第11回ASEAN移民労働フォーラム
ASEANフォーラムが公正な労働力移動に向けたデジタル技術の活用に関する勧告を採択
2018年11月02日
東南アジア諸国連合(ASEAN)の現議長国を務めるシンガポールが、ILOや国際移住機関(IOM)、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)などの関係機関と共に2018年10月29~30日にシンガポールで開催した第11回ASEAN移民労働フォーラムは、労働力移動の管理を改善し、移民労働者にデジタルサービスを提供することを目的として、科学技術の推進に関する加盟国の取り組みを導くものとして15の勧告を採択して閉幕しました。「ASEANの移民労働者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)促進に向けたデジタル化」をテーマに、ASEN全加盟国政府及び労使団体に加え、市民団体や、オーストラリア、カナダ、スイスといった非加盟国も参加して開かれたフォーラムは、デジタル技術が労働力管理の仕組みを改善する方法、デジタルサービスが移民労働者を手助けできる方法について幅広い話し合いを行いました。
ASEAN移民労働者委員会の委員長を務めるシンガポール人材開発省のリム・ツェ・ジアット職場方針・戦略部門長は開会挨拶で、ASEANの移民労働者のディーセント・ワークを達成するという課題に取り組むため、この機会を利用して、革新、強靱性構築、成長後押し、科学技術の受け入れを進めるよう呼びかけました。
移民労働者の福利厚生向上を主眼として採択された勧告は、移民労働者が用いるサービスをデジタル化によって向上できる方法や、労働力管理情報システム、機関間調整、人材募集・斡旋手続き、再統合措置などに関する手立てを示しています。会議に参加したILOの「ASEANにおけるTRIANGLEプロジェクト」のアンナ・エングブロム上級プログラム・マネジャーは、移民労働者にとって絶対に重要なこととして「家族や仲間と連絡を保つために携帯電話が利用できること」を挙げ、さらにまた、「助けが必要な時にそのようなサービスに到達できるよう確保するためにも電話があることは決定的に重要」と指摘し、「ASEANがこの勧告をもって、移民労働者が所有権やアクセス、携帯電話その他の情報通信技術(ICT)機器の妥当な使用といった情報通信への権利を確保する公約を行ったことは喜ばしい」として、勧告の採択を歓迎しました。
◎論説-公正な人の移動の達成をデジタル化が手助けできる方法
エングブロム・マネジャーはまた、タイのザ・ネイション紙に2018年10月29日付で掲載された論説でデジタル化の機会と課題について以下のように論じました。
情報の入手や人とのつながりを容易にしたデジタル技術は、増大の一途をたどるアジア太平洋地域の移民労働者人口の移住プロセスの簡便化、安心性の向上、加速化に向けた相当の機会を提示しています。デジタルツールやデジタルプラットフォームの利用は、移民労働者に提供されるサービスや労働力移動の管理を含み、私たちの社会のあらゆる分野に広がりつつあります。移民労働者自身も職探しや地域社会とのつながり、母国への送金にアプリやデジタル空間を用いています。
移住を管理するデジタルプラットフォームは、しばしば多くの移民が正式な書類を整えず、非公式で安全でない移住経路を用いる理由になっているところの公式の募集採用手続きに要する費用や時間を減らす助けになる可能性があります。デジタルプラットフォームに保管された、労働契約や支払い調書、医師による証明書といった重要な書類は「デジタル痕跡」と呼ばれるところの合意記録として残ることになり、移民労働者と使用者あるいは人材募集・斡旋業者との間で契約条件や払い戻しその他の事項に関する紛争が生じた際に役に立ちます。
法的支援や福利補助、オンライン研修機会のような移住サイクル全体を通じて移民労働者に提供される支援サービスを管理する際にデジタル技術を使用することも増えてきています。デジタル技術はお役所手続きを簡便かつ透明で、より手頃なものと化すだけでなく、知識や情報の共有にも用いることができます。オンラインネットワークは移民労働者同士の助け合いの機会を開き、組織化を助けることができます。オンライン評点サイトやアプリを用いることによる人材募集・斡旋業者や送金業者、その他のサービス提供業者の比較は、移民労働者が情報を得た上で選択を行う助けになります。デジタル金融サービスは伝統的な銀行手数料を支払うことなしに収入や貯蓄を管理し、故郷の家族に送金することを可能にします。オンライン苦情処理メカニズムは孤立した遠隔地で働いている移民労働者にも支援を得る機会を開く助けになります。
世界のインターネット利用者の半分以上が暮らすアジア太平洋地域では毎日20億人ほどが主として携帯電話を用いてインターネットを利用しています。しかし、域内には大きな格差が存在します。公正な人の移動を達成する助けになるようなサービスの利用機会における平等性を確保するには、基盤構造や手頃な機器・データプラン、基礎的なデジタル能力の点で存在する格差を縮小する必要があります。デジタル機器やオンラインツールが日常化するにつれ、既に携帯電話やインターネットの利用機会の点で最も不利な人々の中に含まれる脆弱な労働者、とりわけ女性移民労働者にとって、利用しない場合の不利な点は増大し、格差が拡大する恐れがあります。
誤った情報の拡散や悪辣なオンラインサービス提供業者、個人データやオンライン上のプライバシーの限られた保護に関連したリスクも存在します。管理プラットフォームやデジタルサービスはメンバーのプロフィールや雇用契約、申込様式などを通じて直接的に、あるいはプラットフォームによって集められる利用者データや位置情報などを通じて間接的に、移民労働者のデータを集め、共有しています。このようなプラットフォームの開発・管理者が民間企業であろうと国家機関であろうと関係なく、利用者のプライバシーと安全性を保つためにこのデータの収集、利用、共有を規制することが決定的に重要です。
科学技術は安全で公正な労働力移動を後押しする多くの機会を提示するものの、デジタル化に伴うリスクや課題を注意深く監視し、管理する必要もあります。ASEAN諸国はILOの支援を受けて、統治、移民労働者の保護、人の移動と開発のつながり、国際協力の点から見た複雑な課題に取り組みつつ、デジタル化のもたらす機会を捉えるためにあらゆる利害関係者との対話に従事しました。これは誰も置き去りにしない、私たちの望む仕事の未来の構築に向けた一歩の前進であると言えます。
以上は次の2点の英文広報資料の抄訳です。
- ILOアジア太平洋総局による2018年11月2日付シンガポール発記者発表-ASEANフォーラムが公正な労働力移動に向けたデジタル技術の活用に関する勧告を採択
- 2018年10月31日付論説-公正な人の移動の達成をデジタル化が手助けできる方法