児童労働新刊

ILO等新刊書-紛争と集団避難によってアラブ地域で児童労働が増加

2019年03月20日

 アラブ連盟(LAS)及びアラブ児童期育成審議会(ACCD)の委託を受け、ILOが国連食糧農業機関(FAO)と共に主導国連機関として監修した新しい報告書『Child labour in the Arab region: A quantitative and qualitative analysis(アラブ地域の児童労働:定量・定性分析・英語/アラビア語)』は、中東及び北アフリカのアラブ地域でこの10年に見られる紛争と戦いの広がりに対応し、難民、避難民、その他の集団の間で児童労働が増加していることを明らかにしました。

 2014年11月に開かれた第20回アラブ児童期委員会(ACC)から出された、対象をより良く定めて児童労働問題に取り組む政策及び介入活動の設計に向けた第一歩として、22のアラブ連盟加盟国における子どもの就労に関する理解のために、主な傾向を示すよう求める勧告を受けてまとめられた初の報告書は、3月7日にカイロのアラブ連盟本部で発表され、加盟国から承認されました。本書は、「過去10年、この地域で見られた武力紛争発生率の高さは、集団的な国内避難民及び国際難民を引き起こし、状況は確実に悪化した」として、地域の複数の箇所でますます多くの子どもが最悪の形態の児童労働に引きずり込まれ、深刻な搾取、虐待、権利侵害に直面していることへの懸念を示しています。

 フランク・ハゲマンILOアラブ総局次長は、「体系的かつ包括的に収集された地域の過去のデータがないために近年の児童労働増加を正確な数字で評価することは困難」と前置いた上で、それでもなお報告書は、「最近の経済ショック、政治混乱、紛争、戦いの影響によって、児童労働発生率の数値がこれまでに得られたものよりも悪化し、政策策定や実際の措置を通じてアラブ諸国で達成された児童労働撲滅に向けた進展の多くが後戻りしていることを明らかにしています」と指摘しています。さらに、「地球上のどこの地域でもそうであるように、この地域でも紛争の影響は子どもと女性に特に大きく、この結果、地域で多分最も重要な児童保護問題として児童労働が浮上し、緊急の注意と活動が要請されています」と説いています。

 報告書はまた、難民の子どもと避難民の子どもでは活動部門が異なることや、街頭での仕事、債務奴隷労働、早婚、商業的性的搾取の顕著な増加、難民及び避難民の子どもの児童労働は主に極度の貧困状態にある家族や大人に仕事がない場合の対処措置であることなどを指摘しています。

 FAOの近東・北アフリカ地域代表を務めるアブデサラム・ウルド・アフメド事務局長補は、最悪の形態の児童労働の中には、有償・無償労働合わせて地域の子どもの大半が従事している農業で見られるような危険有害労働が含まれていることを指摘した上で、もっぱら農村地帯で見られるこの種の労働は、ほとんどが機械化されていない労働集約的な生産方法を用い、高いリスクを伴う小規模農家の安価な労働力を表していると指摘しています。紛争と集団避難は農業と食の安全保障を害しています。一般的に業務関連の死亡・非死亡災害、職業病の発生率が高い農業における児童労働の削減には、農村における強靱な生計手段の構築が必要不可欠です。ウルド・アフメド事務局長補はさらに、イエメンやスーダン、エジプトといった国では、働く子どもの半数以上が農業に従事していることを指摘した上で、「他の産業部門よりも働き始める年齢が低いことを特徴とするこの産業が支配的な状況は特別の注意を要請する」と説いています。

 最悪の形態の児童労働はサービス業と工業にも見られ、街頭での労働に関連した様々な危険も含まれています。武力紛争自体やそれに関連した状況への直接・間接的な関与も含まれています。報告書は、イラク、ヨルダン、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、チュニジア、パレスチナの西岸及びガザ地区、イエメンといったように、現在、半数以上のアラブ諸国が紛争の影響を受けているか、難民・避難民が流入していることを示した上で、イエメン、シリア、イラクを中心に、地元民の間でも避難民の間でも武力集団による子どもの使用と徴兵が増えていることを指摘しています。徴兵される子どもは一般に大半が男子ですが、ますます多くの女子や15歳未満の子どもを徴兵する傾向が新たに現れてきています。また、アラブ地域全体で数百人の子どもが武力集団に関与したことを理由に身柄を拘束されたり、拷問を受けたりしています。域内では、子どもが国境を越えてあるいは戦闘地域間の物品密輸、廃油回収、葬儀作業への従事(埋葬のための遺体部分の回収)、戦争の遺留品である爆発物が散らばった埋立地や田畑における食料の回収や水汲みといった武力紛争状態に関連した新しい種類の活動を強いられている箇所も複数あります。

 子どもの就労率は域内でも大きなばらつきがあり、イエメン(子どもの就労率34.8%)とスーダン(同19.2%)で最も高くなっています。就労率は男子の方が高いものの、報告書は家事労働や無償の家事サービスといった、女子が行う隠れた形態の児童労働が調査で捕捉されていない可能性を挙げ、さらなる調査研究とアンケートの必要性を指摘しています。より幼い年齢集団や農村地帯でも無償労働は多いと見られます。

 報告書は、「子どもの深刻な搾取が純粋な経済問題の結果であるかあるいは紛争や避難との組み合わせであるかを問わず、アラブ地域の子どもを守る緊急かつ即時の必要性がある」と強調し、「アラブ諸国は児童労働が子どもたち自身だけでなく、国家や地域社会、さらには広く経済全体にとっても、即時の及び将来的な課題を提示していることに気づくべき」と説いています。

 そして、「今こそ、児童労働の根本原因と波及効果の両方に緊急に取り組み、最終的に児童労働そのもの、とりわけ最悪の形態の児童労働を撤廃すべき」と説く報告書は、アラブ連盟22カ国に対して三つの提言を行っています。一つ目は、とりわけ国内法制を国際的な法律基準に沿わせ、児童労働関連法規の実効的な執行を確保することによって、統治の枠組みを改善すること、二つ目は、大人が貧困や失業に苦しんでいる世帯が収入を得るために児童労働に頼らなくてもいいように、家族の社会・経済環境を改善することによって経済的・社会的に弱い子どもを守ることです。これには労働市場関連政策、社会的保護、教育などの基礎サービスの機会、啓発プログラムの改善が求められます。3番目の提案は、人道プログラムや難民・避難民への援助を通じた武力紛争の影響からの子どもの保護、武力紛争における使用や徴兵からの子どもの保護、武力紛争に用いられた子どもの社会復帰と再統合です。

 以上はILOアラブ総局によるカイロ発英文記者発表の抄訳です。