理事会

第344回ILO理事会ハイライト

記者発表 | 2022/03/30
第344回ILO理事会議場 © M. Crozet / ILO

 2022年3月25日に閉幕した第344回ILO理事会では数々の重要な決定が行われました。ILO公式会議・文書・渉外局のディミトリナ・デミトロワ次長は今会期のハイライトとして以下の点を挙げています。

第11代事務局長選出

 2012年からその任にあったガイ・ライダー現事務局長(英国)の任期が2022年9月末で満了することから、2022年3月25日に実施された選挙の結果、第11代ILO事務局長としてトーゴ出身のジルベール・ウングボ国際農業開発基金(IFAD)総裁が選出されました。初のアフリカ出身事務局長は2022年10月1日に着任します。

ロシア連邦によるウクライナ侵攻

 理事会は、2022年3月22日に、民間人の死傷や難民の状況に関する報告に重大な懸念を表明しつつ、ウクライナに対する攻撃を即時かつ無条件に止めるようロシア連邦に呼びかける決議を採択しました。「ILOに付託された任務の観点から見たロシア連邦による対ウクライナ攻撃に関する決議」は、自宅、職場、会社、地域社会、故国を逃れることを強いられている国内避難民及び難民が膨大な規模に上ることや自らの命を危険にさらしている労働者及び使用者に対する深刻な影響を認め、労働者、使用者、民主的に選出された政府というILOを構成する三者を支えるために付託された任務の枠内で事業計画を策定することをILOに求めています。また、モスクワにあるILO東欧・中央アジア・ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼国別事務所の管轄する他の全ての諸国に対するILOの技術協力を守護しつつ、ロシア連邦に対する技術支援を一時的に停止することも決定しました。さらに、ウクライナの状況を注視し、決議の適用に関する報告を2022年6月に開かれる第345回理事会に提出するよう求めています。

就労に係わる基本原則・権利に労働安全衛生が加わる可能性

 理事会は2022年5~6月に開かれる第110回ILO総会で、新たに労働安全衛生をILOの労働における基本原則・権利の枠組みに加えることを検討するための決議案の提案をILO事務局長にる指示しました。これは幅広い影響を及ぼす決定であり、総会で「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」の改正が採択された場合、全ての加盟国は現在宣言の対象になっている1)結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認、2)あらゆる形態の強制労働の禁止、3)児童労働の実効的な廃止、4)雇用及び職業における差別の排除という四つの分野と同じように同じ水準の公約をもって安全で健康的な労働条件を尊重、促進、実現する義務を負うことになります。1998年に採択されたこの宣言は、関連する条約の批准・未批准にかかわらず、加盟国にはこの労働における基本的な原則と権利を尊重、促進、実現する義務があると宣言しています。

仕事の世界における不平等

 理事会は2021年の第109回ILO総会で採択された仕事の世界における不平等に関する決議を受け、2022~27年を期間とする野心的な行動計画を採択し、実施のための手引きを示しました。事務局は2022年10~11月に開かれる第346回理事会における検討のために、不平等の防止・縮小に向けた包括的かつ総合的なILOの戦略を準備するよう求められました。

多国間協力の強化

 世界中から国家元首・政府首脳、国際機関及び多国間開発銀行のトップ、労使指導者の参加を得て、コロナ禍が社会経済にもたらしている結果に対する国際社会の対応の整合性と度合いを強め、より良い立て直しを図る具体的な行動が提案された「人間を中心に据えた回復に向けたグローバル・フォーラム(2022年2月22~24日)」の成功に留意した理事会は、多国間システム内での人間を中心に据えた回復を支える協力関係の強化や資金・資源のより良い配分や優先事項の設定を通じて機関間取り決めの最適化及び向上を目指す具体的な措置を提起しました。そして、2021年のILO総会で採択された「行動に対するグローバルな呼びかけ」の継続的な実施の一環として、機関間の取り決めの体系化及び高度化に向けて多国間システム内におけるILOの活動をさらなる後押しを決定しました。

基準適用

 理事会は2021年2月の軍事クーデター後に国際労働基準の不遵守が見られるミャンマーについて、民主的な機構と手続きの尊重に向けた進歩が見られないこと、深刻な人権及び労働者の権利侵害の継続、民間人に対する暴力の激化と強制労働の利用の増大を遺憾とし、同国に関する審査委員会の設置を決定しました。前回1997年に設置された審査委員会で検討された「1930年の強制労働条約(第29号)」に加え、今回は「1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)」の適用に係わる問題も審査します。

 「1947年の労働監督条約(第81号)」、第87号条約、「1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)」の不遵守に関する苦情が申し立てられているバングラデシュに関しては、未解決の問題に対処する行程表の実施状況を記した進捗報告が提出され、これに留意した理事会は、さらなる行動に関する決定を先送りして2022年11月の理事会にさらなる進展に関する報告を提出するよう政府に求めました。

 理事会はまた、「1928年の最低賃金決定制度条約(第26号)」、第87号条約及び「1976年の三者の間の協議(国際労働基準)条約(第144号)」といったILO条約の不遵守の苦情を検討するために2018年3月に設けられた審査委員会の勧告が実施されていないベネズエラの問題も検討しました。理事会は社会対話の場が設けられたことに留意しつつも、審査委員会の勧告の受諾を政府に改めて強く呼びかけ、政府との関与を続け、話し合いの場の機能に関する何らかの進展を2022年6月の第345回理事会に報告するよう事務局長に求めています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。