新刊:アラブの労働市場
ILO/ESCWA新刊:アラブ地域の失業水準は世界一
2021年08月19日
ILOと国連の西アジア経済社会委員会(ESCWA)は、2021年8月19日に、地域の失業水準が女性と若者を中心に世界一高く、新型コロナウイルスの世界的大流行が始まる前から失業者数は既に1,430万人に達していたことを示す新刊書を発表しました。この現実は公式(フォーマル)部門を中心とするアラブ労働市場の公平で十分な雇用を創出する力を疑問視させるものとなっています。
『Towards a productive and inclusive path: Job creation in the Arab region(生産的で包摂的な道へ:アラブ地域における仕事の創出・英語)』と題する新刊書はさらに、地域では人口動態の変化、不安定な政治情勢、財政・金融の安定性の低さを理由として、非公式(インフォーマル)な就業者が多く、就業者全体の3分の2あまりを占めることも指摘しています。
また、この地域では製造業、宿泊業、不動産業、対事業所・事務サービス活動といった幾つかの産業部門にコロナ禍が深刻な打撃を与えており、一時解雇や労働時間・賃金減少の脅威にさらされている就業者は3,980万人に上ることを示しています。さらに、地域の訓練制度と教育カリキュラムが労働市場のニーズに合っていないことから相当の技能ミスマッチが発生しており、実際、企業所有者の4割が、労働力の教育が不十分なことを地域の障害に挙げています。
本書はまた、政策論調と労働市場の現実の矛盾も指摘しています。政策策定者は雇用創出における小規模企業の役割を常に喧伝してきたものの、その雇用の伸びは最も低く、年に1%に留まっています。一方で政治不安と紛争が地域の主な障害である状況は変わらず、企業成績を損ない、投資家や消費者の信頼感に影響を与え、その結果、投資や消費が制限されています。
ローラ・ダシチESCWA事務局長は女性企業所有者比率の低さや一般的に経営トップに女性がほとんどいない現状から示されているアラブ労働市場における男女平等の欠如を強調し、「女性がキャリアを進め、ますます高まる教育水準を活用できるよう、労働市場における性差別的な認識に挑まなくてはなりません」と説いています。ルバ・ジャラダットILOアラブ総局長は新型コロナウイルスの世界的大流行が最も脆弱な労働者に影響を与えているものを中心に、地域に元々存在していた労働市場の欠陥に対処する必要性に光を当てたとして、「危機は若者、障害者、女性、インフォーマル就労者、移民、難民に特に破壊的な影響を与えており、人間を中心に据えた回復を進める行動指向型の行程表を作り、経済保障、機会平等、社会正義を提供するような、より良い未来の構築が決定的に重要」と説いています。そして、アラブの政府及び社会的パートナーである労使団体との協働によって緊急に求められている改革を起こす必要性を強調して次のように述べています。「正しい政策の組み合わせ、正しい調整枠組み、労使代表の実効的な関与によって、回復の成功とより包摂的な仕事の未来に向けた効果的な移行を確保できるでしょう」。
ダシチ事務局長も「どんな危機にも機会があります。前向きのより良い立て直し、そしてアラブ地域の労働市場がより若い世代に繁栄を提示し、人々が貧困に陥るのを防止し、不平等を縮小することを将来的に確保することによって現下の課題を克服できるでしょう」と希望を示しています。
報告書はフォーマル・セクターを中心に労働市場の欠陥を縮小し、域内全域にわたり、人間らしく働きがいのある就労機会の創出と経済成長の主要な推進要素となるこの経済部門の潜在力を解き放つ手引きを政策策定に携わる人々に示しています。