人間を中心に据えた回復に向けたILOグローバル・フォーラム

人間第一の回復に対する公約を新たにして閉幕

記者発表 | 2022/02/25
フォーラムの模様を1分強で紹介(英語・1分15秒)

 コロナ禍が社会と経済に与えている影響に対する国際社会による対応のレベルと整合性を高め、より良い立て直しに向けた具体的な行動を提案するために世界中から国家元首・政府首脳、国際機関及び多国間開発銀行のトップ、労使指導者を参集して2022年2月22日から開かれていたILOの「人間を中心に据えた回復に向けたグローバル・フォーラム」は、3日間の日程を終えて、人々を第一に置き、新型コロナウイルス危機によって危険なまでに悪化した不平等に取り組む回復を押し進める公約を新たにして24日に閉幕しました。

 フォーラムに参加した世界保健機関(WHO)、国連開発計画(UNDP)、イスラム開発銀行(IsDB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、アジア開発銀行(ADB)、雇用・社会的権利担当欧州委員、世界貿易機関(WTO)、世界銀行、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局、国連児童基金(UNICEF)、アフリカ開発銀行(AfDB)、国連食糧農業機関(FAO)、気候行動・金融担当国連特使からは、人間を中心に据えた回復という目標に対する公約が示されました。アルゼンチン、ベルギー、エジプト、ドイツ、インドネシア、ジャマイカ、モザンビーク、韓国、サモア、セネガル、スペイン、スイスの国家元首・政府首脳からも同じような支持が表明されました。

 フォーラムでは、包摂的な成長と働きがいのある人間らしい仕事普遍的社会的保護労働者保護と企業に対する下支え炭素中立性に向けた公正な移行といった、仕事の世界が直面している最も切迫した問題がテーマ別討議で取り上げられました。

 「富裕国が国内総生産(GDP)のずっと大きな割合を回復に投資しているのに対し、人の前に利潤を置く世界の金融制度の被害者である低所得国の多くは債務の悪循環に陥り、資金に飢えています。途上国が直面している仕事不足は巨大でなかなか解消されません」と、開会演説で指摘したアントニオ・グテーレス国連事務総長の言葉を借りると、経済と雇用の回復を脅かす国内及び国家間の「大分離」と表現される、コロナ禍が拡大した不平等には参加者の多くが言及しました。フォーラムを通じて、参加者からは行動の必要性、より良い立て直しに向けて国際社会が連帯して協働する必要性についての強いメッセージが発せられました。参加者の多くが、ILOの「行動に対するグローバルな呼びかけ」、国連事務総長の「共通の課題」、そして少なくとも4億人分の仕事を創出し、今は保護されていない40億人の男女や子どもに社会的保護を拡大するための投資を呼びかける、ILOと国連が推進する「仕事と社会的保護の世界的加速装置」が示す道筋に言及しました。

 フォーラムは最終日に新型コロナウイルス危機からの包摂的かつ持続可能で強靱な回復を達成する方法に関する議論を行って閉幕しました。ガイ・ライダーILO事務局長は閉会の挨拶で、「時に非常に残忍で非常に冷酷なやり方で」コロナ禍が持ち込んだ「仕事の世界に存在する極度の脆弱性と真の不平等」に光を当て、次のように述べました。「私たちの経済、この世界における強靱性の再構築を真剣に考える必要があります。それには統合的な政策策定手法が求められると思います。国際体系の各部が、他のどことも連携せずに、それぞれに付託された固有の任務に当たることには、実際ほとんど意味がないと思いますし、もちろんこれこそが政策整合の論理なのですから」。

 グローバル・フォーラムから生まれた多国間政策整合の主な成果には次のようなものがあります。

  • 「仕事と社会的保護の世界的加速装置」のための共通の行程表を作成し、「公式(フォーマル)化の道筋を育むグローバル・イニシアチブ」を開始・実施するUNDPとの新たなパートナーシップ
  • 労働者を精神衛生上のリスク及び職業性傷病からより良く保護し、職場を健康危機に対して備えることを目的とした保健医療部門と仕事の世界に関連する制度・機構のつながりの強化に向けたWHOとの協力強化
  • 男女平等、公正な移行、仕事のための気候行動などの分野における技術支援及びプロジェクトに関する協力強化を図るためにEBRDとの新たな枠組み協定を予定
  • 人間を中心に据えた回復を支援するIsDBとの新たな覚書を締結予定。若者の経済力強化、男女平等、危機下におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、南南・三角協力の醸成といった分野における協力を予定
  • 回復における国家間の「大分離」に対処するため、社会的支出を守り、優先させることをIMFが改めて公約
  • ADBの気候変動金融及び石炭火力発電所稼働停止活動を支援する、社会的保護制度能力及びデータ調和の改善に向けたADBとの協力体制強化
  • 公正移行及び生産性成長に関するOECDとの協力強化
  • 技能開発及び若者の就労といった分野におけるAfDBとの協力体制強化
  • 諸国の公正移行計画立案を支援する方向に向けたUNFCCCとの協力拡大
  • 普遍的社会的保護の達成に向けた歩みの確保を目指すUNICEFのILOを始めとする幅広い国連諸機関との関与の増大
  • ILOと共同議長を務める「持続可能な開発目標達成に向けた普遍的社会的保護グローバル・パートナーシップ(USP2030)」に対する世界銀行の強い公約表明

 そして、幅広い国々、機関から「仕事と社会的保護の世界的加速装置」に対し、強い支持が表明されました。この他の多国間パートナーも演説の中で人間を中心に据えた回復の様々な要素に言及しました。気候行動・金融担当国連特使は気候危機に取り組むには人間を中心に据えた移行が必要と強調しました。雇用・社会的権利担当欧州委員は、企業の持続可能性デュー・ディリジェンス指令案に付随して承認された、地球規模の公正な移行と持続可能な回復において、ILOの定めるディーセント・ワークの4本柱を手引きとして世界中でディーセント・ワークの普及に努めることを約す欧州連合(EU)の新たな通達の実施に注意を喚起しました。FAOは効率的、効果的、整合的なパートナーシップと世界的な連帯を通じて、強い社会的保護制度の構築に向けてさらなる財源を動員することを約しました。WTOは生活水準を高め、働きがいのある人間らしい仕事を創出し、人々に利する貿易が切に求められていると説きました。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。