技能
貿易、就業能力、包摂的成長における技能開発の役割に関する知識・認識の拡大を図ったILOフォーラム
2017年06月22日
労働市場に新たに加わる人は世界全体で毎年約4,000万人に上ります。これは効果的な技能開発のための仕組みと政策が緊急に必要なことを強調します。グローバル化は生産的で、より付加価値が高い仕事の成長潜在力を秘めた産業部門の多角化及び経済開発を相当に推進してきたものの、企業も労働者もグローバル化、技術革新、労働市場のその他の要素の需要に適合した正しい技能を有するという課題に常に直面しています。
2008年の第97回ILO総会は生産性、雇用成長、開発を改善するための技能について一般討議を行い、技能開発をより幅広い成長、雇用、開発のための戦略と結びつけるには、「政府が社会的パートナーである労使と協力して教育と技能開発を今日の労働市場及び未来の雇用成長を育むような科学技術、投資、貿易、マクロ経済政策と結びつける政策の整合性」を構築する必要があると結論づけました。省庁間協力と社会的パートナーの動員は貿易と技能開発の間で政策の整合性を構築する上で重要な要素でもあります。技能開発と貿易政策の整合に使用者と労働組合を関与させることは、満たされない多数の求人と高い失業・不完全就業率の併存を解決する助けになる可能性があります。2010年に出された主要20カ国・地域(G20)の訓練戦略で特定された、成功する開発のための訓練戦略の柱には、将来の技能ニーズの予測、社会的パートナーの参加と産業部門毎アプローチ、労働市場情報、幅広い訓練機会などが含まれています。
| 貿易、就業能力、成長にとっての技能開発の重要性を話し合うために政府や労使団体の代表などがカンボジアに集い、2日間にわたって熱心に討議 |
こういった問題に取り組むために、ILOがスウェーデン国際開発協力庁(SIDA)の任意資金協力によって実施している「貿易と経済多角化のための技能スケールアップ(STED)プロジェクト」及び韓国国際開発団(KOICA)の任意資金協力によって実施されている「低所得国における雇用と生産性のための技能プロジェクト」の一環として2017年5月30~31日にカンボジアのシェムリアップで開かれた「貿易、就業能力、包摂的成長のための技能地域間技術フォーラム」では、政府、労使団体、民間セクター、開発パートナーといった幅広い利害関係者による熱心な議論が展開され、途上国世界において貿易、就業能力、包摂的な成長を促進する技能開発戦略についての知識の幅や意識の拡大につながりました。2014年10月にカイロで開かれた貿易と技能に関する知見交換のための地域ワークショップにおける議論を土台とし、G20訓練戦略の実施に際して得られた幅広い経験に光を当てたこのフォーラムは、貿易の利益を獲得し、包摂的な成長を促進する上での技能開発の秘める潜在力と直面している課題に光を当てる経験や知識、学んだ教訓を共有するまたとない機会となりました。
フォーラムでは、◇技能と貿易、就業能力、包摂的成長の架け橋となる好事例、◇グローバル化と貿易がもたらす機会と課題、◇経済を多角化し、雇用機会を改善する技能戦略、◇技能、科学技術、作業組織の変化、◇女性や若者、農村社会などの不利な集団を取り込んだ包摂的成長、◇環境面から見て持続可能で包摂的な開発における技能の役割、◇気候変動に抵抗する経済の強靱性を技能改善を通じて後押しする方法などといった事項が取り上げられました。
SIDAを代表して挨拶した駐カンボジア・スウェーデン大使館のマグヌス・セームンドソン一等書記官はフォーラムの議論が多くの経験の類似点に光を当てると同時に、各国・各産業部門の技能開発制度が直面している課題を明らかにする機会になったとして、この課題に関連する問題として、「利害関係者だけでなく、様々な省庁の協力を仰ぐことの難しさ」を指摘しました。
KOICAの代表としてフォーラムに出席したKOICAネパール事務所のキム・ヒュンキュー所長は、2日間のフォーラムを見て心に浮かんできた言葉が二つあるとして、一つは、「もっとディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を、もっと人々に、排除されている貧しい人々に仕事をという結果」、そしてもう一つは、「各国それぞれの事情があるという現実」の二つを挙げ、各国の現実を考慮に入れるため、それぞれの国の問題に合わせた取り組みが必要なことを指摘しました。
