1944年の雇用(戦時より平時への過渡期)勧告(第71号)

ILO勧告 | 1944/05/12

戦時より平時への過渡期における雇用組織に関する勧告(第71号)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてフイラデルフイアに招集され、且つ千九百四十四年四月二十日を以てその第二十六回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第三項目である戦時より平時への過渡期における雇用組織に関する提案の採択を決議し、且つ
 この提案は勧告の形式によるべきものなることを決定したので、
 千九百四十四年の雇用(戦時より平時への過渡期)勧告として引用することができる次の勧告を千九百四十四年五月十二日に採択する。
 住民の重要な要求を満足させ、且つ世界を通じ生活基準を向上させる目的を以てする完全雇用の促進は、国際労働機関の主要な目的であるのに鑑み、
 完全雇用を達成するためには、雇用の機会を提供する経済的措置は、次の有効な組織すなわち最も適当な労働者を得るように使用者を援助し、最も適当な雇用を見出すように労働者を援助し、且つ一般的に一定の時に必要な熟練者が各種の生産と各種の地域の間において充分に利用され且つ配分されることを確保するための有効な組織により、これを補足しなければならないのに鑑み、
 戦時より平時への過渡期において行われる雇用調整の性質及び重要性は、特に軍隊から解除された者、解放された戦時産業労働者並びに戦争、敵対行動、若しくは敵により支配された機関に対する反抗の結果として普通の雇用が中断されたすべての者の再雇用を促進するため、関係者が遅滞なく最も適当の雇用を見出すのを援助することにより、特別の措置を必要とするのに鑑み、
 総会は、国際労働機関の加盟国が次の一般原則を適用し、及び適用するに当り国内事情に従い提案の適用方法を考慮し、且つ理事会の要求に従いこの原則を実施する為に執られた措置に関する情報を国際労働事務局に通告することを勧告する。

一般原則

I 各政府は、労働することを希望するすべての者を適当な職業において最も速かに再吸収し又は再配分することを確保するため、雇用を求め若しくは求むるらしき労働者に関し及び見込のある雇用の機会に関し必要なすべての情報を蒐集しなければならない。

II 軍隊及び類似の任務からの解除並びに捕虜、追放された者及びその他の者の復員は、最大の正義を以て各個人を遇し、且つ市民生活における充分な復活のための最大の機会をこれに与えるようにこれを計画しなければならない。

III 産業的動員解除及び復員は、使用者及び労働者の団体と協力してこれを計画すべく、且つその他適当な措置は、必要な物品の生産及びサーヴイスの配分のため完全雇用の最も速かな達成を促進するような方法でこれを講じなければならない。

IV 過渡期及びその後における完全雇用の組織のため、労働者を求める使用者及び職業を求める労働者は、権限のある機関並びに使用者及び労働者の団体により職業紹介施設を最も広く利用することを奨励されなければならない。

V 各政府は、職を求める者に最も適当な職業を見出すことを援助する目的を以て、公の職業指導施設をできるだけ最大限度までこれに提供しなければならない。

VI 訓練及び再訓練計画は、労働に復帰し又は新職業を供さなければならない労働者の要求に添うためできるだけ充分にこれを発達させなければならない。

VII 一地域より他の地域への労働者の過度の移動の必要を避け、且つ特定地域における地方的失業を防止するため、各政府は、使用者及び労働者の団体と協力して、産業の地方的分散化と経済活動の多種多様化に関する積極的政策を樹てなければならない。政府は、又職業的及び地理的に労働の必要な移動を容易にするため措置を講じなければならない。

VIII 戦争のために訓練を始め又は完成することができなかつた青年及び年少者に対し熟練資格を得させるためできるだけ広い機会を提供する努力を経過期間中に払うべく、且つ又年少者の教育及び健康を改善するため努力をしなければならない。

IX 各国の国民経済における婦人労働者の再配分は、その個人的価値、熟練の程度及び経験を基礎として就職に関し男女に対する完全な機会均等の原則に従いこれを行うべく、且つ性に関係なく仕事の内容を基礎として賃金率の確定を奨励するため措置を講じなければならない。

