1937年の労働時間短縮(繊維工業)条約(第61号)

ILO条約 | 1937/06/22

繊維工業に於ける労働時間の短縮に関する条約(第61号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千年五月三十日にその第八十八回会期として会合し、本会期の議事日程の第七議題である複数の国際労働条約の撤回に関する提案を検討し、二千年六月十五日に、千九百三十七年の労働時間短縮(繊維工業)条約(第六十一号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、この本文書撤回の決定を、国際労働機関の加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
 千九百三十七年六月三日ジユネーヴにその第二十三回会議を開催し、
 繊維工業における労働時間の短縮問題がこの会議の会議事項の第二項目であるのに鑑み、
 生活標準の維持を含む千九百三十五年の四十時間制条約に掲げられる原則を確認し、
 この原則を国際協定により繊維工業に適用すべきことが望ましいのに鑑み、
 千九百三十七年の労働時間短縮(繊維工業)条約として引用することができる次の条約を千九百三十七年六月二十二日に採択する。

第 一 条

1 この条約は、次の者に適用する。
 (a) この条の第二項に掲げられる条件を具備する企業において使用される者、尤も右の企業の一部門であつて右の条件を具備しないものにおいて使用される者を包含する。
 (b) 当該企業が右の条件を具備しない場合といえども、この条の第二項に掲げられる条件を具備する部門において使用される者
2 前項に掲げられる条件とは、企業又は企業の部門が次の一又は二以上の材料によりすべての種類の糸、織糸、撚糸、網、索、網若しくは「フエルト」又は織物、編物若しくは「レース」物を製造する過程において、この条の第三項、第四項及び第五項において限定される一連の作業の一又は二以上に専ら又は主として従事することである。木綿、羊毛、絹糸、亜麻、大麻、黄麻、「レイヨン」若しくはその他の組成繊維又は植物性であると動物性であると鉱物性であるとを問わずその他の繊維材
3 この条の第二項に掲げる一連の作業は、次のものに始まるものとする。
 (a) 木綿については解体又は洗浄のための原綿の梱の収受
 (b) 羊毛については選別及び洗浄(炭疽菌殺菌作業を除く。)のための原毛の収受
 (c) 絹糸については繭よりの絹糸の糸繰り又は絹糸屑の浸漬
 (d) 亜麻、黄麻及び大麻については水漬作業、尤もこの作業が農業的企業に附随する作業として行われる場合を除く。
 (e) 「レイヨン」又はその他の組成繊維については繊維の化学的製造において使用される原料の収受
 (f) 襤褸については襤褸の選別
 (g) その他の繊維材については以上に掲げられる作業に準ずるものとして権限ある機関により定められる作業
4 この条の第二項に掲げられる一連の作業は、漂白、染色、形附、仕上及び類似の作業を含み、且つ同項に明示される製品の包装及び発送を以て終るものとする。
5 この条の第二項に掲げられる一連の作業は、次の場合においてのみ、被服又は他の部品の全部又は一部の製造を包含する。
 (a) 莫大小物製造の場合
 (b) 被服又は他の物品がその材料と同一の方法により製造される場合
6 当該企業又はその部門がこの条の第二項に掲げられる条件を具備するや否や疑ある場合においては、問題は、権限ある機関が関係ある使用者団体及び労働者団体が存するときはこれに諮問の上、これを定めなければならない。
7 この条約の適用を受ける者に対し、この条約以外の国際労働条約の規定に従い一週四十時間制の原則が適用される場合に限り、権限ある機関は、右の者をこの条約の適用より除外することができる。
8 この条約は、公私企業に使用される者に共に適用する。

第 二 条

 権限ある機関は、関係ある使用者団体及び労働者団体存するときはこれに諮問の上、次の者をこの条約の適用より除外することができる。
 (a) 使用者の家に属する者のみを使用する企業において使用される者
 (b) 特別の責任のため労働週の長さを規律する通常の原則に服しない種類の者

第 三 条

1 この条約において「労働時間」と称するのは、使用される者が使用者の指揮に服する時間をいい、使用される者が使用者の指揮に服しない休憩時間を包含しない。
2 この条約の採択の日において機械の掃除又は油差に費される時間を通常の労働時間の一部と認めない慣習ある場合においては、権限ある機関は、一週に付一時間半を超えない右の如き時間がこの条約の適用上関係者の労働時間と認められないことを許容することができる。

