労働時間
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発展途上国で事業を展開する多国籍企業は、原則として政府の政策の枠内で可能な限り良好な労働時間などの労働条件を整備することが推奨されます。なお、労働条件は各企業の経営状態も関係します[1]。
多国籍企業は標準労働時間を週48時間から40時間へと漸進的に短縮していくことが推奨されており、その際は賃金の減少を回避できるよう、国内の状況や慣習に加えて個別の産業部門の状況を考慮に入れる必要があります[2]。1962年の労働時間短縮勧告(第116号)第7項では、漸進的な労働時間の短縮において、以下の事項を考慮すべきであるとしています。
- 「(a) 達成された経済発展の水準並びに当該国が、総生産高又は生産性を低下させることなく、経済成長、新産業の発展又は国際貿易における競争的地位を危うくすることなく、かつ、労働者の実質所得を結局は減少させることとなるインフレーションの圧力を発生させることなく、労働時間を短縮することができる程度」
- 「(b) 最新の産業技術、オートメーション及び経営技術の適用により生産性の向上について達成された進歩及び達成される進歩」
- 「(c) 発展の途上にある国については、国民の生活水準の向上の必要」
- 「(d) 労働時間を短縮する方法について当該活動の各分野の使用者団体及び労働者団体が行なう選択」[3]
時間外労働の導入により労働時間の上限は48時間まで延長が可能であるものの、このような時間外労働は当該企業で認められている規則や慣習の例外であるべきです[4]。また、所定労働時間の通常の賃金に割増賃金を可算するべきです[5]。時間外労働を手配する際には18歳未満の者や妊産婦、障害のある労働者に対して適切な配慮をすることが求められます[6]。
さらに、労働時間の漸進的な短縮の実施方法は特に労働者の代表を通じて労働者と協議しながら検討するべきです[7]。
労働時間関連の法律と慣習に関する国内の法令や労働協約については、国内の労使団体にお問い合わせください。
[1] 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)、第41項。
[2] 1962年の労働時間短縮勧告(第116号)、第1項、第2項、第4項。同勧告は多国籍企業宣言の中で引用されています。
[3] 第116号勧告、第7項。
[4] 同上、第11項。
[5] 同上、第19項(1)。
[6] 同上、第18項。
[7] 同上、第20項(1)。 -
1962年の労働時間短縮勧告(第116号)第12項(2)では、平均労働時間の算出期間として認められる上限について言及しています。この上限は平均労働時間を求める際の基準となるものであり、1週間の労働時間の上限を設定する上で柔軟性の高い考え方を可能にします。平均労働時間の算出が認められる条件は以下の通りです。
- 例外的な事例である
- 労働組合と使用者団体間で合意がある
- その合意を基に、管轄当局が規則を定めている[1]
算出期間は3カ月や6カ月の場合もあれば、12カ月になる場合もあります。
[1] 1919年の労働時間(工業)条約(第1号)、第5条。同様の規定は1930年の労働時間(商業・事務所)条約(第30号)第6条にも見られます。
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当該の国際労働基準では、1日8時間かつ週48時間[1]または週40時間[2]が(時間外労働を含まない)標準労働時間の上限とされています。各国政府は標準労働時間を48時間から40時間へと漸進的に短縮していくことが推奨されており、その際は賃金の減少を回避できるよう、国内の状況や慣習を考慮に入れる必要があります[3]。
労働時間が1日8時間かつ週48時間を上回ること自体は認められているものの、3週間の平均労働時間数が1日8時間かつ週48時間を上回らないことが条件となります[4]。交替制勤務の場合は算出期間3週間の労働時間を平均することが認められており[5]、複数回の連続したシフトによって継続的な業務に従事する場合は1日8時間かつ週48時間の上限を上回ることが認められるものの、その場合は週56時間の上限が適用される場合があります[6]。労働時間(Hours of Work)についての2005年の総合調査報告では、ILO条約勧告適用専門家委員会(Committee of Experts on the Application of Conventions and Recommendations)が次のように述べています。
