1973年の最低年齢条約(第138号)

ILO条約 | 1973/06/26

就業が認められるための最低年齢に関する条約(第138号)
(日本は2000年6月5日批准)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十三年六月六日にその第五十八回会期として会合し、
 その会期の議事日程の第四議題である就業が認められるための最低年齢に関する提案の採択を決定し、
 千九百十九年の最低年齢(工業)条約、千九百二十年の最低年齢(海上)条約、千九百二十一年の最低年齢(農業)条約、千九百二十一年の最低年齢(石炭夫及び火夫)条約、千九百三十二年の最低年齢(非工業)条約、千九百三十六年の最低年齢(海上)改正条約、千九百三十七年の最低年齢(工業)条約(改正)、千九百三十七年の最低年齢(非工業)条約(改正)、千九百五十九年の最低年齢(漁船員)条約及び千九百六十五年の最低年齢(坑内労働)条約の規定に留意し、
 児童労働の全面的な廃止を達成するため、就業が認められるための最低年齢に関する既存の文書であって限定された経済部門に適用のあるものに漸次代わることとなる一般的文書を作成する時期が来たことを考慮し、
 その一般的文書が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百七十三年の最低年齢条約と称することができる)を千九百七十三年六月二十六日に採択する。

第 一 条

 自国についてこの条約の効力が生じている加盟国は、児童労働の実効的な廃止を確保すること及び就業が認められるための最低年齢を年少者の心身の十分な発達が確保される水準まで漸進的に引き上げることを目的とする国内政策の遂行を約束する。

第 二 条

1 この条約を批准する加盟国は、その批准に際して付する宣言において、自国の領域内及びその領域内で登録された輸送手段における就業が認められるための最低年齢を明示する。この最低年齢に達していない者については、第四条から第八条までの規定が適用される場合を除くほか、いかなる職業における就業も認められない。
2 この条約を批准した加盟国は、その後において、新たな宣言を行うことにより、既に明示した最低年齢を上回る最低年齢を明示する旨を国際労働事務局長に通報することができる。
3 1の規定に従って明示する最低年齢は、義務教育が終了する年齢を下回ってはならず、また、いかなる場合にも十五歳を下回ってはならない。
4 3の規定にかかわらず、経済及び教育施設が十分に発達していない加盟国は、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはこれらの団体と協議した上で、当初は最低年齢を十四歳と明示することができる。
5 4の規定に基づき最低年齢を十四歳と明示した加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って提出するこの条約の適用に関する報告に次のいずれかのことを記載する。
 (a) 最低年齢を十四歳と明示した理由が引き続き存在していること。
 (b) 4の規定を適用する権利を一定の日から放棄すること。

第 三 条

1 年少者の健康、安全若しくは道徳を損なうおそれのある性質を有する業務又はそのようなおそれのある状況下で行われる業務については、就業が認められるための最低年齢は、十八歳を下回ってはならない。
2 1の規定が適用される業務の種類は、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはこれらの団体と協議した上で、国内法令又は権限のある機関によって決定される。
3 1の規定にかかわらず、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはこれらの団体と協議した上で、年少者がその健康、安全及び道徳について十分に保護されること並びに関係する活動部門に係る適切なかつ特定の指導又は職業訓練を受けたことを条件として、十六歳からの就業については、これを国内法令又は権限のある機関により認めることができる。

第 四 条

1 権限のある機関は、必要な限りにおいて、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはこれらの団体と協議した上で、特殊かつ実質的な適用上の問題が生ずる限られた種類の業務についてこの条約を適用しないことができる。
2 この条約を批准する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って提出するこの条約の適用に関する第一回の報告において、1の規定に基づいてこの条約を適用しないこととした業務をその理由を付して掲げ、また、その後の報告において、当該業務に関する自国の法律及び慣行の現況並びにこの条約を当該業務につきどの程度実施しているか又は実施しようとしているかを記載する。
3 前条に規定する業務については、この条の規定によるこの条約の適用除外の対象としてはならない。

