ILOマルチメディア・プラットフォーム「声」:家事労働者

クウェートにおける家事労働者の組織化

 18年前に家事労働者としてクウェートにやって来たアン・アブンダさんは幾つかの困難な経験をしましたが、同国で家事労働者の権利を主張する元気な団体の設立を手助けしました。

 ILOの「2011年の家事労働者条約(第189号)」は、世界中で数百万人に及ぶ家事労働者に他の労働者が享受しているのと同等の保護を提供する働きがいのある人間らしい仕事を保障することによってその生活・労働条件を改善することを目指しています。この条約は2021年6月16日に採択10周年を迎えました。

クウェートで家事労働者の組織化を進めるフィリピン出身のアン・アブンダさん(英語・2分45秒)

 サンディガン・クウェート及びサンディガン・クウェート家事労働者協会を創設した会長でありボランティア長でもあるアン・アブンダさんは、2000年に22歳でフィリピンからクウェートにやってきました。4年間ほど家事労働者として働いていた時は待遇が悪く、虐待されました。その後、販売の仕事に転職し、クウェートに留まりました。

 2008年に、一緒に余暇を過ごし、料理やゲームをする家事労働者のグループを何人かと結成しました。当時はそれがグループの唯一の目的でしたが、時間が経つにつれ、助けを求める労働者がやってきて話をするようになりました。そこで、この問題の勉強を始め、家事労働者を中心とする労働者の間で話し合うグループを結成しました。

 2010年に家事労働者の保護と福祉について主張するもっと真剣なグループとしてサンディガン・クウェートを設立しました。サンディガンとは、アブンダさんの母国語であるタガログ語で「頼るべきもの」を意味します。

 サンディガン・クウェートはボランティアグループであり、活動に応じてボランティアを募ります。最初は大使館や政府の手続きについて勉強し、その後、家事労働者が直面しているもっと深刻な問題の検討を始めました。問題はここクウェートだけでなく、送出国でも発生しています。

サンディガン・クウェートが開く生計訓練でミシンの使い方を学ぶクウェートの家事労働者 © ILO/OIT

 家事労働者の組織化は簡単ではありませんが、目標を掲げ、誠意をもって、労働者の問題を分かりやすく説明することによって団結を図っています。アブンダさんはそれを業績の一つだと考えています。

 労働者団体はとても重要ですが、家事労働者部門の場合は特にそう言えます。家事労働者が問題をはき出せることが非常に重要であり、そうすることによって政府に自分の経験を伝え、何とかしてくれるよう訴えることができます。

 労働者の組織化という活動を行うことによって、アブンダさんたちは政府に向けたより良い提言をまとめ、労働者の保護を確保するよう労働者や政策をモニタリングすることができます。

2019年6月28日に国際家事労働者デーを記念してサンディガン・クウェート家事労働者協会とサンディガン・クウェートがクウェートで開いた「家事労働者:変化のパートナー」と題するイベントには、家事労働者を含む400人の労働者を動員することに成功しました。このイベントでは、フィリピンとスリランカの家事労働者にその雇い主と共に賞を授与しました。 © IDWF

 サンディガン・クウェートとサンディガン・クウェート家事労働者協会は一つの組織として様々な労働部門、様々な国籍の労働者の案件を支援し評価しています。帰国プログラムもあれば、法的扶助も提供し、心理社会的活動も行っています。毎週金曜日には家事労働者を対象とした生計支援プログラムも実施しています。現在は裁縫教室を開いていますが、既に1回目が終わり、今はエチオピアの家事労働者を対象とした2回目の講座が開かれています。参加者はこの訓練から新たな技能を学び、習得することを本当に楽しんでいます。

 ここは家事労働者にとって安全な場所であり、とりわけ休日には多くのことを学ぶことができます。休日に外出できるだけでなく、少なくともここに来れば何か新しいことを学べるようになっています。

サンディガンの開いた裁縫生計訓練で作ったズボンを見せる家事労働者ら © ILO/OIT

 毎年、家事労働者とその雇い主を表彰しています。多くが30年来のパートナーです。話を聞いて思ったのは、関係を良好にする助けになる基本的な要素は敬意だということです。国籍を問わず、仕事を問わず、互いを尊重することです。一緒にいることを選んだわけですから、互いの法や権利、文化や伝統も尊重すべきです。「もう終わりだ」という言葉を発しがちですが、それでも一緒にいることを選んでいるのです。

 唱道活動を開始した時に助けになった最も重要な条約はILOの家事労働者条約(第189号)です。第189号条約を土台として、2013年にクウェートで家事労働者法に向けたロビー活動を開始しました。そして、2018~19年にサンディガンは家事労働者の団体であるサンディガン・クウェート家事労働者協会の設立を後援しました。

 この13年間、実に多くの変化がありました。いまだに課題は多く、新型コロナウイルスの世界的大流行は家事労働者に特に大きな影響を与えています。雇い主が在宅しているため、ほとんどが休日もなく1日24時間働いています。一つの課題として指摘できるのは、家事労働者は保健医療の点で優先対象ではないということです。とりわけ家事労働者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかったとしても時に働くことを期待されるのです。

 以前は家事労働者は話題にも上りませんでした。存在しても目に見えていなかったのです。でも、この13年間で大いに変わりました。サンディガンは家事労働者の尊厳に価値を付加することに成功しました。家事労働者が目に見える存在であり、人々の話題に上り、問題が語られるのを確実にしています。そして、ここクウェートの家事労働者法成立に加担できたことは大きな業績だと思います。私たちは家事労働者の長い旅の一部となっています、とアブンダさんは語っています。

2019年11月8日(金)。サンディガン・クウェート家事労働者協会はアン・アブンダさんを始め50人の家事労働者が出席した初の総会で指導者を選出しました © IDWF

 移民家事労働者は移住の過程で多様な問題に直面しますが、これには高い募集・斡旋費用の負担、契約のすり替え、賃金不払い、人間らしい生活条件の欠如、人身取引や強制労働、職業及び雇用上の差別などが挙げられます。

 クウェート市民情報機関によれば、2000年12月現在でクウェートには同国の就労者全体の4分の1に当たる約73万2,000人の家事労働者が存在するとされますが、この割合はサウジアラビアに次いで高い数字です。2015年にクウェートは国内の家事労働者の基本的な権利を司る法を成立させましたが、サンディガンは法の制定に当たって設けられた政府と労使団体による協議手続きに参加しました。

 ILOはFAIRWAY計画を通じて家事労働者などの脆弱な状態にある移民労働者の労働力移動の改善に向けて相互に関係する構造的障壁、行動様式上の障壁、実際上の障壁に取り組んでいます。この活動の一部として、クウェートでサンディガン・クウェート家事労働者協会が2020年に中東・北アフリカ地域から初めて国際家事労働者連合に加盟するのを支援しました。サンディガンのメンバーは他の家事労働者組織と会い、その活動から学ぶために外国視察も行っていますが、ILOは、クウェートの家事労働者の訓練活動も支援しています。


 以上はマルチメディア・プラットフォーム「声」に掲載されている2021年8月5日付の英文広報記事の抄訳です。