2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)

ILO条約 | 2006/06/15

職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関する条約(第187号)
(日本は2007年7月24日批准登録)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーブに招集されて、二千六年五月三十一日にその第九十五回会期として会合し、
 職業上の負傷、疾患及び死亡の世界的な規模並びにこれらを減少させるために更に措置をとることの必要性を認識し、
 雇用から生ずる疾病、疾患及び負傷に対する労働者の保護が、国際労働機関憲章に規定する国際労働機関の目的に含まれることを想起し、
 職業上の負傷、疾患及び死亡は、生産性並びに経済的及び社会的発展に悪影響を及ぼすことを認識し、
 国際労働機関が、すべての職業における労働者の生命及び健康の十分な保護を達成するための計画を世界の諸国間において促進する厳粛な義務を有する旨を規定するフィラデルフィア宣言の三(g)の規定に留意し、
 千九百九十八年の労働における基本的な原則及び権利に関する国際労働機関の宣言並びにその実施についての措置に留意し、
 千九百八十一年の職業上の安全及び健康条約(第百五十五号)、千九百八十一年の職業上の安全及び健康勧告(第百六十四号)その他職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関連する国際労働機関の文書に留意し、
 職業上の安全及び健康の促進が、すべての人に対する適切な仕事の確保という国際労働機関の課題の一部であることを想起し、
 世界的な戦略としての職業上の安全及び健康の分野における国際労働機関の基準に関連する活動についての結論(国際労働機関の総会が二千三年のその第九十一回会期において採択したもの)、特に国内の課題において職業上の安全及び健康を優先させることを確保することに関連するものを想起し、
 各国の安全及び健康に関する危害防止の文化を継続的に促進することが重要であることを強調し、
 会期の議事日程の第四議題である職業上の安全及び健康に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、二千六年の職業上の安全及び健康促進枠組条約と称することができる。)を二千六年六月十五日に採択する。

Ⅰ 定義

第 一 条

 この条約の適用上、
 (a) 「国内政策」とは、千九百八十一年の職業上の安全及び健康条約(第百五十五号)第四条に規定する原則に従って定める職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する国内政策をいう。
 (b) 「職業上の安全及び健康に関する国内制度」又は「国内制度」とは、国内政策並びに職業上の安全及び健康に関する国内計画を実施するための主要な枠組みを提供する基盤となる制度をいう。
 (c) 「職業上の安全及び健康に関する国内計画」又は「国内計画」とは、所定の期間内に達成すべき目的、職業上の安全及び健康の改善のために定める措置の優先順位及び手段並びに進展を評価する手段を含む国内計画をいう。
 (d) 「各国の安全及び健康に関する危害防止の文化」とは、安全かつ健康的な作業環境についての権利がすべての段階において尊重され、一定の権利、責任及び義務に関する制度を通じて政府、使用者及び労働者が安全かつ健康的な作業環境の確保に積極的に参加し、並びに予防の原則が最優先される文化をいう。

Ⅱ 目的

第 二 条

1 この条約を批准する加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で国内政策、国内制度及び国内計画を定めることにより、職業上の負傷、疾患及び死亡を予防するために職業上の安全及び健康を不断に改善することを促進する。
2 加盟国は、職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関連する国際労働機関の文書に定める原則を考慮に入れた上で、職業上の安全及び健康に関する国内制度及び国内計画を通じて安全かつ健康的な作業環境を漸進的に達成するための積極的な措置をとる。
3 加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、職業上の安全及び健康に関連する国際労働機関の条約を批准するためにいかなる措置をとることができるかを定期的に検討する。

Ⅲ 国内政策

第 三 条

1 加盟国は、国内政策を定めることにより、安全かつ健康的な作業環境を促進する。
2 加盟国は、すべての関連する段階において、安全かつ健康的な作業環境についての労働者の権利を促進し、及び発展させる。
3 加盟国は、国内政策を定めるに当たり、国内事情及び国内慣行に照らし、かつ、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、基本原則(例えば、職業上の危険性又は有害性を評価し、及びこれに根本的に対処すること並びに情報、協議及び訓練を含む各国の安全及び健康に関する危害防止の文化を発展させること)を促進する。

Ⅳ 国内制度

第 四 条

1 加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、職業上の安全及び健康に関する国内制度を定め、維持し、漸進的に発展させ、及び定期的に検討する。
2 職業上の安全及び健康に関する国内制度には、特に、次のものを含める。
 (a) 職業上の安全及び健康に関する法令(適当な場合には労働協約)及び他の関連文書
 (b) 職業上の安全及び健康について責任を有する機関又は団体であって、国内法及び国内慣行に従って指定するもの
 (c) 国内法令の遵守を確保するための仕組み(監督制度を含む。)
 (d) 経営者と労働者又はその代表との間で行われる協力(職場に関連する予防措置の基本的要素であるもの)を企業の段階において促進するための仕組み
3 職業上の安全及び健康に関する国内制度には、適当な場合には、次のものを含める。
 (a) 職業上の安全及び健康の問題を取り扱う国内の三者の間の諮問機関
 (b) 職業上の安全及び健康に関する情報及び助言に係るサービス
 (c) 職業上の安全及び健康に関する訓練の提供
 (d) 国内法及び国内慣行に従って提供される職業上の健康に係るサービス
 (e) 職業上の安全及び健康に関する研究
 (f) 職業上の負傷及び疾患に関するデータの収集及び分析のための仕組みであって、国際労働機関の関連文書を考慮に入れたもの
 (g) 職業上の負傷及び疾患を対象とする関連の保険制度又は社会保障制度との協力に関する措置
 (h) 零細企業、中小企業及び非公式な経済における職業上の安全及び健康に関する状況を漸進的に改善することを支援する仕組み

Ⅴ 国内計画

第 五 条

1 加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、職業上の安全及び健康に関する国内計画を定め、実施し、監視し、評価し、及び定期的に検討する。
2 国内計画は、
 (a) 各国の安全及び健康に関する危害防止の文化の発展を促進する。
 (b) 職業上の負傷、疾患及び死亡を予防し、並びに職場における安全及び健康を促進するため、国内法及び国内慣行に従って、かつ、合理的に実行可能な限り、職業上の危険性又は有害性を除去し、又は最小限にすることにより、労働者の保護に貢献する。
 (c) 職業上の安全及び健康に関する国内の状況の分析(職業上の安全及び健康に関する国内制度の分析を含む。)に基づいて定められ、及び検討される。
 (d) 目的、対象及び進展の指標を含む。
 (e) 可能な場合には、安全かつ健康的な作業環境を漸進的に達成することを支援するその他の補完的な国内計画等によって補強される。
3 国内計画は、広く公表するものとし、可能な範囲で、最上級の国内機関により承認され、及び開始される。

Ⅵ 最終規定

第 六 条

 この条約は、いかなる国際労働条約及び国際労働勧告も改正するものではない。

第 七 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知される。

第 八 条

1 この条約は、加盟国であって自国による批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国による批准が国際労働事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 この条約は、その効力が生じた後は、いずれの加盟国についても、自国による批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 九 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国であって1に規定する十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、新たな十年の期間の最初の年に、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 十 条

1 国際労働事務局長は、加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録についてすべての加盟国に通報する。
2 国際労働事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録について加盟国に通報する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 一 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 二 条

 理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 三 条

1 総会がこの条約を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約が自国について効力を生じたときは、第九条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) この条約は、その改正条約が効力を生ずる日に加盟国による批准のための開放を終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国であって1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 四 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。