企業による団体交渉権の擁護
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団体交渉は、労働条件や雇用条件、労使関係や労使団体の関係について建設的に議論を行う場です。多くの場合、国による規制よりも効果的で柔軟な対応が可能となります。また、将来起こり得る問題を予測するのに役立つとともに、そうした問題に取り組むための平和的な仕組みを前進させることができます。さらに、労使双方の優先課題とニーズを踏まえた解決策を見出す助けにもなります。健全な団体交渉は労使双方に利益をもたらし、平和と安定を促進することで広く社会全体の利益にもつながります。加えて、ガバナンスの対象である労働者に直接影響する決定の場に労働者本人が関与することで同意が深まるため、団体交渉はガバナンスの重要な制度になり得ます。
団体交渉は労働条件を定め、使用者、労働者、および労使団体間の関係を規定し、労働協約を締結するために行われる自主的なプロセスです。その優れている点は、争議と対立ではなく対話と合意を通じて問題を解決するというところにあります。
結社の自由と団体交渉権の行使によって対立ではなく建設的な対話の機会が生まれ、企業やその利害関係者、ひいては社会全体に恩恵をもたらす解決策に注力することができます。
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2009年に開催されたILOの団体交渉に関するハイレベル三者会議(High level Tripartite Meeting on Collective Bargaining)では、団体交渉に関して数多くの重要な利点が明らかにされました。
企業にとっての団体交渉の利点
- 団体交渉のプロセスにおいて労使双方がその利益を主張することで共通の利益が明らかになり、異なる利益の間でバランスを取りつつ妥協点を見つけるために交渉することができます。労働時間を例に取ると、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を実現するという労働者側の利益と、労働時間を柔軟に配分して超過勤務による費用を削減するという使用者側の利益の釣り合いを取るために団体交渉が行われている国もあります。誠実に交渉を行うことで団体交渉の成果が公正であると見なされる可能性が高まり、また、個別の交渉や一方的な契約よりも公平性が高まります。このことは、労働者の意欲や安定性、生産性の点で企業に恩恵をもたらす一方、労働者にとっても賃金や労働条件が改善されるという利点があります。
- 労働者は団体交渉を通じて賃金の形で生産性向上の分配をより多く受け取るという傾向があります。それが企業内での協力を促進し生産性の向上につながり、経済全体の需要の拡大にも貢献することになります。
- 労使が合意する制度化された紛争対処法が団体交渉を通じて確立され、労使関係の風土が改善します。労働協約にはその有効期間内に適用される平和条項(争議行為を行う前に必要とされる手続きを定めた条項)が設けられ、苦情処理手続きが整備されることがあります。こうした取り組みにより、労使関係の安定化や健全化が進みます。
- 団体交渉は、労使関係を統制する規則に正当性を与えます。労働条件と雇用条件について交渉が行われた場合、労使が合意した規則が順守される可能性が高くなります。
- また、労働協約をきめ細かに設定して、特定の業界や企業の状況に応じて雇用関係を規律することが可能になります。その業界や職場に特有の問題を解決できるようにもなります。さらに、景気低迷時や技術的・組織的な変革を行う際に企業の適応能力が向上し、労働者をリスクから守り、望まれる結果を実現できるようになるような項目が団体交渉で取り上げられることも知られています。
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労働者が団体交渉を行うために組織を結成する、またはこれに加入する権利は、使用者が労働組合の承認や団体交渉への参加を拒否する場合には実現できなくなります。
また、労働協約の策定を支援するために必要に応じて便宜を供与することも有益です。便宜の具体例としては、賃金の減少や社会保障などの福利厚生の喪失を伴うことなく代表としての職務を遂行したり、労働組合の会合に出席したりするために必要な休暇を労働者の代表に与えることが挙げられます。
団体交渉が効果的に機能するためには、両当事者が誠実な姿勢で参加することが求められます。そのため、有意義な交渉を行うために必要な情報を労働者の代表に対して提供することも必要です。これは、労働者の代表が自社の業績に関して正しく公正な見解を持つために必要な情報を指します。 -
企業は次のようなさまざまな場面で措置を講じることが可能です。
職場での対応
- 効果的な団体交渉の実施を支援するために、労働者の代表に適切な便宜を供与する
- 団体交渉を目的として、労働者を代表する組織を承認する
- 有意義な交渉を行うために必要な情報を提供する
便宜の具体例としては、賃金の減少や社会保障などの福利厚生の喪失を伴うことなく代表としての職務を遂行したり、労働組合の会合に出席したりするために必要な休暇を労働者の代表に与えることが挙げられます。
