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ILOビジネスのためのヘルプデスクでは、国際労働基準で定められている各種原則についての情報を提供しており、労働紛争に直接対応することはありません。
ILOでは、多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)の対象となる当事者間で、実際の状況においてその規定の解釈に関する意見の不一致が生じ、その解決のために規定の解釈が必要になった際に、解釈をお手伝いするための手続きを整備しています。
多国籍企業宣言の別添II(運用のためのツール)の第3節第5項には、次のような記述があります。
「解釈請求は次の場合に事務局に申し立てできる。(a) 原則として加盟国政府から自らの発意で、または国内の使用者団体もしくは労働者団体の請求に基づいて、請求を行う場合
(b) 国内の使用者団体または労働者団体で、全国レベルおよび/または産業レベルで代表的であるものが、下記6に規定された条件に従って請求を行う場合(このような請求は通常その国の中央団体を通して行われる)
(c) 国際的な使用者団体または労働者団体がその代表的な国別加盟団体に代わって請求を行う場合」
個人が申立人となって請求を提出することはできません[1]。これまでに申し立てがあった21件の請求のうち、理事会による決議の対象となったのは5件です。うち2件は加盟国政府が提出し、3件は代表的な国別加盟団体に代わって国際的な労働者団体が提出しています。また、5件中4件が理事会に受理されており、うち2件は全会一致で[2]、残り2件は多数決によって受理されています[3]。最後の1件は理事会に受理されず、解釈手続きの段階に至っていません[4]。受理された4件では、実質的な解釈が出されています。
内容については、労働組合職員が安全衛生訓練に出席するための有給休暇に関するものが1件、集団解雇に関するものが3件です。また、企業・労組間対話の手続きを取るという方法もありますが、労働組合と経営者の双方が同意すること、また、国境を越えて事業を展開する多国籍企業であることが前提です。企業・労組間対話は、一国内の労働紛争を解決するためのものではありません[5]。
国による労働者の権利保護が十分ではないことが紛争の争点になっている場合、ILO Supervisory systemに申し立てを提起するための仕組みがいくつか存在します。ただし、いかなる申し立てであっても、提起できるのは国や業界全体を代表する労働組合か国際的な労働組合である点にご注意ください。
[1] 詳しくは、多国籍企業宣言の別添II第3節(26ページ)をご覧ください。
[2] GB.229/13/13およびGB.239/14/24/appendix。
[3] GB. 272/6と論拠となった以前の文書、およびGB. 264/MNE/2。
[4] GB.254/MNE/4/6。
[5] 詳しくは、多国籍企業宣言の別添II第2節(25ページ)をご覧ください。
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国際的な貿易投資協定では、ILO基本条約(10条約)に記されている労働者の基本的権利や基本原則に触れられることが増えてきており、このような協定の当事者である各国政府は、基本条約の批准や履行がまだの場合、批准や履行を実現することを確約しています [1]。
また、企業の社会的責任(CSR)に言及する貿易協定も増えつつあります。このため、協定参加国の政府は自国の領域内でも、また他の協定参加国で事業を展開する自国の多国籍企業にも、社会的責任の遂行につながる事業を推進するようになってきました [2]。
自社の商品やサービスの調達に関する判断に際して、サプライヤーの選定時に労働者の権利尊重を考慮することが一般的になりつつあります。さらに、取引先が労働者の権利を尊重しているかどうかを判断するためにデューディリジェンスを実施していることを証明するよう法律で義務付けられている場合もあります。
企業による人権デューディリジェンスは、取引先が事業を展開している国の法的枠組みを検討することから始まります。具体的には、基本条約で定められている中核的労働基準をその国が批准しているか、また条文の履行がどれだけ進んでいるかをチェックすること、などです。
基本条約を批准していない国からの調達を拒否するとは限りませんが、全ての基本条約の批准が完了していない場合には、サプライヤー候補となる企業に問題がないというさらなる確証を得るために、産業別や企業別の調査をじっくり行う場合が多いと言えます。とはいえ、基本条約を批准したからといってその国を調達先とする企業が増えるとは限らない、というのも事実です。企業は商品やサービスの質、納期の厳守、価格の競争力なども選定条件として検討します。労働者の権利尊重は確かに重要ですが、1つの要因に過ぎません。そこで、ILOではさまざまなプログラムを実施していますが、競争力と責任ある企業を支える(SCORE)計画では、中小企業が社会的責任を果たし、競争力を強化できるよう支援しています[3]。
また、ILOが作成した貿易・投資の取り決めにおける労働関連条項の評価に関するハンドブックは、自国に対する国外からの直接投資を量的にも質的にも向上させるために、中核的労働基準の批准や履行を推進する方法を検討するのに役立つツールです。
