1982年の雇用終了条約(第158号)

ILO条約 | 1982/06/22

使用者の発意による雇用の終了に関する条約(第158号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百八十二年六月二日にその第六十八回会期として会合し、
 千九百六十三年の雇用終了勧告に定める現行の国際基準に留意し、
 千九百六十三年の雇用終了勧告の採決以降、同勧告により扱われる問題について、多くの加盟国の法令及び慣行に大きな進展が生じたことに留意し、
 特にこの分野において、近年多くの国で経験された経済上の困難及び技術的変化に起因する重大な問題に留意した上、これらの進展がこの問題に関する新たな国際基準を採択することを適当としていることを考慮し、
 前記の会期の議事日程の第五議題である使用者の発意による雇用の終了に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百八十二年の雇用終了条約と称することができる。)を千九百八十二年六月二十二日に採択する。

第 一 部 実施方法、適用範囲及び定義

第 一 条

 この条約は、労働協約、仲裁裁定若しくは判決によつて又は国内慣行に適合するその他の方法によつて実施されない限り、法令によつて実施する。

第 二 条

1 この条約は、経済活動のすべての部門について及び雇用されているすべての者について、適用する。
2 加盟国は、次の種類の雇用されている者をこの条約の全部又は一部の適用から除外することができる。
 (a) 特定の期間又は特定の仕事のための雇用契約に基づいて雇用されている労働者
 (b) 試用期間中の労働者又は雇用に係る資格の取得期間中の労働者。ただし、これらの期間は、あらかじめ決定された合理的なものでなければならない。
 (c) 短期間臨時的に雇用されている者
3 特定の期間の定めのある雇用契約であつて、この条約に基づく保護を回避することを目的とするものが利用されることを防ぐための適当な保障を規定する。
4 必要な場合には、この条約に基づいて与えられる保護と少なくとも同等の保護を全体として与える特別の措置により雇用条件が規制される種類の雇用されている者をこの条約又はその一部の規定の適用から除外するための措置を、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはそれらの団体との協議の上、権限のある機関により又は各国における適当な機構を通じてとることができる。
5 必要な場合には、関係労働者の特別の雇用条件又は関係労働者を雇用する企業の規模若しくは性質に照らし重要なかつ特殊な問題を有する他の限られた種類の雇用されている者をこの条約又はその一部の規定の適用から除外するための措置を、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはそれらの団体との協議の上、権限のある機関により又は各国における適当な機構を通じてとることができる。
6 この条約を批准する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従つて提出するこの条約の適用に関する最初の報告において、4及び5の規定に基づいて除外された種類の労働者をその除外の理由を付して記載するものとし、その後の報告において、そのような種類の労働者に関する法令及び慣行の状況並びにそのような種類の労働者についてこの条約が実施されている範囲又は実施される予定の範囲を明示する。

第 三 条

 この条約の適用上、「終了」及び「雇用の終了」とは、使用者の発意による雇用の終了をいう。

第 二 部 一般的適用の基準

A 終了の正当性

第 四 条

 労働者の雇用は、当該労働者の能力若しくは行為に関連する妥当な理由又は企業、事業所若しくは施設の運営上の必要に基づく妥当な理由がない限り、終了させてはならない。

第 五 条

 特に、次の事項は、終了の妥当な理由とはならない。
 (a) 労働組合員であること又は労働時間外に若しくは使用者の同意を得て労働時間内に労働組合活動に参加したこと。
 (b) 労働者代表に就任しようとすること又は労働者代表の資格において行動すること若しくは行動したこと。
 (c) 法令の違反を理由として使用者を相手方とする苦情の申立てを行い若しくは使用者を相手方とする手続に参加したこと又は権限のある行政機関に提訴したこと。
 (d) 人種、皮膚の色、性、婚姻、家族的責任、妊娠、宗教、政治的意見、国民的出身又は社会的出身
 (e) 出産休暇の間の休業

第 六 条

1 疾病又は負傷による一時的な休業は、終了の妥当な理由とはならない。
2 一時的な休業の定義、診断書が必要とされる範囲及び1の規定の適用を制限する可能性は、第一条に定める実施方法により決定される。

B 終了前又は終了時の手続

第 七 条

 労働者の行為又は業務遂行に関連する理由による雇用の終了は、当該労働者が自己についての申立てに対し自己を弁護する機会を与えられる前には、行つてはならない。ただし、使用者がその機会を与えることが合理的には期待し得ない場合は、この限りでない。

C 終了に対する提訴の手続

第 八 条

1 自己の雇用を不当に終了されたと認める労働者は、その終了について、裁判所、労働裁判所、仲裁委員会、仲裁人等の公平な機関に提訴する権利を有する。
2 1の規定の適用は、終了が権限のある機関により承認された場合には、国内の法令及び慣行に従つて変更することができる。
3 労働者は、雇用の終了について提訴する権利を自己の雇用の終了の後合理的な期間内に行使しなかつた場合には、当該権利を放棄したとみなすことができる。

