ILO新刊:テレワーク

ILO新刊:中南米・カリブで少なくとも2,300万人がテレワークに移行

記者発表 | 2021/07/05

 新型コロナウイルスの世界的大流行の結果に対処する手段の一つとして、中南米・カリブの労働市場にはテレワークが浸透し、雇用を目印とする経済活動の破壊的な縮小、所得減、企業閉鎖の中で一部の産業部門の活動継続を可能にしていることがこの度発表になったILOの技術資料から明らかになりました。

 他の地域同様、中南米・カリブ地域でも一定の経済活動、そしてそれに伴う雇用の継続を保障する仕組みとしてテレワークが登場しました。コロナ禍以前のテレワーク人口は賃金労働者の3%に満たなかったものの、データが得られる域内諸国の状況からは、地域封鎖が課されていた期間に在宅勤務を行った人は実際に働いていた賃金労働者の2~3割に達したことが示されており、危機が最悪期にあった2020年第2四半期には暫定見積もりで約2,300万人がテレワークに移行したと見られます。

 『Challenges and opportunities of telework in Latin America and the Caribbean(中南米・カリブにおけるテレワークの課題と機会・英語)』と題する技術資料は、テレワークの効果の規模を予測するにはまだ時期尚早としつつも、一部の人々や企業にとっての都合の良い解決策あるいは会社での仕事と在宅就労を組み合わせたハイブリッド方式の普及のいずれかを通じてこの就労形態が残ると仮定して備えるよう国家や社会に助言しています。ILOの分析では、コロナ禍以前に存在していた在宅就労は主として自営労働者によるものあるいは会社勤務と組み合わせた特殊な状況下で行われていたものに過ぎなかったのが、隔離措置の中で多くの場合、唯一の就労形態になったと見られます。

 ただし、全ての労働者がこの就労形態を用いられたわけではなく、テレワークの最も大きな増加が示されたのは、「主として専門職、管理職、総務職などの安定した雇用関係があり、教育水準が高く、公式に雇用されており、そしてもちろん業務の遂行に必要な科学技術が得られる給与労働者」であったことを、資料をまとめたロクサナ・マウリツィオILO労働経済地域専門官は指摘し、とりわけ2020年上半期に労働時間や雇用の減少が最も大きかった非公式(インフォーマル)労働者、自営業者、若者、資格や収入の水準が低い人々に与えられたテレワークの機会はずっと小さかったと強調しています。そして、「全体的に情報通信技術(ICT)の利用度合いが低く、技術格差が大きい労働構造を特徴とするこの地域では、在宅就労、とりわけテレワークの拡大が異なる労働者集団間で均質でないのは予期されたこと」と説明しています。

 さらに、危機前のテレワークは勤労生活と家庭生活のより良いバランスを達成する代案として考えられていたものの、コロナ禍によって引き起こされた地域封鎖期間の状況は複雑であり、学校も休校になり、家族の世話をする必要が増したことは、主として女性が家庭責任を担い続けている以上、特別な形で女性に影響を与えたとマウリツィオ専門官は指摘しています。

 ビニシウス・ピニェイロILO中南米・カリブ総局長は、危機が加速した労働市場の趨勢は、劇的な雇用減少の状況と共に、「仕事の未来が予想より早くその姿を現したことを発信するもの」と評し、労働市場に対する危機の否定的な影響を緩和する助けになり、数百万人の雇用の維持に寄与したテレワークについて、「回復後も選択肢の一つとして残り、新たな機会を生み出すことは確実」としつつも、「急いで実施に走った企業や労働者にとっての課題がまだ未対応なのも明確」としています。

 報告書はテレワークの課題に直面するために対処すべき側面として、◇任意性と当事者間の合意、◇労働時間とその編成、◇労働安全衛生、◇機器その他仕事に必要なもの、◇労働者のプライバシー権の保護、◇テレワークにおける性差の側面、◇社会的パートナーである労使団体の役割、◇雇用関係と法令遵守に光を当てています。この地域はテレワークの規制の点では進歩が報告されているものの、この就労形態の未曾有の増加は対処が必要な多様な課題を露わにしました。適切な制御なしには、在宅就労は従属性を認めない雇用関係、したがって自営労働や偽装雇用関係の増加につながる可能性を報告書は指摘しています。そして、検討が必要な事項として、とりわけ社会保障や1日の労働時間の遵守、結社の自由、職業訓練の機会、職場における安全衛生を挙げ、こういった事項への対処においては、政労使の対話がカギを握ると強調しています。

 企業の観点から見てもテレワークは、事業の継続性保障や生き残りに必要な生産性水準の維持などの課題を提示しています。技術資料は、コロナ禍の中で学んだ教訓を考慮に入れることが必要不可欠としつつ、このテーマに関する今後の分析に際しては、中南米・カリブにおけるテレワークに関して比較可能で新しい十分な情報を提供するような公式統計が必要と説いています。


 以上はリマ発英文記者発表の抄訳です。