[1] さらに詳しい情報は、貿易投資協定の労働条項に関するILOの“research papers on labour provisions in trade and investment agreements"や、“Labour Provisions in Trade Agreements Hub”をご参照ください。
[2] 詳しくは、“Corporate Social Responsibility in International Trade and Investment Agreements: Implications for States, Business and Workers” (ILO, Geneva, 2016)、および“Overview of References made to the MNE Declaration in trade and investment agreements” をご覧ください。
[3] SCOREの詳細については、“Sustaining Competitive and Responsible Enterprises (SCORE) Programme”をご覧ください。
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ILOは経済や社会の発展に対する企業の貢献を促すこと、および企業のさまざまな活動によって生じ得る問題を最小限に抑え、実際に生じた場合はそれを解決することを目的として、多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)という国際文書を採択しています。雇用、訓練、労働条件や生活条件、および労使関係の領域における諸原則が定められており、政府や企業、使用者団体や労働組合はこの原則を自主的に順守することが推奨されています。多国籍企業宣言は政労使の三者間で採択された文書としては他に類のないものです。ILOの条約や勧告の根底にある原則と同様に、多国籍企業宣言の諸原則は企業がCSRに関する指針や制度を策定し、導入する上で参考となります。また、企業の行動規範などで言及されることも少なくありません。
多国籍企業宣言の中で触れられている労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップでは、国際社会に認められた労働者の基本的権利に関する諸原則が示されています。この諸原則によって立つ10の条約は、どのような発展段階にあるILO加盟国でも働く人たちの権利に不可欠なものとして見なされており、次の5つの分野が取り上げられています。- 結社の自由と団体交渉権の実効的な承認
- あらゆる形態の強制労働の撤廃
- 児童労働の実効的な廃止
- 雇用・職業における差別の撤廃
- 安全で健康的な労働環境
民間企業を対象とする国際文書でも、多くが労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップと多国籍企業宣言のいずれか(または両方)に言及しています。例えば、国連グローバル・コンパクト、ビジネスと人権に関する国連フレームワーク、ビジネスと人権に関する国連指導原則、OECD多国籍企業行動指針などです。
また、ILOが提供するE-learning moduleでは、インタラクティブな学びを通じて多国籍企業宣言についての知識を深めるとともに、その勧告の内容を実践し、労働や雇用にまつわる多様な問題に対処する方法を習得することができます。 -
国際労働基準は加盟国政府を対象とするものなので、企業が国際労働基準を直接順守したり、それに準拠したりすることはできませんが、国際労働基準の策定目的の達成に貢献することはできます。
企業が参考にできる指標としては、「自社の労働慣行が国内法に合致しているか」がベストです。これは、一般的に企業の行動規範は国内法をベースとして制定されるからです。場合によっては国際労働基準の条項が国内法に反映されていないこともありますが、その場合、サプライヤーは国際労働基準で定められる、より次元の高い目標の達成に向けて努力することが推奨されます。
デューディリジェンスはまずサプライヤーが事業を展開している国の法律や慣習を把握することに始まりますが、国内法や労働行政に問題があったとしても、それより高い水準を達成している企業もあります。従って、正しい評価を行うにはその企業の事業運営に関する情報が必要で、入手するにはその企業と幅広い分野にわたって対話を行わなければならないこともあります。また、国内や業界内の事情に詳しい使用者や労働者の団体も重要な情報源となることもあります。それから、サプライヤーが所属する産業の国際産業別労働組合組織と協力するのも役に立つかもしれません。ILOはいかなる認証機関とも提携しておらず、労働問題に関する認証を推奨することもありません。こうした制度には限界があり、サプライヤーのコスト負担も大きいということが、近年の悲惨な事件や多数の研究(例えばリチャード・ロック氏の研究を参照)により明らかになってきています。また、労働者の権利を確実に保護するためには、国内の強固な法制度や健全な労使関係、効果的な社会対話の制度が重要であるということも浮き彫りになりました。
