全般的な質問
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児童労働に関しては、次の2点が問題となります。
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労働参加できる年齢になったときに就業の可能性を広げてくれるような教育の機会を子どもから奪ってしまうこと
高度な教育を受け、広い視野と幅広い技能を身に付けた、十分な知識と責任感のある成人が増えれば、社会にとってもプラスとなります。
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子どもを危険にさらしてしまうこと
農業では、長時間労働による子どもへの負担が大きすぎることや、子どもの幼い体では安全に処理しきれない恐れのある化学物質に暴露してしまうこと(安全基準は成人を前提として設定されている)がリスク要因となるほか、大型の刃物やコンバインなどの危険な道具や機械に子どもが触れる可能性があります。これらはいずれも危険な要因として考えられるため、18歳未満の若年者に対して保護を強化する必要があります[1]。
ここで注意すべき点が2点あります。まず、どの産業部門の危険性が高いと見なされるかについては各国政府が判断するという点。また、農業は危険性の高い産業部門ではなく、国内法で定められている最低年齢(基本は15歳、一部の国では14歳)に達していれば18歳未満の年少者であっても農業部門での労働が認められるという決定が一部の国で下されている可能性がある(その場合は労働組合と使用者団体を交えた三者協議を経ていることが望ましい)という点です。例えば、インドでは州によっても法律の規定が異なる場合があるなど、注意が必要です。
当然ながら、基礎的な義務教育を修了した年少者が職業教育や職業訓練の一環として農作業に従事することはあり得ます。このような場合は政府の監督下にあるプログラムとして整備し、参加者である若年労働者の安全衛生を守れるよう労働条件を厳しく精査した上で、座学と実習を組み合わせて実施する必要があります。[1] 詳しくは、1999年の最悪の形態の児童労働勧告(第190号)の第3項をご覧ください。
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児童労働の撤廃に関しては、ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)が以下の行動を推奨しています。
「多国籍企業及び国内企業は、いずれもその事業における児童労働の実効的な廃止を確実にするために就業の最低年齢を尊重すべきであり、また、緊急に対処すべき事項として、その能力の範囲内で、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するための即時かつ効果的な措置をとるべきである。」[1]
「すべての当事者は、1998年の『労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言』(2022年改定)の実現に貢献すべきである。すべての加盟国は、該当する基本条約を批准していない場合においても、まさにILOの加盟国である事実そのものにより、誠意をもって、憲章に従って、これら条約の対象となっている基本的権利に関する原則、すなわち、(a)結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認、(b)あらゆる形態の強制労働の禁止、(c)児童労働の実効的な廃止、(d)雇用及び職業における差別の排除、(e)安全で健康的な労働環境を尊重し、促進し、かつ実現する義務を負う。1998年宣言で認識された労働における基本的な原則及び権利に関する条約を批准していない国の政府に対しては、その早期の批准が求められる。多国籍企業は、自らの事業を通じ、この目的の達成に大きく貢献することができる。」[2]
また、労働関連の人権が侵害されているような状況における各関係者の責任については次のように明示しています。「多国籍企業宣言に定められた原則は、本国及び受入国の政府、労使団体並びに多国籍企業自体の行動に委ねられる。したがって、同原則は、異なる主体がそれぞれ果たすべき特定の役割を有するという事実を反映している。この点に関し、本宣言の適用上、
(a)『ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合「保護、尊重及び救済」枠組実施のために』(2011年)は、人権に関する国と企業それぞれの義務と責任の概要を定めている。指導原則は、(i)人権及び基本的自由を尊重、保護及び実現するという国家の既存の義務(『人権を保護する国家の義務』)、(ii)特定の機能を果たす特定の社会組織として、適用されるべきすべての法令を遵守し人権を尊重するよう求められる、企業の役割(『人権を尊重する企業の責任』)、並びに、(iii)権利及び義務が侵されるときに、それ相応の適切で実効的な救済をする必要性(『救済へのアクセス』)の認識をその基礎としている。(b)指導原則はすべての国家、並びに、その規模、業種、事業内容、所有形態及び構造に関係なく、多国籍企業その他のすべての企業に適用される。
