強制労働とは
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強制労働とは、「処罰の脅威によって強制され、また、自らが任意に申し出たものではない全ての労働」のことです[1]。
強制労働は、自由に仕事を選び、誰にも束縛されずに働くという基本的人権の侵害に当たります。
特徴としては
- 処罰の脅威があること
- 自らが任意に申し出たものではない労働や役務であること
ここでの「処罰」とは、逮捕や投獄などの刑罰を指すこともあれば、賃金の支払いを拒否したり、労働者の自由な移動を禁じたりするなど、権利や自由の抑圧を指すこともあります。また、相手からの報復のリスクについては、暴力の行使や身体的拘束のほか、殺害の脅迫のような非常に露骨なものから、「不法就労者を当局に告発する」という脅しのように巧妙な(そして往々にして心理的な)ものまで、さまざまな可能性が考えられます。
労働が自発的に行われているかどうかは、多くの場合、借金返済としての給与からの天引き、賃金や報酬の不払い、身分証明書の没収など、外からの間接的な圧力に着目して判断します。また、全ての労働関係は契約当事者双方の同意に基づくべきであるという原則があります。つまり、国内法や労働協約に従って合理的な事前通知を行うことを条件として、両当事者は労働関係をいつでも解消できるということです。「何らかの処罰を受けるのではないか」という恐れから契約への同意を撤回できない場合、その労働者が仕事を辞める権利を否定された時点で強制労働と見なされる可能性があります。
[1] 1930年の強制労働条約(第29号)、第2条。
強制労働の撲滅のために企業ができること
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強制労働の撲滅に当たり、企業は重要な役割を果たすことができます。
具体的には
- 旅券(パスポート)や身分証明書、渡航書類などの文書を労働者がいつでも自由に使えるようにすること
- 具体的で分かりやすい社内方針を策定し、強制労働や人身取引を防ぐための対策を規定すること。自社の商品やサプライチェーンに関わっているあらゆる企業にその方針が適用されることを周知すること
- 契約労働者の派遣(特に国外から)を手がける事業者を厳しく監視し、労働者の自由な離職を阻止するために各種書類を没収した事実が判明した事業者は監視リストに追加すること
強制労働の防止や撲滅の方法については、“Combating forced labour: A handbook for employers and business” (ILO, Geneva, 2015)に詳しい記載があります。
刑務所における労働
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受刑者による労働については、1930年の強制労働条約(第29号)に記載があります。
強制労働とは、「処罰の脅威によって強制され、また、自らが任意に申し出たものではない全ての労働」のことです。
自由意志に基づく同意という要件は、受刑者にも当てはまります。刑務所における労働で生産されたモノを使用する企業は、その受刑者が労働を拒否した場合に特権が取り消される、態度が悪いと判断され刑の減軽がなされないなどといった処罰の脅威を取り除く必要があります。
受刑者が自由意志に基づいて労働に同意しているかどうかは、その雇用条件が通常の労働関係に近いかどうかを見て判断します。
具体的には
- 労働に同意する旨を示す標準的な同意書を労働者が企業から受領し、同意書に署名していること。賃金や労働条件が同意書に記載されていること
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企業から提示された労働条件が刑務所外の労働条件とほぼ同等であること
つまり
- 受刑者による労働の警備監督のために企業が負担する費用や生産性の水準などを考慮に入れた上で、当該の業種や職業で同様の技能や経験を有する一般的な労働者と賃金が同等であること
- 賃金が労働者に直接支払われていること。実働時間、賃金の支給額、法律で認められている食事や住宅の費用の控除額が記載された、明確で詳細な賃金明細書が労働者に交付されていること
- 1日当たりの労働時間が法律の範囲内であること
- 労働安全衛生対策が法律に準拠していること
- 労働保険や医療保険など社会保障制度によって労働者が守られていること
- 新しい技能を習得する、適切に管理された環境下で他の労働者と協働してチームワークを身に付ける、などのメリットが得られること
- 釈放後に同様の仕事を続けられる可能性があること
- 合理的な退職の予告期間の規定を守って事前通知さえ行えば、労働者はいつでも契約への同意を撤回できること
労働への同意が自由意志に基づいているかどうかを判断するには、こういった要素全てを総合的に検討する必要があります。また、労働に従事させる前に、個々の受刑者から正式な同意を(可能であれば書面で)取得するべきです。
なお、これらの要件を順守することが現実的に難しい場合もあり、虐待が生じていないかどうかの検証が必要となります。
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1957年の強制労働廃止条約(第105号)は独立した条約であり、他の条約の批准を前提としていません。