“While international standards with respect to hours of work are required to provide effective protection for workers, the government reports and the information provided by the social partners reveal that Conventions Nos. 1 and 30 do not fully reflect modern realities in the regulation of working time. In fact, there are elements of the Conventions that are clearly outdated. Perhaps the most obvious is the 56-hour limit on continuous shift work contained in Article 4 of Convention No. 1. None of the countries that responded to the survey impose such a limit on continuous shift working. At the same time, many countries have introduced legal limits that are more favourable to workers than the generally applicable limit on working hours. In Norway, for example, the 40-hour limit is reduced to 36 hours for continuous shift workers, and the same limit applies in Paraguay rather than its ordinary 48-hour limit.”[7] (「国際標準は労働時間に関して労働者の実効的な保護となる規定を提供しなければならないが、各国政府の報告書や社会的パートナーの情報では、第1号条約と第30号条約は労働時間の規制における現状を完全には反映していないことが判明している。事実、これら2条約には明らかに時代遅れとなっている側面がある。中でも最も明白な例は、第1号条約第4条で規定された連続したシフト勤務の56時間という上限である。調査の協力国で、そのような連続したシフト勤務の上限を課していると回答した国はなかった。同時に、一般的に適用される労働時間の上限よりも労働者にとって有益な法定労働時間を導入している国が多い。例えば、ノルウェーでは40時間の上限は交替制勤務だと36時間に短縮されており、パラグアイでは通常の上限は48時間のところを同様に短縮された36時間が適用されている。」)
また、交替制勤務は業務量の増加や事故、不可抗力、急を要する修理作業といった通常とは異なる状況において一時的な例外の対象となることがあります[8]。その場合は平均労働時間の算出期間をさらに延長することが認められますが、これは例外的な状況でのみ認められることであり、労使団体間で合意があり、その合意を基に管轄当局によって規則が定められている場合に限定されます[9]。
さらに、1930年の労働時間(商業・事務所)条約(第30号)が定める「本質上間歇(けつ)的」な業務も、1日8時間かつ週48時間の標準労働時間の上限に対する永続的な例外として認められます[10]が、使用者団体や労働組合との協議を経た上で、管轄当局が定めた規則で1日に認められる追加の労働時間数が定められていることが条件となります。
[1] 1919年の労働時間(工業)条約(第1号)、第2条、および1930年の労働時間(商業・事務所)条約(第30号)、第3条。
[2] 1935年の40時間制条約(第47号)、第1条(a)。40時間労働の導入により労働者の生活水準が低下することは認められません。
[3] 1962年の労働時間短縮勧告(第116号)、第1項、第2項、第4項。
[4] 第1号条約、第2条(c)。
[5] 同上。
[6] 同上、第4条。
[7] “General Survey of the reports concerning the Hours of Work (Industry) Convention, 1919 (No. 1), and the Hours of Work (Commerce and Offices) Convention, 1930 (No. 30)”, ILO, Geneva, 2005, paragraph 322.
