1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)

ILO条約 | 1970/06/24

年次有給休暇に関する条約(1970年の改正条約)(第132号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十年六月三日にその第五十四回会期として会合し、
 その会期の議事日程の第四議題である有給休暇に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、「千九百七十年の有給休暇条約(改正)」と称することができる。)を千九百七十年六月二十四日に採択する。

第 一 条

 この条約は、労働協約、仲裁裁定、判決、法定の賃金決定制度その他国内事情の下において適当である方法で国内慣行に合致するものによつて実施しない限り、国内法令によつて実施する。

第 二 条

1 この条約は、船員を除くほか、すべての被用者について適用する。
2 国内の権限のある機関又は適当な機関は、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはそれらの団体と協議したうえ、雇用につき実施に関する又は立法上若しくは憲法上の事項に関する実質的で特殊な問題が生ずる限られた種類の被用者をこの条約の適用から除外するため、必要な限度において措置をとることができる。
3 この条約を批准する各加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従つて提出するこの条約の適用に関する第一回の報告において、2の規定に従つて除外した種類の者をその除外の理由を付して列記するものとし、その後の報告において、除外した種類の者に関する自国の法律及び慣行の現況並びにこの条約がそれらの種類の者につきどの程度に実施されているか又は実施されようとしているかを記述する。

第 三 条

1 この条約の適用を受けるすべての者は、所定の最小の長さの年次有給休暇を受ける権利を有する。
2 この条約を批准する各加盟国は、その批准の際に行なう宣言において、休暇の長さを定める。
3 休暇は、いかなる場合にも、一年の勤務につき三労働週を下回つてはならない。
4 この条約を批准した各加盟国は、その後、追加の宣言により、批准の際に定めた休暇よりも長い休暇を定めることを国際労働事務局長に通告することができる。

第 四 条

1 いずれかの年の勤務期間が前条に定める休暇を完全に受ける資格を得るために必要な期間に満たない者は、その年につきその年の勤務期間に比例した有給休暇を受ける権利を有する。
2 1の「年」とは、暦年又は当該国の権限のある機関により若しくは適当な機関を通じて決定される同じ長さのその他の期間をいう。

第 五 条

1 年次有給休暇を受ける資格の取得については、最低勤務期間を要求することができる。
2 そのような資格期間の長さは、当該国の権限のある機関により又は適当な機関を通じて決定されるものとし、六箇月をこえてはならない。
3 休暇を受ける資格を得るための勤務期間の算定の方法は、各国の権限のある機関により又は適当な機関を通じて決定される。
4 疾病、傷害、出産等の当該被用者にとつてやむを得ない理由による欠勤は、各国の権限のある機関により又は適当な機関を通じて決定される条件の下で、勤務期間の一部として数えられる。

第 六 条

1 公の及び慣習上の休日は、年次休暇期間中に当たるかどうかを問わず、第三条3に定める最低年次有給休暇の一部として数えてはならない。
2 疾病又は傷害に起因する労働不能の期間は、各国の権限のある機関により又は適当な機関を通じて決定される条件の下で、第三条3に定める最低年次有給休暇の一部として数えてはならない。

第 七 条

1 この条約に定める休暇をとるすべての者は、その休暇の全期間につき、少なくとも、各国の権限のある機関により又は適当な機関を通じて決定される方法で算定されるその通常又は平均の報酬(この報酬のうち現物で支払われる部分であつて当該者が休暇中であるかどうかを問わず継続する恒久的な給付ではないものの現金相当額を含む。)を受ける。
2 1の規定に基づいて支払われる額は、当該者及び使用者について適用される協定に別段の定めがない限り、休暇に先だつて当該者に支払われる。

第 八 条

1 各国の権限のある機関又は適当な機関は、年次有給休暇の分割を認めることができる。
2 年次有給休暇の分割された部分の一は、少なくとも中断されない二労働週から成るものとする。ただし、使用者及び当該被用者について適用される協定に別段の定めがない場合であつて、当該被用者の勤務期間がそのような期間の休暇を受ける資格を与えるものである場合に限る。

第 九 条

1 第八条2に規定する年次有給休暇の中断されない部分は、その休暇を受ける資格が生じた年の終りから一年以内に、また、年次有給休暇の残余の部分は、十八箇月以内に、付与されかつとられる。
2 所定の最低期間をこえる年次休暇の部分は、当該被用者の同意を得て、1に定める期間をこえて所定の期限まで延期することができる。
3 2の最低期間及び期限は、関係のある使用者団体及び労働者団体と協議したうえ権限のある機関により、又は団体交渉その他国内事情の下において適当である方法で国内慣行に合致するものによつて定められる。

第 十 条

1 休暇をとる時期は、規則、労働協約、仲裁裁定その他の方法で国内慣行に合致するものによつて定められている場合を除くほか、使用者が当該被用者又はその代表者と協議したうえ定める。
2 休暇をとる時期を定めるにあたつては、業務上の必要並びに被用者が利用することができる休息及び休養のための機会を考慮に入れる。

第 十 一 条

 第五条1の規定に基づいて要求される期間に相当する最低勤務期間を完了した被用者は、雇用の終了の時に、有給休暇を受けていない勤務期間に比例する有給休暇、それに代わる補償又はそれに相当する休暇権を受ける。

第 十 二 条

 補償を受けたため又はその他の理由により第三条3に定める最低年次有給休暇を受ける権利を放棄し又はその休暇を廃止する協定は、国内事情の下において適当である場合には、無効とし又は禁止する。

第 十 三 条

 各国の権限のある機関又は適当な機関は、被用者が休暇中に休暇の目的に合致しない有償活動に従事する場合につき、特別な規則を定めることができる。

第 十 四 条

 有給休暇に関する規則又は規定の適正な適用及び実施を確保するため、適切な監督その他の方法により、この条約の実施方法に適合する効果的な措置がとられる。

第 十 五 条

1 各加盟国は、次の者について個別にこの条約の義務を受諾することができる。
 (a) 農業以外の経済部門における被用者
 (b) 農業における被用者
2 各加盟国は、批准に際し、1(a)に規定する者、1(b)に規定する者又はその両者のうちのいずれについてこの条約の義務を受諾するかを明示する。
3 批准に際し1(a)に規定する者又は1(b)に規定する者のうちのいずれかについてのみこの条約の義務を受諾した各加盟国は、その後、この条約の適用を受けるすべての者につきこの条約の義務を受諾する旨を国際労働事務局長に通告することができる。

第 十 六 条

 この条約は、次の条件の下に、千九百三十六年の有給休暇条約及び千九百五十二年の有給休暇(農業)条約を改正するものである。
 (a) 千九百三十六年の有給休暇条約の締約国である加盟国が農業以外の経済部門における被用者について行なうこの条約の義務の受諾は、当然に千九百三十六年の条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 千九百五十二年の有給休暇(農業)条約の締約国である加盟国が農業における被用者について行なうこの条約の義務の受諾は、当然に千九百五十二年の条約の即時の廃棄を伴う。
 (c) この条約の効力発生は、千九百五十二年の有給休暇(農業)条約の将来の批准のための開放を終了させるものではない。

第 十 七 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 八 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 九 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 二 十 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 二 十 一 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 二 十 二 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 二 十 三 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十九条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 四 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。