた建物の中で常時労働する各労働者に対してその建物内で割り当てられる最低限度の気積
(c) 作業が常時行なわれることとなる周囲を囲まれた新築の建物の最低限度の高さ
Ⅷ 飲料水
28 十分な量の衛生的な飲料水又は他の飲料を労働者に供給すべきである。水道による飲料水の供給が可能であるときは、これを優先させるべきである。
29(1) 飲料水は認められた他の飲料を供給するために使用される容器は、
(a) 密閉し、及び場合によりじや口をつけるべきである。
(b) 内容物の性質を明示すべきである。
(c) バケツ、おけ又は他の上部が広く開いている容器(ふたがあるとないとを問わない。)で液体をくみ出すために器具を入れることができるものを除くべきである。
(d) 常に清潔に保つべきである。
(2) 十分な数の容器を備えるべきであり、また、清潔な水でそれらを洗うための設備を設けるべきである。
(3) コップの共用は、禁止すべきである。
30(1) 飲料水の供給のために公に認められた水源から供給されない水は、権限のある保健機関がその供給を認め、かつ、定期的に検査を行なわない限り、飲料水として供給すべきでない。
(2) 公に認められた地方供給機関が行なう供給方法以外の供給方法は、承認を受けるため権限のある保健機関に通告すべきである。
31(1) 飲用に適しない水の供給は、くみ出す箇所にその旨を表示すべきである。
(2) 飲料水系統と飲用に適しない水の系統との間に相互連絡(直接であると間接であるとを問わない。)があるべきでない。
Ⅸ 洗面台及びシャワー
32 労働者の使用のため十分なかつ適当な洗浄施設を適当な場所に設け、かつ、適正に維持すべきである。
33(1) これらの施設は、可能な最大限度において、洗面台(必要なときは湯を供給するものとする。)及び作業の性質により必要とされるときは湯を供給するシャワーを含むべきである。
(2) 石けんを労働者の使用に供すべきである。
(3) 作業の性質により必要とされるときは、適当な産品(洗浄剤、特別のクレンジング・クリーム、化粧粉等)を労働者の使用に供すべきである。健康に害のある産品を身体を清潔にするために使用することは、禁止すべきである。
(4) なるべく個人別のタオルその他適当な乾燥方法を労働者の使用に供すべきである。使用ごとに新しい清潔な部分を提供しないタオルの共用は、禁止すべきである。
34(1) 洗面台及びシャワーに供給される水は、健康上の危険を招くものであつてはならない。
(2) 洗面台及びシャワーに使用される水が飲用に適しないときは、その旨を明示すべきである。
35 男子及び女子には別個の洗浄施設を設けるべきである。ただし、きわめて小規模の事業所であつて、権限のある機関の承認を得て共同施設を設けることができるものについては、この限りでない。
36 洗面台及びシャワーの数は、権限のある当局が労働者の数及び作業の性質を考慮して定めるものとする。
Ⅹ 衛生施設
37 労働者の使用のため、十分なかつ適当な衛生施設を適当な場所に設け、かつ、適正に維持すべきである。
38(1) 衛生施設には、十分なプライヴァシーを確保するように仕切りを設けるべきである。
(2) 衛生施設には、できる限り、水洗設備、トラップ、トイレット・ペーパーその他の衛生設備を整えるべきである。
(3) 女子用衛生施設には、ふた付きの適切に設計された容器その他焼却器のような適当な処理設備を備えるべきである。
(4) できる限り、衛生施設の近くに十分な数の利用しやすい洗面台を設けるべきである。
39 男子及び女子には、別個の衛生施設を設けるべきである。ただし、五人以下の者又は使用者の家族のみが雇用されている事業所について権限のある機関の承認を得たときは、この限りでない。
40 男子用の便所及び小便所並びに女子用の便所の数は、権限のある機関が労働者の数を考慮して定めるものとする。
41 衛生施設は、十分に換気されるべきであり、また、妨害を避けるような位置に設けるべきである。衛生施設は、作業場、休憩室又は食堂と直接に接していてはならず、控室又は空き地によつてそれらから隔てられていなければならない。戸外にある衛生施設への通路には、屋根を設けるべきである。
ⅩⅠ 座席
42 十分なかつ適当な座席を労働者のために設けるべきである。労働者は、それを使用する合理的な機会を与えられるべきである。
43 作業部署は、可能な最大限度において、立つたまま作業をする労働者が作業の性質上支障がないときはすわつてその任務を遂行することができるように配置すべきである。
44 労働者に提供される座席は、快適な型及び大きさのものであり、作業に適し、かつ、労働者の健康のためによい作業姿勢を保つことを容易にするものでなければならない。必要なときは、同じ目的のために足台を設けるべきである。
