無償労働

無償労働に日々費やされる数百万の労働時間:アジア太平洋5カ国からの証拠

 家事などの無償生産労働は他のあらゆる生産労働の基盤をなすものですが、労働市場分析においてこういった活動に費やされている時間は見過ごされがちです。

2020年09月25日

 2013年に開かれた第19回国際労働統計家会議で採択された決議は、水汲みや自給自足の食料生産、薪拾い、自分の住まいの建設、家事や育児、介護、料理といった最終的に自分で使用することを目的とした物やサービスの生産に関わって投入されるあらゆる労働を定義するものとして自家使用生産労働という専門用語を導入しました。この概念は無償の生産労働として一般的に受け入れられている種類の労働を表すものであり、この中にはいわゆる無償のケア労働といったサービスの提供も含まれています。無償生産労働者とは、最終的に自家使用を目的としたサービスの提供あるいは物の生産に少なくとも週に1時間従事した生産年齢の人々と定義されています。

 アジア太平洋では女性の労働力率は他の地域より少し高いものの、女性の非労働力率は男性に比べて依然として高いままです。さらに、南アジアを中心に、若者が就業も就学もしていないニート状態になる可能性は女性が男性をはるかに上回っています。無償労働への従事の点でも女性が男性を上回っており、データが得られる上記5カ国では全てそうなっています。上記5カ国では加えて、生産年齢にある女性の3分の2以上に当たる約1,000万人が無償労働しかしていません。男性の場合、この割合はわずか41%の500万人程度です。

無償生産労働に費やされている合計労働時間の内で女性が担っている割合(%)
ラオス ネパール モンゴル クック諸島 トンガ
育児 67 84 73 68 83
家事 65 85 71 68 77
介護 60 66 70 62 74
物作り 58 63 60 95 80
水汲み 55 68 40 44 39
自給自足の食料生産 46 64 - 42 5
薪拾い 45 71 45 30 6
自分の住まいの建設 23 34 33 14 4
無償労働全体 53 68 68 61 45
出典:ラオス(2017年)、ネパール(2017/18年)、モンゴル(2019年)、クック諸島(2019年)、トンガ(2018年)の労働力調査をもとにした著者による計算結果。英語記事にはグラフで示されています

 性差を尊ぶ規範は、女性が男性よりも不均衡に多くの時間をこういった活動に費やす結果を招いています。ネパールとモンゴルでは無償生産労働全体の3分の2を女性が担っていますが、中でも無償のケア労働における労働量配分の不平等は顕著です。上記5カ国の平均では、無償ケア労働の8割を女性が担っています。例えば、ネパールでは1日の無償ケア労働時間の85%を女性が担い、これは累計で2,900万時間になりますが、男性の場合は500万時間に留まっています。

 若者(15~24歳)の多くにとって、家事に時間を費やすことは教育から離れることを意味します。ネパールでは若い女性のニートの94%が家庭内におけるケア労働に従事していますが、これは男性ニートに占める割合の2倍になります。危機の際に女子は真っ先に学業を断念させられる場合が多いため、ネパールその他における新型コロナウイルス(COVID-19)危機は無償生産労働に占める若い女性や若い女性ニートの割合上昇の一因になっている可能性が高いと言えます。現下の危機の時代に無償の仕事量の増大を引き受けているのは若い女性ばかりではなく、子どもの学校が休校で、高齢者その他の家族を世話する必要性が増え、女性は自分自身の仕事とそれに追加しての家事責任の両立に苦労しています。圧力に耐えかねて、増加した家庭内の義務を遂行するために有償労働を諦める女性たちもおり、これは男女不平等を悪化させる可能性が高くなっています。

 無償の家事労働に費やす時間が増えることは有償就業の機会が減ることを意味します。この問題は需給両面からもたらされています。供給面から見ると、有償労働に得られる時間の減少によって仕事を探す女性が減り、女性の非労働力率が上昇します。例えばネパールでは生産年齢にある女性の9%に当たる100万人以上が有償の仕事を希望していても家庭責任や自宅に留まるべきと考える家族の存在によって職探しをしていないか、働けないとされています。需要面から見ると、アジア太平洋諸国にはいまだに性差に基づく差別が一般的で、企業が女性、とりわけ妊娠可能年齢の女性の採用に積極的でないという事情があります。有償労働に就かなかった場合、とりわけ高齢期における女性の経済的な不安定性が増すことになります。

 世帯内におけるケア労働の男女間における不平等な配分を縮小できるにはまだまだ時間がかかりそうです。この第一歩は固定観念を変えることです。ケア労働は女性だけの仕事ではなく、一人ひとりが担うべき責任です。この変化をもたらすには私たち皆に担うべき役割があります。まず第一に、男女を問わず、誰もが家庭内で公平な量の労働を分担し、自分自身で労働量を再配分する責任を担うことができます。第2に、政府は家庭の負担を削減する手段として、子どもや高齢者、障害者のための公的ケアサービスへの投資や、有給家族休暇・有給疾病休暇の保障など、ケア労働を支援する政策を実施すべきです。最後に、各国統計局は国際労働統計家会議の決議を実行して無償の生産労働を測定する労働力調査を増やすべきです。これを実行しているアジア太平洋諸国は半分にも達していませんが、それでもなお他の地域よりは好成績を示しているのです。

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 以上はILOアジア太平洋総局でインターンとして働くヤメイ・デューさんが草稿を作成したILOの労働統計データベースILOSTATの2020年9月25日付英文ブログ記事の抄訳です。ILOの労働統計データベースILOSTATには、データそのものに加え、データ生成に携わる人々向けの資料やイベント案内、ニュースレター、解説資料、ブログ記事なども掲載されています。