セミナー報告
ILO-JCA共催ウェビナー「社会的連帯経済でつながる。」
2021年12月16日(木)、国際労働機関 (ILO)駐日事務所と日本協同組合連携機構 (JCA) は、オンラインによるウェビナー「社会的連帯経済(SSE)でつながる。」を共催しました。イベントは日英同時通訳を介して開催され、国内外より200名近くが参加しました。
イベントでは、社会的連帯経済(SSE)をめぐる世界と日本における動向の紹介のため、ILOコンサルタントであるユルゲン・シュベットマン(Jürgen Schwettmann)氏、法政大学大学院連帯社会インスティテュート教授の伊丹謙太郎氏が講演しました。続いて、「地域における私たちの取り組みからSSEを考える」と題したパネルディスカッションでは、大里綜合管理株式会社 代表取締役 野老真理子氏、JCA 常務理事 青竹豊氏、公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 常務理事 兼松文子氏、株式会社ボーダレス・ジャパン 常深孝仁氏が参加し、それぞれの組織の取り組みについて紹介しました。SSEについて国内でも今後、さらなる議論が予想される中、様々な事例の紹介を交えながらこの概念への理解を深めるイベントとなりました。
イベント録画(オリジナル音声のみ)はこちら 質問への回答はこちら
イベント開始前と終了後には、ビデオ「アジアにおける社会的連帯経済の促進」を上映し、アジアにおけるILOによるSSEに関する取り組みを紹介しました。イベントの冒頭ではILO駐日事務所代表 高﨑真一の司会進行の下、ILO本部企業局協同組合ユニット長 シメル・エシムがビデオメッセージで、ILOによるSSEに関する取り組みと、来年2022年のILO総会におけるSSE一般討議など今後の活動の見通しについて説明しました。
次に、シュベットマン氏が「世界における社会的連帯経済(SSE)の潮流とILOの取組」と題し、SSEを取り巻く世界の状況について講演しました。未だ定義の確立されていない概念であるSSEの特徴について解説し、SSEが経済・社会・環境・人々のエンパワーメントにアプローチすること、SSEに関わる組織や事業体(SSEOEs)がディーセント・ワークにつながる働きかけを行うこと、SSEがインフォーマル経済とフォーマル経済の架け橋(Bridge)となることなどを説明しました。
続いて、伊丹謙太郎氏が、「日本における社会的連帯経済(SSE)の現在と未来を考える」と題した講演を行いました。SSEの意味をどのように捉えるべきという点や、日本におけるSSEの事例について詳しく説明しました。 伊丹氏は、日本におけるSSEを推進する上で象徴的なキーワードとして、近年積極的に用いられている「つながる(TSUNAGARU)」という言葉に言及しました。これまでの協同組合運動では共通のニーズを持った人々のつながり(bonding)によって運動を展開しましたが、今後のSSEに必要なのは異なる組織、人々がつながる(bridging)ことだと述べました。
【写真】伊丹氏による講演の様子
パネルディスカッション「地域における私たちの取り組みからSSEを考える」では、伊丹氏が講演で述べた日本におけるSSE事例の担い手である組織の代表者がパネリストとし、それぞれの団体の活動について話しました。大里綜合管理株式会社 代表取締役 野老真理子氏は、不動産会社でありながらも、就業時間内で地域活動を行い、社屋も地域住民の交流スペースとして活用することで、地域に根ざした活動に取り組む様子を紹介しました。JCA 常務理事 青竹豊氏は、協同組合の活動とSSEの関わりについて説明し、公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 常務理事 兼松文子氏は、官民のネットワークの連携により、政策提言や支援を行なっている点を解説しました。株式会社ボーダレス・ジャパン 常深孝仁氏は、ソーシャルビジネスを増やすことを目的とし、社会起業家の事業立ち上げから経営まで支援し、参画する企業の余剰利益を新しいソーシャルビジネスへの資金提供につなげていく「恩送りのエコシステム」といったプラットフォームの提供について説明しました。その後、パネリストが互いに質問し、それぞれの事業に関するディスカッションが行われました。パネリスト同士のやり取りを通じて、組織の形態は違っても、社会問題の解決や地域の人々のより良い生活のために、関係組織と連携しながら取り組む点、つまり共通する特徴として「つながり」が浮き彫りになりました。
【写真】パネルディスカッションの様子(大里綜合管理株式会社 代表取締役 野老真理子氏)
終盤では、数多く届いた質問のうち、時間の関係で3つに回答しました。労働者協同組合法における労働者性についてJCA青竹氏から回答し、法整備によりディーセント・ワークにつながる労働者性が確保されたとの見解を示しました。日本でSSEが市民権を持つために何が必要かという質問に対し、伊丹氏は、国際的な運動であるため海外の情勢を日本に伝えること、日本国内でSSEの優位性を示す実践を積み上げること、海外の運動と連携すること、政府の支援などを挙げました。最後の質問では、海外ではRIPESS(大陸間社会的連帯経済推進者ネットワーク)憲章のように理念、つまり夢が出発点となっているが、夢よりも目の前の社会問題に目が向きがちな日本がそのような国際的運動に合流するためには何が必要かという質問に対し、世界的な運動に合流する重要性を示唆しつつ、SSEを推進する立場としての夢をパネリストの方々が語りました。
【写真】パネルディスカッションの様子(日本協同組合連携機構(JCA) 常務理事 青竹豊氏)
【写真】パネルディスカッションの様子(公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 常務理事 兼松文子氏)
【写真】パネルディスカッションの様子(株式会社ボーダレス・ジャパン 常深孝仁氏)
また、シュベットマン氏が総括コメントを述べ、SSEはインフォーマル・フォーマル経済をつなぐだけでなく、社会と経済、地域と世界、地方と都市部など様々なものが「TSUNAGARU」架け橋になると話しました。SSEが様々な人々に利するものであり、SDGsの実現につながるという認知が広まることを願うと共に、2022年の第110回ILO総会一般討議で日本の政労使が主導的な役割を果たすことへの期待を示しました。
【写真】シュベットマン氏による総括コメント
閉会の辞では、共催者を代表しJCA 代表理事専務 比嘉政浩氏が、今後も社会における様々な実践について、広い視野を持ちながら学び合いたいという意向を語りました。
【写真】JCA 代表理事専務 比嘉政浩氏
尚、本ウエビナーにはチャットや登録時にたくさんの質問やコメントが寄せられ、盛況の中でイベントを終えることができました。いただいた質問は、近日中に駐日事務所のサイトなどを通じて回答する予定です。
【登壇者】
国際労働機関(ILO)コンサルタント ユルゲン・シュベットマン氏
法政大学大学院連帯社会インスティテュート教授 伊丹謙太郎氏
大里綜合管理株式会社 代表取締役 野老真理子氏
日本協同組合連携機構(JCA) 常務理事 青竹豊氏
公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 常務理事 兼松文子氏
株式会社ボーダレス・ジャパン 常深孝仁氏
日本協同組合連携機構(JCA)代表理事専務 比嘉政浩氏
国際労働機関(ILO)本部企業局協同組合ユニット長 シメル・エシム (ビデオ・メッセージ)
国際労働機関(ILO)駐日代表 高﨑真一
【パネリスト所属団体のHP】
大里綜合管理株式会社 https://www.ohsato.co.jp
日本協同組合連携機構(JCA) https://www.japan.coop
公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 http://www.tokushima-rofuku.net
株式会社ボーダレス・ジャパン https://www.borderless-japan.com
イベントでは、社会的連帯経済(SSE)をめぐる世界と日本における動向の紹介のため、ILOコンサルタントであるユルゲン・シュベットマン(Jürgen Schwettmann)氏、法政大学大学院連帯社会インスティテュート教授の伊丹謙太郎氏が講演しました。続いて、「地域における私たちの取り組みからSSEを考える」と題したパネルディスカッションでは、大里綜合管理株式会社 代表取締役 野老真理子氏、JCA 常務理事 青竹豊氏、公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 常務理事 兼松文子氏、株式会社ボーダレス・ジャパン 常深孝仁氏が参加し、それぞれの組織の取り組みについて紹介しました。SSEについて国内でも今後、さらなる議論が予想される中、様々な事例の紹介を交えながらこの概念への理解を深めるイベントとなりました。
イベント録画(オリジナル音声のみ)はこちら 質問への回答はこちら
次に、シュベットマン氏が「世界における社会的連帯経済(SSE)の潮流とILOの取組」と題し、SSEを取り巻く世界の状況について講演しました。未だ定義の確立されていない概念であるSSEの特徴について解説し、SSEが経済・社会・環境・人々のエンパワーメントにアプローチすること、SSEに関わる組織や事業体(SSEOEs)がディーセント・ワークにつながる働きかけを行うこと、SSEがインフォーマル経済とフォーマル経済の架け橋(Bridge)となることなどを説明しました。
続いて、伊丹謙太郎氏が、「日本における社会的連帯経済(SSE)の現在と未来を考える」と題した講演を行いました。SSEの意味をどのように捉えるべきという点や、日本におけるSSEの事例について詳しく説明しました。 伊丹氏は、日本におけるSSEを推進する上で象徴的なキーワードとして、近年積極的に用いられている「つながる(TSUNAGARU)」という言葉に言及しました。これまでの協同組合運動では共通のニーズを持った人々のつながり(bonding)によって運動を展開しましたが、今後のSSEに必要なのは異なる組織、人々がつながる(bridging)ことだと述べました。