X 身体障害労働者は、その障害の原因如何を問わず、復職、専門的職業指導、訓練及び再訓練並びに有用な職業への就職のため充分な機会を供されねばならない。

XI 労働者の能力を充分に利用するため、労働が不規則である産業及び職業における雇用を規則正しくするための措置を講じなければならない。

適用方法

I 情報の事前の蒐集

1 各政府は、次に関しできるだけ完全にして最近の情報を綜合的に蒐集し且つ利用する左の措置を講じなければならない。
 (a) 軍隊に属し及び類似の任務に服する者並びに敵対行動又は敵の機関若しくは敵により支配される機関に対する反抗の結果として通常の職業が中断されたできるだけすべての者の数、教育及び職業上の経歴、過去及び現在の熟練程度並びに職業的希望
 (b) 戦時より平時への過渡期中職業を変更しなければならない労働者の数、所在、産業的分布、性による分布、熟練程度並びに職業的希望
 (c) 戦争による緊急事態後有償的職業から退くべき老令の労働者、婦人及び青年の数及び分布並びに学校卒業の際職業を求むべき青年の数
2(1) 将来の労働需要に関する包括的資料(各主要産業からの労働者の要求の程度及び時機の見込を全体として又は主要な産業における熟練程度により示す。)は、戦争終了前これを蒐集し且つ分析しなければならない。
 (2) 管理機関がかかる情報を所有する場合においては、労働の需要供給に関する事前の情報の蒐集又は利用に付主として責任ある機関にこれを通告しなければならない。
 (3) 労働需要に関する資料は、特に次のものを包含しなければならない。
  (a) 軍需品企業の閉鎖に伴う労働需要の縮少の見込
  (b) 敵対行動の終了において軍隊及び類似の任務に服する者の縮少率の見込
  (c) 転換期があつて又はなくして平時の必要を充すため引続いて活動する産業又は企業の各地域における労働力の構成上の変動の見込
  (d) 平時の必要に応ずるため拡張せんとする産業における労働需要の見込、特に労働者の生活基準を改善するため生産が最も緊急に要求される産業並びに通常の性質の事業及び経済活動の衰退時代に労働の可能性を増大するために留保される事業を含む公共事業における労働需要の見込
  (e) 完全雇用の条件の下に主たる産業及び職業における労働者に対する需要の見込
3 各地域における労働の需要供給の見込は、戦争の影響及び敵対行為の終了がこれらの各地域における雇用事情に及ぼす影響の見込を示すため、適当の機関が不断にこれを調査しなければならない。
4 加盟国は、枢軸国の攻撃の結果として各自国外に移送された者に関し、1(a)、(b)及び(c)に掲げられる情報を蒐集することに協力しなければならない。各政府は、その地域、枢軸国の領域又は枢軸国により占領された地域に居住する他の加盟国の国民であつて送還を待つている者に関し、かかる情報(利用しうる情報が単に一般的性質のものである場合においても)を提供しなければならない。

II 軍隊の動員解除

5 関係ある男女の最も迅速な復職を確保するため、職業紹介施設と軍隊及び類似の任務からの動員解除並びに捕虜及び追放された者の帰国に付責任ある機関との間に緊密な接触を保たなければならない。
6(1) 動員解除の率及び順序は、明瞭に諒解されるよう広く公示され、明瞭に表明された原則に従いこれを統制しなければならない。
 (2) 一般的に軍事上の必要と運送上の便宜が許す限り速かに行うべき動員解除の過程においては、次のものに考慮を払わなければならない。
  (a) 雇用又は訓練の機会を提供するため、部落の能力に適応しない退役男女の地方的集中を避けるよう動員解除の率を規制し、且つその流れを配分するの望ましいこと。
  (b) 必要の場合には労働者であつて緊急な再建事業のために必要欠くべからざる資格ある者の早期の解除を確保するの望ましいこと。
7(1) 軍事動員、敵対行動又は敵の機関若しくは敵の支配する機関に対する反抗により通常の雇用が中断された者を以前の雇用に復活させる計画は、戦後の新事態が許す限りこれを採用し、且つ実行しなければならない。
 (2) 政府の措置及び労働協約によりこれらの男女に対しその資格に基いてできるだけ充分の雇用と昇進の機会を確保しなければならない。
 (3) この計画の実施により配置転換される労働者に対し即時の代替的雇用を確保しなければならない。
8 再雇用計画の外、資格ある動員解除者をして土地に定着し若しくは再定着し、一職業に就職し、若しくは再就職し、又はその他の独立の仕事に着手することを得しめる充分な財政上及びその他の援助を与えること(かかる措置が関係者にその生活費を得るの可能性を提供するすべての場合において)即時に考慮しなければならない。