(c)企業の人権尊重責任は、その事業の場所に関係なく、多国籍企業を含む企業が、(i)自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはこれに対処すること、及び、(ii)たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努めることを要求している。
(d)多国籍企業を含む企業は、少なくとも、国際人権章典、並びに労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言に定める基本的権利に関する原則において表明されたものとして理解される、国際的に認められた人権に関連する実際の及び潜在的な負の影響を特定、防止、軽減するとともに、自社がこれにどのように対処するかについて責任を持つため、デューディリジェンスを実施すべきである。
(e)多国籍企業を含む企業は、人権リスクを測定するため、自社が自らの活動を通じ、または、その取引関係の結果として関与する可能性のある、実際のまたは潜在的な人権への負の影響を特定し、評価すべきである。この過程には、潜在的に影響を受けかねない集団のほか、労働者団体を含め、該当する企業の規模並びにその事業の性質及び内容から見て適切な利害関係者(ステークホルダー)との有意義な協議を含めるべきである。多国籍企業宣言の目的を達成するため、この過程では、結社の自由と団体交渉及び継続的な過程としての労使関係と社会対話が果たす中心的な役割に配慮すべきである。」[3]
政府の責任
国際人権法および国際労働法の下で、政府は児童が労働に従事することがないよう保護する責任を負います。この責任を全うするには、効果的な政策、法律、規制、判決を通じて児童の搾取を防ぎ、調査、処罰、救済を行うための適切な対策を講じることが求められます。また、ビジネスにまつわる人権侵害から労働者を保護する責任の一環として、各国政府はこうした人権侵害が自国の領域や法域で生じたときに、被害者が効果的な救済を受けられる体制が司法、行政、立法などの適切な手段を通じて確立されるよう対策を講じなければなりません。
企業の責任
企業は国内法を順守しなければならず、人権を尊重する責任があるため、就労可能な最低年齢に関する法律に違反した場合、法的責任を問われるべきです。また、法律の制定や施行が適切に行われているかどうかにかかわらず、全ての企業に国内法の順守が求められます。最低年齢に満たない労働者を雇用することは人権を尊重する責任の放棄であり、最低年齢に満たない児童の雇用を直ちに停止し、自社が原因となっている、あるいは助長している人権への負の影響を是正することが求められます。
サプライヤーによるデューディリジェンスの実施が不十分であるか、そもそも実施されていない場合、または人権がリスクにさらされ危険な状態にある場合は、買い手側が独自にデューディリジェンスを実施する必要があります。デューディリジェンスのプロセスは、会社の規模や種別によらず、重大な負の影響をもたらすリスクや事業の性質、状況に応じてその複雑さが変わります。企業がデューディリジェンスを実施するに当たっては、その規模、事業の性質や状況に応じて、潜在的に影響を受けかねない集団や、労働組合をはじめとする他の関連するステークホルダーと有意義な協議を実施しなくてはなりません。この協議においては、結社の自由と団体交渉の中心的な役割に加え、継続的なプロセスとしての社会対話や労使関係を考慮に入れるべきです。
自社の事業運営が児童労働を引き起こしている、または助長している企業は、その事態を止め、救済を支援しなくてはなりません。また、バリューチェーン全体にわたって取引関係における児童労働を防ぎ、発生した児童労働に対処するには、影響力の行使が不可欠です。
ILOの多国籍企業宣言では経済や社会の発展への貢献を企業に奨励していますが、特に労働における基本的原則や権利の実現に貢献するよう促しており、これにはあらゆる形態の児童労働や最悪の形態の児童労働を撤廃することも含まれます。そのため、所属する産業部門において児童労働の問題が発生しているのであれば、児童労働を利用しているサプライヤーとは直接的な取引がないためこの問題に対処する義務が生じていない場合であっても、企業は対処する方法を検討するべきです。
児童労働は往々にして貧困が引き金となるものであり、一部の企業の行動だけで問題の解決に至ることはまずありません。むしろ、地域社会に直接働きかける包括的な介入が必要となります。こうした取り組みに刺激されて地域の自治体が適切な系統立った対策に乗り出すことがあり、また、児童の人権侵害に対処するための他企業と合同の取り組みにつながることもあります。[1] 多国籍企業宣言、第27項。
[2] 同上、第9項。