労働者が団体交渉を行うために組織を結成する、またはこれに加入する権利は、使用者が労働組合の承認や団体交渉への参加を拒否する場合には実現できなくなります。
これは、労働者の代表が自社の業績に関して正しく公正な見解を持つために必要な情報を指します。
団体交渉における対応
- 団体交渉における使用者側の実質的な意思決定権者と接触する機会を労働組合の代表に提供する
- 誠実に交渉する
- リストラや訓練、余剰人員解雇の手続き、安全衛生上の問題、苦情申し立てと紛争解決の手続きや懲戒規則を含め、労使双方にとって重要なあらゆる問題の解決その他のニーズに対処する
団体交渉が効果的に機能するためには、両当事者が誠実な姿勢で参加することが求められます。
事業を展開する地域社会での対応
- 特に労働組合の承認や団体交渉のための適切な制度的・法的枠組みのない国では、労使関係の風土を改善させるための対策を講じる
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ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)では、企業は「1998年の『労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言』の実現に貢献すべき」としています[1] 。この1998年の宣言では、結社の自由や団体交渉権を尊重することの重要性に加えて、児童労働や強制労働、差別撤廃、安全で健康的な労働環境に関する「中核的労働基準」を取り上げています。また、多国籍企業宣言では、企業は「国内法及び受諾した国際的義務に従いながら、その自由になした約束を尊重すべき」としています[2]。サプライチェーン内で団体交渉権の承認を奨励することは、1998年の宣言の実現に貢献する有効な手段となり得ます。
さらに労使関係に関する章では、労使双方の代表が賃金の規定と雇用条件に関して労働協約を通じた交渉を行うことの重要性について、「多国籍企業に雇用される労働者は、国内法令及び慣行に従い、自ら選んだ代表的団体が団体交渉を目的として承認される権利を持つべきである」と説明しています[3]。
誠実性という要素は、団体交渉のプロセスにおいて重要な側面です。誠実に交渉を行うことの狙いは、双方が受け入れられる労働協約を成立させることにあります。成立しない場合には紛争解決手続きを利用することが可能であり、調停、あっせんや仲裁が行われます。
多国籍企業宣言は国際労働基準に根差し、多国籍企業と国内企業の双方に適用できる原則に関連した政労使による国際的な合意を反映しており、全ての関係者にとって奨励される慣行を提示するものとして見なされています。
政府には団体交渉権を保護する責任があります。「労働協約の手段により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者または使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続きの十分な発達及び利用を奨励し、かつ促進するため、国内事情に適する措置がとられるべき」です[4]。
[1] 多国籍企業宣言、第9項。
[2] 同上、第8項。
[3] 同上、第55項。
[4] 同上、第56項。
労使関係の成熟した制度
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結社の自由や団体交渉権のような基本的な労働者の権利を尊重しないと、2つの側面で企業の機能に重大な影響が出る可能性があります。職場の風土への直接的な影響と、企業イメージへの影響です。
労働者の意欲と忠誠心:権利の行使を否定されると、労働者の勤務意欲は確実に低下し、そうした権利を享受している者と比較して使用者に対する忠誠心は低くなります。
労使関係と生産性:結社の自由や団体交渉権を尊重することは良好な労使関係のために重要であり、物品やサービスの生産が効率的に行われるためには、ある程度は協調的な労使関係が必要です。
リスク管理:安定した、生産的な事業活動のためには、予測可能性が確保されていることが不可欠です。労働者の基本的な権利を否定すると労働争議が起き、それに伴い生産活動が中断し、企業業績や地域コミュニティーとの関係に負の影響をもたらすことがあります。
評判とブランドイメージ:企業イメージはその企業にとって最も価値のある財産の1つであり、基本的権利を侵害したとの申し立てがあると企業イメージが著しく損なわれる可能性があります。広範囲にわたるサプライチェーンを持つ多国籍企業の場合、取引先のたった1社でもそうした侵害が起こるとブランドイメージの損害が生じ、利益と株価に大きな影響を及ぼします。
株主の懸念:最近では、ますます多くの投資家が投資先を決定する際に社会的な評価基準を用いるようになっています。通常、こうした基準には結社の自由や団体交渉権など労働における基本的原則や権利が含まれます。 -
ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)は、成熟した労使関係を構築する上で非常に有用な枠組みを企業に提供しています。
