1990年の夜業条約(第171号)

ILO条約 | 1990/06/26

夜業に関する条約(第171号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十年六月六日にその第七十七回会期として会合し、
 児童及び年少者の夜業に関する国際労働条約及び国際労働勧告の規定、特に、千九百四十六年の年少者夜業(非工業的業務)条約及び千九百四十六年の年少者夜業(非工業的業務)勧告、千九百四十八年の年少者夜業(工業)条約(改正)、並びに千九百二十一年の児童及び年少者夜業(農業)勧告の規定に留意し、
 女子の夜業に関する国際労働条約及び国際労働勧告の規定、特に、千九百四十八年の夜業(女子)条約(改正)及び千九百九十年の同条約の議定書、千九百二十一年の女子夜業(農業)勧告並びに千九百五十二年の母性保護勧告の5の規定に留意し、
 千九百五十八年の差別(雇用及び職業)条約の規定に留意し、
 千九百五十二年の母性保護条約(改正)の規定に留意し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である夜業に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百九十年の夜業条約と称することができる。)を千九百九十年六月二十六日に採択する。

第 一 条

 この条約の適用上、
 (a) 「夜業」とは、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上、権限のある機関によって又は労働協約によって決定される七時間以上の継続する間(午前零時から午前五時までの間を含む。)に行われるすべての労働をいう。
 (b) 「夜業労働者」とは、自己の職務のために、一定の限度を超える相当多くの時間の夜業に従事しなければならない被用者をいう。この限度は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上、権限のある機関によって又は労働協約によって定められる。

第 二 条

1 この条約は、農業、牧畜業、漁業、海上運送業及び内水航行の事業のために雇用される者を除くすべての被用者に適用する。
2 この条約を批准する加盟国は、この条約を限定された種類の労働者に適用することにより重要性を有する特別の問題を引き起こす場合には、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上、これらの労働者を条約の適用範囲から全面的に又は部分的に除外することができる。
3 2に基づき認められる措置をとる各加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条に基づくこの条約の適用に関する報告の中で、適用を除外された特定の労働者の種類及び適用の除外の理由を明示し、また、この条約の規定をかかる労働者に漸進的に拡大するためにとったすべての措置を記述する。

第 三 条

1 夜業の性質から必要とされる夜業労働者のための特別の措置(少なくとも第四条から第十条までに定める措置を含む。)は、夜業労働者の健康を保護し、夜業労働者が家族的責任及び社会的責任を果たすことを援助し、職業上の昇進のための機会を提供し及び夜業労働者に対し適切に補償するためにとられる。この措置は、安全及び母性保護の分野においても夜業に従事するすべての労働者のためにとられる。
2 1の措置は、漸進的に適用することができる。

第 四 条

1 労働者は、次の場合には、自己の請求により、健康状態についての評価を無料で受ける権利及び自己の職務に関係する健康上の問題を減少させ又は回避する方法についての助言を受ける権利を有する。
 (a) 夜業労働者として職務に就く前
 (b) その職務に就いている間において一定の間隔をおいている場合
 (c) その職務に就いている間に、夜業に従事していることによって生じた健康上の問題を経験した場合
2 健康状態についての評価の結果は、夜業に不適応であると判明した場合を除くほか労働者の同意なくして本人以外の者に伝達され及びその労働者が不利となるように使用されてはならない。

第 五 条

 適当な応急手当の便宜(労働者が、必要な場合には適当な手当を受けられる場所に速やかに移されることが可能となる措置を含む。)は、夜業に従事する労働者のための利用に供される。

第 六 条

1 健康上の理由により夜業に不適応であると認められた夜業労働者は、実行可能なときにはいつでも、自己が適応する類似の業務に配置転換される。
2 これらの労働者は、1の業務への配置転換が実行可能でない場合には、労働すること又は雇用を確保することができない他の労働者と同一の給付を与えられる。
3 一時的に夜業に不適応であると認められた夜業労働者は、解雇又は解雇の予告について、健康上の理由により労働することができない他の労働者と同一の保護を受ける。

第 七 条

1 夜業に代わるものを利用できない場合には夜業に従事することが要求されるであろう女子労働者に対しては、次の期間について夜業に代わるものを利用できることを確保するための措置をとる。
 (a) 出産予定日前の少なくとも八週間を含む産前産後の少なくとも十六週の期間
 (b) 母親又は子の健康のために必要であることを明示する健康証明書が提出されている次の追加的な期間
  (i) 妊娠中
  (ii) (a)に基づいて定める産後の期間を超える特定の期間。その長さについては、権限のある機関が最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上決定する。
2 1の措置には、可能な場合の昼間の労働への配置転換、社会保障給付の支給又は母性休暇の延長を含むことができる。
3 1の期間においては、
 (a) 女子労働者は、妊娠又は出産に関連しない正当な理由に基づく場合を除き、解雇され又は解雇の予告を受けない。
 (b) 女子労働者の所得は、適当な生活水準に従って本人及びその子の生活の維持に十分な水準に維持される。この所得の維持は、2に掲げる措置、他の適当な措置又はこれらの措置の組合せによって確保することができる。
 (c) 女子労働者は、通常の夜業の職務に付随する地位、先任権及び昇進の機会に関する利益を失わない。
4 この条の規定は、母性休暇に関連する保護及び利益を減少させる効果をもたない。

第 八 条

 労働時間、給与又は類似の給付の形態の夜業労働者に対する補償については、夜業の性質を認識したものでなければならない。

第 九 条

 夜業労働者及び必要がある場合には夜業に従事する労働者には、適当な社会的な便益が提供される。

第 十 条

1 使用者は、夜業労働者の業務を必要とする勤務計画を導入するに当たっては、必要とされる職業上の健康のための措置及び社会的な便益について並びにその勤務計画の詳細及び事業場とその従業員とに最も適する夜業の編成の形態の詳細について、関係のある労働者の代表者と協議する。夜業労働者を雇用する事業場においては、この協議を定期的に行う。
2 この条の適用上、「労働者の代表者」とは、千九百七十一年の労働者代表条約に従って、国内法又は国内慣行により認められる労働者の代表者をいう。

第 十 一 条

1 この条約の規定は、法令、労働協約、仲裁裁定、判決若しくはこれらの手段の組合せによって又は国内事情及び国内慣行に適する他の方法によって実施することができる。他の手段により実施しない場合には、この条約の規定は法令によって実施する。
2 この条約の規定を法令によって実施する場合には、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と事前に協議する。

第 十 二 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 三 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 四 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 十 五 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 六 条

 国際労働事務局は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 七 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 八 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十四条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 九 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。