[3] 同上、第10項。
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企業が守らなければならない最低年齢は法律で定められており、通常は15歳ですが、国によっては14歳や16歳とされている場合もあります。国内法で定められている最低年齢が先進国で15歳未満、発展途上国で14歳未満の年齢であったとしても、企業は最低年齢を15歳(発展途上国では例外的に14歳)として考えるべきです[1]。
また、対象となる業務や作業が危険なものと見なされる(その業務の性質上、もしくは業務が遂行される環境上、児童の安全衛生や道徳を害する可能性があると判断される)場合は、18歳を最低年齢とするべきです[2]。
さらに、業務に固有の要件に当たる場合にも、最低年齢を18歳とすることがあります。
上記以外の状況では、最低年齢を16歳とすると差別に当たる恐れがあります。1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)によると、労働における差別とは、「すべての差別、除外又は優先で、雇用又は職業における機会又は待遇の均等を破り又は害する結果となるもの」を指します[3]。差別は、業務に固有の要件と直接的な関連がない特性を理由として一部の労働者が他の労働者たちよりも不利な扱いを受けているときや、同じ条件や待遇、基準が適用された結果、一部の労働者があまりに厳しい状況に置かれているときに生じます。
若年者から就業の機会を完全に奪うのではなく、適切な条件の下で就業の機会を提供することは、最悪の形態を含む児童労働を撤廃する効果的な方法の1つです。企業は最低年齢から18歳までの年少者に危険の少ないディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に就く機会を提供することで、若年雇用の促進において重要な役割を果たすことができます。また、政府の雇用政策や目標を考慮に入れて就業の機会を増やし、雇用基準を向上させることが推奨されており、多くの国で若年雇用の増強は中心的な政策目標に据えられています[4]。[1] 1973年の最低年齢条約(第138号)、第2条。
[2] 1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)、第3条(d)。
[3] 1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)、第1条第1項。
[4] 詳しくは、多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言の第16項をご覧ください。
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ILOでは、個々の企業向けの証明書は提供しておりません。より体系的なアプローチで児童労働撤廃を推進しており、買い手やサプライヤー、使用者団体、労働組合、および地域社会による協力を推進しています。
児童労働を防ぎ、就学機会を確保するための企業の方針
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児童労働という用語は、一般的に、幼いうちから労働に従事しているせいで教育を受ける機会が奪われていたり、子どもの発達が妨げられていたりする状態を指します。
多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)では、企業は「児童労働の実効的な廃止」に貢献するとともに、「緊急に対処すべき事項として、その能力の範囲内で、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するための即時かつ効果的な措置をとるべきである」と定めています[1]。「最悪の形態の児童労働」とは、児童の人身売買や子ども兵士をはじめとする奴隷的処遇や強制労働、性的搾取や不法行為における児童の利用、および指定された危険有害労働などを指します。
最低年齢は通常各国の法律によって定められており、必ず順守しなければなりません。国際労働基準では、一般的に義務教育修了時の年齢である15歳以上と定められていますが、職業訓練の中で行われる労働や軽易な労働に関しては、就学への影響がなければ13歳から例外が認められる場合があります。
発展途上国では、法律で定められている最低年齢が14歳、軽易な労働については12歳とされていることがあります。ただし、自国の方針として最低年齢を16歳に設定している国もあります(ブラジル、中国、ケニアなど)。
危険有害労働(子どもの心身や社会性、精神、知性の発達を阻害する労働)に関しては、どのような発展段階にある国でも18歳未満の者を従事させるべきではありません。また、最悪の形態の児童労働を撤廃するための取り組みを免罪符に他の形態の児童労働を正当化するべきではありません。
最悪の形態の児童労働を撤廃するための取り組みでは、女児や幼児のニーズ(特別な事情や支援の必要性)に対して特別な配慮が必要です。