第 四 条

1 この条約の適用を受ける者の労働時間は、一週平均四十時間を超えることができない。
2 作業の性質上昼、夜又は週の如何なる時においても中断することなくして行われることを要する作業に連続交替して労働する者については、一週の労働時間は、平均四十二時間とすることができる。
3 権限ある機関は、関係ある使用者団体及び労働者団体存するときはこれに諮問の上、この条の第二項の適用を受ける作業を定めなければならない。
4 労働時間が平均として計算される場合においては、権限ある機関は、関係ある使用者団体及び労働者団体存するときはこれに諮問の上、平均が計算され得る週数及び一週労働時間の最長限度数を定めなければならない。

第 五 条

 権限ある機関は、関係ある使用者団体及び労働者団体存するときはこれに諮問の上設けられる規則を以て、前条により許容される時間制限は、次の者に付右の規則に定められる限度までこれを超え得ることを規定することができる。
 (a) 当該企業、部門又は交替班の一般操業に付定められる制限を超えて必然的に行うことを要する準備的又は補充的作業に使用される者
 (b) 業務であつてその性質上これに使用される者が体力若しくは持続的注意力を発揮する必要がないか又は単に指令を受けるときにおいてのみこれに応ずるため定位置に留まつている長い無為の時間を伴うものに使用される者
 (c) 製品の運搬、発送又は積卸に関連して使用される者

第 六 条

1 前数条により許容される時間制限は、次の場合において、当該企業の通常の操業に対する重大な障害を除去するに必要な限りにおいてのみこれを超えることができる。
 (a) 現に災害あり若しくはその虞ある場合、機械若しくは装置に付緊急の措置を施すべき場合又は不可抗力の場合
 (b) 一人又は二人以上の班員の予見されない欠席を補充するための場合
2 使用者は、この条により遂行されるすべての労働時間及びこれが理由を遅滞なく権限ある機関に届出なければならない。

第 七 条

1 前数条により許容される時間制限は、漂白、染色、仕上若しくはその他の作業の完了又は右の作業の引継ぎのため特定の者が継続的に現場にいることが必要な場合においては、これを超えることができる。但し技術的理由のため当該材料に損害を与えないでは右作業を中断することができない場合及び例外的事情のため通常の時間制限内に右作業を完了すること不可能であつた場合に限るものとする。
2 権限ある機関は、関係ある使用者団体及び労働者団体存するときは、これに諮問の上、前項の適用を受ける作業及び条件並びに前項により関係者が労働し得べき時間の最長限度数を定めなければならない。

第 八 条

1 使用者からの申請に基き、権限ある機関は、関係ある使用者団体及び労働者団体が存するときはこれに諮問の上、同一の企業における後の作業に従事する労働者を許容時間限度まで働くことを得しめるため、一又は二以上の作業における超過時間が必要である例外的の場合においては、特定の種類の者に付超過時間を許容することができる。
2 権限ある機関は、関係ある使用者団体及び労働者団体が存するときはこれに諮問の上、この条の第一項により労働することができる超過時間の最長限度数を定めなければならない。但し何人も、一年に付六十時間を超え又は一週に付四時間を超える時間使用されることを許容することはできない。
3 この条により行われる超過時間に対しては、普通率の一倍四分の一を下らない率を以て報酬を支払わなければならない。
4 権限ある機関は、超過時間数の漸次的短縮を確保する目的を以て、その適当と認める条件を超過時間の許容に附加することができる。