[8] 第1号条約、第3条、第6条。
[9] 同上、第5条。
[10] 第30号条約、第7条第1項(a)。 -
1回のシフトで24時間働くことは、労働時間に関する国際労働基準の各種原則の違反となります。
当該の国際労働基準では、1日8時間かつ週48時間が(時間外労働を含まない)標準労働時間の上限とされています[1]。交替制勤務の場合、1日8時間を超えることは認められますが[2]、3週間の平均労働時間数が1日8時間かつ週48時間を上回らないことが条件となります[3]。製造工程の性質上、複数回の連続したシフトによる継続的な業務遂行が求められる場合は平均週56時間の上限が適用されることがありますが[4]、これは標準労働時間の上限が適用不可能であると認められる例外的な状況でのみ可能となります。
また、1930年の労働時間(商業・事務所)条約(第30号)が定める「本質上間歇(けつ)的」な業務も、1日8時間かつ週48時間の標準的な上限に対する永続的な例外として認められます[5]が、使用者団体や労働組合との協議を経た上で、権限のある機関が定めた規則で1日に認められる追加の労働時間数が決まっていることが条件となります。
さらに、関連条約により、業務量の増加や事故、不可抗力や急を要する修理作業といった通常とは異なる状況において一時的な例外が認められることがあります[6]。その場合は平均労働時間の算出期間が1週間を上回りますが、これは例外的な状況でのみ認められることであり、労使団体間で合意があり、その合意を基に管轄当局によって規則が定められている場合に限定されます[7]。従って、交替制勤務の労働時間の上限に関する国内法の規定を確認することが重要です。
詳しくは、事業を展開する国の使用者団体(employers’ organizations)や労働組合(workers’ organizations)にお問い合わせください。
[1] 1919年の労働時間(工業)条約(第1号)、第2条、および1930年の労働時間(商業・事務所)条約(第30号)、第3条。
[2] 第1号条約、第2条(c)。
[3] 同上。
[4] 同上、第4条。
[5] 第30号条約、第7条第1項(a)。
[6] 第1号条約、第3条、第6条。
[7] 同上、第5条。 -
国際労働基準では農業における労働時間について具体的な指針が提示されておらず、労使団体との協議の上で適切な上限を判断するよう、各国の管轄当局に委ねられています[1]。従って、事業を展開する国の労働協約や国内法を確認することが重要となります。
“Safety and health in agriculture: ILO code of practice”では、労働時間について次のような指針が示されています。
- 19.2. Working hours
- 19.2.1. The pace of agricultural work has increased with the use of task rates and piecework. Long hours of work, particularly intense manual labour, contribute to workers’ fatigue and lead to accidents on the job.
- 19.2.2. Daily and weekly working hours should be arranged so as to provide adequate periods of rest which, as prescribed by national laws and regulations, or approved by labour inspectorates or collective agreements, where applicable, should include:
(a) short breaks during working hours, especially when the work is strenuous, dangerous or monotonous, to enable workers to recover their vigilance and physical fitness;
(b) sufficient breaks for meals;
(c) daily or nightly rest of not less than eight hours within a 24-hour period; and
(d) weekly rest of at least a full calendar day.
- 19.2.3. Extended workdays (over eight hours) should be contemplated only if:
(a) the nature of the work and the workload allow work to be carried out without increased risk to safety and health;
(b) the shift system is designed to minimize the accumulation of fatigue.
(19.2. 労働時間
19.2.1. 出来高制の導入により農業における作業のペースは加速している。長時間労働、特に重度の肉体労働では労働者の疲労が蓄積し、労災につながる。
19.2.2. 日ごと、週ごとの労働時間には、国内法令が定める通り、または当てはまる場合は労働監督当局や労働協約が認める通り、以下の通り十分な休息時間が取れるように設定するべきである。
(a) 特に重労働、危険な労働、単調な労働の場合は、労働者が注意力や体力を回復できるように勤務中に短い休憩時間を設ける
(b) 十分な食事休憩
(c) 24時間で最低8時間の日ごとまたは夜ごとの休憩
(d) 週ごとに少なくとも1営業日の休暇
19.2.3. 8時間を超える長時間労働は、以下の場合にのみ検討されるべきである。
(a) 仕事の性質と仕事量のため、業務を遂行しても安全と健康へのリスクが増加しない
(b) 疲労の蓄積を最低限に抑えるためにシフトが組まれている)
詳しくは、事業を展開する国の使用者団体(employers’ organizations)や労働組合(workers’ organizations)にお問い合わせください。農業部門で働く労働者のための国際的な労働組合連合はInternational Union of Food, Agricultural, Hotel, Restaurant, Catering, Tobacco and Allied Workers' Associations (IUF)です。
[1] 1919年の労働時間(工業)条約(第1号)第1条第3項では、「工業と商業及農業との分界は、各国に於ける権限ある機関之を定むべし」としています。また、2001年の農業における安全健康条約(第184号)第20条では、「農業労働者の労働時間、夜間労働及び休息期間については、国内法令又は労働協約に従う」としています。
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国際労働基準では農業における労働時間について具体的な指針が提示されておらず、労使団体との協議の上で適切な上限を判断するよう、各国の管轄当局に委ねられています[1]。従って、事業を展開する国の労働協約や国内法を確認することが重要となります。“Safety and health in agriculture: ILO code of practice”では、労働時間について次のような指針が示されています。
19.2. Working hours
19.2.1. The pace of agricultural work has increased with the use of task rates and piecework. Long hours of work, particularly intense manual labour, contribute to workers’ fatigue and lead to accidents on the job.
