1987年の船員福祉条約(第163号)

ILO条約 | 1987/10/08

海上及び港における船員の福祉に関する条約(第163号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百八十七年九月二十四日にその第七十四回会期として会合し、
 千九百三十六年の港に於ける海員福利勧告及び千九百七十年の船員厚生勧告の規定を想起し、
 前記の会期の議事日程の第二議題である海上及び港における船員の福祉に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百八十七年の船員福祉条約と称することができる。)を千九百八十七年十月八日に採択する。

第 一 条

1 この条約の適用上、
 (a) 「船員」とは、資格のいかんを問わず、海上航行船舶(軍艦を除くものとし、公有であるか私有であるかを問わない。)に雇い入れられる者をいう。
 (b) 「福祉施設及びサービス」とは、福祉、教養、レクリエーション及び情報のための施設及びサービスをいう。
2 加盟国は、代表的な船舶所有者団体及び船員団体との協議の後、その領域内で登録された船舶が、船舶内における福祉施設及びサービスに関するこの条約の規定の適用上海上航行船舶に該当するかを、国内法令により決定する。
3 権限のある機関は、代表的な漁船所有者団体及び漁船員団体との協議の後、実行可能と認める限り、この条約の規定を商業海洋漁業に適用する。

第 二 条

1 この条約の適用を受ける加盟国は、港及び船舶内において船員のために適当な福祉施設及びサービスの提供を確保することを約束する。
2 加盟国は、この条約の規定に従い提供される福祉施設及びサービスに資金を調達するための必要な措置をとることを確保する。

第 三 条

1 加盟国は、船員の国籍、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的意見及び社会的出身並びに船員が雇い入れられている船舶が登録されている国のいかんにかかわらず、すべての船員に当該国内の適当な港において福祉施設及びサービスを提供することを確保することを約束する。
2 加盟国は、代表的な船舶所有者団体及び船員団体との協議の後、どの港がこの条の目的に適する港であるかを決定する。

第 四 条

 加盟国は、自国の領域内において登録されているあらゆる海上航行船舶(公有であるか私有であるかを問わない。)に、乗り組んでいるすべての船員のために福祉施設及びサービスを提供することを確保することを約束する。

第 五 条

 福祉施設及びサービスが、海運業における技術上、運航上及びその他の進歩による船員の必要の変化に照らして適切なものであることを確保するため頻繁に検討する。

第 六 条

 加盟国は、次のことを約束する。
 (a) この条約の適用を確保するために他の加盟国と協力すること。
 (b) 海上及び港における船員の福祉の増進に従事し、及び関心を有する関係者間の協力を確保すること。

第 七 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 八 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 九 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 十 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 一 条

 国際労働事務局は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 二 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 三 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第九条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 四 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。