オリガ・ストリエツカ=イリナILO技能政策・制度専門官は、「民間セクターと研修界の協働を支援するために制度化が必要なことは皆の合意事項」として、このフォーラムは地域的な視点からも、使用者側、労働者側、国際機関、開発パートナーのどの側から見ても非常に有用であったと評価しました。そして、フォーラムのテーマは次の5点に集約できるとしました。
- 女性や障害者、若者、高齢労働者などを含む不利な集団に対象を定め、適切な戦略を策定すること
- 体系化、つまり、前向きの手法及び積極的労働市場政策措置が存在することの確保
- 部門別政策や産業政策、全国政策などの様々な政策と技能開発戦略の相乗効果を図ること
- 民間セクター、教育、訓練、労働市場情報収集の制度的基盤の構築
- 民間セクター向けに、若者に対する実務経験や職業訓練の提供に参加する奨励措置を設けること
バンコクにあるILO東・東南アジア太平洋ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼タイ・カンボジア・ラオス国別事務所の松本真紀子雇用専門官は、技能開発のためにより大きな政策の調整を図るという課題を取り上げ、「政策面から調整を語ることは易しいものの、実際には簡単ではない」として、地元政府や地元機関を巻き込む必要性を指摘し、これは「とりわけ最も脆弱な人々に手を差し伸べる上で、政策の成功をモニタリングし、評価するための能力構築を伴う」ことを説明しました。
ILO雇用政策局技能・就業能力部のジルマ・アグネ部長は、技能と訓練は、後発開発途上国を含む全ての国における働きがいのある人間らしい完全就業のための将来的な政策課題の重要な要素であることを指摘した上で、「女性と若者を含む不利な労働者集団のためのものを中心に、教育と訓練と企業のつながりを改善できるような最先端の技能開発制度・政策」に投資する必要性を強調しています。そして、今日の労働市場ではとりわけグローバル化と技術変革の課題に取り組む必要があるとして、「この移行をうまく管理するには、政府、労働者、企業を今日及び明日の職場の現実に向けて備えるために技能訓練に対するさらなる投資が必要」と説いています。
フォーラム参加者らはまた、ILOの「就業のための技能グローバル知識共有プラットホーム(グローバルKSP)」を通じて幅広く世界中の人々と知識や経験を交流するよう求められました。
途上国経済の技能向上を通じて成長産業に標的を定めるILOのSTED計画
フォーラムでは、ミャンマーの責任ある観光業と観光ガイドの研修、ベトナムの持続可能な観光業、モザンビークにおける環境に優しい発電のための新たな技能の普及など、複数のプロジェクトの詳しい紹介が行われました。
何年もの孤立を経て世界諸国とのビジネス関係や貿易を広げつつあるミャンマーは、大いに必要とされている歓迎すべき雇用の受け皿と外貨収入をもたらすものとして観光業を捕らえていますが、問題は観光業にどんな機会があり、どんなビジネス能力が求められ、技能開発措置を通じてこういった問題に取り組む最適の方法は何かという点です。ILOはこのような疑問に答えるためにSTEDを生み出しました。
STEDは、様々な経済部門に技能開発政策に関する手引きを提供するために用いられている戦略的分析・実行ツールです。経済繁栄を達成し、より包摂的な社会を構築するには高技能労働力が決定的に重要との認識からこの方法論が編み出されました。労働力の技能が適切であれば、企業の生産力は向上し、地元市場のみならず国際市場における競争力も高まる可能性があります。経済成長は促進され、開発と貿易の利益が労働者の間により幅広く均等に広がる可能性があります。
