グローバル・サプライチェーンにおける責任ある労働慣行を促進するために、日本の主要投資国としての役割を発揮する
アジア太平洋地域を中心に重要性が増す海外投資国としての日本の役割
日本の多国籍企業は海外投資で大きな役割を担い、広範なビジネスネットワークを通じて多くの企業とグローバル・サプライチェーンを構築し、事業を展開しています。2017年には、過去最高の約75,000社の日本企業が海外事業に参入しています。
日本企業は、国際労働基準や「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」(ILO多国籍企業宣言)の原則に則った方針を策定し実践することで、国内だけでなく海外での事業を通じて世界各地でディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進することができます。
2014年以降、ILOは日本経済団体連合会(経団連)の協力を得て、労働に関する企業の社会的責任(労働CSR)と責任あるサプライチェーンマネジメントについて理解を深めるために、会議やワークショップを共催し、日本の多国籍企業に働きかけてきました。その結果、多くの関係者が参加するグローバル・サプライチェーンに関係する国際レベル、国内レベル、産業レベルのイニシアティブの基礎が築かれました。2015年からは、国際労働基準に関するILOのビジネスのためのヘルプデスクサービスが日本語でも運用されています。
ベトナムとパキスタンで、日本の多国籍企業のサプライチェーンにおけるディーセント・ワークを推進
労働CSRに関する日本企業との連携は、2015年に日本政府が拠出した「アジアにおける社会的責任ある労働慣行による、より多くのより良い仕事」プロジェクトを通じてさらに強化されました。このプロジェクトは、多国籍企業の責任ある事業活動を通じて、現地の経済・社会の発展とディーセント・ワークの推進を促すもので、特にベトナムの電子機器部門とパキスタンのスポーツ用品製造業に焦点を当てました。
プロジェクトでは、多国籍企業の本国である日本における活動と、プロジェクト対象国(パキスタン、ベトナム)での活動を組み合わせ、本国と受入国・生産国との間の対話を促進することを目指しました。例えば、ILOは電子情報技術産業協会(JEITA)と協力して、日本の多国籍企業本社との間で一連の円卓会議を開催しました。会議では、日本の多国籍企業が海外事業で直面している雇用・労働問題や、企業の方針や慣行が果たす役割について議論し、自社のグローバル事業でディーセント・ワークを推進し、より良い労働慣行に対するビジネス・パートナーの意識向上を図っていくことを確認しました。
ベトナムでは、日本の多国籍企業の子会社がプロジェクトの重要なパートナーとなっています。調査活動、技術セミナー、ハイレベルな政策対話に参加し、電子機器企業連合を通じてベトナムのステークホルダーとの関わりを続けてきました。この企業連合は、ベトナム商工会議所(VCCI)とベトナム電子工業会(VEIA)が、ILOの技術支援を受けて2017年に立ち上げたもので、対話と協働を通じて、電子産業における社会的責任ある労働慣行を推進することを目指しています。
2018年6月にハノイで開催された本国-受入国政策対話には、日本の政府と労使団体、さらに多国籍企業の現地代表者、そしてベトナム電子産業の重要な関係者が参加しました。この対話では、調査結果やベトナムと日本で実施された円卓会議を通じて得られた教訓、ベトナム電子産業がディーセント・ワークを創出する可能性を最大限に引き出すためにさらに何が必要なのか、参加者の間で活発な意見交換が行われました。
歴史的なパートナーシップに関する合意書を東京2020組織委員会と締結
2018年、ILOと東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)のデリバリーパートナー企業の持続可能性を促進するため、画期的なパートナーシップ合意書を締結しました。この合意書は、ILOにとってオリンピック・パラリンピック組織委員会との初めての正式なパートナーシップであり、東京2020組織委員会にとっては国連機関との初めてのパートナーシップでした。このパートナーシップは、東京2020大会に関わる企業が、ILO多国籍企業宣言の指針に基づいて、企業の社会的責任と社会的責任のある労働慣行を通じたディーセント・ワークの推進に、積極的な役割を果たすよう働きかけていくことを目的としています。毎年開催されるサステナビリティ・フォーラムを通して、社会的責任ある労働慣行に対する認識が高まり、東京2020大会のデリバリーパートナーが持続可能性にコミットメントを表明し、日本政府、使用者団体、労働組合とも認識を共有しました。