III 産業的動員解除及び職業転換

9(1) 各政府は、使用者及び労働者の団体と協力して、できるだけ短期間に完全雇用を達成する目的を以て、戦争により破壊された諸国の緊急な必要を考慮し、再建期間中戦時より平時の要求への経済の転換を迅速に且つ順序よく促進する為の国内的の産業的動員解除及び再転換計画を樹てなければならない。動員解除及び転換計画に関するすべての情報は、労働の需要供給に関する事前の情報を蒐集する責任ある機関がこれを利用しうるようにしなければならない。
 (2) 使用者及び労働者の団体の協力は、経過的失業を最少限度に減ずる方法を以て戦時生産より平時生産への転換を容易にするための包括的な産業及び地域の動員解除と再転換との計画を完成する目的を以てこれを招致しなければならない。
10(1) 各政府は、戦争終了前できるだけ、政府に属する生産手段の平時における利用に関し及び余剰資材の利用に関しその政策を決定しなければならない。
 (2) 平時における生産又は職業訓練に緊要な工場及び設備の早期解放に付特別の考慮を払わなければならない。
 (3) 一般的に、人類の要求が充されない場合又は完全雇用と結付けられた需要条件の下で過剰生産が合理的な価格で存しない場合には、工場、設備又は資材を破壊し又は放置してはならない。
11 各政府は、戦時契約の解消又は調整のためのその政策及び手続を定めるに当り、労働者が引続いてその雇用に止まり若しくは急速に他の雇用を見出すの可能性又は他の地域における雇用に対する有利な機会に特別の考慮を払わなければならない。政府は、又解消した契約に基く賠償の請求についての迅速な解決のため措置を講じ、以て事業主の財政的困難により雇用の開始が無用に遅れないようにしなければならない。現に占領されている諸国においては、敵のために任意的に労働した事業主に対してはかかる措置の利益を与えてはならない。
12(1) 行政機関が解雇又は一時解雇をする可能性のある事情に関し職業紹介施設及び事業主にできるだけ早く通知することを確保するため措置を講じなければならない。
 (2) 物資調達機関は、戦時註文の減少について本国及び海外の事業主並びに職業紹介施設にできるだけ早く予告しなければならない。
 (3) 使用者は、職業紹介施設をして関係労働者に対して代替的雇用計画をたてることを得しめるため特定数を超える労働者に関係ある解雇案を少くとも二週間の予告で職業紹介施設に通知しなければならない。いかなる場合においても予告は、二週間を下つてはならない。
 (4) 使用者は、職業紹介施設をして一時解雇労働者に対する一時的の公私の雇用又は訓練の可能性を見出すことを得しむるため特定数を超える労働者に関係ある一時解雇案並びにかかる一時解雇の期間の見込を示す情報を少くとも二週間の予告で職業紹介施設に通知しなければならない。使用者は、かかる一時解雇の期間の見込を一時解雇労働者にできるだけ通知しなければならない。