ⅩⅡ 衣料設備及び更衣室
45 労働に当たつて着用しない衣類の着替え、保管及び乾燥のため、ハンガー、戸だな等の適当な施設を設け、かつ、適正に維持すべきである。
46 労働者の数及び作業の性質により必要とされるときは、更衣室を設けるべきである。
47(1) 更衣室には、次のものを備えるべきである。
(a) 適当に通風される個人用戸だなその他十分な大きさの適当な容器でかぎをかけることができるもの
(b) 十分な数の座席
(2) 汚染し、ひどくよごれ又はしみのつくおそれのある作業衣を着用する必要がある仕事に労働者が従事する場合には、通勤用衣服と作業衣とを区別する仕切りを設けるべきである。
48 男子及び女子には、それぞれ別個の更衣室を設けるべきである。
ⅩⅢ 地下の建物及び類似の建物
49 作業が常時行なわれる地下の又は窓のない建物は、権限のある機関が定める適当な衛生基準に適合すべきである。
50 労働者は、事情が許す限り、地下の又は窓のない建物の中で常時労働することを要求されるべきでなく、交替で労働すべきである。
ⅩⅣ 不快、不健康又は有毒な物質、工程及び技術
51 労働者は、適当なかつ実行可能な措置により、不快、不健康若しくは有毒な又はなんらかの理由により有害な物質、工程及び技術から保護されるべきである。
52 特に、
(a) 不快、不健康若しくは有毒でなく若しくはなんらかの理由により有害でないか又はより少なく不快、不健康若しくは有毒な若しくはなんらかの理由によりより少なく有害な物質、工程及び技術をもつて前記の物質、工程及び技術に替えるため、すべての適当なかつ実行可能な措置を執るべきである。
(b) 権限のある機関は、(a)に規定する代替措置並びに、小売に関して、有害な影響を受けない工程、技術及び容器の使用を奨励し、かつ、勧告すべきである。
(c) (a)に規定する代替措置が不可能なときは、密閉、隔離、換気等の工学的な管理方法を使用すべきである。
(d) 不快、不健康若しくは有毒な又はなんらかの理由により有害な物質を管理し又は除去する設備は、常によく手入れをしておくべきである。
(e) 不快、不健康若しくは有毒な又はなんらかの理由により有害な物質がくつがえり、こぼれ、発散し又は飛散することから生ずる危険に対して労働者を保護するため、すべての適当なかつ実行可能な措置を執るべきである。
(f) 有毒な又はなんらかの理由により有害な物質を取り扱うときは、喫煙し、飲食し、又は化粧することを禁ずべきである。労働者の使用する食物、飲料、たばこ又は化粧品は、これらの物質による汚染にさらすべきでない。
53 危険な物質を包有する容器には、次のものを附さなければならない。
(a) 公認された国際基準に従う危険標識で必要なときはその危険の性質を定めたもの
(b) 当該物質の名称又は当該物質を識別する表示
(c) 可能な限り、当該物質が健康に害を与え又は身体を損傷した場合に施すべき救急措置の詳細を示した必要な注意事項
54(1) 51及び52の規定に従つて執られた措置にかかわらず、行なわれる作業が著しく不潔であるとき、又は不健康、有毒若しくはなんらかの理由により有害な工程、技術若しくは物質の使用若しくは取扱いを含むときは、労働者は、その危険の程度及び性質に応じて保護衣その他必要な個人用の保護用具若しくは保護装置により十分に保護されるべきである。
(2) 前記の保護衣、用具及び装置は、作業の性質に応じて一又は二以上のコート、仕事着、エプロン、眼鏡、手袋、帽子、ヘルメット、マスク、履物(はきもの)、保護クリーム及び特殊パウダーを含むものとする。
(3) 権限のある機関は、必要なときは、個人用の保護用具及び保護装置の効率の最低基準を定めるものとする。
(4) 特別公衆保健措置又は労働者の健康の保護のために保護衣その他個人用の保護用具又は保護装置の作業時における使用が必要であるときは、これらの保護衣、用具及び装置は、使用者の経費負担で供給され、清潔にされ、及び維持されるべきである。
55 不健康若しくは有毒な又はなんらかの理由により有害な物質、工程又は技術の影響が個人用の保護用具又は保護装置の使用により完全には除去されないときは、権限のある機関は、必要に応じ補足的な保護措置を執ることを勧告するものとする。
56(1) 必要なときは、権限のある機関は、前記の物質、工程及び技術を含む作業に就業するための最低年齢を定めるものとする。
(2) 権限のある機関は、不健康若しくは有毒な又はなんらかの理由により有害な物質の影響を受ける労働者の健康診断(最初のもの及び定期的のもの)について定めるものとする。
ⅩⅤ 騒音及び震動
57(1) 労働者に有害な影響を及ぼすおそれのある騒音(音の発生を含む。)及び震動は、適当かつ実行可能な措置により、できる限り減少すべきである。