パネルディスカッション「地域における私たちの取り組みからSSEを考える」では、伊丹氏が講演で述べた日本におけるSSE事例の担い手である組織の代表者がパネリストとし、それぞれの団体の活動について話しました。大里綜合管理株式会社 代表取締役 野老真理子氏は、不動産会社でありながらも、就業時間内で地域活動を行い、社屋も地域住民の交流スペースとして活用することで、地域に根ざした活動に取り組む様子を紹介しました。JCA 常務理事 青竹豊氏は、協同組合の活動とSSEの関わりについて説明し、公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 常務理事 兼松文子氏は、官民のネットワークの連携により、政策提言や支援を行なっている点を解説しました。株式会社ボーダレス・ジャパン 常深孝仁氏は、ソーシャルビジネスを増やすことを目的とし、社会起業家の事業立ち上げから経営まで支援し、参画する企業の余剰利益を新しいソーシャルビジネスへの資金提供につなげていく「恩送りのエコシステム」といったプラットフォームの提供について説明しました。その後、パネリストが互いに質問し、それぞれの事業に関するディスカッションが行われました。パネリスト同士のやり取りを通じて、組織の形態は違っても、社会問題の解決や地域の人々のより良い生活のために、関係組織と連携しながら取り組む点、つまり共通する特徴として「つながり」が浮き彫りになりました。

