1951年の同一報酬条約(第100号)
同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第100号)
(日本は1967年8月24日批准)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーブに招集されて、千九百五十一年六月六日にその第三十四回会期として会合し、
この会期の議事日程の第七議題である同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬の原則に関する提案の採択を決定し、
この提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定したので、
次の条約(引用に際しては、千九百五十一年の同一報酬条約と称することができる)を千九百五十一年六月二十九日に採択する。
第 一 条
この条約の適用上、
(a) 「報酬」とは、通常の、基本の又は最低の賃金又は給料及び使用者が労働者に対してその雇用を理由として現金又は現物により直接又は間接に支払うすべての追加的給与をいう。
(b) 「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬」とは、性別による差別なしに定められる報酬率をいう。
第 二 条
1 各加盟国は、報酬率を決定するため行なわれている方法に適した手段によって、同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬の原則のすべての労働者への適用を促進し、及び前記の方法と両立する限り確保しなければならない。
2 この原則は、次のいずれによっても適用することができる。
(a) 国内法令
(b) 法令によって設けられ又は認められた賃金決定制度
(c) 使用者と労働者との間の労働協約
(d) これらの各種の手段の組合せ
第 三 条
1 行なうべき労働を基礎とする職務の客観的な評価を促進する措置がこの条約の規定の実施に役だつ場合には、その措置を執るものとする。
2 この評価のために採用する方法は、報酬率の決定について責任を負う機関又は、報酬率が労働協約によって決定される場合には、その当事者が決定することができる。
3 行なうべき労働における前記の客観的な評価から生ずる差異に性別と関係なく対応する報酬率の差異は、同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬の原則に反するものと認めてはならない。
第 四 条
各加盟国は、この条約の規定を実施するため、関係のある使用者団体及び労働者団体と適宜協力するものとする。
第 五 条
この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知しなければならない。
第 六 条
1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長により登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、ニ加盟国の批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
第 七 条
1 国際労働機関憲章第三十五条2の規定に従って国際労働事務局長に通知する宣言は、次の事項を示さなければならない。
(a) 当該加盟国がこの条約の規定を変更を加えずに適用することを約束する地域
(b) 当該加盟国がこの条約の規定を変更を加えて適用することを約束する地域及びその変更の細目
(c) この条約を適用することができない地域及びその適用することができない理由
(d) 当該加盟国がさらに事情を検討する間決定を留保する地域
2 1(a)及び(b)に掲げる約束は、批准の不可分の一部とみなされ、かつ、批准と同一の効力を有する。
3 いずれの加盟国も、1(b)、(c)又は(d)の規定に基づきその最初の宣言において行なった留保の全部又は一部をその後の宣言によっていつでも取り消すことができる。
4 いずれの加盟国も、第九条の規定に従ってこの条約を廃棄することができる期間中はいつでも、前の宣言の条項を他の点について変更し、かつ、指定する地域に関する現況を述べる宣言を事務局長に通知することができる。
第 八 条
1 国際労働機関憲章第三十五条4又は5の規定に従って国際労働事務局長に通知する宣言は、当該地域内でこの条約の規定を変更を加えることなく適用するか又は変更を加えて適用するかを示さなければならない。その宣言は、この条約の規定を変更を加えて適用することを示している場合には、その変更の細目を示さなければならない。
2 関係のある一若しくは二以上の加盟国又は国際機関は、前の宣言において示した変更を適用する権利の全部又は一部をその後の宣言によっていつでも放棄することができる。
3 関係のある一若しくは二以上の加盟国又は国際機関は、第九条の規定に従ってこの条約を廃棄することができる期間中はいつでも、前の宣言の条項を他の点について変更し、かつ、この条約の適用についての現況を述べる宣言を事務局長に通知することができる。
第 九 条
1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通知する文書によってこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、それが登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年間拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基づいて、十年の期間が満了するごとにこの条約を廃棄することができる。
第 十 条
1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准、宣言及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。
2 事務局長は、通知を受けたニ番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日について加盟国の注意を喚起しなければならない。
第 十 一 条
国際労働事務局長は、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准、宣言及び廃棄の完全な明細を国際連合憲章第百ニ条の規定による登録のため国際連合事務総長に通知しなければならない。
第 十 二 条
国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出しなければならず、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討しなければならない。
第 十 三 条
1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として第九条の規定にかかわらず、当然この条約の即時の廃棄を伴う。
(b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、この条約を批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。
第 十 四 条
この条約の英語及びフランス語による本文は、ひとしく正文とする。