1948年の年少者夜業(工業)条約(改正)(第90号)

ILO条約 | 1948/07/10

工業に使用される年少者の夜業に関する条約(1948年改正)(第90号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてサン・フランシスコに招集され、且つ千九百四十八年六月十七日を以てその第三十一回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第十項目である第一回総会において採択された千九百十九年の年少者夜業(工業)条約の一部改正に関する提案の採択を決議したので、
 この提案は国際条約の形式に依るを要することを思い、
 千九百四十八年の年少者夜業(工業)条約(改正)として引用することができる次の条約を千九百四十八年七月十日に採択する。

第 一 部 総則

第 一 条

1 この条約において「工業的企業」と称するのは、左に掲げるものを特に包含する。
 (a) 鉱山業、石切業その他土地より鉱物を採取する事業
 (b) 物品の製造、改造、浄洗、修理、装飾、仕上、販売のためにする仕立、破壊若しくは解体を為し又は材料の変造を為す企業(造船又は電気若しくは各種動力の発生、変更若しくは伝導に従事する企業を含む。)
 (c) 建設工事及び土木工事に従事する企業(建築、修理、保存、変更及び解体工事を含む。)
 (d) 道路又は鉄軌道による旅客又は貨物の運送に従事する企業(船渠、岸壁、波止場、倉庫又は空港における貨物の取扱を含む。)
2 工業と農業、商業及びその他の非工業的業務との分界は、権限のある機関がこれを定めなければならない。
3 国内の法令は、両親及び児童又は被後見人のみが使用される家族企業において、年少者に有害又は危険と認められない作業における雇用をこの条約の適用から除外することができる。

第 二 条

1 この条約において「夜間」と称するのは、少くとも十二時間の継続する時間を謂う。
2 十六歳未満の年少者については、右の時間は、夜十時から朝六時に至る時間を包含しなければならない。
3 十六歳以上十八歳未満の年少者については、この時間は、権限のある機関の定める夜十時より朝七時に至るまでの間における少くとも七時間の継続する時間を包含しなければならない。権限のある機関は、異なる地域、工業、企業又は工業若しくは企業の分科に対し異なる時間を定めることができるが、夜十一時後に始まる時間を定めるに先だち、関係のある使用者団体及び労働者団体と協議しなければならない。

第 三 条

1 十八歳未満の年少者は、次に規定する場合の外、公私の一切の工業的企業又はその各分科において夜間これを使用し又は労働することができない。
2 権限のある機関は、絶えず作業するを必要とする特定の工業又は職業における技能者養成又は職業訓練のために、関係のある使用者団体及び労働者団体と協議の上、十六歳以上十八歳未満の年少者の夜業における使用を許可することができる。
3 前項により夜業に使用される年少者には、前後二回の労働時間の間において、少くとも十三時間の継続する休憩時間を与えなければならない。
4 パン焼業における夜業をすべての労働者に禁止した所にあつては、権限のある機関は、十六歳以上の年少者の技能者養成又は職業訓練のために夜九時より朝四時に至る時間を以て、第二条3に基き権限のある機関により定められる夜十時より朝七時に至るまでの間における少くとも七時間の継続する時間に代えることができる。

第 四 条

1 気候のため昼間の労働が特に困難な国においては、夜間及び禁止時間は、前数条に規定するところよりこれを短縮することができる。但し昼間において代償休憩を与えられる場合とする。
2 防止又は予見することができず、回帰性を有せず且つ工業的企業の正常の操業を妨げる緊急事故の場合においては、第二条及び第三条の規定は、十六歳以上十八歳未満の年少者の夜業にこれを適用しない。

第 五 条

 重大な緊急事故の場合において公益のため必要があるときは、政府は、十六歳以上十八歳未満の年少者に対する夜業の禁止を停止することができる。

第 六 条

1 この条約の規定を施行する法令には、左の事項に関する規定を包含しなければならない。
 (a) この条約の規定を関係者に確実に知らしめるに足る規定を設けること。
 (b) この条約の規定を遵守する責任ある者を定めること。
 (c) この条約の規定の違反に対する充分の罰則を設けること。
 (d) 有効な施行を確保するに足る監督制度の維持を規定すること。
 (e) 公私の一切の工業的企業における使用者に対して、その使用する十八歳未満のすべての者の氏名及び出生の年月日その他権限のある機関の要求する関係事項を示す帳簿を保存し又は公の記録を備え附けることを要求すること。
2 国際労働機関憲章第二十二条に基き加盟国が提出する年次報告には、右の法令に関する詳細な情報及びこれに基いて行われた監督の結果の概要を包含しなければならない。

