1939年の移民労働者勧告(第61号)

ILO勧告 | 1939/06/28

移民労働者の募集、職業紹介及び労働条件に関する勧告(第61号)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千十八年五月二十八日にその第百七回会期として会合し、本会期の議事日程の第七議題である六本の国際労働条約の廃止及び三本の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千十八年六月五日に千九百三十九年の移民労働者勧告(第六十一号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、本文書撤回の決定を、国際労働機関の全加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
国際労働事務局の理事会によつてジユネーヴに招集され、且つ千九百三十九年六月八日を以てその第二十五回会議を開催し、
この会議の会議事項の第三項目である移民労働者の募集、職業紹介及び労働条件(均等待遇)に関する提案の採択を決議し、且つ
この提案は勧告の形式によるべきものなることを決定したので、
千九百三十九年の移民労働者勧告として引用することができる次の勧告を千九百三十九年六月二十八日に採択する。
総会は、
千九百三十九年の移民労働者条約を採択したので、且つその規定を勧告により補足することを希望し、
次の通り勧告する。

1(1) この勧告において、
(a) 「募集」と称するのは、次のことを言う。
(i)  一地域において他の地域における使用者のための労働者を雇入れること。又は
(ii) 一地域において労働者に対し他の地域における雇用を提供することを約すること。
並びに(i)及び(ii)の行為(出移民希望者の捜索及び選考並びに出移民の出発準備を含む。)に関連して措置を講ずること。
(b) 「誘導」と称するのは、(a)の意味において募集された労働者の一地域への到着若しくは入域を確保し又は容易にするための行為を言う。
(c) 「職業紹介」と称するのは、(b)の意味において誘導された労働者の労力を使用者に供給するための行為を言う。
(2) この勧告は、次の者に適用しない。
(a) 一加盟国の地域内の移民又は一加盟国の一地域より同一加盟国の他の地域への移民
(b) 労務の場所が一国の地域内に在り且つ居住の場所が他の国の地域に在る国境労働者
(c) 海員
(d) 千九百三十九年の土民労働者募集条約第二条(b)に定められる土民労働者

2 各国において情報を提供し且つ移民に援助を与えるために設けられる施設は、次の任務を有しなければならない。
(a) 移民及びその家族に対し、彼れらの用語若しくは方言又は少くとも彼れらが解し得る用語を以て、出移民、入移民、目的地における労働及び生活条件、出身国への帰還、並びに一般的に言つて移民としての資格において彼れらに関係あるその他の問題に関し、情報を提供し且つ彼れらに助言すること。
(b) 移民及びその家族に対し、その出発、旅行、目的国への入国、目的国における居住及び出身国への帰還(若しその場合が起れば)に関連して執るべき管理的様式の具備及びその他の措置に関し便宜を提供すること。
3 出移民し若しくは入移民又は外国人を雇用することが許可される条件を変更するすべての法規の公布の日と実施の日との間に合理的の間隔をできるだけ設け、以てこれらの条件を適当の時機に出移民せんとする者に知らせるようにしなければならない。
4 前項に掲げられる主な法規又はこれに関する告知を移民に最も普通に知られる用語を以て、出発、通過及び到着の場所に掲示するため措置を講じなければならない。