国際労働基準に根差し、雇用や訓練、労働条件・生活条件、労使関係などの分野に関する政労使の国際的な合意を反映しています。
同宣言が定める原則は多国籍企業と国内企業の双方に適用され、全ての関係者に奨励される慣行を反映しています[1]。
労使関係に関する章では、成熟した労使関係における以下の5つの要素を定めています。
- 1. 結社の自由および団結権を承認する重要性
- 2. 団体交渉の推進
- 3. 協議とコミュニケーション
- 4. 苦情の審査・解決手続き
- 5. 労働争議の解決手続き
各要素の詳細
1. 結社の自由および団結権を承認する重要性
企業に雇用されている労働者は、誰であれ自ら選んだ組織を設立する、またはこれに加入する権利を有しており、その際に使用者や経営者または政府当局から干渉されることがあってはなりません[2]。
また、労働者の結社の自由には、労働組合への参加に関する差別的行為からの保護も含まれます[3]。
当該企業の機能が害されない限り、労働者の代表が協議や意見交換のために会合を開くことを妨げられることがあってはなりません[4]。
また、当該企業の規模や体制を踏まえつつ、労働者の代表には迅速かつ効率的に職務を遂行できるように便宜を供与すべきです[5]。
2. 団体交渉の推進
国内法令や慣行に従い、労使双方の代表が労働協約に基づき賃金の規定や雇用条件に関して自主的に交渉できるような措置を講じるべきです[6]。
労働者には、団体交渉を行うために代表を選出する権利があります[7]。交渉プロセスへの本格的な参加を助けるため、労働者の代表には交渉の準備を行えるように便宜を供与しなければなりません[8]。
交渉を有意義なものとするために、交渉に参加する経営陣の代表は交渉事項に関する決定権限を有する者であるべきです[9]。
交渉の場において威嚇や脅しがあってはなりません。
有意義な交渉を行うために、労働者の代表に必要な情報を提供すべきです。これは、労働者の代表が自社の業績に関して正しく公正な見解を持つために必要な情報を指します[10]。
労働協約には、その解釈や適用をめぐって生じる紛争を解決し、権利と責任が相互に尊重されるようにするための仕組みを盛り込むべきです[11]。
3. 協議とコミュニケーション
労使およびその代表者間で、双方の関心事項についての定期的な協議を行うための機構に合意するべきです[12]。
しかし、協議は団体交渉に代わるものと見なしてはなりません。
協議とは、特に雇用に影響しかねない提案がなされている場合に、企業として下される決定に労働者とその代表が影響を及ぼす機会を確保するために意見交換や情報交換を誠実に行うことなどを指します[13]。
コミュニケーションの方針を定める場合には、従業員の規模、構成や関心事項に沿った内容にするべきです[14]。
コミュニケーションは次の関係者の間で真摯に、定期的に、双方向的に行わなければなりません。
- (a) 経営陣の代表(社長、部長、職長など)と労働者
- (b) 社長、人事部長その他経営幹部の代表と、労働組合の代表または国内の法律や慣行、もしくは労働協約に基づき全社的に労働者を代表することが認められた者
経営者が労働者の代表を通じて情報提供を行うことを希望する場合、経営者は関係する労働者に情報を迅速かつ完全に伝達する手段を労働者の代表に与えなければなりません。
伝達する情報と伝達方法は、企業活動の複雑性から生じる問題の相互理解のために決定するべきです。
経営者から提供される情報は、当該情報の開示が両当事者に損害を与えない限り、事業活動や将来の見通し、さらに現在および将来の自らの状況に関する労働者の関心事項を可能な限り全て網羅するべきです。
情報の具体的な内容[15]
- (a) 雇入れ、配置転換や雇用の終了を含む一般的な雇用条件
- (b) 職務内容およびそれら職務の組織内における位置付け
- (c) 企業内での訓練の機会や昇進の見通し
- (d) 一般的な労働条件
- (e) 労働安全衛生に関する規則と事故や職業性疾病の予防を目的とした指示
- (f) 苦情審査手続きとその運用に関する規則・実務および苦情を申し立てる際の条件
- (g) 従業員の福利厚生(医療や保健、食堂、住宅、余暇、貯蓄、社内金融など)
- (h) 企業内の社会保障制度または社会扶助制度
- (i) 労働者が企業に雇用されていることで適用を受ける国の社会保障制度関連の規定
- (j) 企業の概況と将来の発展の見通しまたは計画
- (k) 企業内で労働者が置かれた状況に直接的または間接的に影響を及ぼす可能性のある決定についての説明
- (l) 経営者およびその代表と労働者およびその代表の間における協議・議論や協力の方法
労使間の交渉の対象となっているか、労働協約に盛り込まれている問題の場合、情報提供の際にその旨を明確に示すべきです。
4. 苦情の審査・解決手続き[16]
苦情や懸念を申し立てることは労働者の権利で、尊重しなければなりません。
労働者が苦情を申し立てたことで不利益を被ることがないようにするべきです。