(2) 次のことについて特別の注意を払うべきである。
(a) 機械並びに音を発生する設備及び装置により生ずる騒音及び震動を実質的に減少すること。
(b) 減少することができない騒音又は震動の根源を密閉し、又は隔離すること。
(c) 音の発生(音楽的な音の発生を含む。)の強度及び持続時間を減少すること。
(d) 仕事場、昇降機、コンベアー又は街の騒音から事務所を隔離するため、適当なときは、防音装置を施すこと。
58 57(2)に規定する措置が有害な影響を完全に除去するために不十分である場合には、
(a) 労働者は、有害な影響を与えるおそれのある音の発生にさらされるときは、適当な耳栓(せん)を支給されるべきである。
(b) 有害な影響を与えるおそれのある音の発生及び震動にさらされる労働者は、そのような音の発生及び震動から隔離された建物の中で、労働時間に含められる定期的休憩を与えられるべきである。
(c) 必要なときは、作業の割当て及び交替の制度を適用するものとする。
ⅩⅥ 作業の方法及び速度
59 作業方法は、できる限り、衛生の要件並びに労働者の身体上及び精神上の健康並びに快適な気分に適応したものとすべきである。
60 なかんずく、作業の機械化又は作業促進の方法が、注意の集中又は迅速な動作の必要上労働者に対する有害な影響、特に医学的に認めうる不調の原因となる身体又は神経の疲労を生ずるおそれのある作業速度を課することがないようにするため、適当な措置を執るべきである。
61 労働条件により必要とされるときは、権限のある機関は、60に規定する作業に就業するための最低年齢を定めるものとする。
62 有害な影響を避け又はそれを可能な最大限度において制限するため、労働時間に含められる休憩又は可能なときは作業の割当て及び交替の制度を設けるべきである。
ⅩⅦ 救急措置
63 この勧告が適用されるすべての事業所、団体若しくは行政機関又はそれらの部門は、その規模及び危険の可能性を考慮して次のいずれかのことを行なうべきである。
(a) 自己の診療所又は救急施設を維持すること。
(b) 他の事業所、団体若しくは行政機関又はそれらの部門と共同で診療所又は救急施設を維持すること。
(c) 一又は二以上の救急用の戸だな、箱又は用具を備えること。
64(1) 63に規定する診療所、救急施設、戸だな、箱又は用具の設置は、権限のある機関が労働者の数及び危険の性質を考慮して決定するものとする。
(2) 救急用の戸だな、箱又は用具の内容は、殺菌された状態に保ち、かつ、適正に維持すべきであり、また、少なくとも毎月一回点検すべきである。これらの戸だな、箱又は用具は、その点検の時に又は、必要なときは、使用直後に補充すべきである。
(3) 救急用の戸だな、箱又は用具は、それぞれ、緊急の場合に施す救急措置及び65の規定に従つて指定された者の氏名に関する簡単かつ明りような注意書きを包有すべきであり、そのすべての内容品には、慎重にラベルをはるべきである。
65 診療所、救急施設、戸だな、箱又は用具は、常に、容易に近づき、かつ、見出すことができなければならず、また、指名された者であつて、権限のある機関が定めるところに従つて救急措置を施すことができるものの管理の下に置くべきである。
ⅩⅧ 食堂
66 権限のある機関が定める場合には、労働者のために食堂を設けるべきである。
67(1) 食堂には、十分な数の座席及びテーブルを備えるべきである。
(2) 食堂の中に又はそのすぐ近くに、食物を暖める設備、冷い飲料水及び湯を備えるべきである。
(3) ふた付きのくず入れを備えるべきである。
68(1) 食堂は、有害な物質にさらされるいかなる場所からも隔離すべきである。
(2) 汚染した作業衣の食堂における着用は、禁止すべきである。
ⅩⅨ 休憩室
69(1) 労働者が時間中に一時的休憩をとるために別の施設を利用することができない場合において、作業の性質その他の関連のある条件及び事情を考慮して、望ましいときは、休憩室を設けるべきである。特に、休憩室は、女子の労働者、労働時間中に一時的休息を必要とする特に困難な若しくは特別の作業に従事する労働者又は断続的な交替制で雇用される労働者の必要を満たすために設けるべきである。
(2) 適当なときは、権限のある機関は、雇用の条件及び事情のため望ましいと認める場合に休憩室を設けることを要求する権限を国内の法令により与えられるものとする。
70 このようにして設けられた施設は、少なくとも次のものを含むべきである。
(a) 冷気又は熱から生ずる不快さを除去するため気候に適した措置が執られている室
(b) 十分な換気及び照明
(c) 十分な数の適当な座席設備
ⅩⅩ 計画及び構造
