ILO統計局ブログ:アジア太平洋の若い女性

「私は平等世代」アジア太平洋の労働市場における理想対現実

 1995年に開かれた歴史的に有名な第4回世界女性会議では、世界中の女性と少女のエンパワーメント向上に向けた野心的で進歩的な計画が定められました。それから25年が経ち、新たな世代の女性労働者が労働市場に加わる年齢になりましたが、就労や賃金における平等は達成できているでしょうか。

2020年03月11日

 25年前の1995年に開かれた第4回世界女性会議では、世界中の女性と少女のエンパワーメント向上に向けた野心的で進歩的な計画が定められました。しかしながら、この25年間でアジア太平洋地域で暮らす若い女性の状況が本当に変化したかを統計面から分析してみると、人間らしく働きがいのある仕事の機会の点で男女平等における進歩はまだわずかでしかないことが見て取れます。

 高等教育到達率は世界中で劇的に上昇しましたが、就業も就学も訓練受講もしていないニート状態の若者(15~24歳)の比率に関しては、アジア太平洋地域全体で相当の男女間格差が存在します。国によっては男女両方でニート率が高く、性にかかわらず職業や訓練の機会が不足していることを推測させます。一方で、女性のニート率が男性の2倍に上る国もあり、これは労働市場への参加や教育機会の点で女性が特別の困難に直面していることに光を当てるものです。この差が最も大きな国はアフガニスタンであり、男性のニート率が18.3%に過ぎないのに対し、女性のニート率は65.9%に上ります。格差が最も小さいのは日本であり、女性のニート率は3.5%であるのに対し、男性のニート率は2.2%です。

若者人口(15~24歳)に占めるニートの若者の割合(得られる最新年)
国名 女性(%) 男性(%)
アフガニスタン 65.9 18.3
パキスタン 54.9 7.5
インド 48.3 14.3
イラン 47.6 22.0
バングラデシュ 44.6 9.8
サモア 41.5 34.6
ツバル 37.4 21.7
バヌアツ 35.3 26.4
スリランカ 32.2 16.8
フィジー 29.6 10.8
パプアニューギニア 29.0 26.4
インドネシア 27.9 15.8
フィリピン 25.7 14.4
東チモール 25.7 16.2
モルディブ 25.3 21.5
ブルネイ 23.3 18.6
モンゴル 21.5 16.3
タイ 18.9 10.7
ミャンマー 18.6 8.2
マレーシア 16.1 9.1
パラオ 14.4 11.1
ニュージーランド 12.6 11.3
ベトナム 10.6 6.0
オーストラリア 9.0 8.9
ソロモン諸島 8.9 5.1
香港(中国) 5.9 6.3
シンガポール 5.3 3.1
ラオス 4.3 5.6
日本 3.5 2.2

 アジア太平洋地域全体で見ると、ニート率には国による大きなばらつきがあります。南アジアには依然として女性のニート率が最も高い国が集中していますが、この理由としては、女性が家庭内でケアを提供する主たる役割を担い続けているために教育機会や労働市場への参加が困難なことが挙げられます。ネパールの2017/18年の労働力調査によれば、女性ニートの92%が子どもの世話や料理、掃除などの家事を行っていることが明らかになっています。これは男性ニートの3倍以上に当たります。その上、最近出されたILOの調査研究によれば、この地域では育児や介護などの無償のケア労働に費やす時間が女性は男性の4倍に上るのに対し、男性の無償ケア労働時間はどの地域よりも低くなっていることが示されています。

 教育は典型的に就業確率を高めるものの、必ずしも女性を失業から守るものにはなっていません。実際、南アジア諸国では、最高水準の教育を受けた女性の失業率が同じ教育水準の男性の2倍になる傾向があります。