1998年に労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップが採択され、ILO加盟国であるということは特定の基本理念の実現に向けて取り組む義務を負うことを意味するという事実を全てのILO加盟国が認めています。特定の基本理念とは、結社の自由、団体交渉権の効果的な承認、あらゆる形態の強制労働の禁止、児童労働の実効的な廃止、雇用および職業における差別の排除、安全で健康な労働環境を指します。こういった理念を体現する基本条約をまだ批准していない加盟国も、この義務を負っています。1930年の強制労働条約(第29号)と1957年の強制労働廃止条約(第105号)はどちらもILO理事会が定めたILO基本条約であり、「すべての加盟国は、該当する基本条約を批准していない場合においても、まさに ILO の加盟国である事実そのものにより、誠意をもって、憲章に従って、これら条約の対象となっている基本的権利に関する原則(中略)を尊重し、促進し、かつ実現する義務を負う」[1] ことになります。
労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言はあらゆるILO加盟国による基本条約の批准と履行を目指しているものの[2] 、基本条約は自動的に批准されるものではなく、ILO憲章の第19条第5項で具体的な批准手続きが規定されています。[1] 労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップ、第2条。
[2] 同上、第3条。
労働者の監禁
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これは移動の自由の制限に当たり、労働者の弱い立場につけこんだ措置だと言えます。他の強制手段(脅迫や暴力など)を伴う場合、この状況下で自由意志や同意はあり得ないと見なされるかもしれません。たとえまったく強制的な要素がなかったとしても、労働者を事業所内に閉じ込めるべきではありません。ILOは職場での監禁を一切容認しない「ゼロ・トレランス」のアプローチを提唱しています[1]。
さらに、工場などに労働者を閉じ込めるのは明らかに労働安全衛生の原則に反しています。事故が発生すれば人身損害の民事責任が生じる恐れもあります。また、工場に労働者を監禁することは、国内法上の犯罪行為、または不当監禁として民事上の不法行為に当たる場合もあります。
企業が自らの財産を守るために措置を講じること自体は適法ですが、労働者の監禁ではなく、別の手段を検討しましょう。
効果的な手段に関する実践的なアドバイスや、強制労働の問題全般に関する有益な情報については、国内の使用者団体や労働組合にお問い合わせください。
[1] 詳しくは “Combating forced labour: A handbook for employers and business” (ILO, Geneva, 2015)の第6章8ページをご覧ください。
労働者の旅券(パスポート)の没収
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強制労働とは、「処罰の脅威によって強制され、また、自らが任意に申し出たものではない全ての労働」のことです[1]。
強制労働は、自由に仕事を選び、誰にも束縛されずに働くという基本的人権の侵害に当たります。
強制労働には、「処罰の脅威」と「自らが任意に申し出たものではない全ての労働」という2つの要素があります。
多くの場合、強制労働の主な要素は「強要」で、つまり自由意志で同意していない人物が強制的に働かされているのです。ご質問の移民労働者は、パスポートや身分証明書を没収されて働かざるを得ないのかもしれません。あるいは、労働者が身分証明書を紛失しないように使用者が保管しているだけかもしれません。こういう場合、いつ何時でも労働者が自分の書類を使えるようにするべきであり、また、仕事を辞められなくなるような制約は一切あってはなりません。
[1] 1930年の強制労働条約(第29号)、第2条。
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移民労働者の身分証明書を保管すること自体は、強制労働には当たりません。しかし、パスポートや身分証明書を取り上げられた労働者は移動の自由が制限され、その結果強制労働の被害者となるリスクが高まります。そのため、使用者であれ、人材派遣会社であれ、政府当局であれ、移民労働者からパスポートなどの身分証明書を没収することは虐待的行為と見なされます。
貴社のサプライヤーには、労働者の代理人として当局にパスポートの返還を求めるよう助言されてはいかがでしょうか。政府当局に要請を却下された場合には、政府に懸念を表明するように国内の労働組合や使用者団体に支援を求めることをお勧めします。
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移民労働者には、使用者の許可がなくても出国する権利があります[1] 。
基本原則として、そういう書類は移民労働者本人が保管するべきです。パスポートや渡航書類を使用者が保管するのは、ごく例外的な、紛失を防ぐためという理由がある場合のみに認められます。さらに、労働者本人の(強要されたのではない、本心からの)要望と同意がなくてはなりません。
