1981年の職業上の安全及び健康条約の議定書、2002年

ILO条約 | 2002/06/20

千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する条約の二千二年の議定書
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーブに招集されて、二千二年六月三日にその第九十回会期として会合し、
千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する条約(以下「条約」という。)第十一条において、
「権限のある機関は、第四条の政策を実施するため、次の事項が漸進的に実施されることを確保する。
(中略)
(c) 使用者及び、適当な場合には、保険機関その他の直接関係のある機関による職業上の事故及び疾病の届出の手続の制定及び適用並びに職業上の事故及び疾病に関する年次統計の作成
(中略)
(e) 第四条の政策に従いとられる措置並びに就業中に又は就業に関連して生ずる職業上の事故、疾病及びその他の健康障害に関する情報の毎年の刊行」
と特に規定されていることを留意し、
職業上の事故及び疾病の記録及び届出の手続を強化すること並びにそれらの原因を識別し及び予防措置を確立するための記録及び届出制度の調和を促進することが必要であることに考慮を払い、
前記の会期の議事日程の第五議題である職業上の事故及び疾病の記録及び届出に関する提案の採択を決定し、
その提案が千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する条約の議定書の形式をとるべきであることを決定して、
次の議定書(引用に際しては、千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する条約の二千二年の議定書と称することができる。)を二千二年六月二十日に採択する。

Ⅰ 定義

第 一 条

 この議定書の適用上、
(a) 「職業上の事故」とは、致命的又は致命的でない傷害をもたらす就業に起因し又は就業中に生ずる事故をいう。
(b) 「職業上の疾病」とは、作業活動により生ずる危険要因にさらされた結果かかった病気をいう。
(c) 「危険な事故」とは、作業中の人又は公衆を負傷させ又はこれらに対し疾病を引き起こす可能性があると容易に特定し得る事象で国内法令に定めるものをいう。
(d) 「通勤に係る事故」とは、作業場と次に掲げる場所との間の直接の途上において発生する死亡又は身体の傷害をもたらす事故をいう。
(ⅰ) 就業者の主たる又は従たる住居
(ⅱ) 就業者が通常食事をとる場所
(ⅲ) 就業者が通常報酬を受け取る場所

Ⅱ 記録及び届出制度

第 二 条

 権限のある機関は、法令により又は国内の事情及び慣行に適合するその他の方法により、最も代表的な使用者団体及び労働者団体との協議の上、次の要件及び手続を定め及び定期的に検討する。
(a) 職業上の事故、職業上の疾病並びに適当な場合には危険な事故、通勤に係る事故及び職業上の疾病の疑いのある事案の記録
(b) 職業上の事故、職業上の疾病並びに適当な場合には危険な事故、通勤に係る事故及び職業上の疾病の疑いのある事案の届出

第 三 条

 記録の要件及び手続は、次のことを定める。
(a) 使用者の責任
(ⅰ) 職業上の事故、職業上の疾病並びに適当な場合には危険な事故、通勤に係る事故及び職業上の疾病の疑いのある事案を記録すること。
(ⅱ) 就業者及びその代表者に対して記録制度に関する適当な情報を提供すること。
(ⅲ) 記録の適当な保持及び防止措置の確立のための利用を確保すること。
(ⅳ) 職業上の事故、職業上の疾病、危険な事故、通勤に係る事故又は職業上の疾病の疑いのある事案を報告する就業者に対する報復的又は懲戒的な措置を差し控えること。
(b) 記録すべき情報
(c) 記録の保持期間
(d) 国内法令、事情及び慣行に従って使用者が保有する個人及び医学上の情報の秘密を確保するための措置

第 四 条

 届出の要件及び手続は、次のことを定める。
(a) 使用者の責任
(ⅰ) 職業上の事故、職業上の疾病並びに適当な場合には危険な事故、通勤に係る事故及び職業上の疾病の疑いのある事案について権限のある機関その他指定された団体へ届け出ること。
(ⅱ) 就業者及びその代表者に対して、届け出られた事案に関する適当な情報を提供すること。
(b) 適当な場合には、保険機関、職業衛生機関、医師その他直接関連する団体による職業上の事故及び職業上の疾病についての届出の措置
(c) 職業上の事故、職業上の疾病並びに適当な場合には危険な事故、通勤に係る事故及び職業上の疾病の疑いのある事案が届け出られるべき基準
(d) 届出の期限

第 五 条

 届出には次の情報を含む。
(a) 企業、事業所及び使用者
(b) 適当な場合には、負傷者及び傷害又は疾病の性質
(c) 作業場、事故又は危険な事故の状況及び職業上の疾病の場合、健康に対する危険にさらされる状況

Ⅲ 国の統計

第 六 条

 この議定書を批准する加盟国は、届出及び他の利用可能な情報に基づき、職業上の事故、職業上の疾病並びに適当な場合には危険な事故及び通勤に係る事故に関して、国全体を表すような方法で作成される統計及びその分析を毎年刊行する。

第 七 条

 統計は、国際労働機関又は他の権限のある国際的な団体の下で設けられた最新の関連する国際的な制度に整合的な分類制度に従って作成する。

Ⅳ 最終規定

第 八 条

1 加盟国は、条約の批准の時又はその後いつでも、正式の批准を登録するための国際労働事務局長への通知によりこの議定書を批准することができる。
2 この議定書は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。その後は、この議定書は、いずれの加盟国についても、その批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生じ、条約は、この議定書第一条から第七条までを追加されたものとして当該加盟国を拘束する。

第 九 条

1 この議定書を批准した加盟国は、条約が同条約第二十五条の規定に基づき廃棄のために開放されているときはいつでも、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの議定書を廃棄することができる。
2 この議定書を批准した加盟国による同条約第二十五条の規定に基づく条約の廃棄は、当然にこの議定書の廃棄を伴う。
3 1又は2の規定に従って行う廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。

第 十 条

1 国際労働事務局長は、加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録についてすべての加盟国に通報する。
2 国際労働事務局長は、二番目の批准の登録について加盟国に通報する際に、この議定書が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 一 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 二 条

 この議定書の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。