第110回 ILO総会

「戦争に訴える者は社会正義を否定」 事務局長が開会スピーチ

記者発表 | 2022/05/27
ILO年次総会開会式に臨むILO事務局長ガイ・ライダー=2022年5月27日、ジュネーブ © ILO
第110回ILO年次総会が5月27日、開幕しました。加盟国の政府、使用者、労働者のそれぞれの代表が参加し、対面とバーチャルを組み合わせたハイブリッド式で行われます。各委員会は 同 30 日に始まり、本会議は 6 月 6 日から 同11 日までの予定です。

開会式でILO事務局長のガイ・ライダーは「持続的な平和は社会正義に依存し、社会正義の達成は平和に依存する。戦争という手段に訴える者は社会正義を否定する。そして、社会正義を妨害する者は、平和を危険にさらす」と話し、法の支配を守る必要性を訴えました。

労働市場における新型コロナウイルス感染症拡大からの回復は不均等で、中にはぜい弱な国もあります。事務局長は、ロシアのウクライナ侵攻の影響を念頭に、世界経済にとって「より悪いことが起こる可能性が非常に高い」と警鐘を鳴らし、「食料、エネルギー、金融の面で世界的な危機を引き起こしている」「国際協力に相当な、おそらく前例のないほどの負担がかかっている」と話しました。
さらに「軍事的な侵略による国連憲章の違反は容認されず、はびこることなどあってはならない。同様に、国際労働基準の違反も放置されてはならない」とし、「多国間主義(ここでは三者構成主義との同盟関係)が実際に機能すること」を示そう、と促しました。

事務局長はまた、事務局長報告のThe least developed countriesを引きつつ、「後発開発途上国(the least developed countries)は取り残される危険性が最も高い」と述べ、「我々が持続可能な開発のための2030アジェンダに真剣に取り組むのであれば、これらの後発開発途上国の課題に真剣に取り組まなければならない。アジェンダが実現するかどうかは何よりもそこで決まるからだ」と力を込めました。

さらに1998年の「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」に「安全で健康的な労働条件」を含むことに係る検討をはじめとする議題を歓迎しつつ、毎年300万人が労働に関連する事故や病気によって命を落としていることに言及。雇用に起因する病気や疾病、けがから労働者を保護するというILOの明確な責任を強調しました。

今総会では、新たな国際労働基準の作成を視野に、見習い研修制度に関する初の討議も行う予定です。各委員会では、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、社会的連帯経済(SSE)について議論し、公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言のフォローアップ手続きに基づく雇用に関する反復討議が行われます。6 月 10 日には仕事の世界サミットのハイレベル会合も開催されます。

総会議長には、アルゼンチンのClaudio Moroni労働・雇用・社会保障相が、副議長には、カタールからAli Samikh Al-Marri(政府代表)、ブラジルからAlexandre Furlan(使用者代表)、ペルーからPaola del Carmen Egúsquiza Granda(労働者代表)がそれぞれ選出されました。

以上はジュネーブ発英文記者発表 の抄訳です。