使用者が労働者の身分証明書を保管している場合、いつでも労働者が書類を使えるようにしなければならず、退職する自由も一切制約があってはなりません。パスポートの使用に上級役員の同伴が必要であるということは、実際には労働者はパスポートを使えないのではないかという疑義が生じます。移民労働者は査証(ビザ)手続き以外にも、いかなる理由でも自分のパスポートが使えなくてはなりません。
ILOでは、移民労働者のみが利用できる個人用ロッカーの設置を推奨しています。ILOベターワークプログラムではすでに多くの使用者がこうしたロッカーを設置しており、好評を博しています。
さらに詳しい情報は、当該国の使用者団体にお問い合わせください。各国の使用者団体の一覧は、国際経営者団体連盟(International Organisation of Employers)の Webサイトで閲覧できます。
また、移民労働者のネットワーク(migrant workers network)をさまざまな国で展開している国際労働組合総連合(International Trade Union Confederation)も信頼できる情報源です。
[1] 1975年の移民労働者(補足規定)条約(第143号)の前文では、「世界人権宣言並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約に規定されているように、すべて人は(中略)いずれの国をも立ち去る権利を有する」とされています。
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移民労働者には、使用者の許可がなくても出国する権利があります。基本原則として、そういう書類は移民労働者本人が保管するべきです。
パスポートや渡航書類を使用者が保管するのは、ごく例外的な、紛失を防ぐためという理由がある場合のみに認められます。さらに、労働者本人の(強要されたのではない、本心からの)要望と同意がなくてはなりません。
使用者が労働者の身分証明書を保管している場合、いつでも労働者が書類を使えるようにしなければならず、退職する自由も一切制約があってはなりません。パスポートの使用に上級役員の同伴が必要であるということは、実際には労働者がパスポートを使えないのではないかという疑義が生じます。移民労働者は査証(ビザ)手続き以外にも、いかなる理由でも自分のパスポートが使えなくてはなりません。 -
労働者が身分証明書をいつ何時でも利用できるようにしなくてはならないというのは、労働者代表が身分証明書を保管する場合も含まれます。代替案として、労働者本人がそういう重要書類を保管できるロッカーなどの安全な設備を各人に提供することもご検討ください。
労働者からの預託金や手数料の徴収
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多くの場合、労働が自発的に行われているかどうかは、外部からの間接的な圧力に着目して判断します。預託金を労働者の給与から天引きすることはそのような圧力に当たると言えます。
使用者がその移民労働者のために年間手数料を支払ったのだとしても、契約期間で履行されなかった分の手数料の返金を義務付けることは認められません。移民労働者の雇用に際して使用者が負担した手数料や費用は、間接的にも直接的にも、全額であれその一部であれ、労働者に一切請求してはならないからです。詳しくは 1997年の民間職業仲介事業所条約(第181号) の第7条第1項をご覧ください。 -
多くの場合、強制労働の主な要素は「強要」で、つまり自由意志で同意していない人物が強制的に働かされているのです。高額の仲介手数料や旅費の支払いを移民労働者に負わせると、それによって生じる借金やその他の債務によって移民労働者が強制労働の状態に陥ることがあります。また、預託金を請求することは移民労働者から退職の自由を奪うことにつながります。そのため、どちらも強制労働の証拠と見なされる可能性があります。
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一般的に、高額の預託金の請求などによる賃金からの天引きや賃金の不払いは、労働者が仕事を辞めたくなったときに離職を妨げるような制約となります。しかし、預託金の金額が常識の範囲内で、返金される条件を労働者に通知してあり、返金条件が満たされた場合は実際に返金されるようであれば、そういった預託金を請求しても強制労働には当たりません。制服の保証金の場合、退職の際には制服を返却すれば保証金が返金されることを労働者に周知しなくてはなりません。他の条件(制服は常識の範囲内の状態で返却しなければならないなど)があれば明確に提示し、その条件が退職を希望する労働者の妨げとなることがあってはなりません。
退職時に返金されない保証金は保証金ではなく、制服代の強制的な請求だと言えます。そういった費用を賃金から天引きすることは賃金保護の観点から問題となります。1949年の賃金保護勧告(第85号)では、社内規程だけではなく、以下の要件を満たすことを求めています。「使用者により供給される工具、材料又は装具に関する賃金からの控除を次の場合に制限するため、適当の措置を講じなければならない。
(a) かかる控除が関係ある職業又は業務において慣習として承認される場合
(b) かかる控除が労働協約又は仲裁裁定により定められる場合
