1958年の船員の身分証明書条約(第108号)

ILO条約 | 1958/05/13

国の発給する船員身分証明書に関する条約(第108号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百五十八年四月二十九日にその第四十一回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第七議題である国の発給する船員身分証明書の相互的又は国際的承認に関する提案の採択を決定し、
 この提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定したので、
 次の条約(引用に際しては、千九百五十八年の船員の身分証明書条約と称することができる。)を千九百五十八年五月十三日に採択する。

第 一 条

1 この条約は、この条約の適用を受ける領域内において登録され、かつ、通常海洋航行に従事する船舶(軍艦を除く。)内で、資格のいかんを問わず勤務するすべての船員に適用する。
2 この条約の適用上いずれかの種類の者を船員と認めるべきかについて問題が生じたときは、各国の権限のある機関は、関係船舶所有者団体及び関係船員団体と協議の上、その問題を決定しなければならない。

第 二 条

1 この条約の適用を受ける加盟国は、自国民である船員に対し、その者の申請に基いて、第四条の規定に合致した船員身分証明書を発給するものとする。ただし、特殊な種類の船員に対し身分証明書を発給することができないときは、加盟国は、船員であることを証明する旅券を発給することができ、その旅券は、この条約の適用上船員身分証明書と同様の効力を有するものとする。
2 この条約の適用を受ける加盟国は、その他の船員で、自国領域内で登録された船舶で勤務するもの又は同領域内の職業紹介所で登録を行つたものに対し、その者による申請を受けたときは、船員身分証明書を発給することができる。

第 三 条

 船員は、常時、船員身分証明書を所持していなければならない。

第 四 条

1 船員身分証明書は、簡易な様式のものでなければならず、耐久性のある材料で作成され、かつ、いかなる変更箇所も容易に発見しうるようにつくられていなければならない。
2 船員身分証明書には、発給機関の名及び称号、発給の日及び場所並びに同証明書がこの条約のための船員身分証明書である旨が記載されていなければならない。
3 船員の身分証明書は、所持者に関する次の事項を含まなければならない。
 (a) 氏名の全体(適用可能なときは姓名)
 (b) 生年月日及び出生地
 (c) 国籍
 (d) 身体上の特徴
 (e) 写真
 (f) 署名又は所持者が署名することができないときは、拇印(ぼいん)
4 加盟国は、船員身分証明書を外国の船員に発給するときは、その身分証明書には国籍に関する記述を含めることを要せず、また、そのような記述は、その国籍の決定的な証拠とはならない。
5 船員身分証明書の有効期限は、その身分証明書に明確に表示されていなければならない。
6 前諸項の規定に従うことを条件として、船員身分証明書の正確な様式及び内容は、同証明書を発給する加盟国が関係船舶所有者団体及び関係船員団体と協議の上、決定するものとする。
7 船員身分証明書に記載すべきその他の事項については、国内法令により定めることができる。

第 五 条

1 船員で、この条約の適用を受ける領域の権限のある機関が発給した有効な船員身分証明書を所持するものは、同領域への再入国を許されるものとする。
2 前記の船員は、当該証明書に明記された有効期間の満了の後少くとも一年の期間は再入国を許されるものとする。

第 六 条

1 加盟国は、有効な船員身分証明書を所持する船員に対し、この条約の適用を受ける領域への入国が船舶の寄港中における一時上陸のために要求されるときは、その入国を許可するものとする。
2 船員身分証明書に適当な記入のための空欄が設けられている場合において、加盟国は、また、有効な船員身分証明書を所持する船員に対し、この条約の適用を受ける領域への入国が次の目的のために要求されるときは、その入国を許可するものとする。
 (a) 自己の所属する船舶への乗船又は他の船舶への移動
 (b) 他国にある自己の所属する船舶への乗船又は帰国のための通過
 (c) 当該加盟国の当局が承認するその他の目的
3 加盟国は、前項に掲げるいずれかの目的での自国領域への入国を許可するに先だつて、当該船員、関係船舶所有者若しくは代理人に対し、又は適当な領事に対し、船員の目的及びその目的を遂行するための能力に関する十分な証拠(文書による証拠を含む。)を要求することができる。加盟国は、また、船員の滞在期間を当該目的のために妥当と認める期間に限定することができる。
4 この条のいかなる規定も、いずれかの特定の個人による加盟国の領域への入国又は同領域内における在留を拒否する加盟国の権利を制限するものと解してはならない。

第 七 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 八 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 九 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 十 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 一 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 二 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 三 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第九条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 四 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。