IV 求人及び求職

13(1) 公共事業及び事業経営の七十五パーセント以上まで公の註文にもとづいて操業する企業における欠員は、職業紹介施設を通じてこれを補充しなければならない。
 (2) 雇用の再調整を容易にするため特定の産業又は地域における使用者に対し職業紹介施設を通じてその労働者を雇入れることを要求するの得策なことに考慮を払わなければならない。
 (3) 使用者は、職業紹介施設にその求人を予告することを奨励されなければならない。
14 政府の後援する事業において雇用を求める者並びに職業訓練、移動手当又は失業給付若しくは失業手当を請求する者は、職業紹介施設に登録することを要する。
15 動員を解除された者及び戦時労働者が戦時中取得した資格をできるだけ考慮して、かかる者がその能力に最もよく適する雇用を見出すのを援助するため特別の努力をしなければならない。
16 使用者及び労働者が職業紹介施設ができるだけ広く利用することを奨励するため、公の機関及び特に職業紹介施設が使用者及び労働者の団体と協力してすべての努力をしなければならない。

V 職業指導

17 成年労働者のためにする職業指導の適当な方法及び技術の発達に特別の且つ即時の注意を払わなければならない。
18 失業が長引く場合においては、職業指導施設の利用は、失業給付又は手当を引続き受領するための条件としなければならない。
19 権限のある機関は、関係のある私的機関と協力して、職業指導員のための適当な訓練施設を発達させ且つ維持しなければならない。

VI 訓練及び再訓練計画

20 戦後の時代における労働の需要供給に関する情報を基礎として、各政府は、使用者及び労働者の団体と協力して、経済の戦後の必要に合致し且つ各産業の各種の熟練要件上の変化を考慮した全国的訓練及び再訓練計画を樹てなければならない。
21 労働者の供給を現在及び将来の労働需要に調節するに必要な職業的移動を容易にするためすべての措置を講じなければならない。
22 動員を解除された者、解除された戦時産業労働者及び敵対行為又は敵の機関若しくは敵の支配する機関に対する反抗の結果として通常の雇用を中断されたすべての者の要求に応ずるため、訓練及び再訓練計画は、これを拡張し、且つ適合させなければならない。将来の見込がある雇用に関係者を適合させることを目的とする訓練過程に特別の注意を払わなければならない。
23 徒弟制度の外、熟練労働の再興及び拡大に対する戦後の要求に応ずるため、労働者の訓練、再訓練及び昇給に関する組織的方法を発達させなければならない。
24 訓練に服する者には、訓練を受けさせ及び続行させ且つ合理的の生活基準を維持させる充分な報酬又は手当を必要の場合に支払わなければならない。
25 軍事上又は民事上の戦時勤務により、又は敵対行動により、又は敵の機関若しくは敵の支配する機関に対する反抗により上級の訓練及び研究を阻止され又は中断された男女は、引続いてその能力と将来とがあることを証明することを条件として、その訓練及び研究を開始し、再開始し、及び完成することを得しむべく、且つその訓練及び研究中手当を支払われねばならない。
26(1) 戦争中他の労働に従事していた有資格の教員及び指導者は、できるだけ速かにその前職業に帰ることを奨励されねばならない。
 (2) 次の必要に従い特別課程を設けなければならない。
  (a) 長い間の欠勤後職業に復帰する指導者のため、及び
  (b) 新らしい方法及び技術を教えるため
 (3) 新規の教員及び指導者は、訓練及び再訓練計画の必要に応ずるために充分な数においてこれを訓練しなければならない。
 (4) 加盟国は、必要の場合には次の如き方法により職業訓練及び再訓練を復活し且つ拡張することにおいて協力しなければならない。
  (a) 自己の技術的知識を拡大したい者又は自国で獲得することができない訓練を受けたい者を指導者として外国において訓練すること。
  (b) 他国における職業訓練職員の欠乏又は新らしい産業上の必要に対処させるため経験ある教員及び指導者を一国が貸与すること。
  (c) 他の加盟国の領域に生活し、自国において教育訓練する資格ある一国の国民の送還を促進すること。並びに
  (d) 指導者及び訓練中の者を援助するため訓練要綱及びその他の訓練資料を提供すること。
27 訓練及び再訓練施設は、全国的、地方的及び地域的の基礎においてこれを調整し、且つすべての程度において職業指導施設の運営、職業紹介施設の紹介事業並びに使用者及び労働者の団体の訓練活動と緊密に連絡しなければならない。