東京2020組織委員会のウェブサイトでは、ILOとのパートナーシップを紹介するとともに、大会のデリバリーパートナーが社会的責任ある労働慣行を実施する際に参考となるILOの資料を公開しました。東京2020組織委員会の「持続可能性に配慮した運営計画」と「持続可能性に配慮した調達コード」は、ILO多国籍企業宣言と労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言に言及しています。また、パートナーシップの一環として、ILOと東京2020組織委員会は、大会のデリバリーパートナーが調達要件を満たすことを技術的に支援するために、「国際労働基準と持続可能性に配慮した調達ハンドブック」を作成しました。さらに、「Fair Play - Decent Work for All through the 2020 Games 東京2020大会パートナー企業ディーセント・ワーク推進に関する取組事例集」では、大会スポンサー企業の社会的責任ある労働慣行を紹介しました。このパートナーシップによって、パキスタンのスポーツ用品製造業におけるMNEDプロジェクトの取り組みが、さらに発展することとなりました。
日本の多国籍企業の電子業界と自動車部品業界のサプライチェーンにおける、ディーセント・ワーク推進のためのパートナーシップの強化
2018年、日本はEU-ILO-OECD「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プログラムのパートナーとなりました。このプログラムは、アジアの6カ国(中国、日本、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム)における多国籍企業とそのサプライチェーンの活動において、持続可能で責任ある企業慣行を促進することを目的としています。ILOは、日本政府、経団連、業界団体(JEITA、JAPIA)、労働組合と協力して、ILO多国籍企業宣言の指針に基づいて、電子産業や自動車部品産業のサプライチェーンを持つ多国籍企業の好事例を調査し、セミナーを通して知見の共有を促進しました。経団連は、ILOにとって常に大切なパートナーであり、日本の多国籍企業の意識向上とサプライチェーンにおける責任ある企業行動を促進するために、技術セミナーや対話を共催しました。
日本の「ビジネスと人権に関する行動計画」(NAP)
2020年10月、日本は国連の「ビジネスと人権に関する行動計画」に基づき、「ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会」の要請に応じて、「ビジネスと人権に関する行動計画」(NAP)を策定しました。NAPでは、ILO多国籍企業宣言をサプライチェーンにおけるディーセント・ワークを推進するための重要な国際ガイダンス文書とし、政府はその継続的な推進を約束しています。日本版NAPの策定に際して、経団連や日本労働組合総連合会などの関係者が合同コメントを発表しました。ILOは、作業部会およびNAP策定のために設置された諮問委員会のメンバーとして、NAP策定プロセスに参画しました。NAPの期間は2020年から2025年までで、責任ある企業活動を推進することで、人権の促進と保護に貢献することを目的としています。新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)が発生した後に策定された最初のNAPで、「COVID-19への対応や回復期において、人権を対策の中心に据えることの重要性」を認識しています。それはCOVID-19による企業活動やサプライチェーンの脆弱性に関するILOの政策メッセージと一致する内容です。
COVID-19パンデミックへの対応として、責任ある企業活動を継続的に推進
COVID-19パンデミックを受け、ILOは経団連と協力し、日本の多国籍企業が危機に対応し、強靭性のあるグローバル・サプライチェーンを構築するための技術支援を実施し、ビジネスとCOVID-19に関するILO資料は多くの方に提供されました。2020年6月と7月に開催されたウェビナーには、100社以上の多国籍企業が参加しました。ILOのツールは、東京2020組織委員会の多言語のウェブサイトを通じて、大会デリバリーパートナー企業に向けても周知されました。