第 九 条

1 権限ある機関は、次のことを条件として、前数条により許容される時間制限を超えることを許可することができる。
 (a) この条によるすべての労働時間は、超過時間とみなさるべく、且つ普通率の一倍四分の一を下らない率を以て報酬を支払わなければならない。
 (b) 何人といえどもこの条により一年に付七十五時間を超える超過時間これを使用してはならない。
2 国内の法令又は規則が各週に適用すべき厳格な限度として一週の時間制限を適用する場合においては、権限ある機関は、一年に付百時間を超えない附加的超過時間を許可することができる。但し、右の附加的超過時間に対しては普通率の一倍四分の一を下らない率を以て報酬を支払わなければならない。
3 前諸項により許可を与える場合においては、権限ある機関は、超過時間が不断に利用されるようにならないことを確めなければならない。
4 権限ある機関は、関係ある使用者団体及び労働者団体が存するときはこれに諮問の上設けられる規則に従つてのみ、この条による超過時間労働の許可を与えなければならない。
5 前項に掲げられる規則は、次のことを規定しなければならない。
 (a) この条により超過時間を実行するの許可が使用者に与えられるべき手続
 (b) 権限ある機関が許可を与え得る最高限度の時間数及び右の時間に対し支払われるべき最低超過時間率

第 十 条

 この条約の規定の有効な実施を容易ならしめるため、各使用者は、次のことをしなければならない。
 (a) 掲示又はその他の方法により、権限ある機関の承認する様式において次のことを公示すること。
  (i) 始業及び終業の時刻
  (ii) 作業が交替制により行われる場合においては、各交替班の始業及び終業の時刻
  (iii) 輪番制が適用される場合においては、各労働者又は労働者集団に付ての時間表を含む該制度の説明書
  (iv) 平均一週労働時間が数週に亘り計算される場合に行われる措置
  (v) 第三条に定められる有効な休憩時間
 (b) この条約の第七条、第八条及び第九条により行われるすべての増加時間及びこれに関連して行われる支払を権限ある機関により定められる様式において記録すること。

第 十 一 条

 何れの加盟国も、国家の安全を危殆ならしめる事変中、この条約の規定の施行を停止することができる。

第 十 二 条

 関係加盟国に対するこの条約の効力発生より二年を超えない期間中、権限ある機関は、次の経過手続を承認することができる。
 (a) 前数条により許容される限度への労働時間の短縮は、右の期間中段階的にこれを行うことができる。
 (b) 特殊の労働者又は企業は、右の期間中この条約の規定の全部又は一部からこれを除外することができる。

第 十 三 条

 国際労働機関憲章第二十二条に基き加盟国により提出されるこの条約の適用に関する年報は、就中次に関する充分な情報を包含しなければならない。
 (a) 第一条第三項(g)によりなされる決定
 (b) 第二条によりなされる除外及び右除外がなされるべき条件
 (c) 第三条第二項の規定の援用
 (d) 第四条第四項に従いなされる決定
 (e) 第五条により設けられる規則
 (f) 第七条第二項に従いなされる決定
 (g) 第八条により与えられる超過時間の許容
 (h) 第九条の規定を援用した程度

第 十 四 条

 国際労働機関憲章第十九条第八項に従い、この条約は、この条約に定められるところよりも一層有利な条件を確保する法律、裁定、慣習又は使用者及び労働者間の協約に影響を及ぼさないものとする。

第 十 五 条

 総会が国際労働機関憲章第十九条第三項の適用を受ける国の事情に応ずるため要求される如きこの条約の規定の変更を定める爾後の条約を採択する場合においては、この条約及び右の爾後の条約は、一条約を成すものと看做されるべきである。

第 十 六 条

 この条約の正式の批准書は、登録のため国際労働事務局長に送付するものとする。

第 十 七 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准を国際労働事務局長が登録したもののみを拘束する。
2 この条約は、二加盟国の批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、他のいずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 八 条

 国際労働事務局長は、国際労働機関の二加盟国の批准が登録されたときは、この旨を直ちに国際労働機関のすべての加盟国に通告しなければならない。同事務局長は、また他の加盟国からその後通告を受けた批准の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。

第 十 九 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通告する文書によつてこの条約を廃棄することができる。廃棄は、その廃棄が登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で前項に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年の期間この条約の拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基いて、十年の期間が経過するごとにこの条約を廃棄することができる。

第 二 十 条

 国際労働機関の理事会は、この条約が効力を生じた後十年の期間が経過するごとに、この条約の運用に関する報告を総会に提出し、かつ、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。

第 二 十 一 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改める改正条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、第十九条の規定にかかわらず、当然この条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 二 条

 この条約のフランス語及び英語による本文は、ともに正文とする。