第109回ILO総会
第109回ILO総会:新型コロナウイルス危機からの回復行動に関する世界的な合意を達成
187加盟国中181カ国から政府、使用者、労働者の代表が参加してILO史上初のバーチャル形式で開かれている第109回ILO総会は2021年6月17日、全ての人に働きがいのある人間らしい仕事を創出することを優先事項とし、危機がもたらした不平等に対処する、新型コロナウイルス危機からの人間を中心に据えた回復に向けた行動を世界的に呼びかける決議を全会一致で採択しました。
包括的な取り組みの概略を示す「包摂的かつ持続可能で強靱な、新型コロナウイルス危機からの人間を中心に据えた回復のための行動のグローバルな呼びかけ」を通じて、諸国は自国の経済・社会の危機回復が完全に包摂的かつ持続可能で強靱なものであるよう確保することを約束しています。
事務局長報告の提案に沿ってまとめられたこの合意文書は、合意された二つの行動集合で構成されています。第1部「包摂的かつ持続可能で強靱な、人間を中心に据えた回復を前進させるための緊急行動」は、包摂的な経済成長と雇用、全ての労働者の保護、普遍的社会的保護、社会対話の四つの分野にわたり、労働者保護と社会的保護を相当に強化し、持続可能な企業を支えるような、仕事を豊かに生む回復を達成するために、各国政府と社会的パートナーである使用者及び労働組合が執るべき措置を網羅しています。第2部「包摂的かつ持続可能で強靱な、人間を中心に据えた回復におけるILOのリーダーシップと支援」は、各国の人間を中心に据えたコロナ禍からの回復戦略に対する支援の水準及び整合性を高めることを目的とした、ILOを含む多国間機関の役割と国際協力を扱っています。そして、社会正義とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を任務とするILOに対し、多国間システムの他の機関との協力強化などを通じて、誰も置き去りにしない回復戦略の設計と実施をリーダーシップを発揮し、あらゆる行動手段を用いて支えることを求めています。

この行動の呼びかけは2019年のILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を土台とし、完全に包摂的で幅広い回復を支援する強化された政策と投資を通じて宣言の実務的な実施を加速する道を提示しています。さらにまた、ワクチン、治療、予防措置への地球規模の平等な機会を確保するための国際協力や連帯などを含む関連分野における緊急の調整行動を呼びかけています。
ガイ・ライダーILO事務局長は、「包摂的かつ持続可能で強靱な回復の形成を公共政策の最優先事項としなくてはなりません。この決議は、各国が誰も置き去りにしないという、道徳的かつ政治的な願望を具体的な行動へと転換することを可能にする明確で包括的な前途を示しています」と述べてこの合意を歓迎した上で、次のように語っています。「新型コロナウイルスからの回復の有効性と強靱性はそれがどれだけ幅広く、社会的に包摂的であるかに大いに左右されることでしょう。この危機の間に深まった不平等に具体的に対処しない限り、経済的・社会的影響によって、とりわけ若者や女性のような不均衡に大きな影響を受けている集団、そして世界の雇用の大半の受け皿となっている小規模・零細企業に長く消えない傷跡が残ることになる非常に現実的なリスクが存在します」。
ILO総会の枠内で6月17~18日には、「人間を中心に据えた新型コロナウイルス対応のためのグローバルな行動」と題する仕事の世界サミットが2日間にわたって開かれています。決議採択に先立って開かれた初日の会合には、ローマ教皇フランシスコ台下、文在寅韓国大統領、アントニオ・コスタ・ポルトガル首相、ジョセフ・R・バイデン米国大統領などの世界の主な指導者からビデオメッセージが届けられ、コロナ禍の労働市場への影響や社会正義とディーセント・ワークを促進する回復戦略について話し合いが行われました。
以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。