なお、18歳未満による労働は必ずしも児童労働に当たるとは限らず、年齢だけでなく業務の種類や労働条件によって決まります。年少者は危険有害労働をはじめとする最悪の形態の児童労働から守るべきであると同時に、就労可能な最低年齢に達した時点からディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に就く機会を与えられるべきであるため、いわゆる若年雇用と児童労働を混同するべきではありません。軽易な労働に関しても柔軟な対応が可能であり、関係当局による承認と監督を受けている場合には、13歳(または12歳)以上の就学中の児童について認められています。
また、特定の産業部門を調達先としており、サプライチェーンから地理的に遠く離れている企業はなおさら注意が必要です。デューディリジェンスを行う過程では、自社が事業を展開する地域で児童労働の問題が起こりやすい産業部門を把握できるよう、ILOなどによる調査結果を参照する必要があります。
児童労働の撤廃のために企業が実践できる行動の具体例
- 国内の労働関係法令の最低年齢に関する規定を順守し、国内法が不十分な場合は国際労働基準も考慮する
- 採用時の年齢確認において適切で検証可能な手段を用いる
- 従業員全員の正確な最新情報が掲載された名簿を作り、随時更新する
- 法定の最低年齢に満たない児童が雇用されていることが判明した場合は、その児童を労働から解放するための手段を講じる
- また、労働から解放された児童とその家族が適切なサービスを利用し、児童労働以外の現実的な選択肢を選べるよう、可能な限り支援する
- 下請け業者やサプライヤーなどの取引先が児童労働の撤廃に取り組むよう促す
- 研修の実施やインセンティブの支給など、取引先が児童労働問題に取り組む体制を整備できるよう支援策を検討する
- 成人の従業員が子どもの収入に頼らなくても家族を養えるような賃金水準を設定する
また、児童労働を撤廃し、労働から解放された子どもたちが質の高い教育と社会的保護を受けられるように支援する地域社会の幅広い取り組みにも、企業の貢献が望まれます。
具体的には
- 他の企業や業界団体、使用者団体と連携し、業界全体で児童労働の問題に取り組むためのアプローチを確立するとともに、労働組合や警察当局、労働監督機関などとの協力関係を構築する
- 地域の、または全国的な使用者団体で、児童労働の問題に取り組む対策組織や委員会に参加するか、なければ設立する。国レベルで強制労働を撤廃するための主要政策や制度的な仕組みの一環として、児童労働撤廃に取り組むビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)の策定を支援する
- 自社の影響力が及ぶ範囲内で、児童労働の防止や元児童労働者の社会復帰のためのプログラムに協力し、教育や技能開発、職業訓練の機会を提供する
- メディアのキャンペーンをはじめとする全国的、国際的な取り組みへの参加や、地方や国の政府機関、労働組合などとの連携を可能な限り行う[2]
[1] 多国籍企業宣言、第27項。
[2] 児童労働の監視に関する情報は、“Eliminating Child Labour. Guides for Employers: Guide Two - How employers can eliminate child labour” (ILO, Geneva, 2007)の47~48ページをご参照ください。
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企業が実践できる対策としては、「経済的支援を提供する」「就学の重要性を従業員に認識してもらう」「社会的な取り組みに参加する」という3つの方法があります。
1. 児童労働の根本原因である貧困の解消を支援する:支援策として最も重要なのは、子どもを学校に通わせられる適正な賃金を成人の労働者に支給することです。企業は法律で定められる最低賃金を必ず守るようにするとともに、最低賃金が十分でない場合はそれを上回る賃金の支給を検討するべきです。しかし、労働者が自分の技能や生産性を向上させられなければ賃上げを実現できない場合もあります。そこで、以下の経済的支援策もご検討ください。
- 子どもがいる従業員に教育手当を支給する
- 従業員の子どもが教育課程を修了したときに特別手当を支給する
- 小さな子どもが学校や幼稚園などに通わず労働に従事することがないよう、社内や職場の近くに託児施設を設置する
- 同時に、子どもが宿題をしたり遊んだりするための場所として学童保育施設を設置し、子どもが労働しなくても済むようにする
児童労働の撲滅は世界共通の目標ではありますが、児童労働を防ぐために個々の企業が実践すべき適切な支援策は、国の状況に大きく左右されます。こうした支援策は、企業だけでなく労働者のニーズにも沿えるよう策定する必要があります。そのため、労働者やその代表と最善の支援策について対話することが最も効果的なアプローチだと言えます。