第 九 条

1 前条に規定する機関は、終了について示された理由及び当該案件に関係のある他の事情を審査しかつその終了が正当なものであつたかなかつたかを決定する権限を与えられる。
2 終了が正当なものでなかつたことを挙証する責任を労働者のみが負わないようにするため、第一条に定める実施方法は、次のいずれか又は双方の可能性について規定する。
 (a) 第四条に規定する終了の妥当な理由のあることを挙証する責任が使用者にあること。
 (b) 前条に規定する機関が、当事者により提出された証拠を考慮した上、国内の法令及び慣行に基づく手続に従つて終了の理由についての決定を行う権限を与えられること。
3 前条に規定する機関は、企業、事業所又は施設の運営上の必要に基づく理由によるとされた終了の場合には、その終了が実際にそのような理由によるものであつたかなかつたかを決定する権限を与えられる。ただし、当該機関が、そのような理由が当該終了を正当とするため十分なものであるかないかを決定する権限を与えられる範囲は、第一条に定める実施方法により決定される。

第 十 条

 第八条に規定する機関は、終了が正当でないと認める場合において、その終了の無効の宣言又は当該労働者の復職についての命令若しくは提案につき、国内の法令及び慣行により、権限を与えられておらず又は実行可能であると認めないときは、適当な補償の支払又は適当と認められる他の救済を命ずる権限を与えられる。

D 予告期間

第 十 一 条

 雇用が終了されることとなる労働者は、合理的な予告期間を与えられ又は予告期間に代わる補償を受ける権利を有する。ただし、当該労働者が、重大な非行、すなわち、当該労働者を当該予告期間中引き続き雇用することを使用者に要求することが合理的でないような性質の非行を犯したとされる場合は、この限りでない。

E 離職手当その他の収入保障

第 十 二 条

1 雇用を終了された労働者は、国内の法令及び慣行に従つて次のいずれかのものを受ける権利を有する。
 (a) 使用者により直接支払われ又は使用者の拠出により設立された基金により支払われる離職手当その他の離職給付(その額は、特に勤務期間及び賃金水準に基づくものでなければならない。)
 (b) 失業保険若しくは失業扶助又は他の形式の社会保障からの給付(例えば、老齢給付、疾病給付)。ただし、これらの給付は、当該給付の通常の条件に従う。
 (c)  (a)及び(b)に規定する手当又は給付の組合せ
2 失業保険又は一般的適用範囲を有する制度に基づく失業扶助に係る資格条件を満たしていない労働者は、1(b)の規定に基づく失業給付を受けていないことのみを理由として1(a)に規定する手当又は給付を支給されることを要求することはできない。
3 1(a)に規定する手当又は給付を受ける権利の喪失であつて重大な非行による終了の場合におけるものについては、第一条に定める実施方法により措置を定めることができる。

第 三 部 経済的、技術的若しくは構造的理由又はこれと類似の理由による雇用の終了に関する補足規定

A 労働者代表の協議

第 十 三 条

1 使用者は、経済的、技術的若しくは構造的性格又はこれと類似の性格の理由による終了を計画する場合には、次のことを行う。
 (a) 計画した終了の理由、影響を受けるおそれのある労働者の数及び種類並びに終了が実施される予定期間を含む関連情報を適切なときに関係のある労働者代表に提供すること。
 (b) 終了を回避し又は最小にするための措置及び関係のある労働者に対する終了の不利な影響を軽減するための措置(代わりの雇用を見つけることを含む。)に関する協議のための機会を、国内の法令及び慣行に従つてできる限り早期に関係のある労働者代表に与えること。
2 1の規定は、第一条に定める実施方法により、雇用の終了が計画されている労働者の数が少なくとも一定の数又は労働力の一定の比率である場合についてのみ適用するようにすることができる。
3 この条の適用上、「関係のある労働者代表」とは、千九百七十一年の労働者代表条約に基づき、国内の法令又は慣行により認められる労働者代表をいう。

B 権限のある機関に対する通告

第 十 四 条

1 使用者は、経済的、技術的若しくは構造的理由又はこれと類似の性格の理由による終了を計画する場合には、国内の法令及び慣行に従い、できる限り早期に権限のある機関に通告し並びに関連情報(終了の理由、影響を受けるおそれのある労働者の数及び種類並びに終了が実施される予定期間を記載した文書を含む。)を提供する。
2 国内法令は、1の規定を、雇用の終了が計画されている労働者の数が少なくとも一定の数又は労働力の一定の比率である場合についてのみ適用するようにすることができる。
3 使用者は、1に規定する終了を実施する前、国内法令により定められる最低期間内に、その終了を権限のある機関に通告する。

第 四 部 最終規定

第 十 五 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 六 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 七 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 十 八 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 九 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 二 十 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 二 十 一 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十七条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 二 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。