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労働者が自分の雇用条件を把握できるようにするべきであるという原則は、いくつかの国際労働基準で直接言及されています。例えば、1989年の原住民及び種族民条約(第169号)では、「関係人民に属する労働者(中略)が、同じ部門における他の同様の労働者に対して国内法及び慣行により与えられる保護を受けること並びに労働立法に基づき自己の権利及び利用できる救済の手段について十分に知らされること」が必要であるとされています[1]。
また、ILO労働力移動に関する多国間枠組みでは、「移民労働者が、理解可能であり法的強制力のある雇用契約を受け取ることを保障」できるよう対策を講じなければならないと定められています[2]。
さらに、2011年の家事労働者条約(第189号)では、労働者に対して「雇用条件が、適切かつ検証可能な及び容易に理解することができる方法により、並びに望ましいものとして、可能な場合には、国内法令又は団体交渉の合意に基づく書面による契約により(中略)通知され」る必要があるとしています[3]。
労働者本人が理解できる言語で書かれた契約書面を交付することは、強制労働を防ぐ重要な手段としても見なされています。Combating forced labour: A handbook for employers and businessにもある通り、企業は“ensure that all workers have written contracts, in language that they can easily understand, specifying their rights with regard to payment of wages, overtime, retention of identity documents, and other issues related to preventing forced labour.”とされています[4]。[1] 第169号条約、第20条第3項(a)。
[2] 第13条3項。
[3] 第189号条約、第7条。
[4] 詳しくは、“Combating forced labour: A handbook for employers and business” (ILO, Geneva, 2015)の第2章4ページをご覧ください。
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ILOの監視機構には、条約勧告適用専門家委員会(Committee of Experts on the Application of Conventions and Recommendations) と基準適用委員会(Conference Committee on the Application of Standards)があります。これらの委員会は加盟国が批准した条約の実施状況に関する政府報告書の審査を行っており、その頻度は現在のところ優先条約(労働や雇用における基本的原則と権利に関する条約)に関しては2年ごと、それ以外の条約に関しては5年ごととなっています。ただし、種々の理由により、報告書の提出を求められる回数が増える場合があり、特に基本条約ではそうなりやすい傾向にあります。
また、条約を批准したにもかかわらず順守していない国に対しては、申し立てと苦情申し立ての手続きが取られることがあります。
結社の自由の侵害に関する申し立ては、加盟国が関連条約を批准しているかどうかによらず、Committee on Freedom of Association (CFA)の特別な手続きによって審査されます。
1つ目の質問については、ある国で事業を展開する企業や団体の順守状況をILOがチェックすることはありません。条約を批准している加盟国から、その条約の規定を実施するために必要な仕組みを構築するべく国内法の制定や団体交渉協定の締結を推進し、労働行政(特に労働監督と裁判所の設置)を実施しているかどうかについて報告を受けています。
例えば、1928年の最低賃金決定制度条約(第26号)を批准している加盟国であれば、三者協議機関の設置の有無、最低賃金の決定に当たって判断材料としている要因、最低賃金の改定頻度と物価上昇との連動の有無、企業に最低賃金の支払いを義務付ける法令、最低賃金以上の報酬を受け取っている労働者の割合などを報告することになります。個々の企業や団体が最低賃金を守っているかどうかについて加盟国が報告することはありません。
一方、CFAが受理する申し立てには、結社の自由に関する特定の企業の対応を訴える内容が含まれることもあります。ただ、あくまで個別の申し立てがあって初めて審理が開始される仕組みであるため、申し立てがなければ審理が行われることはありません。また、いかなる場合であっても、申し立ての対象は加盟国政府であり、使用者ではありません。というのも、ILOの監視機構の下では、各種基準や原則の実施の徹底に対して責任を負う当事者は加盟国政府だからです。
ILOでは、NORMLEX(Ratifications by countryでは個々の条約や国ごとの批准状況、Freedom of association casesでは結社の自由に関する事案などの情報が調べられるデータベース)を運営しています。また、特定の加盟国における批准済み条約の順守状況を条約勧告適用専門家委員会がどのように認識しているのかについてSearch comments by the supervisory bodiesで確認できるようになっています。