2. 周知徹底を図る:教育の重要性を周知させる上で、企業は非常に大きな役割を果たし得ます。原則として、経済的な支援策を実施する際は、子どもを就労ではなく就学させるという目的が果たせるように意識啓発を同時に必ず行う必要があります。
3. さまざまな活動に参加する:各企業が個別に行動を起こすという方法もありますが、児童労働の問題を解決するには、集団的な取り組みが最も効果的です。国内の使用者団体や労働組合は、それぞれの地域でどのような支援策が特に有効かといった提案やアドバイスを提供できることもあります。また、上に挙げた支援策の多くは、個々の企業が実施するには財政的に難しいとしても、使用者団体経由で、労働組合の協力を得て他企業と共同で行えば実施できるかもしれません。
さらに、企業同士が協力し合うことで、児童労働の撲滅に対する国の責任を果たすよう政府に働きかける効果が大きくなります。
例としては、
- 義務教育の無償化のための法整備
- 教員に対する適切な研修の実施
- 新たな学校の設立や教室の増設
- 質の高い教員の補充(特に農村地域)
- 学校中退者など、不利な立場にある子どもにノンフォーマル教育の機会を提供するための出資(特に農村地域)、およびHIVやエイズによって孤児となった子どもを対象とする奨学金制度の設立
- 路上生活から脱出した子どもを対象とする技能訓練プログラムの実施
- 児童労働に関する法律の実効的な適用と児童労働の監視
加えて、サプライチェーンを管理する企業はデューディリジェンスのプロセスを導入するための対策を講じるとともに、児童労働が発覚した場合には児童労働の撤廃のためにサプライヤーと協力することが求められます。
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良い通学先や職業訓練施設がない場合、対象となる児童が最低年齢になるまで賃金の支払いを続けた後、適切な職種(18歳未満であれば危険有害労働以外の職種)で再雇用した良い事例があります。また、関連する法令に準拠した見習い研修制度(徒弟制度)も妥当な選択肢となるかもしれません。事務作業など危険性のない業務に子どもたちを見習いとして従事させられないかご検討ください。
この問題に取り組むには、就労可能な最低年齢、軽易な労働に関する規定、18歳未満に禁止されている危険有害労働の一覧など、国内法の規定を理解することが重要です。
また、児童の親や成人年齢に達している家人を雇用したことで世帯収入が増加し、児童本人は働かなくても済むようになった事例もあります。貴社のケースでも子どもたちには家族がいるのだと思われますが、これは「児童労働以外の現実的な選択肢がある」という事実を理解してもらう大きな助けとなります。工場で適切な賃金を得られる仕事を親に提供できれば、子どもを働かせる必要性は大きく減少します。さらに、人事部との面談を毎日、または毎週実施することで、子どもがいる従業員への働きかけを大きく強化できます(面談の中で通学状況や職業訓練への出席状況を確認することもできます)。こうした取り組みを実施すると少なくとも短期的には工場の運営費用が増大するかもしれないため、その費用(や被害を受けた子どもの救済にかかる費用の支援)は買い手側が負担を検討する必要があります。
加えて、サプライチェーンにおける防止策の強化も重要と言えます。対策を強化しなければ児童労働が再発する可能性があり、その場合は救済が非常に困難になります。 -
企業は自社の影響力が及ぶ範囲で努力するよう求められています。社内の状況に対する責任を負うのにとどまらず、社外への影響力を行使することも可能です。例えば、取引先に児童労働を減らすよう促すだけでなく実際にサポートする、他団体と協力して啓発に努める、子どものための教育施設を充実させる広域的なプログラムを支援する、といった行動が考えられます。
貴社の取引先に対しては、「児童労働は世界中全ての企業にとって重要な問題となってきており、企業は受け身にならず先回りで対策を講じる必要がある」という認識が広まりつつあることをお伝えになってはいかがでしょうか。先回りの姿勢を心がけることで、企業はメディアの追及や政府の罰金、買い手からの非難を回避できます。また、子どもたちを労働から解放するには事前の準備と時間が必要になりますが、先手を打つことで綿密な準備ができる可能性が高まります。
特定の国や地域における児童労働の現状
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NORMLEXというILOのデータベースでは、特定の国が批准した条約について情報を提供しています。また、“Country profile”というページで各国の状況やILOの監視機構からのコメントを閲覧できるほか、各国の法制を確認できるデータベースへのリンクも掲載されています。
児童労働の現状や特徴、要因に関する世界、国別、産業別の情報は、ILOのStatistical Information and Monitoring Programme on Child Labour (SIMPOC)が公開しています。