日本政府、使用者団体、労働組合のコミットメント、および日本の多国籍企業の関与と協力は、多国籍企業の本国が、多国籍企業とそのビジネスパートナーの受入国において、優れた社会的慣行を促進し、労働慣行に変化をもたらす可能性を強調するものです。
日本企業は、国際労働基準や「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」(ILO多国籍企業宣言)の原則に則った方針を策定し実践することで、国内だけでなく海外での事業を通じて世界各地でディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進することができます。
2014年以降、ILOは日本経済団体連合会(経団連)の協力を得て、労働に関する企業の社会的責任(労働CSR)と責任あるサプライチェーンマネジメントについて理解を深めるために、会議やワークショップを共催し、日本の多国籍企業に働きかけてきました。その結果、多くの関係者が参加するグローバル・サプライチェーンに関係する国際レベル、国内レベル、産業レベルのイニシアティブの基礎が築かれました。2015年からは、国際労働基準に関するILOのビジネスのためのヘルプデスクサービスが日本語でも運用されています。
ベトナムとパキスタンで、日本の多国籍企業のサプライチェーンにおけるディーセント・ワークを推進
労働CSRに関する日本企業との連携は、2015年に日本政府が拠出した「アジアにおける社会的責任ある労働慣行による、より多くのより良い仕事」プロジェクトを通じてさらに強化されました。このプロジェクトは、多国籍企業の責任ある事業活動を通じて、現地の経済・社会の発展とディーセント・ワークの推進を促すもので、特にベトナムの電子機器部門とパキスタンのスポーツ用品製造業に焦点を当てました。
プロジェクトでは、多国籍企業の本国である日本における活動と、プロジェクト対象国(パキスタン、ベトナム)での活動を組み合わせ、本国と受入国・生産国との間の対話を促進することを目指しました。例えば、ILOは電子情報技術産業協会(JEITA)と協力して、日本の多国籍企業本社との間で一連の円卓会議を開催しました。会議では、日本の多国籍企業が海外事業で直面している雇用・労働問題や、企業の方針や慣行が果たす役割について議論し、自社のグローバル事業でディーセント・ワークを推進し、より良い労働慣行に対するビジネス・パートナーの意識向上を図っていくことを確認しました。
ベトナムでは、日本の多国籍企業の子会社がプロジェクトの重要なパートナーとなっています。調査活動、技術セミナー、ハイレベルな政策対話に参加し、電子機器企業連合を通じてベトナムのステークホルダーとの関わりを続けてきました。この企業連合は、ベトナム商工会議所(VCCI)とベトナム電子工業会(VEIA)が、ILOの技術支援を受けて2017年に立ち上げたもので、対話と協働を通じて、電子産業における社会的責任ある労働慣行を推進することを目指しています。
2018年6月にハノイで開催された本国-受入国政策対話には、日本の政府と労使団体、さらに多国籍企業の現地代表者、そしてベトナム電子産業の重要な関係者が参加しました。この対話では、調査結果やベトナムと日本で実施された円卓会議を通じて得られた教訓、ベトナム電子産業がディーセント・ワークを創出する可能性を最大限に引き出すためにさらに何が必要なのか、参加者の間で活発な意見交換が行われました。
歴史的なパートナーシップに関する合意書を東京2020組織委員会と締結
2018年、ILOと東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)のデリバリーパートナー企業の持続可能性を促進するため、画期的なパートナーシップ合意書を締結しました。この合意書は、ILOにとってオリンピック・パラリンピック組織委員会との初めての正式なパートナーシップであり、東京2020組織委員会にとっては国連機関との初めてのパートナーシップでした。このパートナーシップは、東京2020大会に関わる企業が、ILO多国籍企業宣言の指針に基づいて、企業の社会的責任と社会的責任のある労働慣行を通じたディーセント・ワークの推進に、積極的な役割を果たすよう働きかけていくことを目的としています。毎年開催されるサステナビリティ・フォーラムを通して、社会的責任ある労働慣行に対する認識が高まり、東京2020大会のデリバリーパートナーが持続可能性にコミットメントを表明し、日本政府、使用者団体、労働組合とも認識を共有しました。