(c) かかる控除が国内の法令又は規則により承認された手続により別段に許容される場合」[1]
これらの条件が満たされていれば、労働者に制服代を請求しても問題はありません。ただし、制服が労働者の所有物になることを明確に伝える必要があります。[1] 1949年の賃金保護勧告(第85号)、第3条。
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事前通知に関する規定は、労働者が仕事を辞めたいときに退職する権利と、使用者が代わりの人員を見つけるための合理的な期間を確保する権利との兼ね合いで決められます。この相反する2つの権利の適切なバランスは、理想的には労働組合と使用者団体との協議を経て、政府が判断するものです。そのため、予告期間は各国の法律で定められています。労働者と企業は国内法で定められた事前通知の規定を順守しなければなりません。法で定められた最低限の予告期間を守らなかった労働者には、国内法に従って処罰が科されるべきであり、企業の社内規程はこれに準拠する必要があります。
試用期間は、労働者がその仕事に向いているか、またその仕事が労働者に向いているかを使用者と労働者が判断するためのものです。労働者と仕事の相性が良くないとどちらか一方が判断した場合、事前通知の規定に従って試用期間中いつでも労働関係を解消することができます。この権利を行使したために処罰が科されることがあってはなりません。ただ、この権利を使用者が行使した際に賃金から天引きすることは、強制労働には当たりません。[1]しかし、これは賃金保護に関する国際労働基準の規定には違反しています[2]。
雇用関係の解消を希望したのが使用者側かどうかによらず、労働者には勤務した日数分の報酬を支払う必要があります。雇用関係を解消する権利を労働者が行使するのを阻止したり罰したりするために賃金から天引きすることは労働の強要に当たり、そもそも試用期間の目的にも反しています。
[1] 詳しくは 1930年の強制労働条約(第29号) 、および1957年の強制労働廃止条約(第105号)をご覧ください。
[2] 詳しくは 1949年の賃金保護条約(第95号) 、および 1949年の賃金保護勧告(第85号) をご覧ください。
現物支給
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強制労働とは、「処罰の脅威によって強制され、また、自らが任意に申し出たものではない全ての労働」のことです。強要や脅迫が一切行われていないかどうか、現物支給なのは債務奴隷の状態だからではないかどうか、労働者がいつでも離職できる状況かどうかを企業は確認しなければなりません。
物品やサービスの現物支給によって労働者が使用者に対する依存状態に陥ってしまわないように[1] 、虐待のリスクに備えて保護措置や法的な保護が必要です。多くの国で、現物支給が認められる賃金の割合の上限が労働法で定められており、通常は20~40%となっています。現物支給の割合が50%ともなると労働者とその家族が生活するのに必要な現金報酬が不当に縮小され、合理的な値とは言えないかもしれません[2] 。
現物支給のみによる支払いは、それ自体が強制労働に当たるわけではありませんが、労働者が使用者に依存する度合いを高め、その立場を弱くします。そのため、最終的に労働者が強制労働に陥るリスクが生じるのです。
[1] “Combating forced labour: A handbook for employers and business” (ILO, Geneva, 2015)、第3章3ページ。
[2] 詳しくは、 1949年の賃金保護条約(第95号)、“General Survey of the reports concerning the Protection of Wages Convention (No. 95) and the Protection of Wages Recommendation (No. 85)”, 1949, paragraph 117をご覧ください。
時間外労働の義務付け
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時間外労働の義務付けは、国内法や労働協約で認められた範囲内であれば、強制労働には当たりません。範囲を超えている場合は、時間外労働の義務付けにより強制労働の防止に影響が出ていないか状況を精査するべきだと言えます[1]。
通常の勤務時間を超えた労働を理論上は拒否できるとしても、弱い立場にある労働者にとっては実際には選択肢がないこともあり、最低賃金を稼ぐためか解雇されないため、またはその両方の理由から時間外労働を行わざるを得ないのです。処罰や解雇をちらつかせて、または最低賃金を下回る賃金で、労働者の弱い立場につけこんで強制的に労働や役務を行わせている場合、こうした搾取はただの劣悪な雇用条件という問題を超えています。これは処罰の脅威によって労働を強制されることに他ならず、労働者の保護が必要となります。
[1] “General Survey concerning the Forced Labour Convention, 1930 (No. 29), and the Abolition of Forced Labour Convention, 1957 (No. 105)”, 2007, paragraph 132.