また、国内の児童労働の問題については、国内の使用者団体や労働組合にお問い合わせください。
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ILO条約における「開発途上国」とは、「経済及び教育施設が十分に発達していない加盟国」であると定義されています[1]。この定義に該当し、最低年齢を15歳ではなく14歳に設定する資格があるかどうかは各国の判断に委ねられていますが、判断の根拠を提示するよう政府が殊更に要請を受けた事例が過去にアルゼンチンで1件だけありました。
特筆すべきは、多くの発展途上国がこの規定を活用せずに最低年齢を15歳とするか、それより高い16歳に設定していることです。
また、危険有害労働(子どもの心身や社会性、精神、知性の発達を阻害する労働)に関しては、どのような発展段階にある国でも、18歳未満の者を従事させるべきではありません[2]。
[1] 1973年の最低年齢条約(第138号)、第2条第4項。
[2] 同上、第3条、および1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)、第2条、第3条(d)、第4条。 -
ラテンアメリカにおける現状の概要と取り組みについては、ILOの児童労働撤廃プログラム(International Programme on the Elimination of Child Labour and Forced Labour (IPEC+))のWebページをご覧ください。
労働者の出生証明書と年齢確認
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1973年の最低年齢勧告(第146号)では、労働者の年齢確認について、「使用者は、その使用する児童及び年少者のみではなく、当該使用者の企業において職業指導又は職業訓練を受ける児童及び年少者の氏名及び年齢又は生年月日(できる限り正当に証明されたもの)を示した名簿その他の文書を保存し並びに権限のある機関の利用に供することを要求されるべきである」としています[1]。
年齢確認に使える出生証明書がない場合や、容易に入手できる書類が偽造文書である場合は[2]、
- 雇用前の健康診断を実施する
労働者の実際の年齢に加え、担当業務に対する身体的適性を確認できることもあります。その際、労働者のプライバシー権を必ず配慮しなければなりません。
- 複数の文書や証明書を照合する
偽造文書の特定につながります。
- 就業に必要な最低年齢に満たないと思われる従業員や採用候補者との面談を実施する
質問することで追加の情報が得られます。
- 学校の在学証明書を取得する
信頼できる情報が手に入ることもあります。
労働者が自分の生まれた正確な年を知らないという問題がある場合、出身国の歴史や習慣が参考になることもあります。例えば、アジアの一部の国では、子どもは正確な誕生年は知らないものの、申年生まれなど、干支なら言えることがあります。また、自分の生まれた年に歴史上の大きな出来事(国の独立、開戦や終戦など)や大きな周年行事があったことを知っている場合もあります。そのため、事業を展開する国の主な行事や暦について把握しておくと、年齢が疑わしい労働者との面接や面談で役に立つことがあります。
[1] 18歳未満の若年労働者の名簿を保持する使用者の義務については、1973年の最低年齢勧告(第146号)、第16項(b)をご参照ください。
[2] “Eliminating Child Labour. Guides for the Employers” , ILO, Geneva, 2008. -
1973年の最低年齢条約(第138号)を補完する1973年の最低年齢勧告(第146号)の第16項(a)では、「公の機関は、出生証明書の発給を含む出生の登録に関する効果的な制度を維持すべきである」としています。つまり、公的機関は適切な出生証明制度によって正確な生年月日を提示しなければならないのです。
証明書に記されている年齢が誤りであると考えるに足る理由がある場合、その証明書を採用時の年齢確認の根拠とするわけにはいきません。管轄する公的機関が発行した証明書に虚偽の生年月日が記載されていたとしても、年齢基準に満たない子どもを採用してもいいということにはなりません。この問題に対する公的機関の認識が不十分な場合、民間企業にできることとしては信頼性の高い出生証明書の必要性について当局の認識を促すとともに、児童労働の撲滅に取り組む現地団体と協力してはいかがでしょうか。
女児の結婚と児童労働
