統治機構

第109回ILO総会

史上初のバーチャル形式で開催される第109回ILO総会(英語・44秒)

 新型コロナウイルスの世界的大流行の結果を受けて、2020年から延期になっていたILOの第109回年次総会が史上初のバーチャル形式で開催されます。日本を含む187の加盟国から政府、使用者、労働者の代表が参加する関係上、時差に配慮した特別の取り決めとして、今回は2021年5月20日に開幕して議長・副議長を選出し、バーチャル形式での開催に必要な手続きなど、総会を始動させるための手続き事項について決定した後、グループ別会合や一部委員会の会合を経て、6月3~19日に第1部、11月25日~12月11日に第2部を開くという2部構成を取ります。

 本会議の会合は6月7日から始まり、理事会議長及び事務局長の報告が提出された後、労使グループの代表が冒頭演説を行います。特別ゲストとしてスイス大統領の演説も予定されています。

 6月17~18日に開かれる仕事の世界サミットは「人間を中心に据えた新型コロナウイルス対応のための国際行動」をテーマとし、国家元首・政府首脳の演説が行われるハイレベル会合と政労使代表によるパネル討議の2部構成となります。8.7連合の後援の下、国連児童基金(UNICEF)との共催で、6月10日に開かれる児童労働反対世界デー(6月12日)記念イベントでは、昨年8月に達成された「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」の全加盟国による批准を記念すると共に、児童労働に関する新たな世界推計と動向をまとめた報告書が発表されます。

 議題は以下の七つです。この他に、ILOの新型コロナウイルス対応に関する特別成果文書、ILO加盟国の平等原則と政労使三者構成によるILOの統治機構における全地域公正な代表に関する決議案、ILO総会議事規則改正案などの採択を目指した討議も行われます。2020年に予定されていた理事の選挙も行われます。第4及び第6の二つの一般討議議題は秋の第2部で扱われます。

  1. 理事会議長及び事務局長の報告
     2019年の総会以後2年分の活動をまとめた理事会の業務報告、2018/19年のILOの事業実施報告(Report IA)、新型コロナウイルスの世界的な大流行へのILOの対応をテーマとする事務局長報告(Report IB)、2020、、2021年の2年分のアラブ被占領地の労働者の状況に関する事務局長報告付録という計5冊の議題資料をもとに本会議で審議が行われます。
     『新型コロナウイルスの時代の仕事』と題する事務局長報告は、新型コロナウイルス危機の社会及び経済に対する影響、危機対応、これまでに学んだ教訓、人間を中心に据えた回復をもって前向きのより良い立て直しを達成するという課題についてまとめています。総会での採択を目指して提出される成果文書「新型コロナウイルス危機からの人間を中心に据えた回復のための包摂的かつ持続可能で強靱な行動に対する世界的呼びかけ」が付録として挿入されています。
     
  2. 事業計画・予算その他の問題
     ILOの事業計画は2暦年制となっており、2022/23年の次期事業計画・予算案及び2019年末締め2020年末締めの2冊の財務諸表と監査済連結財務諸表の検討・採択に加え、2022年予算の分担金率、ILO行政審判所の審判員の構成、定款改正案など、決定が必要なその他の財務・総務事項が政府代表で構成される財政委員会で検討されます(Report II)。
     提案されている2022/23年の事業計画・予算案は実質ゼロ成長という長期的な趨勢に沿ったものですが、2020/21年の為替レートで総額7億9,064万ドル(名目1.63%増)になっています。加盟国による人間を中心に据えた新型コロナウイルスからの回復努力の支援を総合目標に、2020/21年の事業計画と同じ八つの成果目標(1.強い加盟国政労使と影響力があり包摂的な社会対話、2.国際労働基準並びに権威及び実効性のある適用監視、3.経済、社会、環境の諸面におけるすべての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、完全雇用、生産的な雇用、職業の自由な選択への移行、4.雇用を創出し、革新性とディーセント・ワークを促進する持続可能な企業、5.労働市場への参加、市場内での移行を円滑化する技能と生涯学習、6.男女平等並びに仕事の世界におけるすべての人の機会平等・均等待遇、7.就労に関わるすべての人の適切かつ効果的な保護、8.すべての人を包括した持続可能な社会的保護)に沿った活動が提案されています。
     ILOの分担金率は国連の分担金率に則って定められ、2022年の日本の分担金率は、2021年同様、米国(22%)、中国(12.01%)に次ぐ8.568%となる予定です。
     
