1996年の在宅形態の労働条約(第177号)

ILO条約 | 1996/06/20

在宅形態の労働に関する条約(第177号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十六年六月四日にその第八十三回会期として会合し、
 労働条件について一般的に適用される基準を定める多くの国際労働条約及び国際労働勧告が在宅形態の労働者について適用することができることを想起し、
 在宅形態の労働を特徴づける特別の事情がこれらの条約及び勧告の在宅形態の労働者についての適用を改善し並びに在宅形態の労働の特殊な性質を考慮に入れた基準によりこれらの条約及び勧告を補足することが望ましいことに留意し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である在宅形態の労働に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百九十六年の在宅形態の労働条約と称することができる。)を千九百九十六年六月二十日に採択する。

第 一 条

 この条約の適用上、
 (a) 「在宅形態の労働」とは、在宅形態の労働者と称される者によって行われる次の労働をいう。
   (i)  自宅又は自ら選択する建物(使用者の作業場を除く。)における労働
   (ii) 報酬のための労働
   (iii) 使用される設備、材料又は他の機材の提供者のいかんを問わず、使用者が特定する製品又はサービスをもたらす労働
     ただし、在宅形態の労働者が国内法令又は判決により独立した労働者とみなされるために必要な程度の自律性及び経済的独立性を有する場合は、この限りでない。
 (b) 被用者の地位を有する者が被用者として通常の作業場でなく単に自宅において随時労働を行う場合は、この条約に規定する在宅形態の労働者とはならない。
 (c) 「使用者」とは、直接に又は仲介者(仲介者が国内法令に規定されているか否かを問わない。)を通じて、自らの事業活動に従い在宅形態の労働を割り当てる自然人又は法人を意味する。

第 二 条

 この条約は、前条に定義する在宅形態の労働を行うすべての者について適用する。

第 三 条

 この条約を批准した加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体並びに、存在する場合には、在宅形態の労働者に関係のある団体及び在宅形態の労働者の使用者団体と協議の上、在宅形態の労働者の状況を改善することを目的とする在宅形態の労働に関する国の政策を策定し、実施し及び定期的に検討する。

第 四 条

1 在宅形態の労働に関する国の政策は、在宅形態の労働の特殊な性質及び、適当な場合には、企業で行われる同一又は類似の種類の労働について適用される条件を考慮し、在宅形態の労働者と他の賃金労働者との間の待遇の均等をできる限り促進する。
2 待遇の均等は、特に、次の事項に関して促進する。
 (a) 在宅形態の労働者が自ら選択する団体を設立し又はこれに加入し及び当該団体の活動に参加する権利
 (b) 雇用及び職業における差別からの保護
 (c) 職業上の安全及び健康の分野における保護
 (d) 報酬
 (e) 法令上の社会保障による保護
 (f) 訓練を受ける機会
 (g) 雇用又は労働が認められるための最低年齢
 (h) 母性保護

第 五 条

 在宅形態の労働に関する国の政策は、法令、労働協約、仲裁裁定又は国内慣行に適合するその他の適当な方法によって実施する。

第 六 条

 労働統計ができる限り在宅形態の労働者を含むように適当な措置をとる。

第 七 条

 労働における安全及び健康に関する国内法令は、在宅形態の労働の特殊な性質を考慮に入れて、在宅形態の労働について適用し並びに一定の種類の労働及び特定の物質の使用を安全及び健康の理由により在宅形態の労働において禁止することができる条件を設定する。

第 八 条

 在宅形態の労働における仲介者の利用が認められる場合には、使用者及び仲介者のそれぞれの責任は、国内慣行に従い、法令又は判決によって決定する。

第 九 条

1 国内法及び国内慣行に適合する監督制度は、在宅形態の労働に適用される法令の遵守を確保する。
2 これらの法令の違反については、適正な救済措置(適当な場合には刑罰を科することを含む。)を定め、効果的に適用する。

第 十 条

 この条約は、在宅形態の労働者について適用される他の国際労働条約の一層有利な規定に影響を及ぼすものではない。

第 十 一 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 ニ 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 三 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 十 四 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 五 条

 国際労働事務局は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 六 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 七 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十三条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 八 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。