ILOマルチメディア・プラットフォーム「声」:LGBTI

最高の材料は多様性

 高名なアルゼンチン人シェフのパオラ・カロセージャさんが、ILOがブラジルで実施している疎外されている脆弱な人々が飲食業界に就職する助けを提供する「厨房と発言力」プロジェクトに参加するようになった経緯を説明します。

2021年01月11日

 世界の約80カ国に性的指向や性同一性、性表現、性的特徴に基づく差別を禁止する法が存在しますが、LGBTIと総称される同性愛者、両性愛者、トランスジェンダー、インターセックスの人々は高い割合で差別や暴力、ハラスメント、迫害、偏見に直面し続けており、それは職場における場合も含まれます。

 ILOはブラジルの労働検察庁との共同事業としてホームレスや虐待を受けた女性、LGBTIの人々といった最も疎外されている人々が本当の仕事に就く機会を与える助けになる「厨房と発言力」事業を展開しています。ブラジルの脆弱な集団の労働市場参加機会を促進するこの事業に2017年12月から協力するパオラ・カロセージャさんはサンパウロ市で暮らすアルゼンチン出身の世界的に有名なシェフであり、マスターシェフ・ブラジルの審査員を6年間も務めました。

 「料理を学ぶことには商売を学ぶこと以上の意味があります。食は家族や友人にもたらすことができるものであり、環境との関わり方が関係するため、記憶や感情の強い引き金になります。料理を学ぶことは人生を変えることを意味し、これこそ、私が『厨房と発言力』を通じて達成したいと望んでいることです」とパオラさんは説明します。

 事業の当初の考えはバイア州サウバドル市の刑務所で料理教室を開くことでしたが、ブラジル人は外食好きで国内総生産(GDP)の3%を外食費が占めるほどであるため、この訓練はレストラン産業への入り口になるとパオラさんは考えました。

 そこで、サンパウロ市で30人のトランスジェンダーの参加者を対象にした訓練を開始しました。その後事業は成長し、今は参加者が50~60人になる教室を様々な州で年に平均4回開催しています。2020年は新型コロナウイルスの大流行のためにオンライン研修に移行する必要がありましたが、それでも何とかやり遂げました。

 訓練には九つの教科が含まれ、サラダ・ドレッシング技術、魚や肉、野菜の下ごしらえ、ゴミ処理、食品保存などレストランの厨房で働くための基礎的な技能が提供されます。パオラさんは食肉は扱わず、キャッサバ、米、バナナのような入手が容易で土着の料理のルーツにもつながりがあるような地元の食材を利用することを重視しています。こういった食材は失われつつある遺産の一部だからです。

 食は特に記憶を喚起するものとなり得るため、訓練の中で自分の母親や祖母が作っていた料理の味を再発見する生徒もいます。時には何年も話していなかった家族に作った料理を持ってくる者もいます。

 イタリア移民の家族の元でアルゼンチンで生まれ育ち、弁護士をしていた母親から大いなる正義感や他者を助けるために何かしなくてはならないという切迫感を教え込まれた自身の背景が教室に参加する人々を理解する助けになっているかもしれないとパオラさんは振り返ります。コックとしてのキャリアは30年を数え、成功を収めたものの、厨房で働く人々は通常、低い身分の出身であることを忘れないようにしています。

 過去4年間に教室の参加者の多くがパートナー企業のネットワークに採用されています。パオラさんのレストランでも2人採用しました。これは企業文化がより多くの多様性を受け入れるようになった変化の印です。「多様性は料理においても人生においても最良の材料」と考えるパオラさんは、様々な背景の人々と共に働くことが人として豊かになる道と説いています。

 道は楽ではありませんでしたが、ILOの支援、労働省からの資金、パオラさん自身が有名なシェフであるとの事実は、多くの偏見を乗り越える助けになりました。パオラさんの次の望みはプロジェクト参加企業を増やすことです。そのための方法として、減税や脆弱な人々の包摂を促進するプロジェクトに関与していることを示すような何らかの種類の評点制度などの奨励措置の活用を提案しています。そして、他の業種もこの事業に参加し、非常に才能にあふれているもののいまだに多くが排斥されている人口集団の就業能力の促進を助けてくれるようパオラさんは呼びかけています。

 1998年のILO総会で採択された「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」にはあらゆる形態の差別と戦う公約が含まれています。LGBTIの人々のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をより効果的に促進するには、直面している差別の程度やその形態を把握できる、より多くの統計データが必要です。

 以上はマルチメディア・プラットフォーム「声」に掲載されている2021年1月11日付の英文広報記事の抄訳です。

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