1963年の機械防護条約(第119号)

ILO条約 | 1963/06/25

機械の防護に関する条約(第119号)
(1973年7月31日批准登録)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十三年六月五日にその第四十七回会期として会合し、
 その会期の議事日程の第四議題である適当な防護装置が施されていない機械の販売、賃貸及び使用の禁止に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであると決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百六十三年の機械防護条約と称することができる。)を千九百六十三年六月二十五日に採択する。

第 一 部 一般規定

第 一 条

1 動力によつて駆動されるすべての機械は、新品であるか中古品であるかを問わず、この条約の適用上、機械と認める。
2 各国の権限のある機関は、人力によつて作動する機械(新品であるか中古品であるかを問わない。)について、労働者に傷害を与える危険があるかどうか及びどの程度の危険があるかを決定し、かつ、この条約の適用上機械と認めるかどうか及びどの範囲まで機械と認めるかを決定する。その決定は、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議したうえで行なう。それらのいずれの団体も、その協議を提案することができる。
3 この条約は、
 (a) 運行中の路面車両及び軌道車両については、運転者の安全に関してのみ適用する。
 (b) 移動式農業機械については、当該機械に関連して使用される労働者の安全に関してのみ適用する。

第 二 部 販売、賃貸及び他の方法による移転並びに展示

第 二 条

1 3及び4に規定する危険部分に適当な防護装置が施されていない機械の販売及び賃貸は、国内法令又は同様に効果的なその他の措置によつて禁止する。
2 3及び4に規定する危険部分に適当な防護装置が施されていない機械の販売及び賃貸以外の方法による移転並びに展示は、権限のある機関が決定する範囲内で、国内法令又は同様に効果的なその他の措置によつて禁止する。ただし、機械の展示中実演を行なうため防護装置を一時的に取りはずすことは、人に対する危険を防止するため適当な予防措置がとられている限り、この2の規定の違反とはみなさない。
3 すべてのセット・スクリユー、ボルト及びキー並びに機械の作動部分の他の突起物であつて作動中接触する者に危険を及ぼすおそれのあるものとして権限のある機関が定めるものは、危険を防止するように設計し、埋め込み又は防護する。
4 すべてのフライホイール、ギヤー、円錐(すい)摩擦車、円筒摩擦車、カム、プーリー、ベルト、チェーン、ピニオン、ウォーム・ギヤー、クランク・アーム及びスライド・ブロック並びに軸(軸頸(けい)端を含む。)その他の動力伝導装置であつて作動中接触する者に危険を及ぼすおそれのあるものとして権限のある機関が定めるものは、危険を防止するように設計し又は防護する。調速装置も、危険を防止するように設計し又は防護する。

第 三 条

1 前条の規定は、同条に規定する機械又はその危険部分であつても、次のいずれかの条件を満たすものについては適用しない。
 (a) 構造からみて、適当な安全装置によつて防護されているものと同様に安全であること。
 (b) 取付け方又は位置からみて、適当な安全装置によつて防護されているものと同様に安全であるように取り付け又は置くことが予定されていること。
2 前条1及び2に規定する機械の販売、賃貸若しくは他の方法による移転又は展示の禁止は、保守、給油、部品の取替え及び調整の作業を通常の安全基準に従つて行なうことができる機械については、それらの作業が行なわれている間当該機械が同条3及び4に規定する要件を十分には満たさないような設計のものであつても、適用しない。
3 前条の規定は、保管、廃棄又は修繕のための機械の販売又は他の方法による移転を禁止するものではない。ただし、その機械は、保管され又は修繕された後は、同条の規定に従つて防護されない限り、販売し、賃貸し若しくは他の方法によつて移転し又は展示してはならない。

第 四 条

 第二条に規定する事項を遵守する義務は、機械を販売し、賃貸し若しくは他の方法によつて移転し又は展示する者に対し、及び、適当であるときは国内法令により、それらの者の代理者に対して課する。製造者が機械を販売し、賃貸し若しくは他の方法によつて移転し又は展示する場合には、製造者に対して同様の義務を課する。