  3. 条約・勧告の適用に関する情報と報告
     加盟国から寄せられた憲章第19条に基づく現況報告と第22条に基づく批准条約実施報告を検討した条約勧告適用専門家委員会の報告書が議題資料として提出され、基準適用委員会でこれに基づく審議が行われます。条約勧告適用専門家委員会の報告書は、委員会の構成やILOの基準関連活動を記した一般報告に加え、批准条約適用報告書を検討した上で、専門家委員会がまとめた見解が国・条約別に記されている『一般報告及び特定国に関する見解(Report III(Part A))』及び雇用分野の基準を取り上げた総合調査報告(Report III(Part B))の2冊で構成されています。また、2020年に加盟国から寄せられた前年の補足情報を検討したものがそれぞれ補遺(Report III(Part A Addendum) & Report III(Part B Addendum))として提出されており、議題資料は計4冊になります。
     一般報告中には、新型コロナウイルス危機の時代における国際労働基準の適用について一節が設けられており、1)危機下でも批准された国際労働基準に基づく義務は停止されるわけではないこと、2)労働条件の低下を防ぎ、就労に関わる権利を全面的に尊重しつつ、回復と開発の好循環を追求するあらゆる努力を尽くすべきこと、3)社会対話の重要性、4)国際労働基準とそれを下支えする諸原則、とりわけ政労使三者構成原則と社会対話に沿った各国の社会・経済回復計画の立案、の四つの原則が強調されています。さらに、コロナ禍から生じた具体的な課題として、1)合法性、必要性、比例性、非差別といった国際法の定めるパラメーターに則った権利・自由の制限、2)人権の普遍性、不可分性、相互依存性、相互関係の維持、3)差別と疎外に既に弱かった集団の窮状が増していること、の三つが挙げられています。
     A部には各国の批准条約適用状況について1,100件以上の見解が記されています。日本についても「1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)」、「1951年の同一報酬条約(第100号)」、「1964年の雇用政策条約(第122号)」、「1981年の家族的責任を有する労働者条約(第156号)」の適用に関連し、消防職員・刑務所職員の団結権、公務部門職員の労働基本権、同一価値労働に関する法規定、非正規労働者への第156号条約の適用、育児・介護における男女平等などについての見解が掲載されています。政府から寄せられた新型コロナウイルス関連などの雇用措置に関する報告については引き続きの情報提供が求められ、働き方改革関連法については効果的な実施への期待が表明されています。
     『変化する景観の中での雇用とディーセント・ワークの促進』と題するB部は、第122号条約、「1983年の職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(第159号)」と同時に採択された同名の勧告(第168号)、「1984年の雇用政策(補足規定)勧告(第169号)」、「1996年の在宅形態の労働条約(第177号)」と同時に採択された同名の勧告(第184号)、「2006年の雇用関係勧告(第198号)」、「2015年の非公式な経済から公式な経済への移行勧告(第204号)」といった雇用分野の3条約、5勧告の実施に関して、加盟国政府と労使団体から寄せられた情報をもとにまとめられています。新型コロナウイルスの世界的大流行の影響に絞った補遺が別途発表されています。
     第122号条約と第169号勧告は、雇用促進、貧困削減、すべての人の生活水準の向上に焦点を当てた国の雇用政策及び雇用分野の事業計画の策定に向けた手引きを示しています。雇用関係は労働者保護の基盤であるとの理念の下、第198号勧告は雇用関係を特定するための諸要素を示しています。第204号勧告は全ての国に存在する非公式経済の様々な側面を示し、公式経済への移行にとって重要な政策を列挙しています。第177号条約と第184号勧告は、世界中で多くの人が従事している在宅形態の労働について、労働条件の改善と均等待遇の促進に向けた国の政策の策定を求めています。世界人口の15%近くが何らかの障害を抱えているとみられますが、第159号条約と第168号勧告はこういった人々が開かれた労働市場で職業に就き、これを継続し、その職業において向上することを可能にするための手引きを示しています。
     8章構成の本書は、今日存在する雇用関係、各国の取り組み、ディーセント・ワークの欠如や法規制の欠陥の可能性の相当の多様性を示すものとなっています。要約、序章に続く、第1章では第122号条約と第169号勧告、第2章では第198号勧告、第3章では第204号勧告、第4章では在宅形態の労働者、第5章では障害を有する労働者の状況を取り上げた後、第6章で各国が包摂的な雇用政策を策定・実施するために講じうる措置を示し、第7章で効率的で強力な統治の仕組みを確保する上での利用しやすいモニタリング・遵守の手続きや仕組みの重要性に光を当て、第8章で以上の基準の批准と実施の展望及び課題をまとめています。日本は第122号条約と第159号条約は既に批准しています。第177号条約の批准見通しについて、政府は、工業分野の在宅形態労働者については条約を手引きとした家内労働法で保護する措置が講じられているものの、国内事情を考慮に入れて慎重に検討したいとしています。
     補遺は第1部で雇用政策、第2部で雇用関係、第3部で非公式経済から公式経済への移行、第4部で在宅形態労働、第5部で障害を有する労働者のそれぞれに対する新型コロナウイルスの影響を検討した上で、「すべての人により良い未来を構築する」と題する第6部で、国の雇用政策及び雇用分野の事業計画は包摂的な対話を通じて人民全てのニーズと懸念事項を考慮に入れるべきと説き、若者や高齢者、HIV(エイズウイルス)と共に生きる人、移民労働者などの特に脆弱な集団の状況について特記しています。第7部で、適切な新型コロナウイルス対応と回復・強靱性に寄与する社会対話確保の重要性を強調した上で、今回取り上げられた雇用分野の国際基準が掲げる諸原則とその効果的な適用に関する委員会の結論及び勧告は新型コロナウイルスとその後の時代においてかつてないほど妥当なものと言えると結んでいます。
     
