雇用集約型投資計画
水の乏しいヨルダンで農家を支えるILOの労働集約型事業
ILOはヨルダンで何百人もの地元農家の雨水貯水槽の建設を支援して、基盤構造の改善と農業生産性の向上を手助けする事業を実施しています。
2019年06月04日
全国的に水が乏しいヨルダンで、水不足は農家にとっても問題です。山岳地方では雨水にしか頼れません。
ヨルダン南部のタフィーラ県アル・イースの町で先祖代々農業を営むキファハ・フレイサットさんは、キュウリやトマト、コショウといった作物からオリーブやイチジク、アプリコットといった果樹まで何でも栽培して妻と5人の子どもを養ってきました。自身も子どもの頃から見よう見まねで農業を学んだフレイサットさんは、今は子どもたちに先祖から受け継いだ技術を伝えようとしています。農業にはたくさんの辛抱と何年にもわたる重労働と農場の世話が必要ですが、水不足のヨルダンのような国で十分な灌漑手段を見つけるのは難しく、何年も苦労してきました。
多額の資金が必要な貯水槽はフレイサットさんのような質素な農家には建造できないため、代わりに冬季に雨水を集め、暑く乾燥した夏季に備えるものとして、1年がかりで穴を掘り、プラスチックを敷いて灌漑池のようなものを作ろうとしました。しかし、蓋がないために水は蒸発し、水飲み場として使う鳥やネズミ、昆虫が落ちて灌漑パイプを詰まらせました。そこで、主に地元自治体からの給水に頼らざるを得ませんでしたが、費用が高くついて生活が圧迫されました。
そんな中、2017年にILOの労働集約型開発事業に参加し、農場の必要を満足する助けになる集水槽建設の支援を受けました。フレイサットさんが参加したのはILOがノルウェー政府の任意資金拠出を受けて2016年に開始した「農林業における環境に優しい仕事を通じたシリア難民及びヨルダン難民受入社会における雇用創出プロジェクト」です。この雇用集約型投資計画(EIIP)の一事業はシリア難民とヨルダンの労働者の双方が農業部門で人間らしく働きがいのある短期の就労機会を得るのを手助けしています。雇用創出に加え、雇用集約型の手法を用いて地元の基盤構造を改善することによって農民の全体的な生産性の向上を直接支援してもいます。
ヨルダン国民とシリア難民の手によって2カ月かけて構築された水槽は満足できるできばえで、2年経った今でも水漏れなどの問題がありません。今でも部分的に地元自治体からの給水に頼っているものの、新しい貯水槽のお陰で収穫量は増え、貯金をし、節水することも出来ています。また、自分で費用を負担して建設した単純な細流灌漑システムを延長することも出来ました。昔の貯水池では水を揚げるのにエンジンを使っていたために水の消費量が今より多かったのですが、「新しいタンクは密閉されているため、水はきれいで蒸発もしない」とフレイサットさんは満足しています。
2016~18年の実施期間にプロジェクトが雨水の集水槽を建設して支援した農家は263軒以上に達しています。集水槽が農民の生計に与えた影響を調べたILOの影響評価によれば、質問に回答してくれた農家の72%が貯水槽設置後に耕地を広げたことを報告しており、4割以上の灌漑水費用の節減を報告する農家も3割に達しています。69%の農家が集水槽設置後に収入が増加し、家族に加えて、ヨルダン人やシリアからの難民、移民労働者など、雇い人の数が増えたことを報告する農家も65%に達しています。
ILOのマハ・カッター強靱性・危機対応地域専門官はヨルダンでは農業が脆弱な人々や移民労働者、難民など、社会の様々な集団の貴重な収入源となっていることを指摘し、そういった理由から基盤構造の改善とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を結びつける雇用集約型投資計画を実施したことを説明しています。「地元の農家が簡単でありながら効果的な農場の灌漑方法を見つけるのを支援することで、全体的な生産性と生計への影響のみならず、雇用創出を通じて周囲の人々の生計にも影響を与えることによって、いかに全ての関係者により良い生活水準が促進されたかを目の当たりにすることができました」と専門官は報告しています。プロジェクトはヨルダン国内の複数の地域で、障害者を含む数千人のヨルダン人とシリア難民に利益をもたらしています。