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工場の時間外労働に関する規定は、国内法と該当する労働協約の規定に準拠しなければなりません。時間外労働の義務付けは、国内法で認められる範囲内か、関連した労働協約で定められた範囲内であれば強制労働とは見なされません。しかし、法律で認められた週ごと、月ごとの上限を上回り、さらに処罰の脅威によって強制される場合、そのような時間外労働はいかなる理由があったとしても強制労働となります。
また、時間外労働を拒否した場合に罰金を科せられる恐れがあり、実際のところは法律上の上限を超える時間外労働を断れなくなっている場合も問題となります。「法的な上限を超える時間外労働を行わない場合に罰金が科される」という社内規程が処罰の脅威だという認識を労働者が持っている場合、これは強制労働と見なされる可能性があります。さらに、より巧妙な脅しもあるとILO条約勧告適用専門家委員会は指摘しています。解雇されるかもしれないという恐れから国内法で認められた上限を超える時間外労働を行うことがあり、また別の事例では、そうすることでしか最低賃金が得られないと思い(例えばノルマ達成に応じて報酬が決まるなどの場合)、法的な上限を上回る時間外労働を行わざるを得ないこともあります。こういった事例では、労働者は理論上は時間外労働を断れるはずですが、弱い立場にあるためにその選択肢がなく、最低賃金を稼ぐため、解雇されないようにするため、あるいはその両方の理由から、時間外労働を行わざるを得ないのです。これは処罰の脅威によって労働を強制していることになり、強制労働と見なされる可能性があります。
勧誘禁止条項と退職違約金条項
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勧誘禁止の問題については、ILO条約勧告適用専門家委員会は各国の司法機関に判断を委ねています。各国の司法機関では、勧誘が禁止される期間やその対象(同じ会社の他の従業員、コンサルタント、顧客やクライアント、サプライヤーなど)を検討して、勧誘禁止条項の強制力を判断します。勧誘禁止の期間が合理的であると判断され、接触を禁止されている対象が同じ会社の従業員に限定されている場合、勧誘禁止条項は各国の司法機関によって承認されています。
一方、退職違約金条項は一定の期間が経過するまで従業員(通常は能力の高い労働者や社歴の長い労働者)が離職しないよう拘束するものであることが一般的です。1930年の強制労働条約(第29号)では、全ての労働関係は契約当事者双方の同意に基づくべきであるという大原則が定められています。また、ILO条約勧告適用専門家委員会は、仕事を自由に選ぶ労働者の権利を侵すことはできず、国内法や労働協約に従って合理的な通知を行えば当事者双方が労働関係をいつでも自由に解消できなくてはならない点を強調しています[1]。ただし、有期契約の途中解除によって生じた損失の補償を求められることもあります。
[1] “Giving globalization a human face: General Survey on the fundamental Conventions concerning rights at work in light of the ILO Declaration on Social Justice for a Fair Globalization, 2008”, ILO, Geneva, paragraph 271.