  4. 一般討議-不平等と仕事の世界
     新型コロナウイルスの世界的な大流行以前から多くの国で不平等の拡大が問題になっていましたが、コロナ禍はこの問題を浮き彫りにすると同時に、多くの場合、一層深刻化させています。4章構成の『不平等と仕事の世界(Report IV)』と題する議題資料は、第1章で多様で複雑な不平等の問題と最近の傾向を概説した後、第2章で労働と勤労所得の不平等な分布、非公式経済、生産性格差、男女差別、社会的保護のギャップ、契約取り決めにおける差異といった、仕事の世界の不平等に影響を与えている様々な側面を取り上げ、第3章で不平等を縮小できる可能性がある措置や政策の例を紹介し、「公正と尊厳を伴った成長の分かち合いに向けて:ILOの不平等対応提案」と題する第4章で可能な道を示しています。
     
  5. 2008年に採択された「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」のフォローアップ手続きに基づく討議-社会的保護(社会保障)の戦略目標に関する反復討議
     「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」のフォローアップ活動として、ディーセント・ワークを全ての人に実現することを目指すディーセント・ワーク課題の四つの戦略目標(雇用、社会的保護、社会対話、労働における基本的な権利・原則)について、活動計画の策定などを目指して一つずつ順番に討議を繰り返す反復討議の第8回目として、社会的保護(社会保障)の戦略目標について前回2011年に続く2回目の討議が行われます。前回の討議では、適用範囲と保護水準という縦横両方向での社会保障の拡大に向けたILOの戦略が支持され、ほぼ全会一致での「2012年の社会的な保護の土台勧告(第202号)」の採択につながりました。社会的保護の拡大に向けた相当の努力が世界各地で見られるものの、新型コロナウイルスの世界的な大流行は、世界人口の大半にとって人権としての社会保障が実現されていないという現実を露わにしました。
     『人間を中心に据えた仕事の未来に向けた社会的保護の未来の構築』と題する討議資料(Report V)は、5章構成を取り、第1章「人間の尊厳、社会正義、持続可能な開発のための普遍的社会的保護」でこの分野でのILOの役割に注意を喚起した上で社会的保護をコストではなく人間の尊厳、社会正義、持続可能な開発の前提条件と考えるパラダイムの転換について論じた後、第2章「賞賛すべき進展が見られるものの、相当のギャップが残る」で近年の進展をまとめ、第3章「普遍的社会的保護達成に向けた課題、機会、政策対応」で各国の政策対応・活動を評価し、第4章「願望を現実に変えるための加盟国政労使へのILOの支援」で普遍的社会的保護をすべての人に達成するための加盟国の努力に対応するILOの活動を紹介し、第5章「社会的保護をすべての人へ:2030アジェンダと新型コロナウイルスからの回復の文脈で変化を起こすための9年間」で今後の活動を提案しています。
     討議ポイント案と報告書で用いられているデータの最新版へのリンクを示した補遺が別途発表されています。
     
