1976年の三者の間の協議(国際労働基準)条約(第144号)

ILO条約 | 1976/06/21

国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第144号)
(日本は2002年6月14日に批准)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十六年六月二日にその第六十一回会期として会合し、
 現行の国際労働条約及び国際労働勧告の規定、特に、千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約、千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約及び千九百六十年の協議(産業及び国の段階)勧告の規定が自由なかつ独立の団体を設立する使用者及び労働者の権利を確認していること並びに国の段階における公の機関と使用者団体及び労働者団体との間の効果的な協議を促進するための措置を要求していることを想起し、また、多くの国際労働条約及び国際労働勧告の規定がこれらの条約及び勧告を実施するための措置に関する使用者団体及び労働者団体との協議について規定していることを想起し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である「国際労働基準の実施を促進するための三者の機関の設置」を審議し、国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百七十六年の三者の間の協議(国際労働基準)条約と称することができる。)を千九百七十六年六月二十一日に採択する。

第 一 条

 この条約において、「代表的団体」とは、最も代表的な使用者団体及び労働者団体で結社の自由の権利を有するものをいう。

第 二 条

1 この条約を批准する国際労働機関の各加盟国は、第五条1に規定する国際労働機関の活動に関する事項について、政府、使用者及び労働者の代表者の間で効果的な協議が行われることを確保する手続を運用することを約束する。
2 1に規定する手続の性質及び形態は、代表的団体が存在し及び当該手続が確立されていない場合には、当該代表的団体と協議した上で、国内慣行に従い各国において定める。

第 三 条

1 この条約に規定する手続における使用者及び労働者の代表者は、代表的団体が存在する場合には、当該代表的団体が自由に選ぶ。
2 使用者及び労働者は、協議が行われる機関において平等の立場で代表される。

第 四 条

1 権限のある当局は、この条約に規定する手続に対する事務上の支援について責任を負う。
2 この条約に規定する手続の参加者に対して必要な研修を行うための経費の負担について、代表的団体が存在する場合には、権限のある当局と当該代表的団体との間で適当な取決めを行う。

第 五 条

1 この条約に規定する手続は、次の事項に関して協議することを目的とする。
 (a) 国際労働総会の議事日程中の議題に関する質問書に対する政府の回答及び同総会において討議するために提案された文書に関する政府の意見
 (b) 国際労働機関憲章第十九条の規定に基づく条約及び勧告の提出に関連して権限のある機関に対して行われる提案
 (c) 批准されていない条約及び実施されていない勧告について、これらの条約又は勧告を批准し又は実施することを促進する為にいかなる措置をとり得るかを検討するため、適当な間隔を置いて行う見直し
 (d) 国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って国際労働事務局に対して行われる報告から生ずる問題
 (e) 批准された条約の廃棄に関する提案
2 協議は、1に掲げる事項に関して十分な検討を確保するため、合意によって定める適当な間隔を置いて(少なくとも年に一回)行う。

第 六 条

 権限のある当局は、代表的団体が存在する場合には当該代表的団体と協議した上で適当と認めるときは、この条約に規定する手続の運用に関する年次報告を公表する。

第 七 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 八 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国で自国による批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国による批准が国際労働事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、自国による批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 九 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 十 条

1 国際労働事務局長は、加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録についてすべての加盟国に通報する。
2 国際労働事務局長は、二番目の批准の登録について加盟国に通報する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 一 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 二 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 三 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約が自国について効力を生じたときは、第九条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) この条約は、その改正条約が効力を生ずる日に加盟国による批准のための開放を終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 四 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。