2006年の海上の労働に関する条約(改正)

正 式 名 : 2006年の海上の労働に関する条約
(原条約-第94回(海事)総会で2006年2月23日に採択、
2014年の改正-第103回総会で2014年6月11日に承認、
2016年の改正-第105回総会で2016年6月9日に承認、
2018年の改正-第107回総会で2018年6月5日に承認。
発効日:原条約-2013年8月20日、2014年改正-2017年1月18日、2016年改正-2019年1月8日、2018年改正-2020年12月26日。
最新の条約)

日本の批准状況:2013年8月5日に批准。2014年改正文書については2017年5月18日に受諾したことにより、同年11月18日に発効。2016年改正文書及び2018年改正文書については、各文書発効日に発効 ◆批准国一覧(英語)

条約の主題別分類:船員  条約のテーマ:船員

[ 概 要 ]

 1920年以降に採択された海事分野の68の条約・勧告を統合し、更新する条約。船員の「権利章典」とも呼ばれる包括的な基準。海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS)、船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約(STCW)、船舶による汚染の防止のための国際条約(MARPOL)といった国際海事機関(IMO)の3つの重要な条約と並び、国際海事規則体系の「第4の柱」とも称される。その包括性を象徴するように、これまで採択順に付されていた通し番号が付されていない。
ILOの条約としては全く新しい様式をとり、従来の条約部分に相当する強行規定と勧告部分に相当する任意規定がどちらも盛り込まれている。批准国の基本的な義務と中核的な権利及び原則を定める条文本文(article)と規則(regulation)、そして規則の実施に関する詳細な内容を含む規範(code)の3部構成になっている。規範のA部が強制的な基準(standard)でB部が任意の指針(guideline)になっている。産業の変化に対応し、技術規定を迅速に更新できる改正手続きも導入されている。
船舶で働く船員のための最低限の要件を定め、雇用条件、労働・休息時間、居住設備、レクリエーション用の設備、食料及び料理の提供、健康保護、医療、厚生、社会保障に関する規定を含む。ジャンク船のような伝統的な構造の船と漁船を除き、商業活動に従事するあらゆる外航船に適用される。旗国による自国籍船の管轄権及び監督義務の明記、船上及び陸上における船員の苦情申立て手続きの整備、船主及び船長による船舶状況監督義務の明記、寄港国における検査などポートステートコントロールの強化、条約未批准国の船舶が批准国の船舶より有利な取扱いを受けないことを求める規定などを通じ、全世界レベルで条約内容を実施していくための仕組みを措置している。また、船員の労働条件証明書の仕組みを導入し、国際航行に従事するか、外国港間を運航する500総トン以上の船舶は「海上労働証書(Maritime Labour Certificate)」と「海上労働遵守措置認定書(Declaration of Maritime Labour Compliance)」を備え付けるよう規定している。認定書は、該当する国内法規その他、条約の実行に必要な措置の常時遵守を確保するための船主の計画を定めるもので、船長はこの明記された船主の計画を実行し、条約遵守の証拠となる適正な記録を維持する責任があり、旗国はこの船主の計画を点検し、それが備え付けられ、実行されていることを確認した上で証書を出すこととなっている。
発効要件は、その合計船腹量が総トン数で世界全体の船腹量の33%以上を占める30カ国以上の批准。
本条約が改正する条約は次の通り。

 本条約の条文と規則の改正には通常の基準改正手続きが適用され、総会でしか行えないが、規範部分については、批准国政府と船員・船舶所有者の代表で構成される特別三者委員会で改正する道も開かれている。2014年4月に開かれた委員会第1回会合で、外国の港に遺棄された船員のより良い保護に向けた金銭上の保証に関する規定の追加、そして職業上の負傷、疾病、危険に起因する船員の死亡または長期の障害に係わる補償のための船舶所有者による金銭上の保証の提供に関する規定をより詳細なものとすることを目指して関連規範(第2.5規則及び第4.2規則)の改正が検討され、4月11日に、A2.5基準及びB2.5指針への金銭上の保証に関する規定の追加、船舶所有者の責任に関するA4.2基準及びB2.5指針の改正、それぞれに付随しての新たな付録(A2-I、A4-I、B4-I)の挿入及び付録A5-I、A5-II、A5-IIIの改正を内容とする2014年の改正文書が採択され、第103回ILO総会で2014年6月11日に承認された。この改正については、条約の規定に従い、2016年7月18日を期限とする異議通告期間が設定され、この満了に伴い、通告期限の6カ月後に当たる2017年1月18日に正式に発効した。

 2016年2月に開かれた特別三者委員会の第2回会合でも条約規範部分の改正提案が検討され、船上における嫌がらせといじめの問題により良く対処するために健康及び安全の保護並びに災害の防止に関する第4.3規則を、そして海上労働証書の更新手続きを国際海事機関(IMO)の条約に沿ったものとすることを目指して旗国の責任に関する第5.1規則を改正することが承認された。2016年の改正文書は、第105回ILO総会で2016年6月9日に承認された。この改正については、条約の規定に従い、2018年7月8日を期限とする異議通告期間が設定され、この満了に伴い、通告期限の6カ月後に当たる2019年1月8日に正式に発効した。

 2018年4月に開かれた特別三者委員会の第3回会合でも条約規範部分の改正提案が検討され、海賊や武装強盗によって船舶が襲撃され捕らわれている間も船員の賃金その他の雇用関連資格が保護されるよう、船員の雇用契約に関する第2.1規則、賃金に関する第2.2規則、送還に関する第2.5規則の関連する規定の改正が承認された。2018年の改正文書は、第107回ILO総会で2018年6月5日に承認された。この改正については、条約の規定に従い、2020年6月26日を期限とする異議通告期間が設定され、この満了に伴い、通告期限の6カ月後に当たる同年12月26日に正式に発効する運びとなった。今後、本条約は改正された形で批准・適用されることになる。

◎詳しい情報

■ 英語原文(2018年改正分までを組み込んだ現行版)
■ 2014年改正分を組み込んだ現行日本語訳文(準備中)
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