5(1) 移民労働者の利益を擁護し且つ労働市場の均衡を確保するため、出移民国及び入移民国の権限ある機関は移民の数よりして適当と認められるときは、移民労働者の募集及び誘導の申請書を審査及び裏書のため予め提出することを要求しなければならない。
(2) 移民労働者の誘導を許容するに先だち、入移民国は、当該労働を為し得る資格ある労働者の充分な数がもはや存在しないことを確めなければならない。
6(1) 移民労働者の募集、誘導又は職業紹介の許可が与えられ且つ維持される条件は、国内の法令若しくは規則により、又は出移民国と入移民国との間の協定により、これを定めなければならない。
(2) 許可が与えられる者又は機関は、保証金を提供すべく、右保証金は、移民労働者が右の者又は機関の過失により受ける損害に関し賠償の支払のため供託の形式をとるを可とする。
7(1) 使用者のためにする移民労働者の募集、誘導又は職業紹介をする仲介者は、使用者より文書による証明書又は使用者のために行動するものなることを証明するその他の書類を受けなければならない。
(2) 右の書類は、出移民国の公用語を以て作成し又は右公用語に翻訳すべく、又使用者に関する、仲介者が行う募集、誘導又は職業紹介の性質及び範囲に関する、並びに申込まれた雇用(申込まれた報酬を含む。)に関するすべての必要な事項を掲げなければならない。
8(1) 移民労働者を募集し、誘導し又は職業紹介する各国においては、権限ある機関は、募集、誘導(旅行中の生活を含む。)、職業紹介、送還又はこれに関連するその他の行為に関し、移民又はその使用者に課せられるべき費用の最大限度額を定めなければならない。
(2) 前項に掲げられる費用は、原則として移民が負担せざるべく、且つすべての場合においてこの目的のため使用者が為す報酬より控除は、国内の法令若しくは規則又は出移民国との間の協定によりこれを制限しなければならない。
9(1) 移民労働者は、出移民国よりの出発前、入移民国に入国することが許されることを確認する責に任ずる入移民国の代表者の検査をできるだけ受けなければならない。
(2) 募集が出移民国の法令又は規則により集団的募集と認められる程充分な大規模において行われるときは、右の国の専門的公務員がこれに立会わなければならない。
(3) 前諸項に掲げられる検査及び募集は、できるだけ移民の家庭の附近でこれを行うことが望ましいものとする。
10(1) 移民労働者の家庭であつて移民と同行し又はその後から赴かんとする者は、この目的のため特別の便宜就中次のことを享受しなければならない。
(a) 出移民国を離れ、且つ入移民国に入国し及びそこに居住するための許可については他の申請に優先すること。
(b) 出移民国を離れ、又は入移民国に入国し及びそこに居住するに必要な管理的様式の簡易化及び税の減額
(2) この項の適用上移民労働者の家族は、その妻及び未成年の子並びに移民に扶養されるその他の家族より成るものとみなされなければならない。

11 千九百三十九年の移民労働者条約第六条に定められる内国人と外国人との均等待遇は、できるだけすべての外国人にこれを適用しなければならない。
12(1) 雇用の目的を以て一地域に居住することを許可される外国人及びこれと同行し又はその後から赴く家族は、できるだけ内国人と同一の条約において雇用に就くことを許されなければならない。
(2) 外国人労働者の雇用が制限される国においては、右の制限は、できるだけ、
(a) 一定期間その国に常時的に居住している者に適用されざるべく、右の期間は、原則として五年を超えてはならない。
(b) 移民労働者と同行し又はその後から赴くことを許可された妻及び労働年令の子のため居住期間に関する条件を設けないで、これを廃止しなければならない。
13 社会保険に関する国際労働条約を批准しない加盟国は、外国人労働者及びその遺族に対し、右の条約に定められる待遇を与えることが望ましい。
14(1) 入移民労働者の数が充分多い国においては、右労働者の労働条件は、特にこれを監督すべく、かかる監督は、事情に応じて特別監督機関又は労働監督官その他当該業務専門の公務員がこれを行うものとする。
(2) 前項に掲げられる監督を委嘱された行政機関は、権限ある機関により承認された移民援助のための任意団体とできるだけ協力しなければならない。

15(1) 外国人労働者が一国の地域に常時的に入国を許されたときは、右の国は、労働者が資力をもたないか又は労働市場の事情の故を以てその者又はその家族をできるだけその地域から退去させてはならない。尤もこの趣旨の協定がこの国と出身国との間に締結されている場合は、この限りではない。
(2) 常時的に入国を許された外国人労働者又はその家族を前項に示される理由で当該地域から退去させる必要があると認める国は、すべての場合において、
(a) 右の者がその地域にいた期間を考慮すべく、且ついかなる場合においても五年を超えて在住した者を退去させてはならない。
(b) 関係労働者が失業保険給付を受ける権利を行使し尽したことを確めなければならない。
(c) 関係労働者が特にその財産を処分することができるよう相当の予告期間を与えられたこと、その輸送のため適当の措置が講ぜられたこと並びに労働者及びその家族が人道的方法を以て取扱われたことを確保するため必要な措置が講ぜられたことを確めなければならない。
(d) 労働者及びその家族の帰還費及びその最終目的地への家事用品の運送費が労働者の負担とならないことを確めなければならない。
16 移民労働者又はその家族であつて出身国の国籍を保持する者がその国に帰るときは、右の国は、その国又は地方における以前の居住又は雇用に関する条件を免除することにより、貧民救済及び失業救済をするため並びに失業者の復職を促進するための各種の措置の恩恵に右の者を浴させなければならない。