ILO Newsletter「ビジネスと人権」

責任ある調達に取り組む~ディーセント・ジョブの創出に向けて

ウズベキスタンの綿花製品は、綿花収穫時に児童労働や強制労働が行われていることを理由に不買運動が実施されてきました。2022年3月、国際人権団体コットンキャンペーンにより、不買運動の終了が決定されました。改善のさらなる加速に向けて、ステークホルダーによる協働活動の継続と、企業による責任ある調達に取り組む姿勢が必要です。

記事・論文 | 2022/05/11


国際労働機関(ILO)は、コットンキャンペーン(綿花生産における強制労働の廃止に取り組む、労働組合、ブランド・小売業協会、責任ある機関投資家、学識者からなる国際人権団体)による、ウズベキスタンの綿花製品における世界規模のボイコット終了の決定に際し、ウズベキスタン政府、労働者・使用者団体による産業構造改革の功績に賛辞を表明しました。[1]

不買運動は、ウズベキスタンの綿花収穫時に児童労働や強制労働が行われていることを理由に、2011年から実施されました。331の国際的なブランドや小売業者がこのキャンペーンに参加しました。この不買運動が2022年3月10日に終了しました。

「ウズベキスタンの2021年綿花収穫期第三者モニタリングILO報告」は、ウズベキスタンにおいて、2021年の綿花収穫時に組織的な強制労働と児童労働が根絶されたことを認したと報告しました。

ILOは2013年からウズベキスタン政府と協力し、綿花生産部門における農業・経済慣行の改革に取り組んできました。考え方や行動の変容及び法律と実践の両方で児童労働と強制労働を容認できないようにすることを目指し、活動が行われてきました。

また、綿花生産部門における社会対話と団体交渉の慣行の確立にも進展がありました。2021年には、市民社会の代表が研修を受け、綿花の収穫に参加しました。

ILOは、国際パートナー、ウズベキスタンの政労使、市民社会代表、その他のステークホルダーと共に、ウズベキスタンにおける組織的な児童労働と強制労働の廃止、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進に向け、協働的な活動を実施しました。

その結果、7年前にウズベキスタンの綿花生産部門の改革が始まって以来、推計で200万人の子どもが児童労働から、50万人の大人が強制労働から解放されたことが報告されました。[2]

報告書によると、ウズベキスタンの生産年齢人口の8人に1人が綿花の収穫に従事しており、これは世界最大級の人材活用促進事業と言われています。その多くを女性労働者が占めており、大半が農村部の出身者です。

ガイ・ライダーILO事務局長は、「この7年間協調して行ってきた活動が実を結び、ウズベキスタンの綿花に組織的な児童労働と組織的な強制労働がないことが示されました。ウズベキスタンにおけるバリューチェーンの向上という目標を実現し、繊維・衣料品製造業において、多くの人に、ディーセントかつ完全な雇用を創出するチャンスが到来した」と述べています。

ウズベキスタンは世界の綿花生産において、第6位を占めています。シャフカト・ミルジヨエフ大統領の主導の下、同国はかつての農業経済モデルの近代化と、それまで蔓延していた、毎年の綿花収穫における児童労働や強制労働の撤廃に向けて、改革に着手してきました。

「われわれは国民と経済のために、この改革に取り組んできました」と述べるのは、ウズベキスタンで女性初の最高議会上院議長であり、強制労働・人身取引撤廃国家委員会委員長を務めるタンジラ・ノルバエワ氏です。ノルバエワ氏は、次のように語っています。

「当初、政府は綿花栽培における強制労働の排除を目指していましたが、それだけにとどまりませんでした。私たちは、労働者の権利に関する意識向上キャンペーンを通じて、考え方や行動変容に向けてたゆまぬ努力を続けてきました。児童労働と強制労働を犯罪として取り締まりました。労働監督制度を強化し、市民社会と対話を重ね、共通認識と解決策を見出したのです」。

ILOの第三者モニタリングプロジェクト(TPM)のチーフテクニカルアドバイザーであるジョナス・アストラップ氏は、ウズベキスタンにおける労働市場の民主化を示す新しい動きを確認したと述べました。

「最低賃金については初めて政府だけでなく、ウズベキスタンの労働組合や使用者とも協議が行われました。また、草の根レベルで団体交渉が行われるようになったことも確認されました。綿花収穫の労働者らは、農家や繊維産業育成機関と非公式の賃金交渉を行うようになり、その結果、多くの労働者が最低賃金を大幅に上回る賃金を受け取るようになったのです」。

ILOと共に綿花の収穫状況を数年間監視してきた人権活動家シュクラット・ガニエフ氏は、ディーセント・ジョブの創出に焦点を移す必要性を感じています。「ウズベキスタンの人々は、まともな賃金と良好な労働条件の仕事が必要です。そのためには、国際的なブランドや小売業者がウズベキスタンからの責任ある調達に取り組むことが必要となるのです」。

TPMプロジェクトは、欧州連合、米国国務省、スイス及びドイツ政府からの支援を受けて実施されています。本プロジェクトは今年5月に終了しました。

参照
[1] ILO本部ウェブサイト:ILO welcomes lifting of Cotton Campaign boycott of Uzbekistan
https://www.ilo.org/europe/info/news/WCMS_839591/lang--en/index.htm

[2] ILO本部ウェブサイト:“Uzbek cotton is free from systemic child labour and forced labour”
https://www.ilo.org/global/about-the-ilo/newsroom/news/WCMS_838396/lang--ja/index.htm