また、苦情を申し立てるための手続きを確立するべきです。紛争を迅速に、かつ、可能な限り社内の現場に近いレベルで解決することを目指すとともに、問題が解決しない場合はさらに高いレベルに申し立てができる機会を設けなければなりません。
苦情を申し立てる手続きの確立と運用について、詳しくは1967年の苦情審査勧告(第130号)をご覧ください。
5. 労働争議の解決手続き
企業は労働者団体の代表と連携し、労使間の労働争議の予防や解決を支援するために任意調停や仲裁手続きを整備するべきです[17]。
これら5つの要素は、成熟した労使関係を構築するための枠組みとなっています。
相互理解や信頼の企業風土は、効率的な事業活動と労働者の意欲の両方にとって好環境となります[18]。ILOの多国籍企業宣言で言及されているこれらの原則を守ることは、国際労働基準に従った労使関係の構築に役立ちます。
最後に、サプライヤーにとっても、国内の労使団体とのやり取りが非常に有用となることがあります。事業を展開する国における労使関係の動向に関してはるかに詳細な情報が得られるからです。
[1] 多国籍企業宣言、第5項。
[2] 1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)、第2条。
[3] 1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)、第1条第1項。
[4] 多国籍企業宣言、第53項。
[5] 1971年の労働者代表勧告(第143号)、第9項。
[6] 多国籍企業宣言、第56項、および第98号条約、第4条。
[7] 多国籍企業宣言、第55項。
[8] 多国籍企業宣言、第57項、および1971年の労働者代表条約(第135号)。
[9] 多国籍企業宣言、第58項。
[10] 多国籍企業宣言、第61項、および1967年の企業内コミュニケーション勧告(第129号)。
[11] 多国籍企業宣言、第60項、および第135号条約、第2条。
[12] 多国籍企業宣言、第63項。
[13] 1982年の雇用終了条約(第158号)および1982年の雇用終了勧告(第166号)。
[14] 1967年の企業内コミュニケーション勧告(第129号)。
[15] 第129号勧告、第15項(2)。
[16] 多国籍企業宣言、第66項。
[17] 多国籍企業宣言、第68項。
[18] 第129号勧告、第2項。 -
団体交渉は、自主的に、自由に、誠実に行うべきものです。当事者には交渉を行う自由があり、その決定を下す上で当局による干渉があってはなりません。信義誠実の原則には、当事者が合意に達するためにあらゆる努力を尽くし、誠実に建設的な交渉を行い、正当な理由のない交渉の遅延を回避し、締結された協約を尊重してこれを誠実に適用するとともに、労働争議について議論を行い解決するための十分な時間を確保するという意味があります。多国籍企業は交渉に不当な影響力を行使することを目的として、事業部門全体またはその一部を当該国から移転するなどという脅しをかけるべきではありません。
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労働者が自ら選択する団体を自由に設立する、またはこれに加入する権利を有することは、既存の団体から独立した団体を別に結成するのが事実上可能であることを意味します。ILOの結社の自由委員会も、労働者には企業1社に対して複数の労働者団体を創設する権利があると判断しています。
さらに、労働協約に関して自主的に交渉することは結社の自由の根本的な側面であり、これには協調的な労使関係を維持するために誠実に交渉を行う義務が含まれます。使用者側も労働組合側も、誠実に交渉し、合意に達するためにあらゆる努力を尽くすべきです。偽りのない建設的な交渉は、当事者間の信頼関係を確立し維持するために欠かせません。
ただ、結社の自由があるからといって、必ずしも労働組合が自動的に交渉相手として承認されるわけではありません。特に多数の労組が存在する場合、いつ、どのような形で労働組合を団体交渉の相手として承認するべきかを決定するため、労使関係の制度内で客観的な基準をあらかじめ定めておく必要があります。
一部の企業では、組合員の数が社内労働者の一定比率以上であるかどうかに基づいて決定しています。また、職場での直接投票や、労働行政を所管する省庁や独立の法定機関など、外部の認証機関によって決定が下されることもあります[1]。
[1] さらに詳しい情報や指針については、ILOのファクトシートの“Representativity and Recognition for Collective Bargaining”をご覧ください。
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団体交渉は、1企業でも、1部門または1産業でも、中央または全国でも行うことができます。どのレベルで交渉を行うかは当事者に委ねられています。ILOの結社の自由委員会は、交渉レベルは本質的に当事者の裁量によって決定するべき問題としています。
団体交渉の対象となる事項
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ILOの結社の自由委員会は、賃金や給付、手当は団体交渉の対象となり得ると結論付けています[1]。