国内の労働法違反の事案に関する情報は、国内の労働行政の管轄機関から入手できることもあります。ただ、その国が国際労働基準を批准、または順守していない場合、このことから当該の国際労働基準の順守状況をうかがえるとは限りません。
また、企業はその国の使用者団体を通じて国内の政策決定プロセスに使用者として関与するよう推奨されることもあり、こうした団体を通じて、国内の労働基準違反の事案に対する懸念を表明することもできます。さらに、こういった懸念は国際的な使用者団体によって国境の枠を超えて追及されることもあります。
多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)もご参照ください。法的拘束力はありませんが、ILOの条約や勧告による諸原則を企業がどのように実践すべきかについて提言しています。経済や社会の発展に対する多国籍企業の貢献を促すこと、および多国籍企業のさまざまな活動によって生じ得る問題を最小限に抑え、実際に生じた場合はそれを解決することを狙いとしており、雇用、訓練、労働条件や生活条件、および労使関係に関する国際労働基準の原則を企業がどのように実践すべきかを示す指針となっています。また、多国籍企業宣言の諸原則は、本国でも、進出先の国でも、多国籍企業(公営、半官半民、民営のいずれかを問わない)や加盟国政府、使用者団体や労働組合にとっての道しるべとなるように策定されています。 -
ILOでは、国内法制に関するデータベースとしてNATLEXを運営しています。こちらのデータベースは国名や分野名を指定して検索できるようになっています。
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多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)は、CSRに関する指針や、インクルージョンとサステナビリティーに配慮した責任ある職場慣行について、企業に直接的なガイダンスを提供するILO文書です。CSRや職場慣行に関する国際文書としては、政労使の三者間で策定、採択された唯一の文書であり、その原則はILOの各種条約や勧告を基盤としています。
多国籍企業宣言の第6項には、次のような記述があります。「多国籍企業には、その所有形態が完全な国有であれ、国、民間の両方であれ、また完全な民間であれ、本国外において、生産、流通、サービスその他の施設を所有するか、支配している企業が含まれる。(中略)多国籍企業内のそれぞれの構成体同士の自主性の程度は、当該構成体間の結びつきの性質及び活動分野によって、また、その所有形態、規模並びに当該企業の活動の性質及び立地場所についての広範な多様性に関係して企業ごとに大きく異なっている。」
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ILOに加盟して条約を批准できるのは政府だけですが、協同組合のような事業者は、行動規範などのCSRに関する方針や指針でILO文書に言及することができます。ILOは経済や社会の発展に対する多国籍企業の貢献を促すこと、および多国籍企業のさまざまな活動によって生じ得る問題を最小限に抑え、実際に生じた場合はそれを解決することを目的として、多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)という国際文書を採択しています。この文書では、雇用、訓練、労働条件や生活条件、および労使関係の領域における諸原則が定められており、政府や企業、使用者団体や労働組合はこの原則を自主的に順守することが推奨されています。
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調達プロセスで労働者の権利尊重の推進にご協力くださり、どうもありがとうございます。確かに、入札に参加している多国籍企業は、雇用の大部分が国内でも他の都道府県だったり、あるいは他国で行われていたりするので、その会社の事業活動で労働における基本的原則と権利(略称はFPRWで、しばしば「中核的労働基準」と呼ばれることも)の順守状況について情報を自力で入手できないときは、さまざまな課題に直面されるかと思われます。
ILOではいくつかの方法を提唱しています。例えば、FPRWについての共通認識を確立するための対策を取ることや、FPRWの尊重を目的とした施策について報告の規定を設けることなどが挙げられます。こうした規定を設ける際は、各地域や国を代表する関連した使用者団体や労働組合のほか、国際的に活動する関連した産業別労働組合との社会対話で、FPRWを順守しているという企業の主張をよりしっかりと監督するために取るべき方策についての見解を求めるのも1つの方法です。また、調達プロセスにおけるFPRWの尊重に取り組む他の自治体と連絡を取って経験談を参考にするという方法もあります[1]。
[1] 以下のサイトでは、地方自治体の責任ある公共調達についての情報が積極的に発信されているので、ぜひご参照ください。
