エネルギー移行

新刊:世界全体で1,200万人に達した再生可能エネルギー部門の雇用

2021年10月21日

 ILOは先般、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)と協力関係強化に向けた協定を締結しましたが、この度発表されたIRENAの年次刊行物の制作にも全面的に協力しました。米国と南アフリカが共同司会を務めて2021年10月21日に開かれたIRENAの「公正かつ包摂的なエネルギー移行に関する共同枠組み」のハイレベル開会式で発表された『Renewable energy and jobs: Annual review 2021(再生可能エネルギーと雇用:年次報告2021年版・英語)』は、2019年に世界全体で1,150万人であった再生可能エネルギー部門の雇用が2020年に1,200万人に達したことを示しています。

 第8版となるこの定期刊行物はまた、新型コロナウイルスが引き起こした各種の遅れやサプライチェーン(供給網)の混乱が雇用に与えた影響は、国や最終使途、バリューチェーン(価値連鎖)各部分によって異なる状況を再確認させるものとなっています。就業者総数400万人の太陽エネルギー部門と125万人の風力部門が世界の再生可能エネルギー部門の雇用成長を牽引する図式は変わっていないものの、輸送燃料に対する需要の低下により液体バイオ燃料部門の雇用は減少しました。自家発電などの送電線網を利用しないオフグリッドの照明用太陽エネルギーの売上高も影響を受けましたが、関連企業の雇用減少は限定的でした。

 2020年の再生可能エネルギー部門の世界の雇用の39%を中国が占め、ブラジル、インド、米国、欧州連合(EU)諸国がこれに続いています。この他にも、太陽光発電の主要輸出国であるベトナムやマレーシア、バイオ燃料用の大規模な農業サプライチェーンを擁するインドネシアやコロンビア、風力発電の成長が見られるメキシコやロシアなど、多くの国で再生可能エネルギー部門の雇用が生まれつつあります。サハラ以南アフリカでもナイジェリアやトーゴ、南アフリカなど多様な国で太陽エネルギー部門の雇用が拡大しつつあります。日本でも太陽光発電部門の雇用は世界第3位の規模であり、前年より約2万人減ったものの、2020年に24万1,000人を数えたと推計されます。

 経済ショックに対して、より弱い産業部門で働く傾向がある女性に対するコロナ禍の影響の大きさを認め、本書は、生活できるだけの賃金が支払われ、職場が安全で、就労に係わる権利の尊重が確保されている、働きがいのある人間らしい仕事の機会が全ての人に開かれる公正な移行の重要性に光を当てています。公正な移行においては多様な人材が求められ、男女に等しく機会が開かれ、若者にも少数者にも疎外されている集団にもキャリアを築く道が開かれる必要があり、この点で、国際労働基準と団体交渉の取り決めが決定的に重要です。

 再生可能エネルギー部門の雇用潜在力が開花するか否かは、今後数十年間のエネルギー移行を牽引する野心的な政策にかかっています。この産業部門自体に向けた政策の配備や、活動を可能にする政策の策定、統合に加え、より幅広い経済における構造障壁を克服し、移行過程における雇用の増減間に発生する可能性がある調整不良を最小化する必要があります。

 実際、本書はエネルギー移行によって生み出される雇用は失われる雇用を上回ることを示しています。ILOの地球規模の持続可能性シナリオでは、2030年までに新たに創出される雇用は2,400万~2,500万と見られ、失われると見られる600万~700万の雇用をはるかに上回っています。仕事を失う労働者のうち約500万人は別の産業で同じ職業の仕事を見つけることができると予想されます。IRENAの「世界エネルギー移行見通し」も再生可能エネルギー部門の就業者が2050年までに4,300万人に達する見通しを示しています。

 新型コロナウイルスによる制限が引き起こした国境を横断する物品供給の途絶は、国内バリューチェーンの重要な役割に光を当てることになりました。その強化は、既存のそして新しい経済活動に梃子入れすることによって地元の雇用創出や所得創出を円滑化すると思われます。地元サプライチェーンの梃子入れに関するIRENAの研究は、科学技術やバリューチェーン各部分、教育、職業要件別に、移行を支えるために必要な仕事の種類についてのヒントを提供しています。これには、将来性のあるサプライチェーンの形成に向けた産業政策、熟練労働力を生み出す教育・訓練戦略、適切な雇用関連サービスを提供する積極的労働市場措置、化石燃料に依存する労働者や地域社会を支援する社会的保護と再訓練及び再認証、地域経済開発と多角化を支援する公共投資戦略が求められると考えられます。

 フランチェスコ・ラ・カメラIRENA事務局長は、再生可能エネルギーには疑いなく、雇用を創出し、気候目標を達成する能力が備わっていることを挙げた上で、「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が目前に迫った今、諸国政府は正味でゼロを達成する野心を抱く必要がある」と訴え、前進できる唯一の道は、「公正で包摂的な移行に向けた投資を増大させ、その過程で社会・経済的利益を完全に刈り取ること」と説いています。ガイ・ライダーILO事務局長も、「再生可能エネルギーが秘めるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)創出の潜在力は、環境の持続可能性か、雇用創出かの二者択一を行う必要がないことを明確に指し示すもの」として、この二つは手を携えて進めることを強調しています。

 4章構成の本書は、第1章で再生可能エネルギー部門の仕事について見出された主な事項をまとめた上で、第2章でこの部門の仕事の今後の見通しを記し、第3章でエネルギー移行に必要な技能を紹介し、第4章で公正な移行に向けた雇用面の道筋を示しています。

 以上はアブダビ及びジュネーブ発英文共同記者発表の抄訳です。

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