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たった12歳の女児でも既婚者だから成人であると国内法で見なされたとしても、その女児にとって児童労働が有害であることに少しも変わりはありません。1973年の最低年齢条約(第138号)では、就労可能な最低年齢を15歳(場合によっては14歳)に設定しています[1]。また、1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)は、危険有害労働をはじめとする最悪の形態の児童労働から18歳未満の児童を保護するよう求めています。最悪の形態の児童労働を撤廃するための取り組みでは、女児のニーズに対する特別な配慮が必要です。
ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)では、企業が「国家の法令に従い、地域の慣行を十分考慮」するとともに、「関係のある国際基準を尊重」することを奨励しています[2]。児童労働に関しては、さらに企業に対して「児童労働の実効的な廃止」に貢献し、「緊急に対処すべき事項として、その能力の範囲内で、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するための即時かつ効果的な措置をとる」ことを要請しています[3]。
児童労働は、子どもから教育を受ける機会を奪います。最悪の形態の児童労働は、幼いうちから労働に従事させるため、子どもの心身や社会性、精神、知性の発達を妨げる要因となります。
[1] 第138号条約、第2条。
[2] 多国籍企業宣言、第8項。
[3] 同上、第27項。
見習い研修制度(徒弟制度)と児童労働
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国内の法令で18歳未満の者を夜勤に従事させることが禁止されている場合、その規定を順守しなくてはなりません。該当する国内法が存在しない場合は、以下の指針を参考にしてください。
国際労働基準では、原則として18歳未満の労働者を夜勤に従事させることは禁止しています。しかし、以下のような限られた状況であれば、見習い研修制度の一環として16歳や17歳の労働者が夜勤に従事することが例外的に認められる場合があります。
- 権限のある機関により見習い研修制度の認可を受けている
- 退勤してから次の勤務に入るまで、連続13時間以上の休息時間が若年労働者に与えられている
- 夜勤に先立ち、若年労働者が業務に関する具体的で適切な指示や訓練を受けている
- 夜間の業務も含めて、見習い研修制度の実施環境を保護し、監督するための対策が講じられている
なお、見習い労働者であっても、16歳未満の年少者を夜勤に従事させることは一切認められません。
身体的発達の途上にある若年労働者は、夜間の労働によって生じる潜在的影響や、勤務場所への夜間の移動に伴う危険にさらされやすく、事故に遭うリスクも大きくなります。一方、多くの仕事で夜勤が必要になるため、夜勤を伴う職業訓練の機会や見習い研修制度を全面的に禁止すると若年労働者から大切なチャンスを奪うことになります。この2点に配慮したのが上に挙げた条件です。
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国際労働基準では、企業や訓練施設、職業教育機関、専門教育機関で年少者が職業的な指導や訓練を受ける際に、その環境を安全に保ち、監督するための対策を講じなければならないと定められています。
また、「同一価値労働同一賃金」の原則を念頭に置き、報酬の公正な支給とその保護に対して特別な注意を払う必要があります。なお、「同一価値労働」とは、量的にも質的にも他の労働者の仕事と同じ水準に達している、類似した仕事を指します。
実際には最低賃金に関する国内の法令で見習い労働者が対象から除外されていることも珍しくはなく、この状態は1970年の最低賃金決定条約(第131号)への違反には当たらない可能性があるとILO条約勧告適用専門家委員会(Committee of Experts on the Application of Conventions and Recommendations)が認めています。こうした場合は、見習い研修期間の上限や訓練の実施に関する使用者側の具体的な義務といった見習い研修制度の要件や、事業所での見習い研修がない日に職業訓練施設の講座を受講する「デュアルシステム」と呼ばれる制度の要件が通常は明確に定められています。 -
1973年の最低年齢条約(第138号)第3条第3項では、国内法令と所轄庁に従い、見習い制度の中で若年見習い労働者の安全衛生や道徳を全面的に保護することが定められています。こうした保護の取り組みは、危険有害労働を伴う見習い研修制度に参加している16~18歳の年少者を対象とするものです。
18歳以上のインターンや訓練生、就学中の労働者といった成人労働者に関しては、同様の危険有害労働に従事するための訓練を受けている他の成人労働者と同じく、身の安全やウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)が守られるべきです。
児童労働と若年雇用
