燐寸製造に於ける黄燐使用の禁止に関する千九百六年のベルヌ国際条約の適用に関する勧告（第6号）

　国際労働機関の総会は、
　亜米利加合衆国政府に依り千九百十九年十月二十九日華盛頓に招集せられ、
　右華盛頓総会の会議事項の第五項目の一部たる「燐寸製造に於ける黄燐使用の禁止に関する千九百六年「ベルヌ」国際条約の拡張及適用の件」に関する提案の採択を決議し、且
　該提案は勧告の形式に依るべきものなることを決定し、
　国際労働機関の締盟国をして立法其の他の方法に依り之が実現を為さしむる目的を以て考慮せしむる為、国際労働機関憲章の規定に従ひ、千九百十九年の黄燐勧告と称せらるべき左の勧告を採択す。
　総会は、国際労働機関の各締盟国にして燐寸製造に於ける黄燐使用の禁止に関する千九百六年「ベルヌ」国際条約に未だ加盟せざるものが之に加盟すべきことを勧告す。

〔参　考〕
燐寸製造ニ於ケル黄燐使用ノ禁止ニ関スル千九百六年ベルヌ国際条約

第　一　条

　締約国ハ白（黄）燐ヲ含有スル燐寸ノ製造、輪入及販売ヲ其ノ領土内ニ於テ禁止スルコトヲ約ス

第　二　条

　各締約国ハ本条約ノ規定ノ励行ヲ其ノ領土内ニ於テ確保スルニ付必要ナル行政上ノ措置ヲ執ルノ義務ヲ有ス
　各国政府ハ本条約ノ事項ニ関スル法令及規則ニシテ自国内ニ於テ既ニ実施シ又ハ将来実施スルコトアルヘキモノ竝右法令及規則ノ適用ニ関スル報告ヲ外交上ノ手続ニ依リ相互ニ通知スヘシ

第　三　条

　本条約ノ規定ノ殖民地、属地又ハ保護国ニ適用アルハ右ノ名ニ於テ本国政府カ其ノ旨瑞西連邦政府ニ通告シタル場合ニ限ル

第　四　条

　本条約ハ批准ヲ要ス批准書ハ遅クトモ千九百八年十二月三十一日ニ瑞西連邦政府ニ之ヲ寄託スヘシ右寄託ニ付テハ調書ヲ作成スヘク其ノ認証謄本ハ外交上ノ手続ニ依リ各締約国ニ之ヲ交付スヘシ本条約ハ寄託調書ノ閉鎖後三年ヲ経テ之ヲ実施スヘシ

第　五　条

　本条約ニ署名セサル諸国ハ瑞西連邦政府宛ノ書面ヲ以テ其ノ加入ヲ宣言スルコトヲ得該連邦政府ハ他ノ各締約国ニ右ノ加入ヲ通知スヘシ
　本条約ノ実施ニ関シ第四条ニ定ムル期間ハ署名セサル諸国ニ付テハ其ノ加入ノ通告ノ時ヨリ五年トス殖民地、属地又ハ保護国ニ付亦同シ

第　六　条

　本条約ハ署名国タルト後ニ加入シタル国、殖民地、属地又ハ保護国タルトヲ問ハス批准書寄託調書ノ閉鎖後五年ノ期間満了前ニ於テハ之ヲ廃棄スルコトヲ得ス
　本条約ハ爾後何時タリトモ之ヲ廃棄スルコトヲ得
　廃棄ハ当該政府ヨリ又ハ殖民地、属地若ハ保護国ニ付テハ本国政府ヨリ書面ヲ以テ瑞西連邦政府ニ之ヲ通告シタル時ヨリ一年後ニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス連邦政府ハ他ノ各締約国ノ政府ニ直ニ之ヲ通知スヘキモノトス
　廃棄ハ其ノ名ニ於テ通告アリタル国、殖民地、属地又は保護国ニ関シテノミ効力ヲ生スヘシ
　右証拠トシテ各全権委員ハ本条約ニ署名ス
　千九百六年九月二十六日「ベルヌ」ニ於テ本書一通ヲ作成シ之ヲ瑞西連邦ノ記録ニ寄託保存ス其ノ認証謄本ハ外交上ノ手続ニ依リ之ヲ各締約国ニ交付スヘシ