労働者の搾取
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ILOでは、「搾取」という用語は限られた状況でのみ使用しています。具体的には、潜在的な被害者が犯罪行為(人身取引や商業的な性的搾取)に巻き込まれている場合や、社会的な立場(先住民の人たち)や外国籍(移民労働者)、または雇用状況によって、とりわけ弱い立場に置かれている場合です。
人身取引についての国際条約では、国連が次のように搾取を定義しています。「搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷化若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める」[1]
ILO条約勧告適用専門家委員会による報告書では、パレルモ議定書と 1930年の強制労働条約(第29号)の関係性を考える上で適切な定義として上記に言及しています[2]。また、この報告書には次のような記述もあります。
“In certain cases, the Committee has considered it appropriate to examine the links between an obligation to perform overtime work and protection against the imposition of forced labour. Exploitation of the vulnerability of workers who are facing a menace of dismissal or forced to work beyond normal working hours to attain productivity targets so that they can earn the minimum wage, limits the workers’ liberty and right to refuse work imposed on them under the menace of a penalty. The Committee has considered that, in certain situations, an obligation to perform overtime work may constitute an infringement of [the Forced Labour] Convention No. 29.” [3](「特定の事例では、時間外労働を行う義務と強制労働のつながりを精査するべきだというのが委員会の見解である。解雇の恐れに直面している労働者や、最低賃金を得ようとノルマ達成のために通常の労働時間外も働かざるを得ない労働者がその弱い立場につけこまれれば、処罰の脅威のせいで、課された労働を拒否する労働者の自由と権利は制限されてしまう。そのような状況では、時間外労働を行う義務は第29号[強制労働]条約の違反に当たると委員会は考える」)
さらに、同報告書には次のような記述があります。“The Migration for Employment Convention (Revised), 1949 (No. 97), contains provisions aiming at the assistance to migrants for employment, in particular through the establishment of free services to provide them with various kinds of assistance and accurate information. In addition, it requires ratifying States to take all appropriate steps against misleading propaganda relating to emigration and immigration (Articles 2 and 3). These provisions may be viewed in the context, as preventing of conditions conducive to trafficking in persons for the purpose of exploitation.” [4](「1949年の移民労働者条約(改正)(第97号)の第2条には、移民の雇用を支援する規定が含まれる(特に、多岐にわたる援助と正確な情報を提供する無料サービスの設立)。さらに、第3条では出移民と入移民に関する虚偽の宣伝に対してあらゆる適切な措置を講じることを批准国に義務付けている。こういった条項は、搾取を目的とした人身取引につながる状況を防止するという文脈で解釈することができる」)
パレルモ議定書と強制労働条約の関係性については、“A global alliance against forced labour”という2005年のグローバルレポートの中で、法執行上の課題に加えて概念理解の課題を提起している、とILO事務局長は述べています。“They introduce into international law the concept of exploitation – broken down broadly into labour and sexual exploitation – regarding which there has been limited juridical precedent. And they require States Parties, several of which have hitherto adopted anti-trafficking laws which cover only the sexual exploitation of women and children, to adopt or amend their laws in order to have a broader concept of trafficking and exploitation.” (「この2文書は、国際法に『搾取』(労働搾取と性的搾取に大別される)という概念をもたらす。搾取に関しては判例がごく限られている。また、締結国の一部は女性と児童の性的搾取のみを対象とする人身取引禁止法をこれまで採択してきたが、より広範な人身取引と搾取を対象とするために、新たに法律を採択するか法改正を行うことが締結国には求められる」)
加えて、強制労働に関する2009年のグローバルレポートである “The cost of coercion” では、事務局長は次のように述べています。“The recent focus on the concept of “exploitation” has generated some keen debates, as to how it can be captured as a specific offence, how to determine the gravity of the offence, and how it can be punished. Moreover, the lessons of experience point to a very thin dividing line between coerced and non-coerced exploitation. While the ILO definition of forced labour places much emphasis on the involuntariness of the work or service relationship, the Palermo Protocol and the subsequent policy debates have emphasized the means by which initial consent can be negated, through different forms of deception along the path to the employment relationship as well as within it.” [5](「近年では『搾取』の概念が注目されており、搾取を犯罪行為として捉え、その重大性を判断し、罰する方法が熱心に論じられている。さらに、過去の事例を見ると、強要された搾取とそれ以外の搾取は紙一重であると言える。ILOによる『強制労働』の定義では労働または役務関係が自発的ではない点が重視されるが、パレルモ議定書とそれに続く政策討議では、当初の合意がその後採用に至るまでに、また採用後も、さまざまな形態の欺瞞(ぎまん)によって無効にされる過程が重視されている」)
[1] 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書 (パレルモ議定書)、第3条。
[2] “General Survey concerning the Forced Labour Convention, 1930 (No.29), and the Abolition of Forced Labour Convention, 1957 (no. 105)”, 2007, paragraphs 75-77.