多国籍企業に奨励される慣行については、ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)では、類似した競合他社が存在していない発展途上国で活動する場合には、政府の政策の枠内で、「できる限りよい賃金、給付及び労働条件を提供すべき」であり、各企業の経営状態とも関係しますが、少なくとも労働者やその家族が最低限のニーズを満たすのに十分な水準であるべきだとしています[2]。
また、多国籍企業と労働者間の団体交渉の促進を本国政府および受入国政府に奨励しており、「特に発展途上国において、政府は、低所得層や低開発地域が多国籍企業の活動からできるだけ多くの利益を得ることを確保するべく適切な方策を講じるように努めるべきである」としています[3]。
さらに、「労働協約の手段により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者または使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続きの十分な発達及び利用を奨励し、かつ促進するため、国内事情に適する措置がとられるべきである」とも述べています[4]。
[1] “Compilation of decisions of the Committee on Freedom of Association”, Sixth edition; ILO, Geneva, 2018, paragraph 1291をご覧ください。
[2] 多国籍企業宣言、第41項。
[3] 同上、第42項。
[4] 同上、第56項。 -
はい、範囲内です。団体交渉は労働条件を定めるために行うもので、これにはリストラも含まれます。労働協約の具体的な内容は交渉当事者が決定するものです。ただ、企業が労働者やその雇用条件、あるいは雇用全般に影響を及ぼす可能性がある制度変更を検討している場合、一般的には協議や情報提供、さらに労働者とその代表の討議への関与に関する規定を盛り込みます。
雇用保護に関するILOのデータベースであるEPLexでは、集団解雇に関して労働者の代表と協議する法定要件について、各国の比較データが閲覧できます。
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団体交渉は自主的なプロセスであり、自由に、かつ誠実に行わなければなりません。その内容は、労働と雇用に関するあらゆる条件に及ぶほか、労使間の関係と労使団体間の関係を規定することもあります。交渉事項の内容は当事者間で決定します。ILOの結社の自由委員会は、団体交渉の対象となる事項として賃金、給付と諸手当、労働時間、年次休暇、余剰人員解雇の際の選別基準、労働協約の適用範囲、労働組合への便宜供与などを挙げています。
なお、政府が経済安定化政策を実施する場合には、例えば賃金水準に関連して交渉の対象事項を厳しく制限することもできます。しかし、こうした制限は例外的措置として必要な範囲に限って課されるべきです。
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経営者が労働者の代表と共有するべき情報の例は以下の通りです。
- 雇入れや配置転換、雇用の終了を含む一般的な雇用条件
- 職務内容およびそれら職務の組織内における位置付け
- 訓練の機会や昇進の見通し
- 一般的な労働条件
- 労働安全衛生に関する規則と事故や職業性疾病の予防を目的とした指示
- 苦情審査手続きとその運用に関する規則・実務および苦情を申し立てる際の条件
- 従業員の福利厚生(医療、食堂、住宅など)
- 社会保障制度または社会扶助制度
- 労働者に対して適用される国の社会保障制度関連の規定
- 労働者の置かれた状況に直接的または間接的に影響を及ぼす可能性のある決定についての説明
- 労使間の協議・議論や協力の方法
ストライキ権
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1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)は、ストライキ権に明示的には触れていません。しかし、結社の自由委員会を含むILOの監視機構は、ストライキ権は労働者の基本的権利であり、労働者が自分たちの経済的・社会的利益を正当に推進し擁護するための主要な手段でもある、と度々述べています。
しかし、ストライキ権は絶対的なものではありません。ストライキ実施の是非を問う投票や事前通告に加えて、事前の調停手続きやあっせんの法的要件など、権利の行使に条件が課されることもあります。さらに、次のような場合や労働者についてはストライキ権が制限されることもあります。
- 重大な国家的危機の場合
- 軍隊や警察組織の構成員
- 国の権限を行使する公務員
- 重要な公益事業(中断することで国民の全体または一部の生命、安心、安全を危険にさらしかねないものなど)で雇用される労働者
例えば、医療や電力供給、給水、電話網、航空管制は重要な公益事業とされています。