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ILOの 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)の第8項によると、企業は「国家の法令に従い、地域の慣行を十分考慮し、関係のある国際基準を尊重すべきである」とされています。ただ、多くの場合、国内法が国際労働基準に合致していない場合でも、実際には国際労働基準や多国籍企業宣言で定められる各種原則を企業が順守することを妨げるものではありません。例えば、12歳の子どもを雇用することを認めている法律があったとしても、15歳未満の者は雇用しないという社内規則の制定は禁じられていません。
とはいえ、国際労働基準で定められる各種原則を尊重するに当たり、国内法が実質的な障害となる場合もあります。国内法やその施行によって国際行動規範に事実上抵触してしまう場合、企業各社はこの状況を是正するために関連団体や当局に協力を仰ぐことを検討した方がよいでしょう。例えば、国内の使用者団体からサポートを受けられる可能性があります[1]。また、状況の是正が不可能であり、国際行動規範を順守しないことで深刻な結果がもたらされると考えられる場合、その国や地域における事業を見直すことも、可能で妥当であれば選択肢の1つとなります。
[1] 地域ごとの使用者団体のリストは以下でご参照ください。
https://www.ioe-emp.org/members-regions -
ILOでは認証制度の運用は行っていないため、個別の認証を挙げてお答えすることはできませんが、基本的な注意事項をお伝えすることはできます。よろしければ参考になさってください。
1. さまざまな種類の労働基準を参照しましょう。ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)に定められた諸原則は、国際労働基準の基盤となるものであり、各企業で活用できます。こちらのページで多国籍企業宣言の諸原則の概要をご一読ください。
2. 国内の法令を順守し、労働協約を守りましょう。
3. 社会対話を活用し、推進しましょう。社会対話は現状の問題に対する理解を深め、解決策を明らかにするためのきっかけとなり、労働者の利益を守り、向上させるとともに、企業の持続可能な成長を促す重要な手段の1つとなります。 また、対話によって透明性が向上するだけでなく、労働者の権利を守る意義と重要性についての共通認識を確立するのにも役立ちます。社会対話を行うには当事者の独立性が求められるので、労働者の代表は、法律に準拠した形で、または関係する労働者を代表する労働組合によって、外部の干渉を受けることなく選ぶ必要があります。
また、サプライヤーのニーズや制約に対する理解を深められるよう、買い手側の企業とサプライヤーの間で協議することも重要です。サプライヤーの業務上の制約としては、納期までの時間が短いこと、注文の内容が頻繁に変わったり納期直前で変わったりすること、質の向上と納期の短縮を実現しながら同時にコスト削減を達成するよう買い手側から求められることなどが挙げられます。
4. 問題が明らかになったときは、問題解決のためにサポートを行いましょう。労働者の権利を守るために必要な是正措置が取られるよう、多国籍企業はサプライヤー(の経営陣だけでなく労働者)に助言やサポートを提供する方法を検討するべきです。
5. 労働監督のための公的な仕組みの確立に貢献し、その仕組みと連携するようにしましょう。企業の社会的責任(CSR)を果たすことは労働監督への貢献にもなりますが、ILOは民間の取り組みが公的な労働監督制度に取って代わることがないよう注視しています。民間の取り組みは、公的な労働行政を損なうことなく、これと協調して実施されるべきであり、公的機関や国内の使用者団体および労働組合と協力することが求められます。また、民営の監督制度は公的な労働監督制度の管理下に置かなくてはなりません。
6. 労働者が受ける影響やサプライヤーが負担するコストを考慮しましょう。労働者の権利保護に向けた民間の取り組みについては、「少なくとも現状では効果や効率に疑問が残る」とする文献が増えてきており、労働者にとって大きな意味がある長期的なメリットがなかなか見出せないことも珍しくありません。
また、単純に費用が増えるだけでなく、事業運営の妨げになるという点でも、サプライヤーが負担するコストを懸念する見方が広がりつつあります。その分のリソースを労働環境の改善や公的な労働監督制度の強化に費やした方がよいかもしれません。
さらに、本国だけでなく商品や製品の製造国でも、関連した使用者団体や労働組合に効果的な方針や取り組みについて意見を聞くという手もあります。
加えて、ILOはGuidelines on general principles of labour inspectionを数年前に定めています。この指針は国際的な検証を経て制定されたもので、労働者の権利保護を目的とした効果的な労働監督制度を構築する上での主な原則について専門的な情報を詳しく記載するとともに、公的機関による監督でも民間の取り組みでも、法令順守の状況を査察する際の優れた方法について提案しています。 -
国際労働基準の実施状況については、ILOの監視機構である条約勧告適用専門家委員会(Committee of Experts on the Application of Conventions and Recommendations)と基準適用委員会(Conference Committee on the Application of Standards)(総会委員会)が定期的な審査を実施しています。