71 この勧告が適用される事業所、団体若しくは行政機関又はそれらの部門として使用するための新しい建築物の計画並びに事業所、団体若しくは行政機関又はそれらの部門として使用するために既存の建築物の中に設けられる新しい施設でその既存の建築物に実質的な変更を加えるものの計画は、可能な最大限度においてこの勧告の規定に従うべきであり、また、国内法令に定めがある場合には事前の承認を得るため権限のある機関に提出すべきである。
72 前記の計画は、特に次のものに関する十分な資料を含むべきである。
(a) 作業場、通路、出口、非常口及び衛生施設の位置
(b) 作業場、非常口、戸及び窓の大きさ(窓の下わくの高さについての詳細を含む。)
(c) 床、壁及び天井の種類
(d) 労働者の健康、安全又は快適感に悪影響を及ぼすおそれがある量の熱、蒸気、ガス、粉じん、臭気、光、騒音又は震動を発生することがある機械及び施設並びにこれらの要因に対処するために提案される措置
(e) 使用される暖房及び照明の種類
(f) 機械的換気装置
(g) 防音装置、防湿装置及び温度調節装置
73 権限のある機関は、この勧告が適用される事業所、団体若しくは行政機関又はそれらの部門にこの勧告の規定に従うために必要な変更を加えるための合理的な期間を与えるものとする。
74 できる限り、床は、健康上の危険を与えないように建造しかつ張るべきであり、また、壁、天井及び設備も、そのように建造すべきである。
75 十分な避難施設を設け、かつ、適正に維持すべきである。
ⅩⅩⅠ 疾病の蔓延に対する措置
76(1) この勧告が適用される事業所、団体若しくは行政機関又はそれらの部門で働く人の間及び労働者と公衆との間における伝染性の疾病の蔓延を防止するため、措置を執るべきである。
(2) 前記の措置は、特に次のものを含むべきである。
(a) 集団的又は個別的な技術上及び医学上の予防措置(伝染病予防及びこん虫、げつ歯類動物その他の有毒動物に対する措置を含む。)
(b) 医学的監督措置
ⅩⅩⅡ 衛生措置についての教育
77 労働者が労働時間中に執るよう要求される衛生措置についての必要な基礎的知識を労働者及び使用者に与えるため、措置を執るべきである。
78(1) 労働者は、特に次のことを知らされるべきである。
(a) 労働者が取り扱い又は使用するよう要求される有害な物質(これらの製品が関係事業所において使用されることの少ない場合を含む。)に特有の健康上の危険
(b) 衛生及び保護のために設けられた設備及び装置を正しく使用することの必要性
(2) 衛生に関する完全な情報が労働者が理解しうる言語で与えられないときは、労働者は、少なくとも、重要な用語、表現及び記号の意味を、理解しうる言語で知らされるべきである。
ⅩⅩⅢ 衛生の分野における協力
79(1) 権限のある機関、使用者及び労働者は、作業に関連して労働者の衛生を確保するため、相互間の連絡を確立すべきである。
(2) 権限のある機関は、この勧告の規定を実施するに当たり、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と、また、これらが存在しないときは、関係のある使用者及び労働者の代表者と協議すべきである。
80(1) 権限のある機関は、作業に関連して労働者の衛生を確保するための措置の研究を奨励し、また、必要なときは、みずからその研究を行なうものとする。
(2) 権限のある機関は、作業に関連して労働者の衛生を確保するための措置に関する文書を広く配付するものとする。
(3) 権限のある機関は、この勧告において取り扱うすべての問題に関する十分な情報及び助言を与えるものとする。
81(1) 事業所、団体若しくは行政機関又はそれらの部門において、権限のある機関が危険度を考慮して望ましいと認めるときは、少なくとも一人の衛生問題担当の代表又は職員を指定すべきである。
(2) 衛生問題担当の代表又は職員は、労働者の健康に対する危険を除去するに当たり、使用者及び労働者と密接に協力すべきであり、このため、特に使用者及び労働者の代表者と連絡を保つべきである。
(3) 事業所、団体若しくは行政機関又はそれらの部門において、権限のある機関が危険度を考慮した上で望ましいと認めるときは、衛生委員会を設立すべきである。
(4) 衛生委員会は、特に労働者の健康に対する危険を除去するため努力すべきである。
82 権限のある機関は、関係のある使用者及び労働者又はそれらの代表的な団体と協力して、作業から生ずるおそれのある疾病に関する情報を集め、かつ、これらの疾病を生じさせる原因及び条件を除去する措置を改善するため、調査を行なうものとする。
83 衛生に関する法令その他の規定の効果的な適用を確保するため、十分な監督その他の方法により適当な措置が執られるべきである。
84 この勧告を実施する方法に適する場合には、その規定の実施を確保するため、処罰の形式による必要な措置が執られるべきである。