終盤では、数多く届いた質問のうち、時間の関係で3つに回答しました。労働者協同組合法における労働者性についてJCA青竹氏から回答し、法整備によりディーセント・ワークにつながる労働者性が確保されたとの見解を示しました。日本でSSEが市民権を持つために何が必要かという質問に対し、伊丹氏は、国際的な運動であるため海外の情勢を日本に伝えること、日本国内でSSEの優位性を示す実践を積み上げること、海外の運動と連携すること、政府の支援などを挙げました。最後の質問では、海外ではRIPESS(大陸間社会的連帯経済推進者ネットワーク)憲章のように理念、つまり夢が出発点となっているが、夢よりも目の前の社会問題に目が向きがちな日本がそのような国際的運動に合流するためには何が必要かという質問に対し、世界的な運動に合流する重要性を示唆しつつ、SSEを推進する立場としての夢をパネリストの方々が語りました。



また、シュベットマン氏が総括コメントを述べ、SSEはインフォーマル・フォーマル経済をつなぐだけでなく、社会と経済、地域と世界、地方と都市部など様々なものが「TSUNAGARU」架け橋になると話しました。SSEが様々な人々に利するものであり、SDGsの実現につながるという認知が広まることを願うと共に、2022年の第110回ILO総会一般討議で日本の政労使が主導的な役割を果たすことへの期待を示しました。

閉会の辞では、共催者を代表しJCA 代表理事専務 比嘉政浩氏が、今後も社会における様々な実践について、広い視野を持ちながら学び合いたいという意向を語りました。

尚、本ウエビナーにはチャットや登録時にたくさんの質問やコメントが寄せられ、盛況の中でイベントを終えることができました。いただいた質問は、近日中に駐日事務所のサイトなどを通じて回答する予定です。
【登壇者】
国際労働機関(ILO)コンサルタント ユルゲン・シュベットマン氏
法政大学大学院連帯社会インスティテュート教授 伊丹謙太郎氏
大里綜合管理株式会社 代表取締役 野老真理子氏
日本協同組合連携機構(JCA) 常務理事 青竹豊氏
公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 常務理事 兼松文子氏
株式会社ボーダレス・ジャパン 常深孝仁氏
日本協同組合連携機構(JCA)代表理事専務 比嘉政浩氏
国際労働機関(ILO)本部企業局協同組合ユニット長 シメル・エシム (ビデオ・メッセージ)
国際労働機関(ILO)駐日代表 高﨑真一
【パネリスト所属団体のHP】
大里綜合管理株式会社 https://www.ohsato.co.jp
日本協同組合連携機構(JCA) https://www.japan.coop
公益社団法人徳島県労働者福祉協議会 http://www.tokushima-rofuku.net
株式会社ボーダレス・ジャパン https://www.borderless-japan.com