VII 地理的移動

28 必要な労働の移動を容易にする目的を以て、職業紹介施設は、一地域より他の地域への移動に対する障害を除き、且つ利用しうる熟練労働と利用しうる雇用の機会とを結合することを援助し、かくして失業を防止するよう労働を必要とする地域への労働者の移動を援助する措置を講じなければならない。
29(1) 労働者が職業紹介施設の発意にもとずき又はその同意を得て一地域より他の地域へ移動される場合においては、旅費を給し、且つ事情に従い定められる特定額を給し又は前貸しすることにより新らしい労働の場所における最初の経費を支弁するよう労働者を援助するため措置を講じなければならない。
 (2) 職業紹介施設により行われる一時的移動が家長のその家庭より別居を伴う場合においては、二重の生活拠点を維持する増加費を支弁するため適当の別居手当を支給するため措置を講じなければならない。

VIII 年少者の雇用

30(1) 学校卒業年令と雇用に就きうる年令の引上げ改正を行う政策は、経過期間に対する雇用政策の主要な一要素としてすべての国がこれを考慮しなければならない。
 (2) 上記の附加義務教育期間中、権限のある機関は、生活手当を両親に支給しなければならない。
31 学校卒業年令を超える年少者をして中等学校又は高等学校におけるその教育を、且つ中等学校の水準を超える者に対し引続いて能力と進歩とがあることを証明することを条件として、一層上級の技術学校又は講習会において研究を継続することを得しめるため、学生援助計画を発達させなければならない。
32(1) 必要に適合した職業指導施設は、学校又は職業紹介施設を通じ学校卒業前及びその際すべての年少者に対し利用することを得しめなければならない。
 (2) すべての年少者に対し、就職前の無料健康検査を施さなければならない。この検査の結果は、国内の法令又は規則により規定される期間内における定期的再検査を基礎として役立つ証明書にこれを記載しなければならない。
 (3) 戦争状態及び敵の占領が年少者の健康を害した諸国においては、かかる者の雇用に就く時より労働生活への調整期間を通じその健康の監督に特別の注意を払い、且つ必要の場合身体的恢復の措置を採用しなければならない。
 (4) 加盟国は、要求されるときは、(3)に掲げられる年少者の身体的恢復を容易にするため、医的及び看護的職員の訓練、及び経験ある内科医、外科医及び看護人の貸与並びに適当な資材の供給を行うことにおいて協力しなければならない。
33(1) 戦争により徒弟契約が中断された年少者は、その戦争任務の終了の際再び徒弟となる権利を有しなければならない。
 (2) 前記に従い再び徒弟となつた者をして、その年令及びその徒弟たることが中断されなかつたなら受くべかりし報酬を考慮し、合理的である所得を確保することを得しめるため国の援助をこれに与えなければならない。
 (3) 軍務、原料の欠乏、敵の行動又はその他の戦争事情が年少者の徒弟となり又はこれを継続することを阻害したすべての場合においては、事情が許す限り速かに年少者が再び徒弟となり又は熟練を要する職業を学ぶことを奨励するため措置を講じなければならない。
 (4) 年少者が再び徒弟となることを奨励するため、徒弟契約の条項を再検討し、且つ戦争任務中に獲得した訓練、熟練又は経験を参酌するため変更が公平であると思われる場合には、これを変更するため措置を講じなければならない。
 (5) 戦争のために徒弟となることができなかつた年少労働者に熟練職業を学ぶ一層広い機会を与える目的を以て、現在の徒弟計画は、使用者及び労働者の団体と協力して、これを再検討しなければならない。特に徒弟計画は、使用者及び労働者の団体と協力して、これを再検討しなければならない。特に徒弟となることに関する現在の制限を変更し、且つ戦争中獲得した訓練、熟練又は経験を参酌するため措置を講ずることを考慮しなければならない。
34 企業に使用されるすべての年少者をして訓練を受け又はその熟練を改善し、且つ企業全体としての運営の知識を広くすることを得しめるため組織的工場内訓練を採用することを使用者に奨励しなければならない。かかる計画は、労働者団体と協力してこれを発達させ、且つ適当にこれを監督しなければならない。
35 戦争中侵略され、且つ年少者であつて労働を放棄することを強制され、又はその能力若しくは希望を考慮されないで敵のために労働することを強制された者が存する国においては、かかる年少者を労働の習慣に適合させ、且つその職業訓練を完成させることに特別の注意を払わなければならない。