[3] 同上第206項。
[4] 同上第18項。
[5] “The cost of coercion”, paragraph 41.
雇用契約
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全ての労働者に、賃金の支払い、時間外労働、身分証明書の保管、その他強制労働の防止に関連した労働者の権利が本人にとって容易に理解できる言語で明記された契約書が書面交付されるべきです。
洋上施設における労働
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強制労働とは、「処罰の脅威によって強制され、また、自らが任意に申し出たものではない全ての労働」のことです[1]。
また、全ての労働関係は契約当事者双方の同意に基づくべきであるという原則があります。つまり、国内法や労働協約に従って合理的な予告を行うことを条件として、両当事者は労働関係をいつでも解消できるということです。「何らかの処罰を受けるのではないか」という恐れから契約への同意を撤回できない場合、その労働者が仕事を辞める権利を否定された時点で強制労働と見なされる可能性があります。
移動の自由が制限されると労働関係の解消を妨げる要因となることもあり、自由意志という観点から疑義が生じます。しかし洋上施設の場合は、合理的な一定の期間にわたって移動が制限される正当な物理的要因があります。ただ、この事情について雇用契約を結ぶ前に労働者に詳しく教えるべきです。また、プラットフォームの滞在期間も合理的な範ちゅうでなければなりません。
[1] 1930年の強制労働条約(第29号)、第2条。
その他
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規格の不適合や無断欠勤など、社内規程に反する行為に罰金を科すことは、労働者が強制的に働かされているかどうかという問題とは無関係であるため、強制労働の問題には当たりません。ただ、賃金保護など、国際労働基準の他の原則については問題となる可能性があります。
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その方針では、賃金の前払いや従業員への貸し付けが離職を妨げる手段として利用されてはならないということを明示するべきです。前払いや貸し付けの金額も、貸付金の返済のために賃金から天引きする額も、国内法で定められた上限を超えてはなりません。また、前払いと貸し付けの付与と返済に関する条件を労働者に通知する必要があります。
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ILOが参加している人身取引と闘う国連グローバル・イニシアティブでは、 “Human Trafficking and Business”というガイドを作成しています。ぜひご参照ください。
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訓練費用の返済については、ILO条約勧告適用専門家委員会が労働者の退職の自由という問題に関連して取り上げています。使用者や国による訓練を受けた労働者は、一定の期間にわたって役務に従事することを義務付けられることがあります。このような場合、訓練期間に見合う合理的な期間内か、発生した訓練費用に見合う金額の返済後に、労働者が離職できるようにすることをILOの監視機構は各国政府に要請しています。
労働者による訓練費用の返済について、確認するべき項目や、許容範囲と見なされる金額や割合を監視機構は提示していません。ILO条約勧告適用専門家委員会は、訓練費用に見合うとされる金額や具体的な返済額について指針を提示したことはなく、主に公共セクターにおいてこの問題を検討しています。また、国ごとに事情が異なるため、各国政府に情報提供を求める際には個々の事例に応じてアプローチを変えています。
例えばある国では、奨学金を授与された軍隊員は、国内法により(i)奨学金の支給期間が1年を超える場合は10年勤続した後、または(ii)政府が負担した費用の2倍の金額を返済した場合にのみ除隊が認められます。この事例では、奨学金の恩恵を受けた者であっても、政府が学費を負担した就学期間に見合う期間内に、または政府が実際に負担した費用を返済後に除隊する権利がある、とILO条約勧告適用専門家委員会は指摘しています。また、別の国の政府に対しては、“the repayment of large sums within a short period may prevent graduates from withdrawing from compulsory service, which, in practice, could be tantamount to imposing service by law, which is contrary to the Convention”(「短期間に多額の返済をすることになると新卒者は強制的な兵役から逃れられなくなる恐れがあり、これは法律によって兵役を強制することと事実上同じであると考えられ、条約違反となる」)と注意を呼びかけています。
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