高等教育修了者(25~34歳)の失業率(得られる最新年)
国名 女性(%) 男性(%)
バングラデシュ 29.0 15
アフガニスタン 25.8 10.4
インド 23.9 15
スリランカ 16.7 10.6
ブルネイ 16.4 9.6
パキスタン 14.9 6.2
フィリピン 7.9 10.4
韓国 6.1 7.7
インドネシア 6.0 6.2
ニュージーランド 4.9 3.3
モンゴル 4.9 7.1
フィジー 4.4 4.8
ラオス 3.8 6.5
オーストラリア 3.6 3.9
マレーシア 3.6 2.7
ベトナム 3.5 2.2
日本 3.5 4
シンガポール 2.9 2.5
ミャンマー 2.3 3.1
マカオ(中国) 2.1 1.3
香港(中国) 1.8 2.2
パプアニューギニア 1.7 1.6
タイ 1.6 2.1

 文化的な期待は南アジア諸国で教育水準の高い女性を労働力から排除する大きな要因になっていますが、どんな仕事が女性にふさわしいかといった固定観念はアジア全体で労働市場における成果に影響を及ぼしています。例えば、女の子にはふさわしくないとされる様々な教科を女性が学べない国もあります。女性が入ることの許される職種が男性よりも狭い場合、失業率における男女間格差や女性のより高い非労働力率が生じます。

 もう一つの課題は男性にしか応募が認められていない求人広告です。残念ながら、域内の幾つかの国では、例えば、運転手のような職業に関してまだ一般的に見られる傾向です。一方で、女性が応募できる職種においては、家族状況や恋愛関係など男性には行われない質問をされる場合があります。

 多くの国で、女性、特に既婚女性は家事とケア労働を優先させるよう期待されています。一部の国では女性を職場から締め出している要素が他にもありますが、その一つが女性に対する暴力と嫌がらせ(ハラスメント)です。国連女性機関(UN Women)による日本、マレーシア、フィリピン、韓国を対象にした調査研究によれば、3~4割の女性が職場でセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)を経験しているとされます。衣料部門を対象にしたILOの調査研究は、セクハラが日常的に起こっており、とりわけ移民労働者の間ではそうであることを見出しました。

 この傾向を反転させ、暴力とハラスメントのない仕事の世界を形成することを目指し、ILOは2019年に「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約(第190号)」と勧告(第206号)を採択しました。第190号条約は、職場におけるハラスメントは社会的・経済的なコストを招くだけでなく、女性に不均等に大きな影響を与える人権侵害となり得、政府及び労使団体は共にこの問題に取り組む義務があることを認めています。ILOはこの問題の内容、その影響を受ける人々、予防・対処法に関する共通の理解を構築し、各国がそれぞれに自国内で仕事の世界における暴力とハラスメントをなくす能力を強化する助けを提供することによって新条約の内容に関する啓発に努めています。

 北京宣言採択25周年を記念し、UN Womenが主導する「平等世代:平等な未来のために女性の権利の実現を」キャンペーンが展開されています。このキャンペーンは同一賃金、無償のケアと家事労働の平等な分担、性差に対応した保健医療、政治生活及び意思決定への平等な参加、そして女性と少女に対するセクハラと暴力の終結を要求しています。目的は高いものの十分に目指す価値があります。

 ILOSTATのデータを用いて行ったこの分析からはアジア太平洋地域で公平世代を達成するための道のりはまだ遠いことを認めざるを得ません。『A quantum leap for gender equality: For a better future of work for all(男女平等に向けて大跳躍:より良い仕事の未来を全ての人に・英語)』などのような最近のILOの報告書は、世界中で女性労働者にはわずかながら前進があったことを示しているものの、アジア太平洋では多くの若い女性が依然として良質の仕事を得る機会の点で相当の障害に直面しているという事実があります。

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 ILOアジア太平洋総局のインターンであるナディア・フェルドキルハーさんとローレル・アンダーソン・ホフナーさんは、ILOの労働統計データベースILOSTATの2020年3月11日付英文ブログ記事で、以上のようにアジア太平洋地域の労働市場における同世代の若い女性の状況を統計的な観点からまとめ、次のように締めくくっています。

 一緒に取り組めばこの状況を変えることができます。平等世代は私たち一人ひとりと共に始まります。さあ、一緒に声を上げませんか。「私は#GenerationEquality」だと。