東京2020組織委員会のウェブサイトでは、ILOとのパートナーシップを紹介するとともに、大会のデリバリーパートナーが社会的責任ある労働慣行を実施する際に参考となるILOの資料を公開しました。東京2020組織委員会の「持続可能性に配慮した運営計画」と「持続可能性に配慮した調達コード」は、ILO多国籍企業宣言と労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言に言及しています。また、パートナーシップの一環として、ILOと東京2020組織委員会は、大会のデリバリーパートナーが調達要件を満たすことを技術的に支援するために、「国際労働基準と持続可能性に配慮した調達ハンドブック」を作成しました。さらに、「Fair Play - Decent Work for All through the 2020 Games 東京2020大会パートナー企業ディーセント・ワーク推進に関する取組事例集」では、大会スポンサー企業の社会的責任ある労働慣行を紹介しました。このパートナーシップによって、パキスタンのスポーツ用品製造業におけるMNEDプロジェクトの取り組みが、さらに発展することとなりました。
日本の多国籍企業の電子業界と自動車部品業界のサプライチェーンにおける、ディーセント・ワーク推進のためのパートナーシップの強化
2018年、日本はEU-ILO-OECD「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プログラムのパートナーとなりました。このプログラムは、アジアの6カ国(中国、日本、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム)における多国籍企業とそのサプライチェーンの活動において、持続可能で責任ある企業慣行を促進することを目的としています。ILOは、日本政府、経団連、業界団体(JEITA、JAPIA)、労働組合と協力して、ILO多国籍企業宣言の指針に基づいて、電子産業や自動車部品産業のサプライチェーンを持つ多国籍企業の好事例を調査し、セミナーを通して知見の共有を促進しました。経団連は、ILOにとって常に大切なパートナーであり、日本の多国籍企業の意識向上とサプライチェーンにおける責任ある企業行動を促進するために、技術セミナーや対話を共催しました。
日本の「ビジネスと人権に関する行動計画」(NAP)
2020年10月、日本は国連の「ビジネスと人権に関する行動計画」に基づき、「ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会」の要請に応じて、「ビジネスと人権に関する行動計画」(NAP)を策定しました。NAPでは、ILO多国籍企業宣言をサプライチェーンにおけるディーセント・ワークを推進するための重要な国際ガイダンス文書とし、政府はその継続的な推進を約束しています。日本版NAPの策定に際して、経団連や日本労働組合総連合会などの関係者が合同コメントを発表しました。ILOは、作業部会およびNAP策定のために設置された諮問委員会のメンバーとして、NAP策定プロセスに参画しました。NAPの期間は2020年から2025年までで、責任ある企業活動を推進することで、人権の促進と保護に貢献することを目的としています。新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)が発生した後に策定された最初のNAPで、「COVID-19への対応や回復期において、人権を対策の中心に据えることの重要性」を認識しています。それはCOVID-19による企業活動やサプライチェーンの脆弱性に関するILOの政策メッセージと一致する内容です。
COVID-19パンデミックへの対応として、責任ある企業活動を継続的に推進
COVID-19パンデミックを受け、ILOは経団連と協力し、日本の多国籍企業が危機に対応し、強靭性のあるグローバル・サプライチェーンを構築するための技術支援を実施し、ビジネスとCOVID-19に関するILO資料は多くの方に提供されました。2020年6月と7月に開催されたウェビナーには、100社以上の多国籍企業が参加しました。ILOのツールは、東京2020組織委員会の多言語のウェブサイトを通じて、大会デリバリーパートナー企業に向けても周知されました。
日本政府、使用者団体、労働組合のコミットメント、および日本の多国籍企業の関与と協力は、多国籍企業の本国が、多国籍企業とそのビジネスパートナーの受入国において、優れた社会的慣行を促進し、労働慣行に変化をもたらす可能性を強調するものです。