  6. 一般討議-技能と生涯学習
     2019年の総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」でも強調されているように、勤労生涯を通じた技能、職業能力、資格の取得、そして生涯学習を通じて変化する仕事の世界が提示する機会から利益を得られるようにすべての人の能力を強化することの重要性が近年高まってきています。教育・訓練制度とそれが対象とする労働市場及び社会の変化に鑑み、技能と生涯学習の概念を再検討し、政策及び制度・機構の設計・実施を形作る主な問題を吟味し、ILOの現在及び今後の活動の優先事項を定めるのは時宜を得たことと言えます。秋の第2部で行われるこの議題に関する一般討議を通じて、人々がディーセント・ワークの機会を利用できる正しい技能を備え、企業が技能の育成と活用を通じて繁栄することができるよう、誰も置き去りにしないことを究極目標に、生涯学習を支える、技能に関する仕組み・政策の設計・実施に関する、より焦点を絞った革新的な手引きと方向性が示されることが期待されます。
     
  7. 条約・勧告の廃止・撤回
     総会は、理事会の提案に基づき、所期の目的を失ったか、ILOの目的達成に当たりもはや有益な貢献をしていないことが明らかな条約を、出席代表の投票の3分の2の多数によつて廃止することができます。同じ手続きは、未発効条約と勧告の撤回についても適用されます。
     2017年9月に開かれた基準見直し機構三者構成作業部会第3回会合と2018年4月に開かれた「2006年の海上の労働に関する条約(改正)に基づき設置された特別三者委員会第3回会合」の提案に基づき、「海上の労働に関する条約」で改正された海事分野の以下の8条約の廃止及び未発効の9条約の撤回、時代遅れと判断された主として海事分野の11勧告の撤回が提案されています。
     以上は当初2020年の総会で審議されるはずのものでしたが、加えて、「1933年の有料職業紹介所条約(第34号)」の撤回も提案されています。これは元々2021年の総会で審議されることになっていたものです。第34号条約は、「1949年の有料職業紹介所条約(改正)(第96号)」で改正され、時代遅れと判断されています。
     『8本の国際労働条約の廃止並びに9本の国際労働条約及び11本の国際労働勧告の撤回』と題する、関連情報と廃止・撤回提案に対する加盟国政労使の意見を尋ねるアンケートを掲載した報告書(Report VII A(1))とアンケートに対する回答を掲載した報告書(Report VII A(2))、『1本の国際労働勧告の撤回』と題する、関連情報と撤回提案に対する加盟国政労使の意見を尋ねるアンケートを掲載した報告書(Report VII B(1))とアンケートに対する回答を掲載した報告書(Report VII B(2))の計4冊の討議資料が準備されています。この議題は選考委員会で審議されます。

 本ページは総会ウェブページ(英語)の簡易版です。参加手続きの詳細など出席者向け案内や議事日程など最新の情報については、英語ページをご覧ください。7日からは本会議の模様の動画配信ブログ記事の随時配信に加え、毎日日本時間23時半からその日の主な出来事や日替わりテーマを扱う30分間のデイリーショーを通じて総会の動きを追うことができます。