労働力移動
中東の報道機関向けにILOが移住用語集を作成
2017年12月08日
中東・湾岸地域は世界屈指の移民労働者受入地域であり、人口の過半数が移民労働者で占められている国もあります。世界各地で移住に関する議論が激しくなり、移民に対する敵意が増してきている中、この問題を論じる際に用いられる用語の重要性がかつてないほどに高まってきています。
そこで、ILOアラブ総局は、移住に関する報道が権利を基盤とし、性差の問題に敏感であるよう確保する目的でこの地域のジャーナリスト向けに作成したツールを、2017年12月3日にヨルダンの死海で開かれた「真相究明ジャーナリズムのためのアラブ報道記者年次会合」におけるパネル討議の中で発表しました。2014年に国連文明同盟(UNAOC)とパノス欧州研究所(IPE)から刊行された『Media-friendly glossary on migration(報道機関に優しい移住用語集・英語)』をもとにしたこの同書中東版は、強制労働、人身取引、強制移住、難民、労働力移動に関連した専門用語を詳しく説明し、例えば、「メイド」や「女の子」、「ヘルパー」に代えて家事労働の語を用いることや、移民労働者が「非正規」に陥る様々な手段に注意を喚起するものとして「不法移民」に代えて「非正規状態にある移民」の表現を用いるよう推奨するなど、一般的に用いられている扇動的で差別的な用語に代わる正確で中立的な言葉の使用を提案しています。
電子版と印刷物の両方で提供されているこの用語集は、英語とアラビア語の対訳式になっており、記者がどちらの言語でも正確な報道を心がける際に役に立つものとなっています。写真報道や性差に配慮した報道、トラウマ(心的外傷)の被害者に対応する時の手引きも含まれています。
幅広い移住問題について、その微妙な性格に配慮し、正確な情報を得て報道した場合、報道機関は一般の人々に情報を伝えて教育し、移民に対する否定的な態度や行動様式に立ち向かい抵抗するのを助ける重要な役割を演じます。情報を得た上での世論はまた、国際人権原則に関連した健全な政策策定を支えるものとなります。アラブ諸国を担当するILOのリシャルト・チョレウィンスキー上級移住専門官はこのように説明した上で、「人権並びにすべての移住者の尊厳及び尊重の諸原則に導かれて一つの声で語る時、私たちはこの地域全体を通じて移住に関する叙述を変えるよう働きかけることができます」と説いています。用語集の中心的な編集者であるILOのエリザ・マルクス技術専門官も「私たちの目標は、用語集がこの地域全体でニュース報道媒体のスタイルガイドに組み込まれること」と説明した上で、この用語集が報道機関だけでなく、市民社会や国際機関、政府、労働組合、使用者など、移住について定期的に発信している幅広い行動主体のネットワークにも有用であろうことを強調しています。
用語集は2017年現在の共通の理解を表すものですが、この現象そのものを巡る激しい動きを反映して移住に関する議論は進化しているため、評価と改訂が継続的に行われます。人材募集・斡旋を含む公正な移住を促進するILOの包括的なイニシアチブの一部であるこの用語集は、スイス開発協力庁(SDC)の任意資金協力を受けて2016年から実施されている「中東地域公正移住プロジェクト(FAIRWAY)」を通じたアラブ諸国における強制労働と人身取引の撤廃に向けた取り組みにも寄与することが期待されます。