第 二 部 若干の国に対する特殊規定

第 七 条

1 この条約の批准を許容する法令の採択の日以前、十八歳より低い年令制限を規定する工業における年少者の夜業を制限する法令を有する加盟国は、その批准に付する宣言により、第三条に定める年令制限について、十八歳より低い年令限度に代えることができるが、いかなる場合にも十六歳を下つてはならない。
2 右の宣言を行つた加盟国は、何時でも後の宣言を以て右の宣言を取り消すことができる。
3 本条1によつて行われた宣言が実施されている加盟国は、この条約の適用に関する年次報告において、この条約の規定の完全な適用の目的を以て為された改善の程度を毎年明示しなければならない。

第 八 条

1 この条約第一部の規定は、この条に定める変更を条件としてインドにこれを適用する。
2 この条約の規定は、インド立法府がこれを適用する権限を有するすべての地域にこれを適用する。
3 「工業的企業」と称するのは、左に掲げるものを包含する。
 (a) インド工場法に定められる工場
 (b) インド鉱山法の適用を受ける鉱山
 (c) 鉄道及び港
4 第二条2は、十三歳以上十五歳未満の年少者にこれを適用する。
5 第二条3は、十五歳以上十七歳未満の年少者にこれを適用する。
6 第三条1及び第四条1は、十七歳未満の年少者にこれを適用する。
7 第三条2、3及び4、第四条2並びに第五条は、十五歳以上十七歳未満の年少者にこれを適用する。
8 第六条1(e)は、十七歳未満の年少者にこれを適用する。

第 九 条

1 この条約第一部の規定は、この条に定める変更を条件としてパキスタンにこれを適用する。
2 この条約の規定は、パキスタン立法府がこれを適用する権限を有するすべての地域にこれを適用する。
3 「工業的企業」と称するのは、左に掲げるものを包含する。
 (a) 工場法に定められる工場
 (b) 鉱山法の適用を受ける鉱山
 (c) 鉄道及び港
4 第二条2は、十三歳以上十五歳未満の年少者にこれを適用する。
5 第二条3は、十五歳以上十七歳未満の年少者にこれを適用する。
6 第三条1及び第四条1は、十七歳未満の年少者にこれを適用する。
7 第三条2、3及び4、第四条2並びに第五条は、十五歳以上十七歳未満の年少者にこれを適用する。
8 第六条1(e)は、十七歳未満の年少者にこれを適用する。

第 十 条

1 国際労働総会は、議題が会議事項に包含された会議においてこの条約第二部の前諸条の一又は二以上に対する改正案を三分の二の多数決を以て採択することができる。
2 右の改正案は、その適用を受ける加盟国を記載し、且つ一年の期間以内又は例外の事情ある場合においては十八箇月の期間以内に、その適用を受ける加盟国において当該事項につき権限を有する機関に対し立法その他の措置のためにこれを提出しなければならない。
3 右の各加盟国は、当該事項につき権限を有する機関の同意を得たときは、登録のために国際労働事務局長に対し改正の正式批准を通告しなければならない。
4 右の改正案は、その適用を受ける加盟国による批准のあつたとき、この条約の改正として効力を発生する。

第 三 部 最終規定

第 十 一 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知しなければならない。

第 十 二 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長により登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二加盟国の批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 三 条

1 この条約を批准した各加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通知する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、それが登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した各加盟国で、1に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年間拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基づいて、十年の期間が満了するごとにこの条約を廃棄することができる。

第 十 四 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准、宣言及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日について加盟国の注意を喚起しなければならない。

第 十 五 条

 国際労働事務局長は、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准、宣言及び廃棄の完全な明細を国際連合憲章第百二条による登録のため国際連合事務総長に通知しなければならない。

第 十 六 条

 国際労働機関の理事会は、この条約の効力発生の後十年の期間が満了するごとに、この条約の運用に関する報告を総会に提出しなければならず、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。

第 十 七 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、第十三条の規定にかかわらず、当然この条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、この条約を批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 八 条

 この条約の英語及びフランス語による本文は、ひとしく正文とする。