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年少者は身体、知性、感情の発達の途上にあります。これは特に14~16歳の年少者に言えることですが、17歳や18歳であっても多くの面で当てはまります。そのため国際労働基準では、毎年健康診断を実施すること、労働時間の上限を明確にすること、勤務間の休息を通常より長くすること、連続24時間以上の休息を最低1回は確保することなど、若年労働者の保護強化が求められる場合があるとしています(詳しくは1973年の最低年齢勧告(第146号)や1948年の年少者夜業(工業)条約(改正)(第90号)などを参照のこと)。こうした対策は若年労働者の保護に当たって重要なものであり、上記のような国際労働基準の規定を国内法に反映させるべきです。ILOは各企業がサプライチェーンを含む自社の事業運営でこれらの対策を導入するよう求めており、対策を導入しない企業は若年労働者を正しく保護できていないと言えます。とはいえ、その状況自体が児童労働に当たるわけではありません。若年労働者の雇用自体は(法律が国際労働基準に違反していないのであれば)合法的に行われており、その雇用によって若年労働者の教育に悪影響が生じたり、発達が妨げられたりすることはないからです。
1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)では、労働における差別には「すべての差別、除外又は優先で、雇用又は職業における機会又は待遇の均等を破り又は害する結果となるもの」が含まれると定義しています[1]。差別は、業務に固有の要件との直接的な関連がない特性を理由として一部の労働者が他の労働者たちよりも不利な扱いを受けているときや、同じ条件や待遇、基準が適用された結果、一部の労働者があまりに厳しい状況に置かれているときに生じます。特に、年齢に関する差別は頻繁に生じるため、対策が求められます[2]。10代の若年者から就業の機会を完全に奪うのではなく、適切な条件の下で就業の機会を提供することは、最悪の形態を含む児童労働を撤廃する効果的な方法の1つです。企業は最低年齢から18歳までの若年者に危険の少ないディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に就く機会を提供することで、若年雇用の促進において重要な役割を果たすことができます。また、政府の雇用政策や目標を考慮に入れて就業の機会を増やし、雇用基準を向上させることが推奨されており[3]、多くの国で若年雇用の増強は中心的な政策目標に据えられています。
企業が守らなければならない最低年齢は法律で定められており、通常は15歳ですが、国によっては14歳や16歳とされている場合もあります。国内法で定められている最低年齢がこの水準(先進国であれば15歳、発展途上国であれば14歳)を下回っていたとしても、企業は最低年齢を15歳(発展途上国では例外的に14歳)として考える必要があります[4]。
また、対象となる業務や作業が危険なものと見なされる(その業務の性質や業務が遂行される環境上、児童の安全衛生や道徳を害する可能性があると判断される)場合や、最悪の形態の児童労働と同様であると見なされる場合は、18歳を最低年齢とするべきです[5]。さらに、業務に固有の要件として考えられる場合にも、最低年齢を18歳とすることがあります。それ以外の状況では、こうした年齢制限は差別に当たる恐れがあります。
[1] 1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)、第1条第1項。
[2] “Equality in Employment and Occupation”, ILO, Geneva, 1996, para. 243.
[3] 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言、第16項。
[4] 1973年の最低年齢条約(第138号)。
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18歳未満の年少者を雇用する際は、労働条件を厳格に監督できるよう対策を講じる必要があります。1973年の最低年齢勧告(第146号)では、以下のような方法が挙げられています。
- 「教育及び訓練(家庭における学習に必要な時間を含む。)、労働日における休息並びに余暇活動のために十分な時間がとれるような一日及び一週間の労働時間に対する厳格な制限並びに時間外労働の禁止」
- 「夜間における継続十二時間以上の休息及び慣例的な週休日の付与(真に緊急な場合を除くほか、例外の可能性が認められない。)」[1]
また、1999年の最悪の形態の児童労働勧告(第190号)によると、危険有害労働に当たるかどうかを判断する際は、「長時間の業務(中略)のような特に困難な条件の下」で業務が行われないか考慮する必要があります。危険有害労働の最低年齢は18歳です[2]。
[1] 第146号勧告。
[2] 第190号勧告。
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