いずれかのILO条約を批准している加盟国は、国内法制や労働協約、国内の労働行政(特に労働監督)を通じて条約の規定を履行するために実施されている措置について、定期的に報告することが義務付けられています。こちらのRatifications by countryで個々の条約や国ごとの批准状況を確認できます。
特定の加盟国が批准した条約の規定が国内法にどれだけ反映されているかについて、ILOの監視機構による評価を詳しく把握したい場合は、NORMLEXのSearch comments by the supervisory bodies をご利用ください。
また、多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)もご参照ください。これはILOの条約や勧告による諸原則を企業がどのように実践すべきかについて提言している文書であり、法的拘束力はありません。経済や社会の発展に対する多国籍企業の貢献を促すこと、多国籍企業のさまざまな活動によって生じ得る問題を最小限に抑え、実際に生じた場合はそれを解決することを目的としており、雇用、訓練、労働条件や生活条件、労使関係に関する国際労働基準の原則を企業がどのように実践すべきかを示す指針となっています。さらに、多国籍企業(公営、半官半民、民営のいずれかを問わない)とその本国だけでなく、進出先の国の政府や使用者および労働者の団体にとっての道しるべとなっています。 -
国際労働基準では、次のような項目が取り上げられています。
- 結社の自由
- 団体交渉
- 強制労働
- 児童労働
- 機会および待遇の均等
- 三者協議
- 労働行政
- 労働監督
- 雇用政策
- 雇用促進
- オリエンテーションと職業訓練
- 雇用の安定
- 社会政策
- 賃金
- 労働時間
- 労働安全衛生
- 社会保障
- 母性保護
- 移民労働者
- 船員
- 漁業労働者
- 港湾労働者
- 先住民・種族民
- その他特殊な類型の労働者
- 職場での暴力やハラスメント
各項目に関する国際労働基準の規定については、グローバル経済のためのルール 国際労働基準の手引き(100周年記念版)(ILO、ジュネーブ、2019年改訂版)で簡潔に説明されています。また、第3章(104ページ)では国際労働基準の通常監視手続きにおける使用者団体と労働組合の役割について触れています。
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労働の分野における各種文書や電子署名の利用を網羅的に規定する国際的な労働規範はありません。
ただし、個別の事項について規定する国際的な労働規範の中には、この点について少なくとも間接的に取り上げているものがあります。ILO条約勧告適用専門家委員会(Committee of Experts on the Application of Conventions and Recommendations)によると、賃金の支払いに銀行口座への直接電信送金や郵便為替を利用することは、1949年の賃金保護条約(第95号)の第5条が順守されている限り同条約への違反にはならないとされています[1]。
さらに、1997年の民間職業事業所勧告(第188号)には、次のような規定があります。
「11 民間職業事業所は、選考の対象となっている又はなり得る求職者の職務への適性を判断するために必要でない個人の情報を書類又は登録簿に記録することを禁止されるべきである。
12(1) 民間職業事業所は、労働者の個人の情報がその収集における目的によって正当化される限りにおいて又は労働者が職を与えられる潜在的な候補者として引き続き登録されることを希望する限りにおいて、労働者の個人の情報を保管すべきである。
(2) 労働者が自動化された若しくは電子化されたシステムにより処理された自己に関するすべての個人の情報又は書類に保存されている自己に関するすべての個人の情報を見ることができるようにすることを確保するための措置をとるべきである。これらの措置には、当該情報の写しを入手し及び調べることについての労働者の権利並びに不正確な又は不完全な情報を削除し又は訂正するよう要求する権利を含むべきである。
(3) 民間職業事業所は、特定の職業に必要とされる事項に直接関連を有しかつ関係のある労働者による明示的な許可を有する場合を除くほか、労働者の健康状態に関する情報を要求し、維持し又は使用すべきではなく、また、職務に対する労働者の適格性を決定するためにそのような情報を使用すべきではない。」
2003年の船員の身分証明書条約(改正)(第185号)でも、特定の情報を電子的形式で保存するよう加盟国に求めています。例えば、第4条第1項では次のように定められています。「加盟国は、発給し、停止し又は取り消した船員身分証明書の記録が、電子的なデータベースに保管されることを確保する。妨害又は不正利用から当該データベースを保護するため、必要な措置をとる。」[1] 第95号条約の第5条では、「賃金は、国内の法令、労働協約若しくは仲裁裁定に別段の規定がある場合又は関係労働者の同意がある場合を除く外、関係労働者に直接支払わなければならない」とされています。
“General Survey on the Protection of Wages” (ILO, Geneva, 2003)も併せてご確認ください。
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