19.2.2. Daily and weekly working hours should be arranged so as to provide adequate periods of rest which, as prescribed by national laws and regulations, or approved by labour inspectorates or collective agreements, where applicable, should include:
(a) short breaks during working hours, especially when the work is strenuous, dangerous or monotonous, to enable workers to recover their vigilance and physical fitness;
(b) sufficient breaks for meals;
(c) daily or nightly rest of not less than eight hours within a 24-hour period; and
(d) weekly rest of at least a full calendar day.
19.2.3. Extended workdays (over eight hours) should be contemplated only if:
(a) the nature of the work and the workload allow work to be carried out without increased risk to safety and health;
(b) the shift system is designed to minimize the accumulation of fatigue.
(19.2. 労働時間
19.2.1. 出来高制の導入により農業における作業のペースは加速している。長時間労働、特に重度の肉体労働では労働者の疲労が蓄積し、労災につながる。
19.2.2. 日ごと、週ごとの労働時間には、国内法令が定める通り、または当てはまる場合は労働監督当局や労働協約が認める通り、以下の通り十分な休息時間が取れるように設定するべきである。
(a) 特に重労働、危険な労働、単調な労働の場合は、労働者が注意力や体力を回復できるように勤務中に短い休憩時間を設ける
(b) 十分な食事休憩
(c) 24時間で最低8時間の日ごとまたは夜ごとの休憩
(d) 週ごとに少なくとも1営業日の休暇
19.2.3. 8時間を超える長時間労働は、以下の場合にのみ検討されるべきである。
(a) 仕事の性質と仕事量のため、業務を遂行しても安全と健康へのリスクが増加しない
(b) 疲労の蓄積を最低限に抑えるためにシフトが組まれている)
[1] 1919年の労働時間(工業)条約(第1号)第1条第3項では、「工業と商業及農業との分界は、各国に於ける権限ある機関之を定むべし」としています。また、2001年の農業における安全健康条約(第184号)第20条では、「農業労働者の労働時間、夜間労働及び休息期間については、国内法令又は労働協約に従う」としています。
労働時間―時間外労働
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長時間労働の問題への対処と十分な休息の両立は、労働者にとっても経営者にとっても非常に大きな課題です。労働時間が長すぎると睡眠障害や極度の疲労の原因となり、心血管疾患や消化器疾患、精神疾患を引き起こす恐れがあります。また、疲労によって事故やけがのリスクが高まり、業務の質や生産性が低下することもあります。
企業にとって、果たすべき主な責任は国内法の順守です。また、国際労働基準で定められている各種原則に従うこともILOは各企業に推奨しています。時間外労働を希望する理由について労働者と対話の場を設けることで、長時間労働に伴う安全衛生上のリスクにまつわる懸念を伝える機会が得られます[1]。
次に、労働者が超過勤務を希望する要因を挙げますので、こちらを参考に、御社の状況において効果の大きい方法をご検討ください。
最初に挙げられるのは労働者が十分な収入を強く希望している場合で、収入額が自分の求める水準に達すれば、労働者は余暇の時間を求めるようになります。このような場合は、労働者の収入総額を増やしつつ、業務の生産性向上や賃上げを通じて労働時間を短縮することが解決策となります。高度な技術を導入し、業務管理を効果的に実施している企業は、1時間あたりの賃金を上げることで労働時間を短縮しつつ、競争力を維持できます。しかしどの企業も競争圧力に直面している現状では、労働者側の超過勤務への需要を賃上げによって抑えるというのは業界全体や国全体で取り組むべき課題です。
また、超過勤務を求める声が労働者だけでなく現場の管理職からも上がる場合や、管理職が率先して声を上げる場合もあります。このような状況では、管理職側に「勤務時間が10時間、12時間を超えると労働者の作業効率が大きく低下するとしても、機械を止めたままにしておくよりはまだ生産性が高いから、時間外労働が多くなってもコスト効率は良い」という認識があります。業務の継続を求める声がある場合、想定される解決策としては、製造現場を交替制勤務に移行させ、機械の休止時間をなくすことが挙げられます。ただし、夜勤に従事する労働者が多大な影響を被るため、こうした新しい制度を実施する際は労働者と綿密な協議を行う必要があります。さらに、シフトのローテーションや休息時間、報酬、労働安全衛生の対策などについて合意できるよう労働協約を締結することや、新しい制度を導入する前に労働者との適切な情報共有を必ず行うとともに、効果的な変化管理のプロセスを通じて当事者全員が新しい制度に順応できるよう支援することが推奨されます。