第 五 条

1 経済及び行政機関が十分に発達していない加盟国は、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはこれらの団体と協議した上で、当面はこの条約を適用する範囲を限定することができる。
2 1の規定を適用する加盟国は、その批准に際して付する宣言において、この条約を適用する経済活動部門又は企業の種類を明示する。
3 少なくとも次のものについては、この条約を適用する。
  鉱業及び土石採取業
  製造業
  建設業
  電気事業、ガス事業及び水道事業
  衛生事業
  運輸業、倉庫業及び通信業
  農園及び主として商業的目的のための生産を行う農業的企業(家族的及び小規模な企業であって、地元における消費のための生産を行うもの及び労働者の常時の使用を伴わないものを除く)
4 この条の規定に基づいてこの条約を適用する範囲を限定した加盟国は、
 (a) 国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づく報告において、この条約を適用しないこととした経済活動部門における年少者及び児童の就業に関する一般的な現況並びにこの条約の一層広範な適用を図るために得られた進展を記載する。
 (b) 国際労働事務局長にあてた宣言により、いつでも、正式にこの条約を適用する範囲を拡大することができる。

第 六 条

 この条約は、一般教育、職業教育若しくは技術教育のための学校若しくは訓練施設において児童及び年少者が行う労働又は企業において十四歳以上の者が行う労働であって、権限のある機関が定める条件(関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にあっては、これらの団体と協議した上で定める条件とする。)に従って行われ、かつ、次のいずれかの課程の不可分の一部であるものについては、適用しない。
 (a) 学校又は訓練施設が第一義的な責任を有する教育又は訓練の課程
 (b) 主として又は全面的に企業において実施される訓練課程であって、権限のある機関が認めたもの
 (c) 職業又は訓練科目の選択を容易にするための職業指導の課程

第 七 条

1 次の要件を満たす軽易な労働については、国内法令において、十三歳以上十五歳未満の者による就業を認める旨を定めることができる。
 (a) これらの者の健康又は発達に有害となるおそれがないこと。
 (b) これらの者の登校若しくは権限のある機関が認めた職業指導若しくは訓練課程への参加又はこれらの者による教育、職業指導若しくは訓練内容の習得を妨げるものでないこと。
2 1(a)及び(b)に定める要件を満たしている労働については、国内法令において、十五歳に達しているが義務教育を終了していない者による就業を認める旨を定めることができる。
3 権限のある機関は、1及び2の規定に基づいて就業が認められる活動を決定するとともに、その就業の時間数及び条件を定める。
4 第二条4の規定を適用する加盟国は、その適用を継続する間、1の規定中、「十三歳以上十五歳未満」とあるのは「十二歳以上十四歳未満」とし、2の規定中「十五歳」とあるのは「十四歳」として、1又は2の規定を適用することができる。

第 八 条

1 権限のある機関は、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはこれらの団体と協議した上で、芸術的な演劇への出演その他これに類することを目的とする就業については、個々の事案について与える許可書により、第二条に規定する就業の禁止に対する例外を認めることができる。
2 1の許可書においては、就業が認められる時間数を限定するとともに、就業が認められる条件を定める。

第 九 条

1 権限のある機関は、この条約の効果的な実施を確保するため、すべての必要な措置(適当な制裁を定めることを含む)をとる。
2 国内法令又は権限のある機関は、この条約を実施するための規定の遵守について責任を負う者を定める。
3 国内法令又は権限のある機関は、使用者が保管し及び利用に供すべき名簿その他の書類について定める。当該名簿その他の書類には、使用者が使用し又は使用者のために労働する十八歳未満の者の氏名及び年齢又は生年月日(可能な場合には正当に証明されたもの)を含める。

