ブログ/概説資料:エボラ大流行とILO

エボラ大流行:労働者の安全を保つ方法

2014年09月01日

 これまでエボラ出血熱として知られてきたエボラ・ウイルス病が西アフリカで猛威をふるっており、相当数の保健医療労働者の命を奪っているだけでなく、様々な職種の労働者にとって脅威となっています。ILOが多年にわたって蓄積してきた労働安全衛生分野の文書やツールは職場におけるエボラ感染から労働者を保護するものとして利用できる可能性があります。

 ナイジェリアの首都アブジャにあるILOナイジェリア・ガンビア・ガーナ・リベリア・シエラレオネ国別事務所のデニス・ズル主任計画担当官は、ILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への9月1日付投稿記事で、医療関係者だけでなく遺体の処理に携わる人々にも感染の危険があるエボラ禍について、公衆衛生上の非常事態に留まらず労働安全衛生の問題でもあるとして、職場を通じた正しい情報の伝播など、この分野で長い活動実績のあるILOとして提供できる支援を紹介しています。

 ILOは既に世界保健機関(WHO)と共に両機関の既存のガイドや勧告をもとに、労働安全衛生の観点から労働者及び使用者向けにエボラ・ウイルス病に関する概説資料を作成しました。資料には、エボラ・ウイルス病とは何か、感染方法、労働安全衛生面でのリスク、職場における予防、労働者及び使用者の権利・義務・責任、WHOの医療・看護現場向け手引きなどのさらなる情報の入手先といった項目ごとに情報が簡潔にまとめられています。

 主として中央・西アフリカの熱帯諸国で流行するエボラ・ウイルス病は適切な治療とケアがないと死亡に至る場合があります。典型的な症状は突然の発熱、強度の脱力感、筋肉痛、のどの痛みであり、これに嘔吐や下痢、発疹、腎臓・肝臓の機能障害が続き、時に内出血を含む出血があります。感染から発症までは2~21日間かかり、発症した患者には伝染力があります。

 ウイルスの起源は不明ですが、オオコウモリが天然の宿主である可能性が高いと考えられています。病人、死亡した病人あるいは感染動物の血液、分泌物、その他の体液に直接接触することによって感染します。これらの液体に汚染された物と接触した皮膚や粘膜の傷口から間接的に感染する可能性もあります。快復患者も快復後最大7週間は精液を通じてウイルスを広める可能性があります。

 エボラ・ウイルス病患者を扱う保健医療労働者は適切な個人用保護具を着用し、推奨される感染予防・制御法に厳格に従わなかった場合、感染する危険性があります。保健医療労働者や感染拡大対策に従事する労働者にはこの他にも、心理社会的疲労、感染の可能性を秘めた人という不名誉な烙印や暴力、長時間労働、熱中症や脱水症状といったリスクに直面する可能性がありますが、これには特定の心理社会的支援措置、安全確保、作業編成が求められます。症状を示している人のケアは適切な資格と装備を備えた職員のいる病院や治療施設で行われる必要があり、家族や地域社会による自宅におけるケアは推奨されません。

 基本的な感染予防・制御行為が職場における感染を防止することができ、保健医療労働者には疾患の性質と感染方法に関する概要説明が行われるべきです。保健医療労働者は勧奨される感染制御予防措置に厳格に従うこと、患者や汚染物質などを扱う際にはバイオハザード用の特別の個人用保護具を用い、WHOの推奨に従った手指衛生措置を講じること、あらゆる保健医療施設で標準的な予防措置を適用すること、症状のある労働者は速やかに医師の診察を受けることなどが求められます。死亡した感染者の遺体や体液の取り扱いには訓練を受けた埋葬チームが求められ、動物のエボラウイルス感染が報告された地域では動物を扱う労働者は手袋その他の適切な個人用保護具や保護衣の着用が求められます。ウイルスが発見された地域から戻ってきた出張者は、帰宅後21日以内に発熱や筋肉痛などの典型的な症状が現れた時に警戒すべきことやウイルスに暴露した疑いがある時は速やかに医師の診察を受けて渡航先情報を伝えること、ウイルスが発見されている国は国際空港や港などで医師による出国時スクリーニングを行い、エボラ・ウイルス病に一致した疾患を有する人の海外渡航は禁止すべきこと、船上・機上でそのような人が出た場合には隔離し、国際的な勧告に則った特別措置を講じることなどが求められます。

 労使の対応としては、◇エボラ・ウイルス病蔓延の予防及び制御における保健当局との協力、◇使用者には職業上のリスクを最小化するためにあらゆる実行可能な予防・保護措置を確保する総合的な責任があること、◇労働安全衛生に関する適切な情報や包括的な指示、必要な訓練を提供し、業務上の労働安全衛生事項について労働者に相談し、職業病を労働監督機関に報告すべき使用者の責任、◇労働者は労働安全衛生に関して定められた手順に従い、他人をリスクにさらすことを避け、訓練に参加すべきこと、◇使用者は患者や動物を世話する労働者に適切な保護衣・保護具を提供すべきこと、◇労働安全衛生に関連した措置については労働者による出費を伴うべきでないこと、◇労働者は自らの生命または健康に差し迫った重大な危険があると信じるに足る妥当な理由がある時に直属の上司にただちに状況を報告し、撤去する権利を有すること、◇職業上の暴露によって引き起こされた心的外傷後ストレス障害(STSD)やエボラ・ウイルス病は職業病と見なされるべきこと、◇事業所内労使協力は職場関連予防措置の必要不可欠な要素であること、などといった原則が示されています。

 ILOとWHOは現在、エボラ・ウイルス病の大流行に対する備えと対応における労働安全衛生上のあらゆるリスクに対処した情報資料、技術ガイド、実務勧告の策定に協力して取り組んでいます。

* * *

 以上はILOナイジェリア・ガンビア・ガーナ・リベリア・シエラレオネ国別事務所のデニス・ズル主任計画担当官によるILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2014年9月1日付英文投稿記事-エボラ大流行:労働者の安全を保つ方法労働行政・労働監督・労働安全衛生部作成の英文概説資料-エボラ・ウイルス病についての労使向けILO/WHO共同概説資料の抄訳です。

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