加えて、労働者の希望に影響を与えている要因としては、選択肢が限られていることも考えられます。多くの移民労働者が劣悪な生活環境にあり、余暇の選択肢は実質皆無です。適切な生活環境を労働者に提供することで、超過勤務の要望を抑え、他社での副業を控えてもらえる大きな効果が出る可能性があります。
貴社の状況には以上の要因が当てはまらない場合もあります。そのため、効果的な対応のためには具体的な理由を想定するのではなく、まず労働者との話し合いの場を設けることが重要です。
[1] Anne Spurgeon の“Working time: Its impact on safety and health”もご参照ください。
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時間外労働の義務付けは、国内法や労働協約で認められた範囲内であれば、強制労働には当たりません。範囲を超えている場合は、時間外労働の義務付けにより強制労働の防止に影響が出ていないか状況を精査するべきだと言えます[1]。
処罰や解雇をちらつかせて、または最低賃金を下回る賃金で、労働者の弱い立場につけこんで強制的に労働や役務を行わせている場合、こうした搾取はただの劣悪な雇用条件という問題を超えています。これは処罰の脅威によって労働を強制されることに他ならず、労働者の保護が必要となります。
[1] “General Survey concerning the Forced Labour Convention, 1930 (No. 29), and the Abolition of Forced Labour Convention, 1957 (No. 105)”, ILO, Geneva, 2007, paragraph 132.
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1962年の労働時間短縮勧告(第116号)の前文では、賃金の減少を伴わずに労働時間の基準を週40時間まで漸進的に短縮するという基本目標が掲げられています[1]。この勧告では、経済的状況や社会的状況の違いのほか、さまざまな国内慣行を考慮し[2]、各国や産業特有の慣行があることを認める[3]とともに、生活水準向上の必要性を考慮するものとしています[4]。一方、標準労働時間が週48時間を超えている場合は「労働者の賃金を減少させることなく当該労働時間をその水準まで短縮するための措置をすみやかに執るべきである」とも述べています[5]。
労働時間(Hours of Work)についての2005年の総合調査報告では、永続的または一時的な例外を認める規定の下で許容される時間外労働の上限という問題を取り上げて、ILO条約勧告適用専門家委員会(Committee of Experts on the Application of Conventions and Recommendations)が次のように述べています[6]。
- Neither Convention No. 1 nor Convention No. 30 prescribes any specific limits to the total number of additional hours which may be worked during a specified period in case of permanent or temporary exceptions. Convention No. 1 merely states that the maximum of additional hours in each instance of exceptions shall be fixed by regulations made by public authority. Similarly, under Convention No. 30, except in the case of a temporary exception in case of accident, force majeure or urgent work, regulations made by the public authority shall determine the number of additional hours of work which may be allowed in the day and, in respect of temporary exceptions, in the year. (第1号条約も第30号条約も、永続的または一時的な例外において特定の期間内に勤務できる時間外労働の合計時間の上限を具体的に定めていない。第1号条約では、例外的な各事例における時間外労働の上限は当局が定める規定により決定されるとしか述べていない。同様に、第30号条約の下では、事故、不可抗力、緊急の案件といった一時的な例外を除き、当局が定める規定により1日、および一時的な例外の場合は1年に許可される時間外労働の時間数が決定される。)
