水産養殖部門

ディーセント・ワークと持続可能なモデルを伴った水産養殖業は世界全体に食料を供給できよう

記者発表 | 2021/12/20

 水産養殖部門のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を阻む課題とその機会について話し合うために、政労使代表30人以上が参加して2021年12月13日からILOで開かれていた「農山漁村経済の文脈における水産養殖業の仕事の未来技術会合」は、今後数十年にわたり、成長する世界人口に対する食料供給に効果的に寄与する水産養殖業の秘める潜在力を育むには、持続可能な企業とその労働力のディーセント・ワークを促進する協調努力が求められるとする結論を採択して12月17日に閉幕しました。

 この数十年、農山漁村の多くの貧窮共同体における貧困と飢餓の削減において重要な貢献を行ってきた水産養殖業は、今日でもなお農山漁村の多くの労働者の重要な食料源・生活の糧であり続けています。水産養殖業の第一次生産従事者は少なくとも2,050万人を数え、このサプライチェーン(供給網)に沿ってさらに多くがこの産業に従事しています。

 世界人口及び環境圧力の増加によって、水産養殖業は、食と栄養の安全保障に係わる課題に持続可能な形で対処する潜在力を秘めたものとしてますます認識されるようになってきています。多くの途上国では、とりわけ農山漁村の貧困層のための企業開発や雇用創出、生計手段の多角化におけるその役割もますます評価されるようになってきています。水産養殖部門の持続可能性と成長を促進し、持続可能な開発、包摂的成長、ディーセント・ワークを前進させるその潜在力を育むには、この産業部門が直面している雇用・労働面の課題への対処に、より強く焦点を当てる必要があります。

 この産業の企業も労働者も新型コロナウイルスの世界的大流行の影響を感じています。低温閉鎖空間で長時間働く労働者、とりわけ加工作業従事者はウイルスに暴露する危険性が高く、生き残るために苦闘している企業の努力は労働時間の短縮や一時解雇といった手立てに反映されており、労働者とその家族の生計に影響を与えています。危機から学んだ教訓は水産養殖業、そしてより一般的な食料体系の持続可能性と強靱性を高める方向に向けた改革を奨励すべきです。

 会議の議長を務めたマグヌス・マグヌッソン・ノルズダール・アイスランド労働総同盟(ASI)主任弁護士は、「水産養殖業が包摂的な成長とより多くの人々のディーセント・ワーク機会に貢献することを確実にしたいと望むならば、持続可能な生産を可能にし、労働者がその就労に関わる権利を享受できるような環境と平等な地歩を形成する必要があります」と指摘しています。政府側副議長を務めたファティハ・アカル・トルコ政府代表も、「水産養殖業の持続可能で包摂的な成長は、沿岸・内陸両地域の多くの農山漁村共同体の所得と生活の糧を増大させるといった点でさらなる利益をもたらし、この過程で農山漁村の貧困緩和における政府の取り組みにも貢献することができるでしょう」と語っています。

 労働者側副議長を務めたクリスヤン・ブラガソン・ベルギー労働者代表は、現下のコロナ禍が悪化させたこの産業部門におけるディーセント・ワークの欠如の多くがこの事態発生のはるか以前から存在していたことに注意を喚起した上で、「すべての人に役立つ解決策を見出すカギを握るのは、結社の自由の尊重と団体交渉権の効果的な承認を基盤とした社会対話」と唱えています。使用者側副議長を務めたヘンリク・ムンテ・ノルウェー使用者代表は、「持続可能な企業の開発と生産性の向上、包摂的な労働市場の促進、技能開発、使用者団体を巻き込んだ適切な社会対話の仕組みといった、この産業部門の将来的な成長を駆動し、可能にする諸要素に焦点を当てた一貫性のある政策枠組み」を形成すべきと説いています。

 会議で採択された結論は、生産的な完全雇用とすべての人のディーセント・ワークを支えるこの産業部門の潜在力を活用する措置を政労使が講じるのを支援することによって、食と栄養の安全保障に貢献し、誰も置き去りにされないよう確保することが期待されます。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。