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ILOの法体系では、業務が中断することで国民の全体または一部の生命、身体の安全や健康を危険にさらしかねない事業を重要な事業と定義しています[1]。
次の事業は重要な公益事業と見なされる可能性があります[2]。
- 病院
- 電気事業
- 水道事業
- 電話事業
- 警察および軍隊組織
- 消防
- 官民の刑務所
- 学校の給食・清掃関係
- 航空管制
なお、何が重要な公益事業に当たるのかは各国特有の事情に大きく左右されるため、それぞれの国の法律を参照することが重要です[3]。
各国政府は重要な公益事業に従事している労働者のストライキを禁止することができますが[4]、そうした事業でも、病院の敷地を維持管理する担当者など、事業に不可欠とは見なされない特定の職種であればストライキ権を有するべきです[5]。
次の業種は、通常は重要な公益事業には当たりません[6]。
- ラジオ・テレビ
- 石油部門
- 港湾
- 銀行
- 物品税徴収システム
- 百貨店および遊園地
- 金属・鉱業部門
- 輸送全般
- 航空機のパイロット
- 燃料の生産、輸送、流通
- 鉄道事業
- 都市交通
- 郵便事業
- ごみ収集事業
- 冷蔵・冷凍事業
- 宿泊業
- 建設
- 自動車製造
- 農業と食料の供給・流通
- 造幣
- 政府印刷事業やアルコール、塩、たばこの専売事業
- 教育部門
- ミネラルウォーター瓶詰事業
しかし、ストライキが一定期間を超えて継続するか、一定の範囲を超えて拡大し、国民の全体または一部の生命や身体の安全、健康が危険にさらされる場合には、ごみ収集のような不可欠ではない事業が不可欠とされる可能性はあります[7]。
都市交通やフェリーの運航などの公益事業が根本的な重要性を帯びると見なされる場合には、ストライキ中に最低限の役務提供を確保する措置を講じることも認められます[8]。
なお、最低限の役務と必要な労働者の数を決定する際には、このためにストライキの影響が限定されて事実上効果がなくなるという事態に陥らないよう、政府は関連の労使団体と協議するべきです[9]。また、こうした最低限の役務の決定に関して意見の相違がある場合には、労働行政を所管する省庁またはその他関係する省庁や官民の事業体ではなく、独立した機関が解決するべきです[10]。
労働者のストライキ権の行使を禁止または制限する場合には、適切で中立的、かつ迅速な調停・仲裁手続きを実施し、あらゆる段階で関係当事者を関与させ、下された裁定が直ちに全面的に実施されるようにするべきです[11]。
[1] “Compilation of decisions of the Committee on Freedom of Association”, Sixth edition; ILO, Geneva, 2018, paragraph 838.
[2] Ibid, paragraph 840.
[3] Ibid. paragraph 837.
[4] Ibid, paragraph 827.
[5] Ibid, paragraph 849.
[6] Ibid, paragraph 842.
[7] Ibid. paragraph 847.
[8] Ibid, paragraph 866.
[9] Ibid, paragraph 881.
[10] Ibid, paragraph 884.
[11] Ibid, paragraph 856.
労働協約の承継
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ご質問の内容を具体的に取り上げている国際労働基準はありません。
しかし、結社の自由や団体交渉に関する法体系では、 “the closing of an enterprise should not in itself result in the extinction of the obligations resulting from the collective agreement, in particular as regards compensation in the case of dismissal”(「企業の閉鎖はそれ自体、特に解雇の場合における補償に関し、労働協約に起因する義務を消滅させるものではない」)とされています[1]。
企業の閉鎖や経営権の移転が行われる場合に労働組合の承認や既存の労働協約が継続して有効かどうかについては、ほとんどの国で法令により定められています。国によっては、破産などの場合も含めた経営権の移転をめぐる状況を考慮し、法令の適用にある程度の柔軟性を持たせている場合もあります。
国内の法律や慣行について、詳しくは国内の労使団体にお問い合わせください。
[1] “Compilation of decisions of the Committee on Freedom of Association”, Sixth edition; ILO, Geneva, 2018, paragraph 1515.
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