- Even though the establishment of specific limits to the total number of additional hours is left to the competent authorities by both Conventions, this does not mean that such authorities have unlimited discretion in this regard. Taking into account the spirit of the Conventions and in the light of the preparatory work, it is appropriate to conclude that such limits must be "reasonable" and they must be prescribed in line with the general goal of the instruments, namely to establish the eight-hour day and 48-hour week as a legal standard of hours of work in order to provide protection against undue fatigue and to ensure reasonable leisure and opportunities for recreation and social life. (どちらの条約でも時間外労働の合計時間数の上限は当局の決定に委ねられているが、これは当局がこの件に関して無制限の裁量権を有するということではない。両条約の精神を考慮し、その成立過程を鑑みると、そういった上限は「合理的」な数値でなくてはならず、両条約の全般的な目標、つまり、1日8時間かつ週48時間の法定労働時間を確立することで過剰な疲労から労働者を守り、常識の範囲内の余暇や、娯楽と人付き合いの機会を労働者が必ず持てるようにするという目標に沿って規定されなくてはならない。)
- In the light of the above, when deciding what should be considered as a "reasonable" limit on the number of additional hours in case of a certain exception, the public authority should make a thorough evaluation of the intensity of the respective work, its ability to produce physical or mental fatigue, and of possible negative consequences of fatigue for the respective employee and the public at large. The higher the intensity of the work, the higher is its ability to produce fatigue. The more serious the negative consequences of such fatigue could be, the lower would be a "reasonable" limit that should be allowed in case of a particular exception. (このことを鑑みると、特定の例外的状況における「合理的」な時間外労働の上限を決定する際、当局は当該労働の重度、その労働による身体的または精神的な疲労度、当該労働者および社会全般に疲労がもたらす可能性がある悪影響を入念に検討するべきである。労働の重度が高いほど、その労働による疲労度は高まる。そのような疲労による悪影響が深刻であるほど、そのような例外的事例において許される「合理的」な上限の数値は低くなる。)
[1] 1962年の労働時間短縮勧告(第116号)、第4項。
[2] 同上、前文。
[3] 同上、第1項。
[4] 同上、第7項(c)。
[5] 同上、第5項。
[6] “General Survey of the reports concerning the Hours of Work (Industry) Convention, 1919 (No. 1), and the Hours of Work (Commerce and Offices) Convention, 1930 (No. 30)”, ILO, Geneva, 2005, paragraphs. 143-145. -
工場の時間外労働に関する規定は、国内法および適用される労働協約の規定に準拠しなければなりません。時間外労働の義務付けは、国内法や労働協約で認められた範囲内であれば、強制労働には当たりません。しかし、法律で認められた週ごと、月ごとの上限を上回り、さらに処罰の脅威によって強制されている場合、そのような時間外労働はいかなる理由があっても強制労働となります。