このプロセスは、優先させるべき適切な産業部門の特定に向けて各国政労使と緊密に協議しつつ、ILOと国内専門家が技能と雇用、企業と貿易を点検することから開始されます。貿易開発のための最適の機会を提供する産業部門が選定されると、関連する労働者、企業、政府機関、その他の機構や専門家との幅広い協同作業と調査研究のプロセスが発動し、この協力関係から政策と訓練に関する具体的な提案が生み出されます。このプロセスはまた、主要な関係者間の対話を改善し、技能開発の重要性についての理解を増大させることになり、当該産業内において目に見える改善が達成されるのを助けます。STEDプロセスの最終段階は、学んだ教訓が対象経済部門の持続可能な改善に寄与するような形で、利害関係者が合意された戦略及び政策を実行し、事業計画にはめ込むのを支援することです。
ミャンマーの場合、ILOはSIDAの支援を受けて観光産業に関与する全ての利害関係者間の協力を促進し、調査を実施し、観光ガイド用の訓練資料を開発することを目指して2015年からSTED方法論の適用を始めました。この協同作業は3段階のガイド資格基準と各段階向けの新たな講座カリキュラムの導入に結びつきました。第1級は特定の観光地や地元に限定したガイド向け、第2級はより広い地域を対象とするガイド、第3級は全国規模で活動するガイドのための資格であり、それぞれのレベル毎に必要な識字能力その他のガイドスキルに関する研修が追加されます。同国ホテル・観光省のダウ・キン・タン・ウィン審議官は、「ガイドは我が国の外交官であり、この国の粋を代表する必要がある」と語っています。
| マラウイでは野菜栽培と脂肪種子生産の両部門にSTED方法論が適用されています |
農村部を中心に1,700万の人口を擁するマラウイでもILOは2015年から野菜栽培と脂肪種子生産の両部門の振興を目指してSTEDプロジェクトを実施しています。同国労働省のゴドフレイ・カフェレ氏は、他に例を見ないSTEDプロジェクトのおかげで、「影響力のある分野」の検討を通じて省の能力が育まれたと報告しています。社会対話と厳密な分析に重点を置くSTEDの手法は、利害関係者に相当の利益をもたらす可能性があります。フォーラムでこの活動を発表したマラウイ使用者協議会のベヤニ・ムンタリ氏は、協議会が利害関係者の関与を歓迎する理由として、「目に見える形で実際に実行できるものを生み出せる点がこのツールの重要な点。加えて、パートナー間の協同関係がこのツールの導入を促進する」と説明しています。マラウイ労働組合会議のジョゼフ・カンクワングワ氏も組合が最初から協議に加わっていたことを報告し、「これは政策が農村労働者の利益を反映するだろうと私たちに確信させることになった」と語っています。
2010年に誕生したSTED計画は世界11カ国19部門で適用・実行されています。これにはカンボジアの軽工業、チュニジアの金属製造、エジプトの家具産業、ヨルダンとカンボジアの食品加工業、バングラデシュとヨルダンの製薬業が含まれています。食品加工にも焦点を当てて食の安全性に関する訓練に重点が置かれたエジプトでは、STEDの提案が政府の輸出戦略にも組み込まれました。ベトナムのSTEDプロジェクトは政府省庁、労使団体代表、教育訓練提供機関の間の産業技能ニーズに関する協働関係を奨励し、これが弾みとなって、この関係を制度化するものとして観光業に関する産業別技能評議会が誕生しました。
過去数年の間に、STED方法論を自分たちで実践できるよう、4カ国で100近い全国・産業部門レベルのパートナー及び政労使の能力構築が図られました。STED手法は既に数百人の人々の暮らしに直接的な違いをもたらしています。
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以上はILO雇用政策局技能・就業能力部による次の4点のシェムリアップ発英文広報資料の抄訳です。
- 2017年6月22日付記者発表-途上国経済の技能向上を通じて成長産業に標的を定めるILOのSTED計画
- 2017年5月31日付記者発表-貿易、就業能力、包摂的成長における技能開発の役割に関する知識・認識の拡大を図ったILOフォーラム
- 2017年5月26日付記者発表-貿易、就業能力、包摂的成長における技能開発の役割を検討するILOフォーラムを開催
- 2017年5月25日付記者発表-ILOが貿易、就業能力、包摂的成長のための技能地域間技術フォーラムを開催