IX 婦人の雇用

36 経済における婦人労働者の再配分は、婦人の使用に関する国際労働条約及び勧告の規定を阻害することなくして、その個人的価値、熟練度及び経験を基礎とした完全な男女機会均等の原則に基いてこれを行わなければならない。
37(1) 雇用市場において婦人を男子と平等の地位におき、且つかくして利用しうる労働者間で男女労働者の利益を阻害する競争を防止するため、性を考えないで、仕事の内容を基礎とする賃金率の確立を奨励するため措置を講じなければならない。
 (2) 労働者の性の如何を問わず賃金率を決定するための基礎として仕事の内容を決定するための正確な客観的な基準を設けるため、使用者及び労働者の団体と協力して調査を行わなければならない。
38 多数の婦人が伝統的に使用されている産業及び職業における婦人の使用は、これらの産業及び職業の相対的地位を引上げ且つ労働条件と使用方法を改善するための措置によりこれを容易にしなければならない。

X 身体障害労働者の雇用

39 身体障害労働者の訓練及び雇用のための標準は、身体障害の原因如何を問わず労働者の労働能力でなければならない。
40 身体障害者のための医的施設と職業的再教育及び職業紹介施設との間には緊密な協力関係が存在しなければならない。
41 身体障害労働者の労働能力を決定し、且つ身体障害労働者に最も適した種類の雇用を選択することを可能ならしめるため、特別職業指導を発達させなければならない。
42(1) できるだけ、身体障害労働者は、有能労働者と共に、同一の条件及び同一の給与の下に、訓練を受けなければならない。
 (2) 身体障害者が訓練を受けた職業において能力ある労働者として就職することができる点まで訓練を継続しなければならない。
 (3) 実行しうる場合には、身体障害労働者をその以前の職業又はその従前の資格を利用しうる関係職業において再訓練するため努力しなければならない。
 (4) 適当の訓練施設を有する使用者は、合理的割合の身体障害労働者を訓練するようにこれを奨励しなければならない。
 (5) 適当の医的監督を受ける特別訓練所は、かかる特別訓練を要する身体障害者のためこれを設けなければならない。
43(1) 身体障害労働者に対しその労働能力を基礎として均等の雇用の機会を確保するため特別の措置を講じなければならない。使用者に対しては広き公示及びその他の方法により、且つ必要な場合にはこれを強制して、身体障害労働者の合理的な割合を使用することを勧奨しなければならない。
 (2) 特に重大な身体障害労働者の雇用に適する或る種の職業においては、かかる労働者は、その他のすべての労働者に対し優先権を与えられねばならない。
 (3) 労働能力と能率に関係のない雇用上の差別待遇に対し身体障害労働者を保護し、且つその雇用に対する障害(労働者補償に関する負担額増加の可能性を含む。)を克服するため、使用者及び労働者の団体と緊密に協力して努力をしなければならない。
 (4) 他の労働者の雇用との競争状態の下にない特別の中心地における有用労働に関する雇用は、通常の雇用には適合させることができないすべての身体障害労働者のためにこれを利用しなければならない。
44 職業紹介施設は、特に各種の身体障害に適する職業並びに不具者の数、その地理的分布及び労働能力に関し情報を集めなければならない。

XI 特定産業における雇用の規律

45 建設及び港湾運送の如く労働が不規則である産業においては、加盟国が戦争中採用し又は拡張した雇用の規律制度は、これを維持し、且つ使用者及び労働者の団体と協議して平時状態にこれを適合させなければならない。