また、時間外労働を拒否した場合に罰金を科せられる恐れがあり、実際のところ労働者が法律上の上限を超える時間外労働を断れなくなっている場合も問題となります。法的な上限を超える時間外労働を行わない場合に罰金を科すという社内規程が処罰の脅威だという認識が労働者側にある場合、これは強制労働と見なされる可能性があります。さらに、より巧妙な脅しもあるとILO条約勧告適用専門家委員会(Committee of Experts on the Application of Conventions and Recommendations)は指摘しています。解雇されるかもしれないという恐れから国内法で認められた上限を超える時間外労働を行うことがあり、また別の事例では、そうすることでしか最低賃金が得られないと思い(例えばノルマ達成に応じて報酬が決まるなどの場合)、法的な上限を上回る時間外労働を行わざるを得ないこともあります。こういった事例では、理論上は時間外労働を断れるはずですが、労働者は弱い立場にあるためにその選択肢がなく、最低賃金を稼ぐため、解雇されないようにするため、あるいはその両方の理由から、時間外労働を行わざるを得ないのです。これは処罰の脅威によって労働を強制していることになり、強制労働と見なされる可能性があります。
休息期間―週休
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国際労働基準では、休息期間について指針となる規定は数点しかありません。1930年の労働時間(商業・事務所)条約(第30号)では、「使用せらるる者が使用者の指揮に服せざる」期間と定義しています[1]。使用者は、労働時間に含まれない休息期間を社内の目立つところに掲示する必要があります[2]。認められる休息期間に差別があってはならず[3]、家庭における責任を負う労働者には休息期間に関して融通性の高い措置が必要であることを考慮するべきです[4]。
なお、休息期間に関する国内法と慣習に関する国内の法令や労働協約については、国内の使用者団体(employers’ organizations)や労働組合(workers’ organizations)にお問い合わせください。
[1] 1930年の労働時間(商業・事務所)条約(第30号)、第2条。
[2] 同上、第11条第2項(b)。
[3] 1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)、第1条第3項、および1958年の差別待遇(雇用及び職業)勧告(第111号)、第2項(b)(vi)。
[4] 1981年の家族的責任を有する労働者勧告(第165号)、第18項(b)。 -
週休日は国や地域の伝統や慣習によってすでに確立されている休日と可能な限り一致させる必要があります[1]。ただ、宗教的マイノリティーである労働者の伝統や慣習も可能な範囲で尊重するべきです[2]。
事業を展開する地域社会における宗教的マイノリティーへの配慮については、国内の使用者団体(employers’ organizations)や労働組合(workers’ organizations)にお問い合わせください。
[1] 1921年の週休(工業)条約(第14号)第2条第3項では、週休は「当該の国又は地方の因襲又は慣習に依り既に定まれる日と能ふ限り一致する様定めらるべし」としています。また、1957年の週休(商業及び事務所)条約(第106号)第6条第3項では、「週休は、国又は地方の伝統又は慣習により休日として定められた日と、できる限り一致させなければならない」とされています。
[2] 第106号条約、第6条第4項。
有給休暇
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ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)は有給休暇について具体的に言及しておらず、各種給付や労働条件についての全般的な規定しか取り上げていません。同宣言では、事業を展開する国の類似した競合他社と比べて各種給付の条件が労働者にとって不利なものにならないよう多国籍企業に促しています[1]。また、類似の企業が存在しない場合には、労働者やその家族の経済的状況を考慮し、政府の政策の枠内で可能な限り良い給付や労働条件を整備することが推奨されます[2]。
1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)では、1年間の勤務に対し3週間の勤務日数分が最低基準とされています[3]。これは1週間の勤務日数によって15日ないし18日に相当します。
また、有給休暇の付与に必要な最低勤務期間を設定することもできますが、6カ月を超えてはなりません[4]。また、勤務期間が1年未満(暦年ないしそれと同等の長さ)の従業員には、その長さに比例した日数の有給休暇を付与する必要があります[5]。
有給休暇を取得した従業員には、その休暇の全期間について、最低でも当該従業員の報酬の標準額ないし平均額を支払う必要があります(現物給与や現金相当額を含む)[6]。
さらに、有給休暇は分割できるものの、その一部は2週間以上連続している必要があります[7]。
[1] 多国籍企業宣言、第41項。
[2] 同上。
[3] 1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)、第3条第3項。
[4] 同上、第5条第2項。
[5] 同上、第4条。
[6] 同上、第7条。
[7] 同上、第8条第2項。 -
1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)では、1年間の勤務に対し3週間の勤務日数分が最低基準とされています[1]。これは1週間の勤務日数によって15日ないし18日に相当します。
