カタール労働市場の変革
カファーラ制度の解体と最低賃金の導入により、カタール労働市場の新時代が開幕
2020年08月30日
2020年8月30日に成立した複数の法によってカタールの労働市場に大きな変化が導入されました。2020年法第17号によって、国籍を問わず、全ての労働者に同一の最低賃金が適用されることとなり、2020年法第18号により、移民労働者には使用者の許可を得ずに転職する自由が与えられました。
官報公布日から6カ月後に施行される法第17号は、中東地域初の非差別的最低賃金法を導入するものとして、家事労働者を含むあらゆる産業部門のあらゆる労働者に1,000カタール・リヤル(約2万9,000円)の最低賃金基本額を適用します。使用者は加えて、労働者に人並みの住まいと食料を確保する必要もあり、直接提供しない場合には、食事手当300カタール・リヤル(約8,650円)、住宅手当500カタール・リヤル(約1万4,000円)を支払わなくてはなりません。これは労働者に人並みの生活水準を確保する助けになると考えられます。
法第18号によって、移民労働者は今後、契約終了前でも使用者から異議なし証明書を取得せずに転職できるようになります。今年既に実施された出国許可取得要件の撤去と組み合わせることによって、新法はカファーラ保証人制度を実効的に解体し、カタール労働市場の新時代の幕開けを画するものとなります。
これらの法の成立は、カタールの「2030年国家ビジョン」の主要な目標であるところの、より生産的で高技能の労働力に向けた移行を支えるものです。これはまた、新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行による景気下降からの回復、そしてより長期的な経済成長の促進を助けることが期待されます。
さらに、異議なし証明書取得の必要性を取り除いただけでなく、2020年法第19号の成立によって、雇用終了に関する明確化が図られました。契約を終了し、転職を希望する労働者は今後、勤続期間が2年以下の場合は1カ月前までに、2年超の場合には2カ月前までに書面による退職通知を出さなくてはなりません。
労働力の流動性の増大は、知識基盤型経済への移行を目指すカタールに数多くの利点をもたらすと期待されます。使用者が海外からではなく地元の経験豊かな人材を採用できるようになれば、採用関連経費を大幅に削減できます。流動性の向上はまた、より多くの雇用機会を生み、仕事に対する労働者の満足度を高めることが期待されます。非差別的な最低賃金の導入は民間セクターで働く約40万人に直接影響を与えるだけでなく、送金額の増大によって移民の母国で暮らす数百万人の家族の生活を改善することが予想されます。最低賃金法の遵守を確保するため、政府はより迅速な罰則の制定、監督官のさらなる能力強化を通じて違反事例摘発の仕組みの改善を図っています。
ユースフ・モハメド・アル・オスマン・ファクハルー行政開発・労働・社会事項大臣は、カタールの公約として、「近代的で活気ある労働市場の形成」を挙げ、「2030年カタール・ビジョン」に沿ってこの新法がこの旅程における大きな里程標となり、労使のみならず、国家全体に利益をもたらすことへの期待を述べています。
国際労働組合総連合(ITUC)のシャラン・バロウ書記長も「これはカタールの移民労働者にとって実に良いニュース」と歓迎し、「カタール政府が示したカファーラ制度解体と最低賃金導入に向けたリーダーシップは、全ての労働者が長く待ち望んでいた知らせ」であるとして、全ての労働者が新たな規則を認識し、その恩恵を受けるよう確保するために、この歴史的な動きの実行においてITUCはカタール政府を支援する用意があると述べ、カタールを範として、地域の他の諸国も後に続くよう呼びかけました。国際使用者連盟(IOE)のロベルト・スアレス=サントス事務局長も「この改革はカタールの労働市場の効率性と生産性に大いに寄与することとなりましょう。IOEはこの移行期の使用者支援において政府とカタール商工会議所を支える用意があります」として、政府と会議所の両方に祝意を伝えました。
ILOはカタールの行政開発・労働・社会事項省、労使団体と緊密に協働し、同国における労働市場の流動性と最低賃金に関わる新法、政策、手続きの成立及び向上を支援してきましたが、新法の実施と施行についてもさらなる支援が提供されます。ガイ・ライダーILO事務局長は、「この重要な変化を導入することによって、カタールは労働者により多くの自由と保護、使用者により多くの選択肢を提供するという公約を果たしました。私たちは今、政労使がILOと協働して全ての人にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進した時に何が達成できるかを目撃しているのです」と評しています。
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