第 五 条

1 加盟国は、第二条の規定の暫定的な適用除外を定めることができる。
2 1の暫定的な適用除外の期間(いかなる場合にも、当該加盟国についてこの条約が効力を生ずる日から三年をこえないものとする。)その他の条件は、国内法令又は同様に効果的なその他の措置によつて定める。
3 権限のある機関は、この条の規定の適用にあたり、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体並びに適当なときは製造者団体と協議する。

第 三 部 使用

第 六 条

1 危険部分(作業点を含む。)に適当な防護装置が施されていない機械の使用は、国内法令又は同様に効果的なその他の措置によつて禁止する。もつとも、その禁止は、これを完全に適用することにより機械の使用を妨げることとなる場合には、その機械の使用が可能な限度で適用する。
2 機械は、産業安全及び労働衛生に関する国内の規則及び基準に違反しないように防護する。

第 七 条

 前条に規定する事項を遵守する義務は、使用者に対して課する。

第 八 条

1 第六条の規定は、機械又はその部分であつて、その構造、取付け方又は位置からみて、適当な安全装置によつて防護されているものと同様に安全であるものについては適用しない。
2 第六条及び第十一条の規定は、通常の安全基準に従い機械又はその部分の保守、給油、部品の取替え又は調整を行なうことを妨げるものではない。

第 九 条

1 加盟国は、第六条の規定の暫定的な適用除外を定めることができる。
2 1の暫定的な適用除外の期間(いかなる場合にも、当該加盟国についてこの条約が効力を生ずる日から三年をこえないものとする。)その他の条件は、国内法令又は同様に効果的なその他の措置によつて定める。
3 権限のある機関は、この条の規定の適用にあたり、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議する。

第 十 条

1 使用者は、機械の防護に関する国内法令を労働者に周知させるための措置をとり、かつ、機械の使用にあたつて生ずる危険及び守るべき予防措置に関し、適宜労働者を指導する。
2 使用者は、この条約の適用を受ける機械に関して使用される労働者を危険にさらすことのないような作業環境を形成しかつ維持する。

第 十 一 条

1 労働者は、防護装置が所定の位置にない機械を使用してはならず、また、労働者に対し、防護装置が所定の位置にない機械を使用することを要求してはならない。
2 労働者は、その使用する機械の防護装置の機能を失わせてはならず、また、いかなる者も、労働者によつて使用される機械の防護装置の機能を失わせてはならない。

第 十 二 条

 この条約の批准は、社会保障又は社会保険に関する国内法令に基づく労働者の権利に影響を及ぼすものではない。

第 十 三 条

 使用者及び労働者の義務に関するこの部の規定は、権限のある機関が決定するときは、その決定の範囲内で、自営の労働者についても適用する。

第 十 四 条

 この部の規定の適用上、「使用者」には、適当であるときは国内法令で定めるところにより、使用者の代理者を含む。

第 四 部 適用上の措置

第 十 五 条

1 この条約を効果的に実施するため、相当な刑罰の設定を含むすべての必要な措置をとる。
2 この条約を批准する各加盟国は、この条約の適用について監督するため適当な監督機関を設けること又は適切な監督の実施を確保することを約束する。

第 十 六 条

 この条約を実施するための国内法令は、権限のある機関が、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体並びに適当なときは製造者団体と協議したうえで、作成する。

第 五 部 適用範囲

第 十 七 条

1 この条約は、経済活動のすべての部門について適用する。ただし、この条約を批准する加盟国が、その批准に際して付する宣言により、限定された適用範囲を明示する場合は、この限りでない。
2 限定された適用範囲を明示する宣言が行なわれる場合において、
 (a) この条約は、少なくとも、権限のある機関が労働監督機関並びに関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議したうえで機械が大規模に使用されていると決定する企業又は経済活動部門については、適用するものとする。それらのいずれの団体も、その協議を提案することができる。
 (b) 加盟国は、この条約の適用範囲を拡張するために得られた進歩を国際労働機関憲章第二十二条の規定による報告に記載する。
3 1の規定に基づいて宣言を行なつた加盟国は、その宣言の全部又は一部をその後の宣言によりいつでも取り消すことができる。

第 六 部 最終規定

第 十 八 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 九 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 二 十 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 二 十 一 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 二 十 二 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 二 十 三 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 二 十 四 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第二十条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 五 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。