労働力移動

ILO総会で労働力移動と公正な人材募集・斡旋について討議

2017年06月02日

 グローバル化した今日の世界では労働力移動はますます政策の優先事項となってきており、経済の困難や地政学的危機はディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の不足につながり、移民の動きを一層大きく多様化させています。このような労働力移動の複雑化はさらに、様々な統治上の課題を生じさせています。6月5日に開幕する2017年のILO総会は、こういった理由から労働力移動の統治と公正な人材募集・斡旋について一般討議を行います。話し合いは移住に関する世界の議論に大きく貢献することが期待されます。

 この広報記事では、リシャルト・チョレウィンスキーILO移住政策専門官が労働力移動に関する現在の趨勢と統治上の課題に取り組む重要性について次のように語っています。

 ILOの推計では、15歳以上の生産年齢の移民人口2億660万人中約73%が働いていると見られます。移民労働者全体の44%近くを女性が占めるといったように、移民労働力の女性化が進んでいます。移民家事労働者では73%超が女性です。

 今日、移民労働者の過半数(51.5%)が南側諸国に住むといったように、南側諸国内での移住が増加する大きな傾向があります。アジアからアラブ諸国への移動、東南アジア諸国連合(ASEAN)内での移動といった、幾つかの重要な移住経路では、移住者の数が1990年の3倍に伸びていますが、その多くが移住労働者です。この数字は今日の国際的な人の移動のほとんどで仕事を求めての移住が中心を占めている事実を示しており、したがって2018年に開かれる国連の政府間会合で採択される予定の「安全で秩序だった正規の移住のためのグローバル・コンパクト」の中にこの現実を強く反映させる必要があります。

 労働力移動は収入増や故国への送金の可能性を通じて、とりわけ最貧国出身の移民労働者とその家族に利益を与えています。途上国が受け取った移民労働者からの送金額は2016年に4,290億ドルに達し、教育や保健医療の財源の助けになっている可能性があります。さらに、外国で獲得した新たな技能やアイデア、ノウハウなどといった社会資本や人的資本、資金投資などを通じて持続可能な開発にも寄与しています。また、重要な職業や産業部門のあらゆる技能水準で不足している労働力需要を満たし、高齢化が進んだ先進国の年金制度に社会保障拠出を行うことによって受入国にも利益をもたらしています。

 一方で短期移住労働者の場合は、その多くが農業や家事労働、建設業、製造業などの低技能・低賃金部門で雇用されており、詐欺的で不正な人材募集・斡旋行為、就労に係わる権利の侵害、受入国の労働者と比べて不利な賃金、技能のミスマッチ、社会的保護の欠如といった最大のディーセント・ワークの欠如を経験しています。

 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、うまく統治された移住は持続可能な開発のカギを握ることを認めています。労働力移動の統治のまずさは労働者当人だけでなく企業にとっても社会的・経済的コストを増加させる傾向があります。とりわけ短期低技能労働力の移住に関連したコストは、労働市場関連機構や積極的労働市場政策の役割の向上を図り、それらが移民労働者の状況により注意を払うよう確保することを通じて対処することができます。これには例えば、出発前に送出国でそして到着後に受入国において正確で信頼のおける情報を提供すること、移民労働者が不均衡に多く存在する産業部門に標的を定めた労働監督、移民労働者の労働市場へのより良い統合を目指した公共職業斡旋機関による支援、受入国滞在中に使用者を変更できる可能性の拡大、労働者が権利の侵害を受けた際により容易に苦情申立機構や効果的な救済措置を利用できるようにすることなどを挙げることができます。こういったコストへの取り組みは、平等な地歩における競争や生産性向上といった点で企業にも相当の利益をもたらします。国の雇用政策と移住政策を揃え、労使の社会的パートナーとの緊密な協同を図りつつ、労働担当省庁が移住政策の設計、実施、モニタリングにおいて重要な役割を演じるよう確保することも大切です。

 幾つかの労働力移動経路においては労働者が支払う手数料及び関連費用の形での人材募集・斡旋関連コストの高さが特に問題になっています。ILOと世界銀行の調査では、このような費用は労働者の予期される1年間の給与にほぼ匹敵する可能性があるとの結果が出ています。ILOの基準は幾つかの例外を除き、手数料その他の費用を労働者に請求することを禁止しており、この原則は2016年にILOが開いた政労使三者構成の専門家会議で採択された「公正な人材募集・斡旋のための一般原則・実務指針」でも再確認されています。国際的に認められている人権・労働基準を元にまとめられたこの原則・指針は、国境横断的なものだけでなく、国内の募集・斡旋行為にも適用され、政府、使用者、人材募集・斡旋業者といった、この過程に関与する全ての関係者に当てたものとなっています。ILOでは現在、幾つかの移住経路における開発協力活動の実施などを通じてこの原則・指針の運用を進めています。

 これは、社会対話を中心的な柱に据え、政府、社会的パートナー、国際機関、非政府組織(NGO)といった様々な関係者の結集を図り、世界的な知識基盤の向上、規制手法の改善、公正なビジネス慣行の促進、労働者のエンパワーメントと保護を通じて人身取引と強制労働の防止、不正で詐欺的な人材募集・斡旋行為からの移民労働者を含む労働者の保護、労働力移動のコスト削減を目指す「公正人材募集・斡旋イニシアチブ」の重要な一部を成しています。

 国境を越えた公正な移住を実現するカギは、労働力移動の統治に係わる実体経済のあらゆるレベルの最前線の関係者の有意義な参加であると言えます。労働力移動に関する社会対話は、各国の労働力移動政策の策定、実施、モニタリングに社会的パートナーを密接に関与させることを通じて強化することができます。送出国と受入国の二国間協定の設計・実施にも社会的パートナーを関与させる必要があり、この点で実施を監視・評価する合同委員会に両国の労働組合が含まれるドイツとフィリピンの保健労働者に関する協定は好事例を提供しています。移民労働者のより良い保護に向けて送出国と受入国の労働組合が国境を越えて協力し合うことも増えています。地域レベルでも、ASEANの移民労働者に影響する問題を話し合う政府、使用者、労働者、市民社会に開かれた話し合いの場であるASEAN移民労働フォーラムのように、地域経済共同体内に三者構成の好例が多数見られます。

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 以上はリシャルト・チョレウィンスキーILO移住政策専門官による2017年6月2日付の英文論評記事の抄訳です。総会でこの問題を討議する労働力移動委員会の事務局の一員であるチョレウィンスキー専門官はまた、同委員会の活動を説明する動画(英語)に出演し、総会でこの問題を取り上げることになった経緯や最近の動向、討議の目的などを解説しています。

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