第 十 条

1 この条約は、この条に定めるところにより、千九百十九年の最低年齢(工業)条約、千九百二十年の最低年齢(海上)条約、千九百二十一年の最低年齢(農業)条約、千九百二十一年の最低年齢(石炭夫及び火夫)条約、千九百三十二年の最低年齢(非工業)条約、千九百三十六年の最低年齢(海上)改正条約、千九百三十七年の最低年齢(工業)条約(改正)、千九百三十七年の最低年齢(非工業)条約(改正)、千九百五十九年の最低年齢(漁船員)条約及び千九百六十五年の最低年齢(坑内労働)条約を改正する。
2 この条約の効力発生により、千九百三十六年の最低年齢(海上)改正条約、千九百三十七年の最低年齢(工業)条約(改正)、千九百三十七年の最低年齢(非工業)条約(改正)、千九百五十九年の最低年齢(漁船員)条約及び千九百六十五年の最低年齢(坑内労働)条約の批准のための開放が終了することはない。
3 千九百十九年の最低年齢(工業)条約、千九百二十年の最低年齢(海上)条約、千九百二十一年の最低年齢(農業)条約及び千九百二十一年の最低年齢(石炭夫及び火夫)条約は、それぞれの条約のすべての締約国がこの条約を批准し又は国際労働事務局長に宣言を送付することにより、当該それぞれの条約の批准のための開放を終了させることに同意したときは、その開放を終了する。
4 この条約の効力発生を条件として、
 (a) 千九百三十七年の最低年齢(工業)条約(改正)の締約国である加盟国によるこの条約の義務の受諾は、当該加盟国がこの条約の第二条の規定に従って十五歳を下回らない最低年齢を明示するときは、当然に千九百三十七年の最低年齢(工業)条約(改正)の即時の廃棄を伴う。
 (b) 千九百三十二年の最低年齢(非工業)条約の締約国である加盟国による同条約に定める非工業的業務についてのこの条約の義務の受諾は、当然に千九百三十二年の最低年齢(非工業)条約の即時の廃棄を伴う。
 (c) 千九百三十七年の最低年齢(非工業)条約(改正)の締約国である加盟国による同条約に定める非工業的業務についてのこの条約の義務の受諾は、当該加盟国がこの条約の第二条の規定に従って十五歳を下回らない最低年齢を明示するときは、当然に千九百三十七年の最低年齢(非工業)条約(改正)の即時の廃棄を伴う。
 (d) 千九百三十六年の最低年齢(海上)改正条約の締約国である加盟国による海上の業務についてのこの条約の義務の受諾は、当該加盟国がこの条約の第二条の規定に従って十五歳を下回らない最低年齢を明示し又はこの条約の第三条の規定を海上の業務について適用することを明示するときは、当然に千九百三十六年の最低年齢(海上)改正条約の即時の廃棄を伴う。
 (e) 千九百五十九年の最低年齢(漁船員)条約の締約国である加盟国による海上漁業についてのこの条約の義務の受諾は、当該加盟国がこの条約の第二条の規定に従って十五歳を下回らない最低年齢を明示し又はこの条約の第三条の規定を海上漁業について適用することを明示するときは、当然に千九百五十九年の最低年齢(漁船員)条約の即時の廃棄を伴う。
 (f) 千九百六十五年の最低年齢(坑内労働)条約の締約国である加盟国によるこの条約の義務の受諾は、当該加盟国が千九百六十五年の最低年齢(坑内労働)条約に従って明示した年齢を下回らない最低年齢をこの条約の第二条の規定に従って明示し又はこの条約の第三条の規定に基づいて鉱山における坑内の業務について適用することを明示するときは、当然に千九百六十五年の最低年齢(坑内労働)条約の即時の廃棄を伴う。
5 この条約の効力発生を条件として、
 (a) この条約の義務の受諾は、千九百十九年の最低年齢(工業)条約第十二条に規定する同条約の廃棄を伴うものとする。
 (b) 農業についてのこの条約の義務の受諾は、千九百二十一年の最低年齢(農業)条約第九条に規定する同条約の廃棄を伴うものとする。
 (c) 海上の業務についてのこの条約の義務の受諾は、千九百二十年の最低年齢(海上)条約第十条及び千九百二十一年の最低年齢(石炭夫及び火夫)条約第十二条に規定するそれぞれの条約の廃棄を伴うものとする。

第 十 一 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 二 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国で自国による批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国による批准が国際労働事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、自国による批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 三 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 十 四 条

1 国際労働事務局長は、加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録についてすべての加盟国に通報する。
2 国際労働事務局長は、二番目の批准の登録について加盟国に通報する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 五 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 六 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 七 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約が自国について効力を生じたときは、第十三条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) この条約は、その改正条約が効力を生ずる日に加盟国による批准のための開放を終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 八 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。