この最低基準は全ての被用者が対象となるものであり[2]、在職期間の長さは問われません。有給休暇は従業員の勤務に対する報奨というだけでなく、労働者の健康増進とウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)の向上の主な手段となるものであり、多くの国で労働者が家庭における責任を果たす上での助けとなっています。従って、第132号条約で定められる3週間の最低基準は全ての労働者が対象となります。付与に必要な最低勤務期間を設定することは可能ではあるものの、その期間は6カ月を超えられません[3]。
ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)では、事業を展開する国の類似した競合他社と比べて各種給付の条件が労働者にとって不利なものにならないよう多国籍企業に促しています[4]。また、類似の企業が存在しない場合には、労働者やその家族の経済的状況を考慮し、政府の政策の枠内で可能な限り良い給付や労働条件を整備することが推奨されます[5]。
[1] 1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)、第3条第3項。
[2] 同上、第2条第1項。
[3] 同上、第5条第2項。
[4] 多国籍企業宣言、第41項。
[5] 同上。 -
ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)は有給休暇について具体的に言及しておらず、各種給付や労働条件についての全般的な規定しか取り上げていません。同宣言では、事業を展開する国の類似した競合他社と比べて、各種給付の条件が労働者にとって不利なものにならないよう多国籍企業に促しています[1]。また、類似の企業が存在しない場合には、労働者やその家族の経済的状況を考慮し、政府の政策の枠内で可能な限り良い給付や労働条件を整備することが推奨されます[2]。
1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)では、1年間の勤務に対し3週間の勤務日数分が最低基準とされています[3]。これは1週間の勤務日数によって15日ないし18日に相当します。
病気やけが、出産によって欠勤した日は、勤務期間の一部として見なす必要があります[4]。
病気やけがで欠勤している期間は基本的に有給休暇の一部として見なしてはならないものの、ILO条約ではその条件に関して裁量の余地が残されています[5]。3週間の最低基準を上回る有給休暇を付与する場合は傷病休暇を含めることができますが、所定の最低基準である3週間の休暇が毎年全ての労働者に与えられることが条件となります。
傷病休暇など病気や事故によって欠勤した日数は、管轄当局が定めた条件の下で、年次休暇の最低基準の一部として見なすことができます。代表的な労働組合との十分な協議により、この条件を明確に全社的な規定とすることが適切であると考えられます。
[1] 多国籍企業宣言、第41項。
[2] 同上。
[3] 1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)、第3条第3項。
[4] 同上、第5条第4項。
[5] 同上、第6条第2項。 -
1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)では、1年間の勤務に対し3週間の勤務日数分が最低基準とされています[1]。これは1週間の勤務日数によって15日ないし18日に相当します。
公的な休日や慣習上の休日は、有給休暇の一部として見なしてはなりません[2]。3週間の最低基準を上回る有給休暇を付与する場合は公的な休日や慣習上の休日、または傷病休暇を含めることができますが、所定の最低基準である3週間の休暇が毎年全ての労働者に与えられることが条件となります。
ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)では、事業を展開する国の類似した競合他社と比べて各種給付の条件が労働者にとって不利なものにならないよう多国籍企業に促しています[3]。また、類似の企業が存在しない場合には、労働者やその家族の経済的状況を考慮し、政府の政策の枠内で可能な限り良い給付や労働条件を整備することが推奨されます[4]。
[1] 1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)、第3条第3項。
[2] 同上、第6条第1項。
[3] 多国籍企業宣言、第41項。
[4] 同上。 -
18歳未満の年少者を雇用する際は、労働条件を厳格に監督できるよう対策を講じる必要があります。1973年の最低年齢勧告(第146号)では、以下のような方法が挙げられています。
- 「教育及び訓練(家庭における学習に必要な時間を含む。)、労働日における休息並びに余暇活動のために十分な時間がとれるような一日及び一週間の労働時間に対する厳格な制限並びに時間外労働の禁止」
- 「夜間における継続十二時間以上の休息及び慣例的な週休日の付与(真に緊急な場合を除くほか、例外の可能性が認められない。)」
また、1999年の最悪の形態の児童労働勧告(第190号)によると、危険有害労働に当たるかどうかを判断する際は、「長時間の業務(中略)のような特に困難な条件の下」で業務が行われないか考慮する必要があります。危険有害労働の最低年齢は18歳です。
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