ILO新刊:EU

EUの上方収斂に向けた政策選択肢を示すILO新刊

2016年06月16日

 労働市場や社会の動向に示されているように、金融・経済危機は欧州連合(EU)加盟国の格差を広げる方向に作用しています。例えば、2007年にEU諸国の失業率の差は最も高い国と最も低い国の間でほぼ3倍(スロバキア約3:デンマーク1)であったものが、最新のデータでは5倍以上(ギリシャ5超:ドイツ1)に広がっています。

 このたび発表されたILOの新刊書『Building a social pillar for European convergence(欧州の収斂のための社会的支柱の構築・英語)』は、失業率、貧困率、1人当たり国内総生産(GDP)などの主な指標を用いて、社会経済の動向から見てEU諸国は分離が進んでいるか、あるいは悪化の方向で収斂しつつあるかのいずれかであることを示しています。そして、EU内の上昇しつつある貧困率や不平等水準のみならず、雇用の性質や技能要件の急速な変化をもうまく管理できなかった場合には加盟国間の分離がさらに進み、欧州統合事業が損なわれる危険性があると警告しています。

 公平性を高める政策が繁栄を促進し、将来的な危機のリスクを低減するような道を示すことを目的として2011年に発行が開始された「Studies on growth with equity(公平性を伴う成長に関する研究)シリーズ」の一巻である本書は、「より良い社会経済成績に向けた収斂」が、より統合され、安定した欧州及び十分に機能する通貨統合の基礎となる可能性を強調しています。報告書はさらに、この格差縮小を手助けする上で中心的な役割を演じるのは「社会対話」であるとして、今年のILO総会で特別演説を行ったジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長が構築を提案している「欧州の社会権の柱」は、EUの生活水準を引き上げ、加盟国間の上方収斂を育み、EUの統治機構に効果的かつ包摂的な対話の仕組みを埋め込むまたとない機会を提供すると記しています。また、重要なこととして、このような柱の構築は2030年までに貧困をなくすことを目指す持続可能な開発目標の目標1やディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と経済成長の促進を目指す目標8の達成に大いに寄与する可能性があるとしています。

 国際労働基準を基盤に、EUの社会権強化に向けた分析及び政策選択肢を提示する本書は、「欧州の社会権の柱」を巡る欧州委員会の協議に対するILOの貢献の中心要素を構成するものであり、両機関の協力関係のさらなる強化を図るものです。

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 以上はブリュッセル発英文記者発表の抄訳です。

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